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排卵のしくみと、排卵しない理由がわかりません
排卵のしくみと、排卵しない理由がわかりません 2017/8/25 清水 真弓 先生(はるねクリニック銀座) 相談者:ゆきさん(34歳) 二人目不妊のためタイミング治療中です。HMG注射を使い、21㎝に育った卵胞があります。医師から卵巣の腫れを心配して、自然排卵で様子を見ましょうと言われていて、排卵を待っているところです。しかし排卵検査薬は陰性のままで5日経ちました。もともとLHが低いため、一人目の妊娠の時はHCG注射を使いました。そこで質問です。排卵検査薬が陰性のままだと、排卵しないで卵胞はしぼみますか? 後日病院を受診しますが、治療のためにも、知っておくべき最低限の知識とアドバイスをいただけますか。よろしくお願いします。 自力で排卵できないハイポ・ハイポのケース 質問の内容から、2つの治療ケースが考えられます。 1つめは、HCG注射を使わないために排卵しなかったケース。2つめは、HMGの副作用を回避するために積極的な排卵惹起(トリガー)を取り止めたケースです。 ケース別に治療の概要とアドバイスについてご説明します。 まず1つめのケースですが、「一人目の妊娠時はLHが低くHCG注射を使った」という事実が正しければ、ゆきさんは低ゴナドトロピン性性腺機能低下症の可能性があります。何らかの理由で脳から卵巣に働きかけるホルモンと、卵巣のホルモンの両方が少ない状態のことを言い、私たちはハイポ・ハイポと呼んでいます。LHも0~1と低く、排卵にはHCG注射などで外からLH作用を補うことが絶対に必要です。点鼻薬による排卵惹起は作用が違うため、この体質には効果がありません。 このケースにゆきさんが当てはまるなら、HCG注射を使っていないため排卵検査薬が陰性のままというのは当然で、卵胞はしぼむ運命です。でもHCG注射を使えば、陽性になって通常は排卵しますので安心ください。 清水先生より アドバイス ご自身がハイポ・ハイポ体質だということを認識しておきましょう。HCG注射を打つと排卵検査薬は陽性になり、通常排卵がおきます。 またごくまれですが、患者さんの体質を見逃して、卵胞が育っても医師がHCG注射を忘れてしまうことがあります。マンツーマン(主治医制)のクリニックではまずありませんが、毎回医師がかわるクリニックでは可能性がゼロではありません。それを防ぐためにも、治療時には毎回医師に伝えるとよいですね。 HMGの副作用を回避するためキャンセル周期とする、もしくは排卵検査薬の反応が出終わっているケース 2つめは、点鼻薬や注射を含めて自力で排卵できるものの、あえて積極的な排卵惹起を取り止めるケースです。HMGは卵を育てるのが目的ですが、卵が複数育った場合、そのまま排卵させると双子や三つ子などのハイリスク妊娠となる可能性があります。 一般に、16mmの卵胞が4つ以上育った場合は、その周期は治療をキャンセルするのが一般的です。質問文に書いてある「自然排卵で様子を見ましょう」というのは、「キャンセル周期としましょう」とも読み取れます。 このケースにゆきさんが当てはまるなら、排卵検査薬を使っていたようなので、医師との間に誤解があったのかもしれません。 また、卵胞が21mmということは、排卵検査薬での反応がもう出終わっていた可能性も考えられます。その場合は、通常排卵していきますので、後日エコーで排卵確認を行うのが一般的です。 清水先生より アドバイス 患者さんの卵胞をほどよく育てるための薬剤の選択・調整は、ベテラン医師でも難しいのです。同じ患者さんでも周期ごとにコンディションが変わることがありますし、医師の腕が問われます。実績ある不妊の専門施設を訪れるのも一つの方法でしょう。 二人目不妊の治療はどうする? 二人目不妊の治療は、成功例を踏襲するのが原則です。一人目の時にHCG注射を使って妊娠したのでしたら、私もそこから治療を始めます。 私自身、たくさんの患者さんと接してきた経験から言えることなのですが、ハイポ・ハイポ体質の方は、自力で排卵できるケースに比べて、排卵さえすれば妊娠しやすい印象があります。ゆきさんは30代前半とお若いので、妊娠の可能性は十分にあります。頑張って治療を続けてください。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 清水 真弓 先生(はるねクリニック銀座) 信州大学医学部卒業。神戸大学医学部附属病院、東京女子医科大学病院、木場公園クリニック勤務を経て2016年10月より現職。医学博士。日本産科婦人科学会産婦人科専門医。日本生殖医療学会生殖医療専門医。日本抗加齢医学会専門医。 ≫ はるねクリニック銀座 排卵のしくみと、排卵しない理由がわかりません 2017/8/25 清水 真弓 先生(はるねクリニック銀座) 相談者:ゆきさん(34歳) 二人目不妊のためタイミング治療中です。HMG注射を使い、21㎝に育った卵胞があります。医師から卵巣の腫れを心配して、自然排卵で様子を見ましょうと言われていて、排卵を待っているところです。しかし排卵検査薬は陰性のままで5日経ちました。もともとLHが低いため、一人目の妊娠の時はHCG注射を使いました。そこで質問です。排卵検査薬が陰性のままだと、排卵しないで卵胞はしぼみますか? 後日病院を受診しますが、治療のためにも、知っておくべき最低限の知識とアドバイスをいただけますか。よろしくお願いします。 自力で排卵できないハイポ・ハイポのケース 質問の内容から、2つの治療ケースが考えられます。 1つめは、HCG注射を使わないために排卵しなかったケース。2つめは、HMGの副作用を回避するために積極的な排卵惹起(トリガー)を取り止めたケースです。 ケース別に治療の概要とアドバイスについてご説明します。 まず1つめのケースですが、「一人目の妊娠時はLHが低くHCG注射を使った」という事実が正しければ、ゆきさんは低ゴナドトロピン性性腺機能低下症の可能性があります。何らかの理由で脳から卵巣に働きかけるホルモンと、卵巣のホルモンの両方が少ない状態のことを言い、私たちはハイポ・ハイポと呼んでいます。LHも0~1と低く、排卵にはHCG注射などで外からLH作用を補うことが絶対に必要です。点鼻薬による排卵惹起は作用が違うため、この体質には効果がありません。 このケースにゆきさんが当てはまるなら、HCG注射を使っていないため排卵検査薬が陰性のままというのは当然で、卵胞はしぼむ運命です。でもHCG注射を使えば、陽性になって通常は排卵しますので安心ください。 清水先生より アドバイス ご自身がハイポ・ハイポ体質だということを認識しておきましょう。HCG注射を打つと排卵検査薬は陽性になり、通常排卵がおきます。 またごくまれですが、患者さんの体質を見逃して、卵胞が育っても医師がHCG注射を忘れてしまうことがあります。マンツーマン(主治医制)のクリニックではまずありませんが、毎回医師がかわるクリニックでは可能性がゼロではありません。それを防ぐためにも、治療時には毎回医師に伝えるとよいですね。 HMGの副作用を回避するためキャンセル周期とする、もしくは排卵検査薬の反応が出終わっているケース 2つめは、点鼻薬や注射を含めて自力で排卵できるものの、あえて積極的な排卵惹起を取り止めるケースです。HMGは卵を育てるのが目的ですが、卵が複数育った場合、そのまま排卵させると双子や三つ子などのハイリスク妊娠となる可能性があります。 一般に、16mmの卵胞が4つ以上育った場合は、その周期は治療をキャンセルするのが一般的です。質問文に書いてある「自然排卵で様子を見ましょう」というのは、「キャンセル周期としましょう」とも読み取れます。 このケースにゆきさんが当てはまるなら、排卵検査薬を使っていたようなので、医師との間に誤解があったのかもしれません。 また、卵胞が21mmということは、排卵検査薬での反応がもう出終わっていた可能性も考えられます。その場合は、通常排卵していきますので、後日エコーで排卵確認を行うのが一般的です。 清水先生より アドバイス 患者さんの卵胞をほどよく育てるための薬剤の選択・調整は、ベテラン医師でも難しいのです。同じ患者さんでも周期ごとにコンディションが変わることがありますし、医師の腕が問われます。実績ある不妊の専門施設を訪れるのも一つの方法でしょう。 二人目不妊の治療はどうする? 二人目不妊の治療は、成功例を踏襲するのが原則です。一人目の時にHCG注射を使って妊娠したのでしたら、私もそこから治療を始めます。 私自身、たくさんの患者さんと接してきた経験から言えることなのですが、ハイポ・ハイポ体質の方は、自力で排卵できるケースに比べて、排卵さえすれば妊娠しやすい印象があります。ゆきさんは30代前半とお若いので、妊娠の可能性は十分にあります。頑張って治療を続けてください。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 清水 真弓 先生(はるねクリニック銀座) 信州大学医学部卒業。神戸大学医学部附属病院、東京女子医科大学病院、木場公園クリニック勤務を経て2016年10月より現職。医学博士。日本産科婦人科学会産婦人科専門医。日本生殖医療学会生殖医療専門医。日本抗加齢医学会専門医。 ≫ はるねクリニック銀座
2017.8.25
コラム 不妊治療
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通水治療で卵管の詰まりを改善することはできますか?
通水治療で卵管の詰まりを改善することはできますか? 2017/7/19 石川 聖子先生(銀座レディースクリニック院長) 相談者:みーたさん(25歳) 卵管詰まりと通水治療 3年前に子宮外妊娠をしたため、右卵管がありません。その後、不妊治療を始め、初めての子宮卵管造影検査では左卵管は問題なし。3回目の人工授精で妊娠しましたが、残念ながら子宮外妊娠でした。体外受精に進み、今度は無事に妊娠。出産して1年になります。出産後、1回だけ自然妊娠したのですが、結果は流産。「自然妊娠も不可能ではない」と思い、産婦人科を受診して子宮卵管造影検査を受けたところ、今までにないほどの激痛で「残りの卵管は詰まっている」といわれました。通水治療を1回したのですが、やはり「通っていない」とのこと。通ると肩が痛くなるらしいのですが、肋骨あたりの鈍痛が続いたくらいで、肩は痛くなりませんでした。検査自体はまったく痛くなかったです。先生から「高温期は通る時もある」といわれたので、来週また受けてみたいと思います。このまま通水治療を続けて、改善する見込みはありますか? 肋骨付近が痛くなったのはなぜ? 2年前は通っていたのに、2年後に詰まってしまうこともあるのでしょうか。 以前は通っていたのに、2年後に卵管が詰まってしまうことはあるのですか? 通常なら詰まることはありませんが、何らかの原因があった場合、短い期間で閉塞してしまうこともあります。卵管が閉塞したり狭窄する原因として、クラミジアなどの感染症、卵管炎や腹膜炎、虫垂炎など、子宮やお腹の中の炎症、子宮内膜症などが考えられます。ほかに、帝王切開などの開腹手術で卵管に癒着が起こってしまうことも。ただし、手術の際はそのようなことが起こらないように細心の注意を払いますから、頻度は少ないと思います。 また、通水や通気検査、子宮卵管造影検査では、れん縮といって、緊張や痛みなどで卵管が収縮して、通りが悪くなることがあります。油性の造影剤の場合は空気が詰まってしまうことも。このような検査のエラーで、一時的に詰まった状態になるという場合もあるんですね。 通水治療を受けたら、肩ではなく、肋骨付近が痛くなったというのは? みーたさんは「通水で卵管が通ると肩が痛くなる」とおっしゃっていますが、これは通気検査と勘違いされているのではないでしょうか。通気検査では卵管が通ると横隔膜や肩に痛みが出るのですが、通水検査では通っても痛みは感じません。肋骨付近の鈍痛がなぜ起きたのかは不明ですが、おそらく検査によって引き起こされたものではないでしょう。 「高温期は通る時もある」という考えについてはどう思われますか。 医学的に私が知る限り、高温期に通りやすいという話は聞いたことがありません。むしろ、妊娠の可能性がある排卵後は、子宮にカテーテルを挿入する通水検査や子宮卵管造影検査は避けるべきだと思います。避妊をしていないと通水することはできないでしょう。一般的には、わざわざ避妊をして高温期に通水をするというのは考えにくいことですね。 このまま通水を続けていけば、卵管の詰まりを解消することができるのでしょうか。 通水治療とおっしゃっていますが、通常の通水はあくまでも卵管の通過性を判断する検査であり、卵管の詰まりを解消するための治療という認識はあまりないと思います。「詰まり解消に効果があった」という報告も一部ありますが、治療としてのきちんとしたエビデンスはありません。 自然妊娠にこだわりたいということであれば、通水検査よりも確定的に診断できる卵管鏡検査を受けてみてはどうでしょうか。この検査なら他の内視鏡検査と同様に、直視下で卵管の状態を詳しく観察したり、場所を選択して通水することができます。 卵管鏡検査は外来で受けることが可能で、体外受精を行っている施設や、一般的な産婦人科でも検査を実施している施設を紹介していただくことができると思います。 このまま通水を繰り返すより、もっと確立された検査・治療を受けたほうが、気持ち的にすっきりするし、問題点が解決される可能性が高いと思います。 石川先生より まとめ ●通常の通水はあくまでも検査で、治療という認識はされていない ●より詳しく診断・治療するなら卵管鏡検査という選択も [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 石川聖子先生(銀座レディースクリニック院長) 1996年東京医科大学、2000年東京女子医科大学大学院医学研究科卒業。米国留学、東京女子医科大学生殖内分泌・不妊外来・ARTチーフ等を経て、銀座レディースクリニック院長に就任。医学博士・日本産科婦人科学会産婦人科専門医・日本生殖医学会生殖医療専門医。 ≫ 銀座レディースクリニック 通水治療で卵管の詰まりを改善することはできますか? 2017/7/19 石川 聖子先生(銀座レディースクリニック院長) 相談者:みーたさん(25歳) 卵管詰まりと通水治療 3年前に子宮外妊娠をしたため、右卵管がありません。その後、不妊治療を始め、初めての子宮卵管造影検査では左卵管は問題なし。3回目の人工授精で妊娠しましたが、残念ながら子宮外妊娠でした。体外受精に進み、今度は無事に妊娠。出産して1年になります。出産後、1回だけ自然妊娠したのですが、結果は流産。「自然妊娠も不可能ではない」と思い、産婦人科を受診して子宮卵管造影検査を受けたところ、今までにないほどの激痛で「残りの卵管は詰まっている」といわれました。通水治療を1回したのですが、やはり「通っていない」とのこと。通ると肩が痛くなるらしいのですが、肋骨あたりの鈍痛が続いたくらいで、肩は痛くなりませんでした。検査自体はまったく痛くなかったです。先生から「高温期は通る時もある」といわれたので、来週また受けてみたいと思います。このまま通水治療を続けて、改善する見込みはありますか? 肋骨付近が痛くなったのはなぜ? 2年前は通っていたのに、2年後に詰まってしまうこともあるのでしょうか。 以前は通っていたのに、2年後に卵管が詰まってしまうことはあるのですか? 通常なら詰まることはありませんが、何らかの原因があった場合、短い期間で閉塞してしまうこともあります。卵管が閉塞したり狭窄する原因として、クラミジアなどの感染症、卵管炎や腹膜炎、虫垂炎など、子宮やお腹の中の炎症、子宮内膜症などが考えられます。ほかに、帝王切開などの開腹手術で卵管に癒着が起こってしまうことも。ただし、手術の際はそのようなことが起こらないように細心の注意を払いますから、頻度は少ないと思います。 また、通水や通気検査、子宮卵管造影検査では、れん縮といって、緊張や痛みなどで卵管が収縮して、通りが悪くなることがあります。油性の造影剤の場合は空気が詰まってしまうことも。このような検査のエラーで、一時的に詰まった状態になるという場合もあるんですね。 通水治療を受けたら、肩ではなく、肋骨付近が痛くなったというのは? みーたさんは「通水で卵管が通ると肩が痛くなる」とおっしゃっていますが、これは通気検査と勘違いされているのではないでしょうか。通気検査では卵管が通ると横隔膜や肩に痛みが出るのですが、通水検査では通っても痛みは感じません。肋骨付近の鈍痛がなぜ起きたのかは不明ですが、おそらく検査によって引き起こされたものではないでしょう。 「高温期は通る時もある」という考えについてはどう思われますか。 医学的に私が知る限り、高温期に通りやすいという話は聞いたことがありません。むしろ、妊娠の可能性がある排卵後は、子宮にカテーテルを挿入する通水検査や子宮卵管造影検査は避けるべきだと思います。避妊をしていないと通水することはできないでしょう。一般的には、わざわざ避妊をして高温期に通水をするというのは考えにくいことですね。 このまま通水を続けていけば、卵管の詰まりを解消することができるのでしょうか。 通水治療とおっしゃっていますが、通常の通水はあくまでも卵管の通過性を判断する検査であり、卵管の詰まりを解消するための治療という認識はあまりないと思います。「詰まり解消に効果があった」という報告も一部ありますが、治療としてのきちんとしたエビデンスはありません。 自然妊娠にこだわりたいということであれば、通水検査よりも確定的に診断できる卵管鏡検査を受けてみてはどうでしょうか。この検査なら他の内視鏡検査と同様に、直視下で卵管の状態を詳しく観察したり、場所を選択して通水することができます。 卵管鏡検査は外来で受けることが可能で、体外受精を行っている施設や、一般的な産婦人科でも検査を実施している施設を紹介していただくことができると思います。 このまま通水を繰り返すより、もっと確立された検査・治療を受けたほうが、気持ち的にすっきりするし、問題点が解決される可能性が高いと思います。 石川先生より まとめ ●通常の通水はあくまでも検査で、治療という認識はされていない ●より詳しく診断・治療するなら卵管鏡検査という選択も [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 石川聖子先生(銀座レディースクリニック院長) 1996年東京医科大学、2000年東京女子医科大学大学院医学研究科卒業。米国留学、東京女子医科大学生殖内分泌・不妊外来・ARTチーフ等を経て、銀座レディースクリニック院長に就任。医学博士・日本産科婦人科学会産婦人科専門医・日本生殖医学会生殖医療専門医。 ≫ 銀座レディースクリニック
2017.7.19
専門医Q&A 不妊治療
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二人目不妊を克服するには?【二人目不妊の原因と基礎知識】
二人目不妊を克服するには?【二人目不妊の原因と基礎知識】 2017/4/5 下川理世(赤坂レディースクリニック) 「一人目は産めたのに……」。はじめての妊娠・出産はうまくいっても、二人目がなかなかできずに思い悩む夫婦は多いもの。赤坂レディースクリニックの下川先生は、「一人目出産の安心感から二人目不妊への対応が遅れてしまう」と言います。 そこで今回は、二人目不妊の原因や対策について下川先生にくわしくお聞きしました。 二人目不妊の原因の1つに「出産経験」による子宮の変化も 二人目不妊の原因はさまざまですが、その1つに第一子を出産したことによって子宮内の機能が変化してしまうことが挙げられます。 特に、第一子の分娩で、感染症を引き起こしてポリープができてしまったり、卵管の通りが悪くなる方は結構いらっしゃいます。 また、精子の所見が極端に悪いなど、男性側の原因が見つかることもよくあります。 高齢化も二人目不妊の大きな要因 前回の出産から数年が経過しているということは、当然ながら、その分、夫婦の年齢も上がっています。女性のもつ卵子の数は生まれたときに決まっており、精子のように増殖しません。つまり、加齢とともに卵子の数は減少していくのです。 ●卵子の残数を測定するAMH検査 AMH検査をご存じでしょうか。卵巣の中にどのくらいの卵子が残っているかを測定する検査です。この数値は37歳を境に急激に下がっていきます。数値が低いと妊娠のチャンスも低くなり、自然妊娠は相当厳しくなります。 なお、第一子出産の時にすでにAMHの値がギリギリだったものの、なんとか子どもを授かることができたというケースもありますが、そういった方が二人目不妊になることも多いのが現状です。 半年頑張ってもできない時は、産婦人科へ 二人目不妊の相談にこられた方に対しては、まず卵管機能、子宮内膜の状態を調べ、血液検査でAMHの数値も調べます。 そこからの不妊治療は、年齢も若く子宮も健康で、AMHの数値も高ければ、第一子の不妊治療同様、タイミング法からはじめます。 ただし、37歳以上の高齢で、AMHも低い場合は、人工授精からはじめることをおすすめしています。 また、40歳以上で、第二子を望まれている方には体外受精からはじめましょうと提案することもあります。のんびりしていたら、卵巣のポテンシャルも下がる一方だからです。 二人目は「そのうちできる」と、のんびりされている方が多いのですが、本気で授かりたいと思っているのであれば、卒乳1年後から半年頑張っても無理だと思ったら、産婦人科に相談してください。はやければはやいほど良いでしょう。 実践したい二人目妊活生活 妊婦は葉酸を積極的に摂取したほうが良いと言われています。特に胎児の細胞が著しく発達する妊娠初期に、胎児の神経管閉鎖障害の発症リスクを低減する役割を担っているのが葉酸だからです。 ちなみに妊娠に気づけるほど体が変化するのは妊娠2〜3カ月目です。そのため、その時になって慌てて摂るのではなく、妊娠したいと思っているのであれば、妊娠前からサプリなどを上手に活用し、積極的に摂取するようにしましょう。 できれば、バランス良く、ビタミンも含めて、さまざまな栄養を摂ったほうが流産率も少ないと言われています。 もちろん、バランスの良い食事も大切。一人目の子育てに追われて、自分の食事がおろそかになりがちな方が多いのですが、しっかりした食事を心がけてください。 また、旦那さんも、精子の所見があまり良くなければ、規則正しい生活を心がけてください。飲酒はほどほどに。たばこも禁煙したほうがいいです。 流産・「それでもできない」の心のケアはホットラインで 仮に妊娠できても、高齢の妊婦の場合、流産しやすくなります。ある意味、しかたがないことですが、ご本人は相当ショックを受けられます。最終目標の二人目分娩にたどりつくためにも、はやく気持ちを切り替えてほしいのですが、なかなか難しい場合もあります。 担当医師や旦那さんと話し合ったり、まわりの方に話しても、気持ちに折り合いがつかない場合は、厚労省や地方自治体の「不妊ホットライン」を活用し、カウンセリングを受けてみるのもいいと思いますよ。 下川先生より まとめ 二人目は「そのうちできる」と思っている方は要注意。卒乳1年後から半年頑張っても無理なら、はやめに産婦人科に相談しましょう。葉酸の摂取も日頃から忘れずに。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 下川理世先生(赤坂レディースクリニック) 福岡県出身。山口大学医学部卒。 2000年慶応義塾大学医学部産婦人科入局。その後、静岡赤十字病院産婦人科、市川総合病院産婦人科リプロダクションセンター、湘南IVFクリニック(現メディカルパーク湘南)を経て、2016年4月、赤坂レディースクリニックを開業。婦人科診療から不妊治療まで総合的に行っている。不妊治療に関しては一般不妊治療から体外受精、顕微授精など高度生殖補助技術まで行う。「負担が少なく、医学的根拠に基づく的確でスピーディな医療」をモットーに不妊治療をサポート。 二人目不妊を克服するには?【二人目不妊の原因と基礎知識】 2017/4/5 下川理世(赤坂レディースクリニック) 「一人目は産めたのに……」。はじめての妊娠・出産はうまくいっても、二人目がなかなかできずに思い悩む夫婦は多いもの。赤坂レディースクリニックの下川先生は、「一人目出産の安心感から二人目不妊への対応が遅れてしまう」と言います。 そこで今回は、二人目不妊の原因や対策について下川先生にくわしくお聞きしました。 二人目不妊の原因の1つに「出産経験」による子宮の変化も 二人目不妊の原因はさまざまですが、その1つに第一子を出産したことによって子宮内の機能が変化してしまうことが挙げられます。 特に、第一子の分娩で、感染症を引き起こしてポリープができてしまったり、卵管の通りが悪くなる方は結構いらっしゃいます。 また、精子の所見が極端に悪いなど、男性側の原因が見つかることもよくあります。 高齢化も二人目不妊の大きな要因 前回の出産から数年が経過しているということは、当然ながら、その分、夫婦の年齢も上がっています。女性のもつ卵子の数は生まれたときに決まっており、精子のように増殖しません。つまり、加齢とともに卵子の数は減少していくのです。 ●卵子の残数を測定するAMH検査 AMH検査をご存じでしょうか。卵巣の中にどのくらいの卵子が残っているかを測定する検査です。この数値は37歳を境に急激に下がっていきます。数値が低いと妊娠のチャンスも低くなり、自然妊娠は相当厳しくなります。 なお、第一子出産の時にすでにAMHの値がギリギリだったものの、なんとか子どもを授かることができたというケースもありますが、そういった方が二人目不妊になることも多いのが現状です。 半年頑張ってもできない時は、産婦人科へ 二人目不妊の相談にこられた方に対しては、まず卵管機能、子宮内膜の状態を調べ、血液検査でAMHの数値も調べます。 そこからの不妊治療は、年齢も若く子宮も健康で、AMHの数値も高ければ、第一子の不妊治療同様、タイミング法からはじめます。 ただし、37歳以上の高齢で、AMHも低い場合は、人工授精からはじめることをおすすめしています。 また、40歳以上で、第二子を望まれている方には体外受精からはじめましょうと提案することもあります。のんびりしていたら、卵巣のポテンシャルも下がる一方だからです。 二人目は「そのうちできる」と、のんびりされている方が多いのですが、本気で授かりたいと思っているのであれば、卒乳1年後から半年頑張っても無理だと思ったら、産婦人科に相談してください。はやければはやいほど良いでしょう。 実践したい二人目妊活生活 妊婦は葉酸を積極的に摂取したほうが良いと言われています。特に胎児の細胞が著しく発達する妊娠初期に、胎児の神経管閉鎖障害の発症リスクを低減する役割を担っているのが葉酸だからです。 ちなみに妊娠に気づけるほど体が変化するのは妊娠2〜3カ月目です。そのため、その時になって慌てて摂るのではなく、妊娠したいと思っているのであれば、妊娠前からサプリなどを上手に活用し、積極的に摂取するようにしましょう。 できれば、バランス良く、ビタミンも含めて、さまざまな栄養を摂ったほうが流産率も少ないと言われています。 もちろん、バランスの良い食事も大切。一人目の子育てに追われて、自分の食事がおろそかになりがちな方が多いのですが、しっかりした食事を心がけてください。 また、旦那さんも、精子の所見があまり良くなければ、規則正しい生活を心がけてください。飲酒はほどほどに。たばこも禁煙したほうがいいです。 流産・「それでもできない」の心のケアはホットラインで 仮に妊娠できても、高齢の妊婦の場合、流産しやすくなります。ある意味、しかたがないことですが、ご本人は相当ショックを受けられます。最終目標の二人目分娩にたどりつくためにも、はやく気持ちを切り替えてほしいのですが、なかなか難しい場合もあります。 担当医師や旦那さんと話し合ったり、まわりの方に話しても、気持ちに折り合いがつかない場合は、厚労省や地方自治体の「不妊ホットライン」を活用し、カウンセリングを受けてみるのもいいと思いますよ。 下川先生より まとめ 二人目は「そのうちできる」と思っている方は要注意。卒乳1年後から半年頑張っても無理なら、はやめに産婦人科に相談しましょう。葉酸の摂取も日頃から忘れずに。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 下川理世先生(赤坂レディースクリニック) 福岡県出身。山口大学医学部卒。 2000年慶応義塾大学医学部産婦人科入局。その後、静岡赤十字病院産婦人科、市川総合病院産婦人科リプロダクションセンター、湘南IVFクリニック(現メディカルパーク湘南)を経て、2016年4月、赤坂レディースクリニックを開業。婦人科診療から不妊治療まで総合的に行っている。不妊治療に関しては一般不妊治療から体外受精、顕微授精など高度生殖補助技術まで行う。「負担が少なく、医学的根拠に基づく的確でスピーディな医療」をモットーに不妊治療をサポート。
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インタビュー 不妊治療
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タイミングはバッチリなのに二人目不妊なのは、なぜ?
タイミングはバッチリなのに二人目不妊なのは、なぜ? 2017/1/27 中村 嘉宏(なかむらレディースクリニック 院長) 相談者:はなこさん(主婦 / 34歳) 二人目不妊です。だいたいタイミングは合っているのに、この1年半まったく妊娠しません。一人目は、同じ病院で2ヶ月目に妊娠しました。今回も一人目の時と同じように高プロラクチンのため、テルロンを1日1錠飲んでいます。主人の精液検査は全く異常ナシ。卵管造影で左は問題ないが右が少し細めとのこと。これも一人目の時と同じ結果です。しかし、今回は年齢のことと、良い卵を育てるためにクロミッドを毎月服用しています。いつも卵が2つできて、排卵も左右交互にくるようになりました。それでも妊娠しないので通気検査もしましたが、両方問題ないとのこと。今月は、HCG2回、左の卵2つを排卵、デュファストン10日間服用。タイミングはバッチリでした。3日間仲良くし期待していたのですが生理がきました。主人は前向きに「またがんばろ」って言っています。娘はもうすぐ3歳です。最近、私がため息をつくと「赤ちゃんできるよ」って言うんです。この子にきょうだいを作ってあげたい。来年で35歳ですが諦めたくない。他にステップアップするべきでしょうか? 二人目不妊で悩む方の特徴はありますか? 妊娠する力があっても加齢によって卵子が老化し、妊娠しにくくなっていることが大きな特徴です。当院にも二人目不妊の方は多くいらっしゃいます。妊娠・出産を経て授乳を終えると、二人目を考える頃には約2年経過します。35歳くらいで一人目を出産された方は、二人目を考えるとき、一人目よりもはるかに妊娠しにくくなっている場合があります。 二人目不妊に対して、先生はどのようなアプローチをされますか。 基本的には、自然やタイミング療法で一人目を妊娠・出産した方は、タイミング療法から始めます。エコーのみでタイミング療法を行う施設もありますが、タイミングが少しズレることがあります。ホルモン検査でエストロゲンとLHの値をきちんと確認しつつ、タイミング療法を行います。タイミング療法の回数の目安は4~5回。妊娠しない場合はステップアップも考慮しましょう。また、タイミング療法の合間にホルモン検査、子宮卵管造影・クラミジア抗体・精液検査など必要な検査をおこないます。はなこさんのように右の卵管が細い場合、卵管鏡下卵管形成術(FT)を行うのも有効です。一人目を体外受精で妊娠・出産されている場合は、体外受精を優先します。二人目不妊でもっとも問題になるのは、一人目よりも確実に年齢を重ねていること。一人目がタイミング療法であっても、年齢のリスクと妊娠率の高さを考慮し、早めに体外受精を検討するのもひとつです。 中村先生より まとめ 二人目不妊の特徴は、高齢化による妊娠率の低下。一人目が自然妊娠でも検査が必要な場合があります。タイミング療法で妊娠が難しい場合は、年齢を考慮し体外受精を検討しましょう。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 中村 嘉宏 先生(なかむらレディースクリニック) 大阪市立大学医学部卒業。 同大学院で山中伸弥教授(現CiRA所長)の指導で学位取得。大阪市立大学附属病院、住友病院、北摂総合病院産婦人科部長を経て、2013年より藤野婦人科クリニック勤務。2015年4月なかむらレディースクリニック開院。 ≫ なかむらレディースクリニック タイミングはバッチリなのに二人目不妊なのは、なぜ? 2017/1/27 中村 嘉宏(なかむらレディースクリニック 院長) 相談者:はなこさん(主婦 / 34歳) 二人目不妊です。だいたいタイミングは合っているのに、この1年半まったく妊娠しません。一人目は、同じ病院で2ヶ月目に妊娠しました。今回も一人目の時と同じように高プロラクチンのため、テルロンを1日1錠飲んでいます。主人の精液検査は全く異常ナシ。卵管造影で左は問題ないが右が少し細めとのこと。これも一人目の時と同じ結果です。しかし、今回は年齢のことと、良い卵を育てるためにクロミッドを毎月服用しています。いつも卵が2つできて、排卵も左右交互にくるようになりました。それでも妊娠しないので通気検査もしましたが、両方問題ないとのこと。今月は、HCG2回、左の卵2つを排卵、デュファストン10日間服用。タイミングはバッチリでした。3日間仲良くし期待していたのですが生理がきました。主人は前向きに「またがんばろ」って言っています。娘はもうすぐ3歳です。最近、私がため息をつくと「赤ちゃんできるよ」って言うんです。この子にきょうだいを作ってあげたい。来年で35歳ですが諦めたくない。他にステップアップするべきでしょうか? 二人目不妊で悩む方の特徴はありますか? 妊娠する力があっても加齢によって卵子が老化し、妊娠しにくくなっていることが大きな特徴です。当院にも二人目不妊の方は多くいらっしゃいます。妊娠・出産を経て授乳を終えると、二人目を考える頃には約2年経過します。35歳くらいで一人目を出産された方は、二人目を考えるとき、一人目よりもはるかに妊娠しにくくなっている場合があります。 二人目不妊に対して、先生はどのようなアプローチをされますか。 基本的には、自然やタイミング療法で一人目を妊娠・出産した方は、タイミング療法から始めます。エコーのみでタイミング療法を行う施設もありますが、タイミングが少しズレることがあります。ホルモン検査でエストロゲンとLHの値をきちんと確認しつつ、タイミング療法を行います。タイミング療法の回数の目安は4~5回。妊娠しない場合はステップアップも考慮しましょう。また、タイミング療法の合間にホルモン検査、子宮卵管造影・クラミジア抗体・精液検査など必要な検査をおこないます。はなこさんのように右の卵管が細い場合、卵管鏡下卵管形成術(FT)を行うのも有効です。一人目を体外受精で妊娠・出産されている場合は、体外受精を優先します。二人目不妊でもっとも問題になるのは、一人目よりも確実に年齢を重ねていること。一人目がタイミング療法であっても、年齢のリスクと妊娠率の高さを考慮し、早めに体外受精を検討するのもひとつです。 中村先生より まとめ 二人目不妊の特徴は、高齢化による妊娠率の低下。一人目が自然妊娠でも検査が必要な場合があります。タイミング療法で妊娠が難しい場合は、年齢を考慮し体外受精を検討しましょう。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 中村 嘉宏 先生(なかむらレディースクリニック) 大阪市立大学医学部卒業。 同大学院で山中伸弥教授(現CiRA所長)の指導で学位取得。大阪市立大学附属病院、住友病院、北摂総合病院産婦人科部長を経て、2013年より藤野婦人科クリニック勤務。2015年4月なかむらレディースクリニック開院。 ≫ なかむらレディースクリニック
2017.1.27
コラム 不妊治療
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一人目を出産後二度の稽留流産に悩んでいます。次に向けておすすめの漢方はありますか?
相談者 もんぷちさん(32歳)■ 3月に稽留流産し、その後月経を3回見送って、また、妊娠したのですが、またも稽留流産という診断を受けました。2回とも心拍確認ができなかったのです。一人出産していることと、血液検査で何も異常がないことから、今回も偶然だといわれました。しかし、私は納得できず悩んでいます。次の妊娠に向けて、良い漢方などありますか? 保温、甘いもの冷たいものの過食を避け、水分を摂り過ぎないようにしながら漢方を 手術で子宮のなかを妊娠前の状態に戻したときは、漢方でいう「瘀血」が発生し、産後と同じようにいろいろな不定愁訴がでやすいことを考えて服薬します。一般的には「芎帰調血飲」や「芎帰調血飲第一加減」を用います。 妊娠中や妊娠する可能性のある時期は「脾」の働きを害する食事を避ける 子宮内膜に着床した受精卵が成長してゆく時期には「脾」の働きが最も重要になります。稽留流産は3~6か月の時期に起こりやすいようですが、その時期には「心包」から「三焦」「脾」「胃」と、主に消化器官に関わる臓器が形成され、それらに関与する経脈が働きます。胎児の脾が形成されるころは、母親の脾も重要な働きを余儀なくされるのです。それが不調なときに「ツワリ」が症状として出やすくなります。しばしば流産する方は、受精卵の成長がうまくいっていないのですから、妊娠中や妊娠する可能性のある時期の活に気をつけてください。「脾」の働きを害する食事は、甘いもの、砂糖の過食です。とくに果糖、グラニュー糖は消化吸収する過程で、ビタミンB1、とカルシウムを大量に消耗し、免疫の低下や精神神経の安定に影響します。次に冷たいものの過食。「脾」は冷えと湿気を嫌います。 体の余分な水分を排出するためには、自然塩を適宜食べることも必要 妊娠中に過食して太る人もいますが、これもいけません。妊婦は痩体が良いのです。お産もそのほうが軽く済みます。水分を多く摂取した水太りもいけません。妊娠中の養生薬に「当帰散(とうきさん)」や「白朮散」がありますが、「当帰」という薬は肝や腎の血を増やし、「白朮」という薬は、体のなかの余分な水分を排出します。体の余分な水分を排出する、ハトムギ茶や、体を温める玄米を焙煎したサプリメントもあります。また、水分を排出するためには、自然塩を適宜食べることも必要です。稽留流産に限らず流産を防ぐためには、保温に気を付け、甘いもの冷たいものの過食を避ける。そして水分の摂り過ぎに注意をしてください。これを守らなければ、どんな良い薬を飲んでも効果はないといえます。 真鍋 立夫 先生 明治薬科大学卒。経絡治療学会理事・伝統鍼灸学会評議員・バイディジタル-O-リングテスト協会認定鍼灸師・日本漢方交流会前理事長・香川県鍼灸師会前会長。宝永七年より300年以上続く薬局の伝統を継承し、鍼灸と漢方を組み合わせて治療に取り組んでいる。 相談者 もんぷちさん(32歳)■ 3月に稽留流産し、その後月経を3回見送って、また、妊娠したのですが、またも稽留流産という診断を受けました。2回とも心拍確認ができなかったのです。一人出産していることと、血液検査で何も異常がないことから、今回も偶然だといわれました。しかし、私は納得できず悩んでいます。次の妊娠に向けて、良い漢方などありますか? 保温、甘いもの冷たいものの過食を避け、水分を摂り過ぎないようにしながら漢方を 手術で子宮のなかを妊娠前の状態に戻したときは、漢方でいう「瘀血」が発生し、産後と同じようにいろいろな不定愁訴がでやすいことを考えて服薬します。一般的には「芎帰調血飲」や「芎帰調血飲第一加減」を用います。 妊娠中や妊娠する可能性のある時期は「脾」の働きを害する食事を避ける 子宮内膜に着床した受精卵が成長してゆく時期には「脾」の働きが最も重要になります。稽留流産は3~6か月の時期に起こりやすいようですが、その時期には「心包」から「三焦」「脾」「胃」と、主に消化器官に関わる臓器が形成され、それらに関与する経脈が働きます。胎児の脾が形成されるころは、母親の脾も重要な働きを余儀なくされるのです。それが不調なときに「ツワリ」が症状として出やすくなります。しばしば流産する方は、受精卵の成長がうまくいっていないのですから、妊娠中や妊娠する可能性のある時期の活に気をつけてください。「脾」の働きを害する食事は、甘いもの、砂糖の過食です。とくに果糖、グラニュー糖は消化吸収する過程で、ビタミンB1、とカルシウムを大量に消耗し、免疫の低下や精神神経の安定に影響します。次に冷たいものの過食。「脾」は冷えと湿気を嫌います。 体の余分な水分を排出するためには、自然塩を適宜食べることも必要 妊娠中に過食して太る人もいますが、これもいけません。妊婦は痩体が良いのです。お産もそのほうが軽く済みます。水分を多く摂取した水太りもいけません。妊娠中の養生薬に「当帰散(とうきさん)」や「白朮散」がありますが、「当帰」という薬は肝や腎の血を増やし、「白朮」という薬は、体のなかの余分な水分を排出します。体の余分な水分を排出する、ハトムギ茶や、体を温める玄米を焙煎したサプリメントもあります。また、水分を排出するためには、自然塩を適宜食べることも必要です。稽留流産に限らず流産を防ぐためには、保温に気を付け、甘いもの冷たいものの過食を避ける。そして水分の摂り過ぎに注意をしてください。これを守らなければ、どんな良い薬を飲んでも効果はないといえます。 真鍋 立夫 先生 明治薬科大学卒。経絡治療学会理事・伝統鍼灸学会評議員・バイディジタル-O-リングテスト協会認定鍼灸師・日本漢方交流会前理事長・香川県鍼灸師会前会長。宝永七年より300年以上続く薬局の伝統を継承し、鍼灸と漢方を組み合わせて治療に取り組んでいる。
2013.6.25
コラム 不妊治療