-
無関心なのではなくて男性は不妊について知識不足
無関心なのではなくて男性は不妊について知識不足 女性の体のことはなかなか理解しづらいと思いますが、ワンステップ踏み込んで、知る機会をもってもらいたい。決して解決策はいらない、話し相手になることが「支える」ことのスタートだと思いますよ。 無関心なのではなくて男性は不妊について知識不足 「夫が意見を言わないからわからない」という声を奥さんからお聞きすることがありますが、多くは「言わない」のではなく「言えない」のではないでしょうか。また、「夫と話し合ったことがない」などの声も聞きますが、これらはおそらく、不妊治療についてベースとなる知識がないというか、男性はそういう環境にないのかもしれません。たとえば男性が友人や親とか親しい人と不妊について、話をする機会はほとんどないですからね。知識が乏しくて、奥さんと同等に話ができるレベル・状態にないので、話し合いにならないのではないでしょうか。 さらに、「夫の関心がうすい」というのも、不妊治療そのものがほとんど女性が受けるものですし、妊娠するのも女性、そして産むのも女性です。だから僕が思うに、本当に関心がうすい場合もあるかもしれませんが、どう不妊治療に関わっていいのかわからないのだと思います。奥さんと一緒に病院に来ても、もともとの知識が少ないのでどう対応していいかわからないと思いますよ。僕も男だから、そう思います。特に、「月経がどうの、排卵が…」なんて言われてもねぇ。実際には関心を持ちたくても持てないんじゃないかな。 知識を得るにつれ、遠慮が出る。だからこそ、支えてあげよう まず、ご主人はそういう知識を得る機会があまりないでしょうから、当院が行っている「初診前説明会」でもいいし、書籍でもいいと思うので、とりあえず一歩踏み出して、知る努力をしてほしい。知らないと、いくら協力したいと思っていても、話し相手になりたくても難しいでしょうから。ただ実際に知ったとしても、検査を受けるとか治療を受けるのは、ほとんどが女性。ご主人は精液検査くらい。結局は自分が痛みのある検査をしたり、毎日服薬するわけではないので、「僕ががんばる」ということにはならないし、奥さんに遠慮して、黙ってしまうっていうのもあるでしょうね。こと妊娠においてはデリケートな部分でもあり、夫婦ともに互いが遠慮したりして、もどかしい思いをしてしまうのかもしれません。 では、子どもが欲しいという共通の目的・目標があるところで、男性に何ができるかといえば、僕が考えるに「支える」という役目を認識したらいいんじゃないかな。「しんどい、つらい」という思いに耳を傾け、代わりに産むことはできないのだから、夫婦二人がこのような共通認識を持てたらいいと思います。だから「支える」ためにもきちんと知識を得てほしいですね。 絹谷 正之先生 愛媛大学医学部卒業。広島大学医学部産科婦人科学教室入局。その後、東京の山王病院リプロダクションセンターにて高度生殖補助医療研修、顕微授精を修得。1999年にはカナダ、アメリカにて高度生殖補助医療研修を行う。2000年、絹谷産婦人科副院長、2002年より院長に。広島県産婦人科医会常務理事。ISO9001やJISART(日本生殖補助医療標準化機関)の認定を2010年~2011年に取得。今春から、多目的室で「初診前説明会」を開始。 ■ あわせて読みたい ■ 周りの人に支えられ、励まされながら… 7年間の治療を通して強くなった夫婦の絆。 京野先生の男性不妊講座:EDは治療で改善できる 結婚後、子どもができず不妊治療を開始。現在は、1歳の男の子のパパになったYさんのお話 絹谷産婦人科 女性のための健康生活マガジン JINEKO 無関心なのではなくて男性は不妊について知識不足 女性の体のことはなかなか理解しづらいと思いますが、ワンステップ踏み込んで、知る機会をもってもらいたい。決して解決策はいらない、話し相手になることが「支える」ことのスタートだと思いますよ。 無関心なのではなくて男性は不妊について知識不足 「夫が意見を言わないからわからない」という声を奥さんからお聞きすることがありますが、多くは「言わない」のではなく「言えない」のではないでしょうか。また、「夫と話し合ったことがない」などの声も聞きますが、これらはおそらく、不妊治療についてベースとなる知識がないというか、男性はそういう環境にないのかもしれません。たとえば男性が友人や親とか親しい人と不妊について、話をする機会はほとんどないですからね。知識が乏しくて、奥さんと同等に話ができるレベル・状態にないので、話し合いにならないのではないでしょうか。 さらに、「夫の関心がうすい」というのも、不妊治療そのものがほとんど女性が受けるものですし、妊娠するのも女性、そして産むのも女性です。だから僕が思うに、本当に関心がうすい場合もあるかもしれませんが、どう不妊治療に関わっていいのかわからないのだと思います。奥さんと一緒に病院に来ても、もともとの知識が少ないのでどう対応していいかわからないと思いますよ。僕も男だから、そう思います。特に、「月経がどうの、排卵が…」なんて言われてもねぇ。実際には関心を持ちたくても持てないんじゃないかな。 知識を得るにつれ、遠慮が出る。だからこそ、支えてあげよう まず、ご主人はそういう知識を得る機会があまりないでしょうから、当院が行っている「初診前説明会」でもいいし、書籍でもいいと思うので、とりあえず一歩踏み出して、知る努力をしてほしい。知らないと、いくら協力したいと思っていても、話し相手になりたくても難しいでしょうから。ただ実際に知ったとしても、検査を受けるとか治療を受けるのは、ほとんどが女性。ご主人は精液検査くらい。結局は自分が痛みのある検査をしたり、毎日服薬するわけではないので、「僕ががんばる」ということにはならないし、奥さんに遠慮して、黙ってしまうっていうのもあるでしょうね。こと妊娠においてはデリケートな部分でもあり、夫婦ともに互いが遠慮したりして、もどかしい思いをしてしまうのかもしれません。 では、子どもが欲しいという共通の目的・目標があるところで、男性に何ができるかといえば、僕が考えるに「支える」という役目を認識したらいいんじゃないかな。「しんどい、つらい」という思いに耳を傾け、代わりに産むことはできないのだから、夫婦二人がこのような共通認識を持てたらいいと思います。だから「支える」ためにもきちんと知識を得てほしいですね。 絹谷 正之先生 愛媛大学医学部卒業。広島大学医学部産科婦人科学教室入局。その後、東京の山王病院リプロダクションセンターにて高度生殖補助医療研修、顕微授精を修得。1999年にはカナダ、アメリカにて高度生殖補助医療研修を行う。2000年、絹谷産婦人科副院長、2002年より院長に。広島県産婦人科医会常務理事。ISO9001やJISART(日本生殖補助医療標準化機関)の認定を2010年~2011年に取得。今春から、多目的室で「初診前説明会」を開始。 ■ あわせて読みたい ■ 周りの人に支えられ、励まされながら… 7年間の治療を通して強くなった夫婦の絆。 京野先生の男性不妊講座:EDは治療で改善できる 結婚後、子どもができず不妊治療を開始。現在は、1歳の男の子のパパになったYさんのお話 絹谷産婦人科 女性のための健康生活マガジン JINEKO
2015.2.26
コラム 不妊治療
-
海外レポート:生殖補助医療の現状【スペイン編】
海外レポート:生殖補助医療の現状【スペイン編】 法整備がなかなか進まない日本を飛び出し、海外で治療する人も出てきた卵子提供。金銭や治療トラブルも多いと言われるのが現状です。そこで、法整備が進んでいるスペインのクリニック「Clinica EUGIN」に、卵子提供の実態を取材してみました。 まずは、クリニックの概要を教えてください 当院では、タイミング法、人工受精、体外受精など、スペインで法律によって許可されている全ての治療を行っています。中でも、当院の名前が世界に知られることとなったのは、HIVの患者様の精液を洗浄し、HIVウイルスを完全に除去した後、体外受精に成功したという、その確かな技術です。 卵子提供を伴う治療においても、ヨーロッパ全体で行われている治療の約10%を当院が担っており、とても国際的なクリニックです。スタッフは全部で200人以上、各言語を話すコーディネーターや専門のカウンセリングスタッフもいて、心理的なケアも万全。もちろん日本語が話せるコーディネーターもいます。 卵子を提供するドナーについて、どんな方々が登録されているのか教えてください さまざまな人種や国籍のドナーが登録していますが、スペインの法律では、卵子提供者は完全に匿名で自発的そして利他的であり、身体的特徴を最優先させたマッチングが義務付けられています。クリニックから卵子提供を受ける患者様にお教えできるのはドナーの年齢と血液型のみ。写真をお見せしたり、国籍をお教えすることも、禁じられています。 医学的には、胚移植を受ける女性と卵子を提供するドナーとの血液型が違ってもまったく問題ないのですが、日本をはじめとするいくつかの国では、血液型の一致をご希望される方が多く、その場合は、身体的特徴を最優先したうえで、同じ血液型のドナーを探すようにしています。 しかし、国籍や人種を指定してしまうと、逆に条件を狭めてしまうことになります。同じ日本人でもいろいろなお顔だち、身体的特徴がありますので、国籍や人種のしばりをなくし、お顔立ちや目の雰囲気、肌の色、髪の色、身長、体重などといった身体的特徴が純粋に似ている方、という探し方のほうが、より良いマッチングができると考えています。 もちろん、アジア系の患者様の場合には、アジア系やその近隣諸国からのマッチングが多くなります。ただし、たとえばアメリカや南米出身の方でも、ご先祖にアジア出身の方がいらっしゃって、患者様と身体的特徴がよく似ている、という場合は、そちらのほうをマッチングする場合があります。 日本から治療に行く場合のスケジュールは? 「キーワードで検索して見つけました」という方が多く、WEBサイトのコンタクトフォームからお問い合わせいただくのが最も多いファーストコンタクトの方法です。その後、何度かやりとりをして実際に卵子提供を受けるということになった場合、診察は初診と胚移植時の2回だけ。初診はスカイプを使っても行うことが可能です。スカイプでの初診をご希望される場合には、事前に必要な書類にすべてご記入いただき、郵送を。必要書類が揃った時点で、スカイプを設定し、初診を行います。その後、実際に来院していただき、ご主人の精子のサンプルをご提出後、胚移植を実施。凍結卵子を使用する場合など、もろもろ条件をクリアする必要はありますが、最短だと日本からの渡航は1回、滞在期間は3~5日間ぐらいですむことになります。 最後に、日本のみなさんにメッセージをください やはり、医師としてアドバイスしたいのは、卵子提供が必要になってしまう前に、妊娠できる環境を整えられること。もう少し早い段階で、妊娠について考えられることが当然ながら一番だと思います。 そのうえで、卵子提供がもしも必要になってしまった場合には、実績のあるクリニック、信頼できる専門の医師に相談を。クリニック選びは、法律が整備されている国か、実績のある卵子提供プログラムを備えているかなど、情報収集をしっかりされることが重要です。治療中に大きな心理的負担を感じる方もいらっしゃいますので、専門のカウンセラーがいるなども、いいクリニックの条件かと思います。 卵子提供を受けたからといって、特別なリスクが上がるということではありませんが、どうしても患者様の平均年齢が高くなりがちなので、その分、妊娠のリスクが高くなります。健康的な生活を送って、健康な状態でいらっしゃるというのも、大切なポイントだと思います。 Dr. Amelia Rodriguez 2000年にセビリア大学医学部を卒業後、臨床研修期間を経て2006年より生殖補助医療専門医として勤務。2010年よりEUGINクリニックの生殖補助医療専門医となり、スペイン語、英語、フランス語での診察を担当。現在は、当院医療責任者に就任。 Clinica EUGIN 293-295 - Travessera de les Corts, 322 (08029) Barcelona Tel:+34 93 322 11 22 mail(日本語):infojp@eugin.es HP:http://www.eugin.jp/ 海外レポート:生殖補助医療の現状【スペイン編】 法整備がなかなか進まない日本を飛び出し、海外で治療する人も出てきた卵子提供。金銭や治療トラブルも多いと言われるのが現状です。そこで、法整備が進んでいるスペインのクリニック「Clinica EUGIN」に、卵子提供の実態を取材してみました。 まずは、クリニックの概要を教えてください 当院では、タイミング法、人工受精、体外受精など、スペインで法律によって許可されている全ての治療を行っています。中でも、当院の名前が世界に知られることとなったのは、HIVの患者様の精液を洗浄し、HIVウイルスを完全に除去した後、体外受精に成功したという、その確かな技術です。 卵子提供を伴う治療においても、ヨーロッパ全体で行われている治療の約10%を当院が担っており、とても国際的なクリニックです。スタッフは全部で200人以上、各言語を話すコーディネーターや専門のカウンセリングスタッフもいて、心理的なケアも万全。もちろん日本語が話せるコーディネーターもいます。 卵子を提供するドナーについて、どんな方々が登録されているのか教えてください さまざまな人種や国籍のドナーが登録していますが、スペインの法律では、卵子提供者は完全に匿名で自発的そして利他的であり、身体的特徴を最優先させたマッチングが義務付けられています。クリニックから卵子提供を受ける患者様にお教えできるのはドナーの年齢と血液型のみ。写真をお見せしたり、国籍をお教えすることも、禁じられています。 医学的には、胚移植を受ける女性と卵子を提供するドナーとの血液型が違ってもまったく問題ないのですが、日本をはじめとするいくつかの国では、血液型の一致をご希望される方が多く、その場合は、身体的特徴を最優先したうえで、同じ血液型のドナーを探すようにしています。 しかし、国籍や人種を指定してしまうと、逆に条件を狭めてしまうことになります。同じ日本人でもいろいろなお顔だち、身体的特徴がありますので、国籍や人種のしばりをなくし、お顔立ちや目の雰囲気、肌の色、髪の色、身長、体重などといった身体的特徴が純粋に似ている方、という探し方のほうが、より良いマッチングができると考えています。 もちろん、アジア系の患者様の場合には、アジア系やその近隣諸国からのマッチングが多くなります。ただし、たとえばアメリカや南米出身の方でも、ご先祖にアジア出身の方がいらっしゃって、患者様と身体的特徴がよく似ている、という場合は、そちらのほうをマッチングする場合があります。 日本から治療に行く場合のスケジュールは? 「キーワードで検索して見つけました」という方が多く、WEBサイトのコンタクトフォームからお問い合わせいただくのが最も多いファーストコンタクトの方法です。その後、何度かやりとりをして実際に卵子提供を受けるということになった場合、診察は初診と胚移植時の2回だけ。初診はスカイプを使っても行うことが可能です。スカイプでの初診をご希望される場合には、事前に必要な書類にすべてご記入いただき、郵送を。必要書類が揃った時点で、スカイプを設定し、初診を行います。その後、実際に来院していただき、ご主人の精子のサンプルをご提出後、胚移植を実施。凍結卵子を使用する場合など、もろもろ条件をクリアする必要はありますが、最短だと日本からの渡航は1回、滞在期間は3~5日間ぐらいですむことになります。 最後に、日本のみなさんにメッセージをください やはり、医師としてアドバイスしたいのは、卵子提供が必要になってしまう前に、妊娠できる環境を整えられること。もう少し早い段階で、妊娠について考えられることが当然ながら一番だと思います。 そのうえで、卵子提供がもしも必要になってしまった場合には、実績のあるクリニック、信頼できる専門の医師に相談を。クリニック選びは、法律が整備されている国か、実績のある卵子提供プログラムを備えているかなど、情報収集をしっかりされることが重要です。治療中に大きな心理的負担を感じる方もいらっしゃいますので、専門のカウンセラーがいるなども、いいクリニックの条件かと思います。 卵子提供を受けたからといって、特別なリスクが上がるということではありませんが、どうしても患者様の平均年齢が高くなりがちなので、その分、妊娠のリスクが高くなります。健康的な生活を送って、健康な状態でいらっしゃるというのも、大切なポイントだと思います。 Dr. Amelia Rodriguez 2000年にセビリア大学医学部を卒業後、臨床研修期間を経て2006年より生殖補助医療専門医として勤務。2010年よりEUGINクリニックの生殖補助医療専門医となり、スペイン語、英語、フランス語での診察を担当。現在は、当院医療責任者に就任。 Clinica EUGIN 293-295 - Travessera de les Corts, 322 (08029) Barcelona Tel:+34 93 322 11 22 mail(日本語):infojp@eugin.es HP:http://www.eugin.jp/
2015.2.19
コラム 不妊治療
-
不妊治療と卵子提供、医師が語るその現状と課題(2)
セントマザー産婦人科医院の田中温先生とセント・ルカ産婦人科の宇津宮隆史先生に卵子提供のあり方や、進むべき方向性について、引き続き白熱した議論を交わしていただきました。
2015.2.18
コラム 不妊治療
-
不妊治療と卵子提供、医師が語るその現状と課題(1)
自身の卵子では妊娠に至らないという状況に直面した時に、卵子提供という選択肢はあるのか、そして、医療現場ではどのように考えられているのか、セントマザー産婦人科医院の田中温先生と、セント・ルカ産婦人科の宇津宮隆史先生にお話をお聞きしました。
2015.2.18
コラム 不妊治療
-
夫が乏精子症で「補中益気湯」を服用中。ほかにおすすめの漢方薬は?疲れやすい私の対策法は?
相談者 ぬーつち さん(30歳) 【不妊の原因:男性不妊】 ○なんだか疲れやすい ○朝、起きることができない ○冷え性である ○月経前になると乳房や下腹部が張る ○イライラをため込みやすい ○気分によって食欲にムラがある ○めまいや立ちくらみがよくある ○目がかすんだり疲れる ○顔や唇の色が黒ずんでいる ○顔にシミやクマが出やすい ○肩こりや頭痛が慢性的にある ○レバーのような経血の塊がでる ○手足がいつも冷たい ○とくにおなかや下半身が冷える ○体が重く、いつもだるい ○むくみやすい ○口の中がよく粘つく ○いつも眠い 男性不妊の改善でさらなる効果を望むなら「鹿茸」や「海馬」など動物生薬の漢方処方を 男性も女性も脳にある視床下部から命令を受けて精巣や卵巣が働きます。その働きは複雑ですが、男性不妊の場合9割ほどが精子に問題がある「造精機能障害(乏精子症・精子無力症など)」といわれます。 漢方の五行説で考えると、「精(性)」に関わるものは「腎(腎臓ではなく内分泌や生殖などを合せた広い概念)」と結びつきが強く、「腎」は「肺」や「脾」から強く影響を受けます。 自然界に例えると、「脾」は土壌、「腎」は種、「肺」は大気です。服用中の「補中益気湯」は精子機能を改善する作用がありますが、「脾( 土壌)」の処方です。より直接的に改善を望む場合は、「腎( 種)」を補う処方を検討します。ご主人の体質を検討する必要がありますが、「八味地黄丸」、「杞菊地黄丸」、「瀉火補腎丸」などの処方があります。さらなる効果を期待する場合、「鹿茸」や「海か い馬ば」など動物生薬の漢方処方を使います。 造精機能障害は虚弱体質だけでなくがっちりタイプにも 造精機能障害は体質的に虚弱の方が大半と思われがちですが、がっちりとしたタイプにも見られます。がっちりタイプは補うばかりでなく不要なものを捨てる処方が大切。そのほかのタイプもあり、それぞれに処方は違います。 ○がっちりタイプ 仕事はバリバリこなす。こってり・味の濃い食事を好む。最近イライラすることが多い。寝るのが遅く朝は疲れが取れていない。 ○のぼせ火照りタイプ 口が渇くが飲み物をそれほど欲しくない。手足が火照り、便秘気味。 ○体力低下で疲れやすいタイプ 無気力、息切れ、動悸などがたまにある。体が弱いタイプで「疲れた!」が口癖 男性不妊の場合は奥様のサポートが大切 男性不妊の場合、最初奥様と来店されたご主人のほとんどが「実感が持てない」とつぶやきます。女性は月経周期・基礎体温や月経痛などで、ある程度は体調を察知できますが、男性は精子の状態を目で見て判別はできないので実感が持てないのです。状況を改善するには、ご主人が前向きになって奥様と共に食生活・睡眠・煙草などの生活習慣の改善を継続することが大切です。地道に努力した結果、乏精子症と診断されても数値が改善する方もいます。 奥様は体質チェックから典型的な「虚証」と判断します。漢方での体質改善をおすすめします。ご主人と一緒に相談されるとよいかと思います。 福田 優基先生 東大阪市で開業して30数年になる福田漢方薬局の二代目。大阪薬科大学を卒業し高知漢法堂薬局を経て、福田漢方薬局で健康相談を担当。自身の経験から不妊症にも力を入れる。日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー。 ■ あわせて読みたい ■ 夫の精子の数は2300万/ml。乏精子症と診断されたけど、疑問が残ります 乏精子症で2人目不妊。採卵しても受精できず...もう諦めるべきですか? TESEをすすめられています。また、クロミフェンは飲んだほうがいいですか? 女性のための健康生活マガジン JINEKO 相談者 ぬーつち さん(30歳) 【不妊の原因:男性不妊】 ○なんだか疲れやすい ○朝、起きることができない ○冷え性である ○月経前になると乳房や下腹部が張る ○イライラをため込みやすい ○気分によって食欲にムラがある ○めまいや立ちくらみがよくある ○目がかすんだり疲れる ○顔や唇の色が黒ずんでいる ○顔にシミやクマが出やすい ○肩こりや頭痛が慢性的にある ○レバーのような経血の塊がでる ○手足がいつも冷たい ○とくにおなかや下半身が冷える ○体が重く、いつもだるい ○むくみやすい ○口の中がよく粘つく ○いつも眠い 男性不妊の改善でさらなる効果を望むなら「鹿茸」や「海馬」など動物生薬の漢方処方を 男性も女性も脳にある視床下部から命令を受けて精巣や卵巣が働きます。その働きは複雑ですが、男性不妊の場合9割ほどが精子に問題がある「造精機能障害(乏精子症・精子無力症など)」といわれます。 漢方の五行説で考えると、「精(性)」に関わるものは「腎(腎臓ではなく内分泌や生殖などを合せた広い概念)」と結びつきが強く、「腎」は「肺」や「脾」から強く影響を受けます。 自然界に例えると、「脾」は土壌、「腎」は種、「肺」は大気です。服用中の「補中益気湯」は精子機能を改善する作用がありますが、「脾( 土壌)」の処方です。より直接的に改善を望む場合は、「腎( 種)」を補う処方を検討します。ご主人の体質を検討する必要がありますが、「八味地黄丸」、「杞菊地黄丸」、「瀉火補腎丸」などの処方があります。さらなる効果を期待する場合、「鹿茸」や「海か い馬ば」など動物生薬の漢方処方を使います。 造精機能障害は虚弱体質だけでなくがっちりタイプにも 造精機能障害は体質的に虚弱の方が大半と思われがちですが、がっちりとしたタイプにも見られます。がっちりタイプは補うばかりでなく不要なものを捨てる処方が大切。そのほかのタイプもあり、それぞれに処方は違います。 ○がっちりタイプ 仕事はバリバリこなす。こってり・味の濃い食事を好む。最近イライラすることが多い。寝るのが遅く朝は疲れが取れていない。 ○のぼせ火照りタイプ 口が渇くが飲み物をそれほど欲しくない。手足が火照り、便秘気味。 ○体力低下で疲れやすいタイプ 無気力、息切れ、動悸などがたまにある。体が弱いタイプで「疲れた!」が口癖 男性不妊の場合は奥様のサポートが大切 男性不妊の場合、最初奥様と来店されたご主人のほとんどが「実感が持てない」とつぶやきます。女性は月経周期・基礎体温や月経痛などで、ある程度は体調を察知できますが、男性は精子の状態を目で見て判別はできないので実感が持てないのです。状況を改善するには、ご主人が前向きになって奥様と共に食生活・睡眠・煙草などの生活習慣の改善を継続することが大切です。地道に努力した結果、乏精子症と診断されても数値が改善する方もいます。 奥様は体質チェックから典型的な「虚証」と判断します。漢方での体質改善をおすすめします。ご主人と一緒に相談されるとよいかと思います。 福田 優基先生 東大阪市で開業して30数年になる福田漢方薬局の二代目。大阪薬科大学を卒業し高知漢法堂薬局を経て、福田漢方薬局で健康相談を担当。自身の経験から不妊症にも力を入れる。日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー。 ■ あわせて読みたい ■ 夫の精子の数は2300万/ml。乏精子症と診断されたけど、疑問が残ります 乏精子症で2人目不妊。採卵しても受精できず...もう諦めるべきですか? TESEをすすめられています。また、クロミフェンは飲んだほうがいいですか? 女性のための健康生活マガジン JINEKO
2015.1.29
コラム 不妊治療
-
抗精子抗体といわれ夫は精子無力症。以前も試したけどおすすめの漢方薬があれば再び試したい
相談者 リンゴキティ さん(34歳) 【不妊の原因:男性不妊・抗精子抗体】 ○冷え性である ○月経前になると乳房や下腹部が張る ○イライラをため込みやすい ○抜け毛や白髪が多くなってきた ○爪がもろく割れやすい ○めまいや立ちくらみがよくある ○肩こりや頭痛が慢性的にある ○レバーのような経血の塊が出る ○便が黒ずんでいることがある ○頬が赤っぽい ○肌が乾燥しやすい ○のどが乾きやすい ○手足がいつも冷たい ○とくにおなかや下半身が冷える ○むくみやすい ○痰が出やすい 漢方薬の効果は6ヶ月くらいから現れる場合が多いのであせらずに続けて 抗精子抗体の存在は自然妊娠するうえで問題になります。ご主人さまの精子無力症では、SMI(SpermMotilite Index)精子自動性指数が低くなりますので自然妊娠しにくくなります。すでに、漢方薬を試されたようですので、その役割については説明を受けていると思います。免疫性不妊(抗精子抗体)に関して、直接改善する漢方薬はありません。 漢方の補腎薬が年齢からくる卵子や精子の老化や機能低下を予防改善し頸管粘液を良くする 漢方薬は妊娠しやすくする条件を高めるためのひとつの方法です。漢方薬の補腎薬は、年齢からくる卵子や精子の老化や機能低下を予防したり改善したりします。また、頸管粘液の質や分泌を高める効果も期待できます。自覚症状では頸管粘液の量が増え質の変化がおこり、その結果、自然妊娠されたケースもありますので、あせらずに自分に合った治療方法を専門家と相談しながら見つけてください。 これらの検査結果はそのときの状況によってかなり大きく変化するとされます。今までプラスだったのにマイナスになったり、数値が急激に下がったりということもあります。また抗精子抗体があっても絶対に赤ちゃんを授からないということもありません。変動しやすい因子であることを覚えておくといいのではないでしょうか。 また、精液検査において前進する精子が32%以下の場合は精子無力症と診断されますが、中医学では「腎虚」または「気虚」と考えられます。治療効果が比較的出やすいケースが多いです。「補中益気湯」などの補気薬と「亀鹿二仙丸」などの補腎薬を組み合わせる方法が一般的です。仕事のストレスや慢性疲労が蓄積していると精子の状態もよくありません。夜は12時までに就寝し、7時間以上の睡眠時間を取るように改善してみてください。 生殖機能にもいい影響を与える天然発酵食品をとり「杞菊地黄丸」などの補腎薬を服用する 食生活ではミネラルの多い魚介類をはじめ、天然発酵食品「味噌」「醤油」などにもこだわりを持ってください。天然発酵食品には中医学でいう「気」が多く含まれています。体の新陳代謝を活発にするだけではなく生殖機能にもいい影響を与えてくれます。 漢方薬の効果に関しては6か月くらいから現れてくる場合が多いです。よく用いられる漢方薬に「亀鹿二仙丸」、「杞菊地黄丸」などの補腎薬があります。一度試してみてはいかがでしょう。 西野 裕一先生 薬剤師。鍼灸師。北里大学薬学部卒。東京医療福祉専門学校鍼灸科卒。中国漢方普及協会会長。日本中医学会評議員。漢方・鍼灸をはじめとする中医学の有用性を啓蒙・普及させる活動に尽力。著書多数。 ■ あわせて読みたい ■ 抗精子凝集抗体です。人工授精を行わず、すぐに体外受精をすすめられました 流産を3回経験。抗精子抗体が原因という可能性はゼロですか? 抗精子抗体の検査時期と遺伝について 抗精子抗体検査|不妊検査 誠心堂薬局 女性のための健康生活マガジン JINEKO 相談者 リンゴキティ さん(34歳) 【不妊の原因:男性不妊・抗精子抗体】 ○冷え性である ○月経前になると乳房や下腹部が張る ○イライラをため込みやすい ○抜け毛や白髪が多くなってきた ○爪がもろく割れやすい ○めまいや立ちくらみがよくある ○肩こりや頭痛が慢性的にある ○レバーのような経血の塊が出る ○便が黒ずんでいることがある ○頬が赤っぽい ○肌が乾燥しやすい ○のどが乾きやすい ○手足がいつも冷たい ○とくにおなかや下半身が冷える ○むくみやすい ○痰が出やすい 漢方薬の効果は6ヶ月くらいから現れる場合が多いのであせらずに続けて 抗精子抗体の存在は自然妊娠するうえで問題になります。ご主人さまの精子無力症では、SMI(SpermMotilite Index)精子自動性指数が低くなりますので自然妊娠しにくくなります。すでに、漢方薬を試されたようですので、その役割については説明を受けていると思います。免疫性不妊(抗精子抗体)に関して、直接改善する漢方薬はありません。 漢方の補腎薬が年齢からくる卵子や精子の老化や機能低下を予防改善し頸管粘液を良くする 漢方薬は妊娠しやすくする条件を高めるためのひとつの方法です。漢方薬の補腎薬は、年齢からくる卵子や精子の老化や機能低下を予防したり改善したりします。また、頸管粘液の質や分泌を高める効果も期待できます。自覚症状では頸管粘液の量が増え質の変化がおこり、その結果、自然妊娠されたケースもありますので、あせらずに自分に合った治療方法を専門家と相談しながら見つけてください。 これらの検査結果はそのときの状況によってかなり大きく変化するとされます。今までプラスだったのにマイナスになったり、数値が急激に下がったりということもあります。また抗精子抗体があっても絶対に赤ちゃんを授からないということもありません。変動しやすい因子であることを覚えておくといいのではないでしょうか。 また、精液検査において前進する精子が32%以下の場合は精子無力症と診断されますが、中医学では「腎虚」または「気虚」と考えられます。治療効果が比較的出やすいケースが多いです。「補中益気湯」などの補気薬と「亀鹿二仙丸」などの補腎薬を組み合わせる方法が一般的です。仕事のストレスや慢性疲労が蓄積していると精子の状態もよくありません。夜は12時までに就寝し、7時間以上の睡眠時間を取るように改善してみてください。 生殖機能にもいい影響を与える天然発酵食品をとり「杞菊地黄丸」などの補腎薬を服用する 食生活ではミネラルの多い魚介類をはじめ、天然発酵食品「味噌」「醤油」などにもこだわりを持ってください。天然発酵食品には中医学でいう「気」が多く含まれています。体の新陳代謝を活発にするだけではなく生殖機能にもいい影響を与えてくれます。 漢方薬の効果に関しては6か月くらいから現れてくる場合が多いです。よく用いられる漢方薬に「亀鹿二仙丸」、「杞菊地黄丸」などの補腎薬があります。一度試してみてはいかがでしょう。 西野 裕一先生 薬剤師。鍼灸師。北里大学薬学部卒。東京医療福祉専門学校鍼灸科卒。中国漢方普及協会会長。日本中医学会評議員。漢方・鍼灸をはじめとする中医学の有用性を啓蒙・普及させる活動に尽力。著書多数。 ■ あわせて読みたい ■ 抗精子凝集抗体です。人工授精を行わず、すぐに体外受精をすすめられました 流産を3回経験。抗精子抗体が原因という可能性はゼロですか? 抗精子抗体の検査時期と遺伝について 抗精子抗体検査|不妊検査 誠心堂薬局 女性のための健康生活マガジン JINEKO
2015.1.29
コラム 不妊治療
-
卵巣年齢を若々しくするために積極的にとったほうがいい漢方薬や食品は?
相談者 み さん(41歳) 【不妊の原因:卵巣嚢腫】 ○冷え性である ○ゲップやおならが出やすい ○目がかすんだり疲れる ○肩こりや頭痛が慢性的にある ○レバーのような経血の塊が出る ○のぼせやほてりがある ○寝不足の日が多い ○とくにおなかや下半身が冷える ○太りやすい 良質な栄養摂取や漢方薬、鍼灸などを利用し生活習慣や養生対策で卵巣の質を高める 最近、卵巣年齢に関心を持つ女性が大変増えています。医療機関でもAMHなどの血液検査を行って卵巣予備能をチェックするようになりました。卵巣年齢は、ご自身の卵巣のなかにある卵胞の数と質で決まります。残念ながら、数は生まれたときに決まっていますので増やすことはできません。卵巣の質を高める生活習慣や養生対策を取るしかありません。卵巣の質をつくる過程は約150日程度かかります。その間、卵巣の動脈に流れる血液の栄養をもらいながら1次卵胞から2次卵胞へと成長していきます。ポイントは骨盤内血流改善と良質な栄養摂取です。 コレステロールは卵巣を元気にする栄養素良質の脂質を積極的にとることが大切 卵巣を元気にする栄養素のおすすめは、女性ホルモンの材料となるコレステロールです。脂肪の多い青魚に含まれるEPAやDHAなどの良質の脂質を積極的に摂りましょう。しそ油、えごま油、亜麻仁油などのαリノレン酸は酸化しやすいので、加熱調理はひかえたほうがいいでしょう。 骨盤内血流を改善するためには、定期的な運動がおすすめです。1日1時間、ゆっくり呼吸をしながら少し汗ばむ程度の散歩をしましょう。よく通勤時間を散歩時間と考える方もいますが、浅い呼吸での運動や交感神経を刺激する作用からすると、適していないと思えます。帰宅後に30分ほど、ゆっくり散歩する習慣を身につけましょう。 時間がない方や運動が苦手な方におすすめなのが、「活血薬」を代表とする漢方薬です。漢方薬のメリットはいつでも毎日できることです。食事もそうですが毎日繰り返し行うことが、血流を改善し体質を立て直すために必要です。また、子宮は前方が膀胱、後方が直腸に接しているため、飲食物の温度も重要です。基本的に、自分の体温より冷たい食べ物は避けてください。 骨盤内血流を改善するために定期的な運動を漢方薬を利用すれば運動の補助になる 漢方薬は体質や「瘀血」の蓄積具合によって異なります。冷え性が強い方には、「温経湯」、貧血気味の方には「?帰調血飲」、ストレスの多い方には「血府逐瘀湯」などがあります。自分の体質を専門家にもみてもらってから服用してください。 即効性を期待する場合には鍼灸を利用することをおすすめします。東洋医学全般に時間がかかるイメージがありますが、そのなかにあって鍼灸は即効性が期待できる治療方法です。骨盤に血流を集める治療法に「三焦調整法」があります。この方法は骨盤の血流を改善するために考えられたものです。ストローの口を片方ふさいでしまうとストロー内の水分は閉じ込められたままですね。体も同じで、ストレスや仕事の負担がかかると頭部の充血が起こるため、骨盤への血流が抑えられてしまいます。また、胃腸や肝臓の血流が悪い方も同じです。さらに、冷え性や腰痛を持病で持つ方は、血流が悪くなります。「三焦調整法」は全身の調整を行いながら骨盤全体の血流を改善する方法です。1クールが12回で毎週1回のペースで治療します。詳しくは、「三焦調整法」を実践なさっている鍼灸師の先生にご相談ください。 西野 裕一先生 薬剤師。鍼灸師。北里大学薬学部卒。東京医療福祉専門学校鍼灸科卒。中国漢方普及協会会長。日本中医学会評議員。漢方・鍼灸をはじめとする中医学の有用性を啓蒙・普及させる活動に尽力。著書多数。 相談者 み さん(41歳) 【不妊の原因:卵巣嚢腫】 ○冷え性である ○ゲップやおならが出やすい ○目がかすんだり疲れる ○肩こりや頭痛が慢性的にある ○レバーのような経血の塊が出る ○のぼせやほてりがある ○寝不足の日が多い ○とくにおなかや下半身が冷える ○太りやすい 良質な栄養摂取や漢方薬、鍼灸などを利用し生活習慣や養生対策で卵巣の質を高める 最近、卵巣年齢に関心を持つ女性が大変増えています。医療機関でもAMHなどの血液検査を行って卵巣予備能をチェックするようになりました。卵巣年齢は、ご自身の卵巣のなかにある卵胞の数と質で決まります。残念ながら、数は生まれたときに決まっていますので増やすことはできません。卵巣の質を高める生活習慣や養生対策を取るしかありません。卵巣の質をつくる過程は約150日程度かかります。その間、卵巣の動脈に流れる血液の栄養をもらいながら1次卵胞から2次卵胞へと成長していきます。ポイントは骨盤内血流改善と良質な栄養摂取です。 コレステロールは卵巣を元気にする栄養素良質の脂質を積極的にとることが大切 卵巣を元気にする栄養素のおすすめは、女性ホルモンの材料となるコレステロールです。脂肪の多い青魚に含まれるEPAやDHAなどの良質の脂質を積極的に摂りましょう。しそ油、えごま油、亜麻仁油などのαリノレン酸は酸化しやすいので、加熱調理はひかえたほうがいいでしょう。 骨盤内血流を改善するためには、定期的な運動がおすすめです。1日1時間、ゆっくり呼吸をしながら少し汗ばむ程度の散歩をしましょう。よく通勤時間を散歩時間と考える方もいますが、浅い呼吸での運動や交感神経を刺激する作用からすると、適していないと思えます。帰宅後に30分ほど、ゆっくり散歩する習慣を身につけましょう。 時間がない方や運動が苦手な方におすすめなのが、「活血薬」を代表とする漢方薬です。漢方薬のメリットはいつでも毎日できることです。食事もそうですが毎日繰り返し行うことが、血流を改善し体質を立て直すために必要です。また、子宮は前方が膀胱、後方が直腸に接しているため、飲食物の温度も重要です。基本的に、自分の体温より冷たい食べ物は避けてください。 骨盤内血流を改善するために定期的な運動を漢方薬を利用すれば運動の補助になる 漢方薬は体質や「瘀血」の蓄積具合によって異なります。冷え性が強い方には、「温経湯」、貧血気味の方には「?帰調血飲」、ストレスの多い方には「血府逐瘀湯」などがあります。自分の体質を専門家にもみてもらってから服用してください。 即効性を期待する場合には鍼灸を利用することをおすすめします。東洋医学全般に時間がかかるイメージがありますが、そのなかにあって鍼灸は即効性が期待できる治療方法です。骨盤に血流を集める治療法に「三焦調整法」があります。この方法は骨盤の血流を改善するために考えられたものです。ストローの口を片方ふさいでしまうとストロー内の水分は閉じ込められたままですね。体も同じで、ストレスや仕事の負担がかかると頭部の充血が起こるため、骨盤への血流が抑えられてしまいます。また、胃腸や肝臓の血流が悪い方も同じです。さらに、冷え性や腰痛を持病で持つ方は、血流が悪くなります。「三焦調整法」は全身の調整を行いながら骨盤全体の血流を改善する方法です。1クールが12回で毎週1回のペースで治療します。詳しくは、「三焦調整法」を実践なさっている鍼灸師の先生にご相談ください。 西野 裕一先生 薬剤師。鍼灸師。北里大学薬学部卒。東京医療福祉専門学校鍼灸科卒。中国漢方普及協会会長。日本中医学会評議員。漢方・鍼灸をはじめとする中医学の有用性を啓蒙・普及させる活動に尽力。著書多数。
2015.1.29
コラム 不妊治療
-
検査の結果は潜在性高プロラクチン。大麦のお茶や麦芽は効果があるの?
相談者 ハレノヒ さん(39歳) 【不妊の原因:男性不妊・高プロラクチン】 ○なんだか疲れやすい ○カゼをひきやすい ○冷え性である ○月経前になると乳房や下腹部が張る ○ゲップやおならが出やすい ○イライラをため込みやすい ○血色が悪い ○抜け毛や白髪が多くなってきた ○めまいや立ちくらみがよくある ○顔にシミやクマが出やすい ○肩こりや頭痛が慢性的にある ○肌が乾燥しやすい ○のどが乾きやすい ○寒がりである ○手足がいつも冷たい ○とくにおなかや下半身が冷える ○むくみやすい ○痰が出やすい 早く改善することを望む場合は大麦のお茶よりも「麦芽」のほうが効果的 「麦芽」は「高プロラクチン血症」に大変おすすめです。実際に、イライラしやすい、月経前の胸の張りがあるといったハレノヒさんと同じ症状のある方に、「麦芽」を処方することがよくあります。「麦芽」の持つ胸の張りを抑えたりイライラを晴らす力により、精神的に落ち着きます。ただ、ある程度の量を飲む必要があります。軽度であれば「潜在性高プロラクチン」にも有効だと思います。 「腎」の「陰陽両虚」という温さと潤いが不足している状態 中医学で考えると、疲れやすい、抜け毛や白髪、めまい、立ちくらみ、肌の乾燥、血色が悪いなどの症状は、体を動かすエネルギーの元の「気」と体の栄養となる「血」の両方が不足している「気血両虚」の状態です。 また、イライラをためやすい、ゲップやおならが出やすい、月経前の乳房や下腹部が張る、シミやクマ、肩こり、頭痛という症状から、「気」のとどこおりと「血」のめぐりの悪い「気滞血瘀」を併せ持つ体質です。 冷え性、おなかや下半身が冷える、喉が乾きやすいという症状から妊娠力と関係の深い「腎の精」の不足、「腎」の「陰陽両虚」といって、温かさと潤いの両方が不足している状態です。 早く寝ることはとくに重要な生活養生のひとつ10時ごろには床に就き11時をすぎないように なるべく早く改善することを望まれている場合は、大麦のお茶よりも麦芽のほうが改善する力が早くて強いと思います。麦芽を考慮に入れて子宝を専門にしている漢方薬局に、一度ご相談されることをおすすめします。 また、プロラクチンを指摘されている方には、日々の生活のなかで早く寝ることは、とくに重要な生活養生のひとつです。10時ごろには床に就き、遅くても11時をすぎないようにしましょう。 それ以外にも、イライラをため込まないように、好きな音楽や、好きなアロマを焚いたり、入浴後にストレッチをして「気」や「血」をめぐらせ、深く深呼吸をしたり、気分転換をすることを心がけてゆったりと毎日を過ごすこともおすすめです。 食事は、その時季のものを中心に、「気」「血」をめぐらせるセロリや三つ葉、体を温めて潤す根菜類と豆腐、ネギ、豚肉、トマトを入れたスープ、お茶ではジャスミンティーがおすすめです。これらの養生をすることで、体が少しずつ変わっていくことを実感されると思います。できそうなことから、毎日楽しく始めてみてください。 岡 理絵先生 薬剤師。認定不妊カウンセラー。板橋中央総合病院を経て、創業102年になる実家の大慶堂漢方薬局で「子宝相談」を専門に行っている。南京や湖南等の中国研修や日本不妊カウンセリング学会にて日々鍛練中。著書に『こころとからだを癒して頑張らない妊活のすすめ』(セルバ出版)がある。 ■ あわせて読みたい ■ 初潮の頃から無月経で多嚢胞性卵巣症候群。こんな私でも妊娠できる? PCOSの場合の治療方針を聞かせてください。 重複子宮、チョコレート嚢腫、子宮筋腫があります。そんな私でも妊娠できますか? 女性のための健康生活マガジン JINEKO 相談者 ハレノヒ さん(39歳) 【不妊の原因:男性不妊・高プロラクチン】 ○なんだか疲れやすい ○カゼをひきやすい ○冷え性である ○月経前になると乳房や下腹部が張る ○ゲップやおならが出やすい ○イライラをため込みやすい ○血色が悪い ○抜け毛や白髪が多くなってきた ○めまいや立ちくらみがよくある ○顔にシミやクマが出やすい ○肩こりや頭痛が慢性的にある ○肌が乾燥しやすい ○のどが乾きやすい ○寒がりである ○手足がいつも冷たい ○とくにおなかや下半身が冷える ○むくみやすい ○痰が出やすい 早く改善することを望む場合は大麦のお茶よりも「麦芽」のほうが効果的 「麦芽」は「高プロラクチン血症」に大変おすすめです。実際に、イライラしやすい、月経前の胸の張りがあるといったハレノヒさんと同じ症状のある方に、「麦芽」を処方することがよくあります。「麦芽」の持つ胸の張りを抑えたりイライラを晴らす力により、精神的に落ち着きます。ただ、ある程度の量を飲む必要があります。軽度であれば「潜在性高プロラクチン」にも有効だと思います。 「腎」の「陰陽両虚」という温さと潤いが不足している状態 中医学で考えると、疲れやすい、抜け毛や白髪、めまい、立ちくらみ、肌の乾燥、血色が悪いなどの症状は、体を動かすエネルギーの元の「気」と体の栄養となる「血」の両方が不足している「気血両虚」の状態です。 また、イライラをためやすい、ゲップやおならが出やすい、月経前の乳房や下腹部が張る、シミやクマ、肩こり、頭痛という症状から、「気」のとどこおりと「血」のめぐりの悪い「気滞血瘀」を併せ持つ体質です。 冷え性、おなかや下半身が冷える、喉が乾きやすいという症状から妊娠力と関係の深い「腎の精」の不足、「腎」の「陰陽両虚」といって、温かさと潤いの両方が不足している状態です。 早く寝ることはとくに重要な生活養生のひとつ10時ごろには床に就き11時をすぎないように なるべく早く改善することを望まれている場合は、大麦のお茶よりも麦芽のほうが改善する力が早くて強いと思います。麦芽を考慮に入れて子宝を専門にしている漢方薬局に、一度ご相談されることをおすすめします。 また、プロラクチンを指摘されている方には、日々の生活のなかで早く寝ることは、とくに重要な生活養生のひとつです。10時ごろには床に就き、遅くても11時をすぎないようにしましょう。 それ以外にも、イライラをため込まないように、好きな音楽や、好きなアロマを焚いたり、入浴後にストレッチをして「気」や「血」をめぐらせ、深く深呼吸をしたり、気分転換をすることを心がけてゆったりと毎日を過ごすこともおすすめです。 食事は、その時季のものを中心に、「気」「血」をめぐらせるセロリや三つ葉、体を温めて潤す根菜類と豆腐、ネギ、豚肉、トマトを入れたスープ、お茶ではジャスミンティーがおすすめです。これらの養生をすることで、体が少しずつ変わっていくことを実感されると思います。できそうなことから、毎日楽しく始めてみてください。 岡 理絵先生 薬剤師。認定不妊カウンセラー。板橋中央総合病院を経て、創業102年になる実家の大慶堂漢方薬局で「子宝相談」を専門に行っている。南京や湖南等の中国研修や日本不妊カウンセリング学会にて日々鍛練中。著書に『こころとからだを癒して頑張らない妊活のすすめ』(セルバ出版)がある。 ■ あわせて読みたい ■ 初潮の頃から無月経で多嚢胞性卵巣症候群。こんな私でも妊娠できる? PCOSの場合の治療方針を聞かせてください。 重複子宮、チョコレート嚢腫、子宮筋腫があります。そんな私でも妊娠できますか? 女性のための健康生活マガジン JINEKO
2015.1.28
コラム 不妊治療
-
心の玉手箱 Vol.1 「不妊治療、頑張り過ぎでしょうか?」
相談者 コキュ さん(29歳) 今の私の生活は子どもを授かることが中心です。立て続けに人工、顕微、移殖と治療を繰り返しているのに、頑張っても結果が出ないのは、私にも原因があるから?次は次はと自分を奮い立たせてきましたが、最近は気持ちをどこへ持っていっていいのかわかりません。 -- 男性不妊のため、人工授精から不妊治療をスタートしたコキュさん。人工授精連続10回を経て、顕微授精、胚移植と治療を続けながら、「自分は頑張り過ぎでは?」と、悩んでいらっしゃいます。 秀子先生: このケースが頑張り過ぎかと聞かれると、やっている人は結構いると思うんですよ。決してやったほうがいいという意味じゃなく。 ただ、何が頑張り過ぎかっていうと、人工授精したことによって、期待して、落ち込んで、さらにお金もかかって、というアップダウンを繰り返しているから、それに疲れる。つまり、自分が無理をしていると思っているからしんどいんです。 これが、同じように人工、顕微と繰り返していても、自分で納得して行け行けどんどんでやっていれば、こんな投稿内容にはならない。文面からは、こけそうなところを息も絶え絶えに先生についていっている感じね。自分で100%納得してついていっていないから疲れるの。コキュさんはおいくつでしたっけ? -- 29歳ですね。 秀子先生: 29歳かぁ。まだ、若いんだし、私は30過ぎるまで一度休んでもいいと思うんだけどなぁ。でも、この方は30歳までに何とかしたい、なんてきっと思ってるはず(笑)。だから休んでも、宿題残して遊んでる、みたいな感覚になるんです。 疲れたら休んだらいいんです。まったく何もしなかったとしても、不妊治療など何もしないときと、いろいろやって疲れて、これだけやったら疲れるということを経験してからのお休み状態は明らかに違う。それが1ヶ月であろうと、半年であろうと、3年であろうと、コキュさんの場合は長すぎることはない。3年たっても32か33歳でしょ? ゆとりをもう一度自分の中に見い出すためにも、絶対に休むべき。何もせずに充電するための治療というのがあるんです。 -- 先生のお話は医学書に載っていることだけではなく、女性ならではの観点がユニークです。 秀子先生: 多分ね、男性はどうかわかりませんが、女性は感覚で自分の経験の中に何か置き換えないと心底わからない。料理であろうと、恋愛であろうと、自分が何十年だか生きてきた実体験の中で、「あ、なるほど」と思えてはじめて分かってくださることが多いの。「あ、あれと一緒じゃん」て、理解するのね。そのためにも、自分の中で消化吸収していくという作業が絶対必要でしょう。 当院には「禁足令」というのがありまして(笑)。「1ヶ月来たらダメ」とか、「○月まで来たらアカン」とか、私が決めるんです。休むに休めなくなっている人には、休憩できるように心のゆとりが必要だから。その代わり、笑顔で分かりましたと言ってもらえるまでお話しますよ。すると、1ヶ月、2ヶ月後に来られたときに、「ゆっくりできた? よっしゃ、ほな行こか?」と聞くと、「よし、やります!」と、たいてい充電できている。切羽詰まって自分からお休みしちゃう人もいるけれど、私は「とりあえず休む前に言ってね」とお願いしています。治療しながら卵巣を休ませるなど、お休みの仕方にもいろいろあるから。 -- なるほど。休むことでまた頑張れる。頑張り過ぎかどうかは、治療の内容ではないということですね。 秀子先生: そうね。このコキュさんの投稿を読んで、「私なんてもっとやってるわ」「何よこのくらい」なんて思う人もいるかもしれない。でも、その人との違いは、納得して治療を受けているかどうかだから。 私はうまくお休みに持っていってあげるのも、実は医者の役目なんだろうと思っています。治療方針に疑問を感じたら、勇気を出して医師に質問してみてほしい。食い下がるべきだと思う。何も言わないと納得してると思われちゃって、どんどん治療が先に進んでしまうなんてこともあるかもしれないから。自分で心底納得してはじめて、次のステージで頑張ることができるんです。 田村 秀子先生 京都府立医科大学卒業。同大学院終了後、京都第一赤十字病院に勤務。1991年、自ら不妊治療をして双子を出産したのを機に、義父の経営する田村産婦人科医院に勤め、1995年に不妊部門の現クリニックを開設。ご主人も産婦人科医で、「自宅でも会話の4割は仕事のこと」とか。繊細な感性を秘めた、大らかな人柄が魅力の先生。みずがめ座のA型。 | 一覧ページ | 次号の記事 ≫ 相談者 コキュ さん(29歳) 今の私の生活は子どもを授かることが中心です。立て続けに人工、顕微、移殖と治療を繰り返しているのに、頑張っても結果が出ないのは、私にも原因があるから?次は次はと自分を奮い立たせてきましたが、最近は気持ちをどこへ持っていっていいのかわかりません。 -- 男性不妊のため、人工授精から不妊治療をスタートしたコキュさん。人工授精連続10回を経て、顕微授精、胚移植と治療を続けながら、「自分は頑張り過ぎでは?」と、悩んでいらっしゃいます。 秀子先生: このケースが頑張り過ぎかと聞かれると、やっている人は結構いると思うんですよ。決してやったほうがいいという意味じゃなく。 ただ、何が頑張り過ぎかっていうと、人工授精したことによって、期待して、落ち込んで、さらにお金もかかって、というアップダウンを繰り返しているから、それに疲れる。つまり、自分が無理をしていると思っているからしんどいんです。 これが、同じように人工、顕微と繰り返していても、自分で納得して行け行けどんどんでやっていれば、こんな投稿内容にはならない。文面からは、こけそうなところを息も絶え絶えに先生についていっている感じね。自分で100%納得してついていっていないから疲れるの。コキュさんはおいくつでしたっけ? -- 29歳ですね。 秀子先生: 29歳かぁ。まだ、若いんだし、私は30過ぎるまで一度休んでもいいと思うんだけどなぁ。でも、この方は30歳までに何とかしたい、なんてきっと思ってるはず(笑)。だから休んでも、宿題残して遊んでる、みたいな感覚になるんです。 疲れたら休んだらいいんです。まったく何もしなかったとしても、不妊治療など何もしないときと、いろいろやって疲れて、これだけやったら疲れるということを経験してからのお休み状態は明らかに違う。それが1ヶ月であろうと、半年であろうと、3年であろうと、コキュさんの場合は長すぎることはない。3年たっても32か33歳でしょ? ゆとりをもう一度自分の中に見い出すためにも、絶対に休むべき。何もせずに充電するための治療というのがあるんです。 -- 先生のお話は医学書に載っていることだけではなく、女性ならではの観点がユニークです。 秀子先生: 多分ね、男性はどうかわかりませんが、女性は感覚で自分の経験の中に何か置き換えないと心底わからない。料理であろうと、恋愛であろうと、自分が何十年だか生きてきた実体験の中で、「あ、なるほど」と思えてはじめて分かってくださることが多いの。「あ、あれと一緒じゃん」て、理解するのね。そのためにも、自分の中で消化吸収していくという作業が絶対必要でしょう。 当院には「禁足令」というのがありまして(笑)。「1ヶ月来たらダメ」とか、「○月まで来たらアカン」とか、私が決めるんです。休むに休めなくなっている人には、休憩できるように心のゆとりが必要だから。その代わり、笑顔で分かりましたと言ってもらえるまでお話しますよ。すると、1ヶ月、2ヶ月後に来られたときに、「ゆっくりできた? よっしゃ、ほな行こか?」と聞くと、「よし、やります!」と、たいてい充電できている。切羽詰まって自分からお休みしちゃう人もいるけれど、私は「とりあえず休む前に言ってね」とお願いしています。治療しながら卵巣を休ませるなど、お休みの仕方にもいろいろあるから。 -- なるほど。休むことでまた頑張れる。頑張り過ぎかどうかは、治療の内容ではないということですね。 秀子先生: そうね。このコキュさんの投稿を読んで、「私なんてもっとやってるわ」「何よこのくらい」なんて思う人もいるかもしれない。でも、その人との違いは、納得して治療を受けているかどうかだから。 私はうまくお休みに持っていってあげるのも、実は医者の役目なんだろうと思っています。治療方針に疑問を感じたら、勇気を出して医師に質問してみてほしい。食い下がるべきだと思う。何も言わないと納得してると思われちゃって、どんどん治療が先に進んでしまうなんてこともあるかもしれないから。自分で心底納得してはじめて、次のステージで頑張ることができるんです。 田村 秀子先生 京都府立医科大学卒業。同大学院終了後、京都第一赤十字病院に勤務。1991年、自ら不妊治療をして双子を出産したのを機に、義父の経営する田村産婦人科医院に勤め、1995年に不妊部門の現クリニックを開設。ご主人も産婦人科医で、「自宅でも会話の4割は仕事のこと」とか。繊細な感性を秘めた、大らかな人柄が魅力の先生。みずがめ座のA型。 | 一覧ページ | 次号の記事 ≫
2015.1.22
コラム 不妊治療
-
不妊治療をしながら冷えも治す漢方は ありますか?どこの漢方薬局に行けばいいの?
相談者 みっこ さん(32歳) ここ何年か前から、少し暑いと上半身が汗だくになります。背中を汗が流れるのがわかるくらいで、なかなか引きません。手は冬でも熱いのにお腹より下のお尻、太ももはとても冷たいのです。冬は足がつりそうなほど冷たくてなかなか寝付けません。子宮内腺症と診断されたので、治療をしますが冷えも直していきたいです。私に合う漢方はありますか。どこの漢方薬局に行けばいいのか相談できる友だちなどもいません。 ○月経前はイライラしやすく、怒りっぽい。落ち込みやすい。 ○レバー状の塊や、粘膜のような塊が混じっている ○のどが渇き易い ○のぼせやほてりがある 「気」の流れ、および「お血」を改善する漢方薬の服用を先ずおすすめします お話しの内容から察するに、みっこさんは元気がない状態が続いているのではないでしょうか。 汗をとめておく力は体を温める力である「気」そのめぐりが悪いから上半身だけ汗をかく 汗が流れでるとのことですが、これは汗をとめておくことができないためにおこっているのでしょう。とめておく力は体を温める力である「気(元気)」なのです。 また、上半身が熱く下半身が冷えている状態も加味して考えますと、「気」のめぐりも良くないのでしょう。そのため体全体を温めるはずの「気」が、上にだけにしか昇らない状態になっているのでしょう(温かい空気が上へ上へと昇るのと同様です)。汗を大量にかいたことで体の中の陰分(津液)を失い、それが上半身の熱さに拍車をかけてしまっているのです。のどが渇くのもこのことが原因と考えます。 中医学・経方学などを熟知していて話をじっくり聞いてくれる漢方薬局を 以上の状態を中医学用語では「陰陽両虚」と言います。 ただし、みっこさんはベースが「陰陽両虚」の状態で、そこから踏み込んだ状態もあるのではないかと考えられます。それは、子宮内膜症、経血の塊、イライラと怒りやすいなどから推察できるのです。これらの状態は長期の体調不良がストレスとなり、「気」の流れをさらに悪化させ、それに伴って血の流れも停滞することからおこる「お血」も存在していると考えます。 つまり、何らかの原因でみっこさんの体が疲れてしまい、それが体の陰分の消耗へとつながり、長期の体調不良がおこり、その状態がストレスとなっている。ストレスで「気」の流れが悪くなり、イライラや怒りやすさをまねいたことで血のめぐりも悪くなり、「お血」を形成しさらなる体調不良につながっているのだと考えます。 妊娠をご希望とのことですので、先ずは「気」の流れの改善および、「お血」の改善を強くおすすめいたします。そのあとで体調不良のベースである、「陰陽両虚」の改善をするのがいいでしょう。 また漢方相談はみっこさんの話をじっくり聞いてくれる中医学・経方学などを熟知している漢方薬局で行いましょう。ホームページを閲覧したり、直接電話してみて雰囲気を確かめるのも一案です。お体に無理することなくお過ごしくださいませ。 岩本 治美先生 東京薬科大学卒。神奈川中医学研究会で漢方の研鑽を積み、30 年以上漢方相談に従事。とくに女性特有の悩みが得意で、多くの女性の悩みを改善してきた。最近は不妊に悩まれている女性の相談に多くの時間を割いている。日本不妊カウンセリング学会会員。 相談者 みっこ さん(32歳) ここ何年か前から、少し暑いと上半身が汗だくになります。背中を汗が流れるのがわかるくらいで、なかなか引きません。手は冬でも熱いのにお腹より下のお尻、太ももはとても冷たいのです。冬は足がつりそうなほど冷たくてなかなか寝付けません。子宮内腺症と診断されたので、治療をしますが冷えも直していきたいです。私に合う漢方はありますか。どこの漢方薬局に行けばいいのか相談できる友だちなどもいません。 ○月経前はイライラしやすく、怒りっぽい。落ち込みやすい。 ○レバー状の塊や、粘膜のような塊が混じっている ○のどが渇き易い ○のぼせやほてりがある 「気」の流れ、および「お血」を改善する漢方薬の服用を先ずおすすめします お話しの内容から察するに、みっこさんは元気がない状態が続いているのではないでしょうか。 汗をとめておく力は体を温める力である「気」そのめぐりが悪いから上半身だけ汗をかく 汗が流れでるとのことですが、これは汗をとめておくことができないためにおこっているのでしょう。とめておく力は体を温める力である「気(元気)」なのです。 また、上半身が熱く下半身が冷えている状態も加味して考えますと、「気」のめぐりも良くないのでしょう。そのため体全体を温めるはずの「気」が、上にだけにしか昇らない状態になっているのでしょう(温かい空気が上へ上へと昇るのと同様です)。汗を大量にかいたことで体の中の陰分(津液)を失い、それが上半身の熱さに拍車をかけてしまっているのです。のどが渇くのもこのことが原因と考えます。 中医学・経方学などを熟知していて話をじっくり聞いてくれる漢方薬局を 以上の状態を中医学用語では「陰陽両虚」と言います。 ただし、みっこさんはベースが「陰陽両虚」の状態で、そこから踏み込んだ状態もあるのではないかと考えられます。それは、子宮内膜症、経血の塊、イライラと怒りやすいなどから推察できるのです。これらの状態は長期の体調不良がストレスとなり、「気」の流れをさらに悪化させ、それに伴って血の流れも停滞することからおこる「お血」も存在していると考えます。 つまり、何らかの原因でみっこさんの体が疲れてしまい、それが体の陰分の消耗へとつながり、長期の体調不良がおこり、その状態がストレスとなっている。ストレスで「気」の流れが悪くなり、イライラや怒りやすさをまねいたことで血のめぐりも悪くなり、「お血」を形成しさらなる体調不良につながっているのだと考えます。 妊娠をご希望とのことですので、先ずは「気」の流れの改善および、「お血」の改善を強くおすすめいたします。そのあとで体調不良のベースである、「陰陽両虚」の改善をするのがいいでしょう。 また漢方相談はみっこさんの話をじっくり聞いてくれる中医学・経方学などを熟知している漢方薬局で行いましょう。ホームページを閲覧したり、直接電話してみて雰囲気を確かめるのも一案です。お体に無理することなくお過ごしくださいませ。 岩本 治美先生 東京薬科大学卒。神奈川中医学研究会で漢方の研鑽を積み、30 年以上漢方相談に従事。とくに女性特有の悩みが得意で、多くの女性の悩みを改善してきた。最近は不妊に悩まれている女性の相談に多くの時間を割いている。日本不妊カウンセリング学会会員。
2015.1.19
コラム 不妊治療
-
半身浴や運動も効果無い40年来の冷え性。33歳以降の月経変化。気になるこの2点は改善できるの?
相談者 tori さん(41歳) 【不妊の原因:男性不妊・高齢】 ○なんだか疲れやすい ○冷え性である ○イライラをため込みやすい ○肌や髪にツヤがない ○抜け毛や白髪が多くなってきた ○めまいや立ちくらみがよくある ○肩こりや頭痛が慢性的にある ○レバーのような経血の塊が出る ○肌が乾燥しやすい ○のどが乾きやすい ○寝汗をよくかく ○寝不足の日が多い ○寒がりである ○手足がいつも冷たい ○とくにおなかや下半身が冷える ○いつも眠い 体の冷えや月経の変化は温める力と血流を良くする代表的な漢方薬で改善をはかる 対策をとっても改善しない40年来の冷え性の改善は可能でしょうかというご質問ですね。大丈夫ですよ。私も冷え性で、20代から電気毛布のお世話にならないと寝られないくらい冷えきっていましたが、漢方薬を飲むことによって、自力で温まり眠れるようになりました。 漢方では冷えを体質に分けて改善していきます。体が冷えるのは、熱量や原料が少なく、温める力が不足しているタイプと血液の流れが悪いドロドロ血タイプ、その混合型に分けて考えるとわかりやすいです。 漢方では冷えなどの症状を体質に分けて考え漢方薬を飲むことでさまざまな症状を改善する 温める力が不足しているタイプには、疲れやすい、肌や髪に潤いが無くなってきた、抜け毛、白髪、めまい、立ちくらみ、肌の乾燥、喉の乾き、寒がり、寝汗をかきやすい、いつも眠い、高齢などが当てはまります。血流の悪いタイプには、肩こりや頭痛が起こりやすい、レバーのような経血の塊が出る、イライラをため込みやすいなどが当てはまります。 混合型には、おなかや下半身が冷える、冷え性である、寝不足の日が多い、手足がいつも冷たいなどがあります。 2つ目のご質問、33歳以降の月経の勢いが減り、期間や出血の仕方が変化したということですね。いらなくなった内膜が取れて、月経の出血になるといわれています。これも冷えのタイプ分けと同じで、温める力が不足しているタイプと、血液の流れが悪いタイプの影響が関係してきます。子宮内膜の原料と血液の流れの両方の対策を取ると改善しやすいでしょう。 月経の期間や出血の仕方への変化には子宮内膜の原料と血液の流れの両方を改善する toriさんは温める力と原料、血流の両方を考えると良い混合型タイプのようです。漢方薬を選ぶときは、舌の色を見たり、体調について詳しく話を聞いて選びますが、ここでは代表的な漢方薬をお伝えします。 温める力を上げて、原料を増やす漢方の代表は、「参茸補血丸(さんじょうほけつがん)」です。「参茸補血丸」は、動物実験でラットの子宮内膜の改善に良いことが証明されています。 血液の流れに良い漢方の代表は、「冠元顆粒(かんげんかりゅう)」になります。「冠元顆粒」は血液の流れを改善することで、老化の抑制、肝組織のコレステロールの改善、糖尿病の改善で特許を取っています。血液の流れは、妊娠、月経はもちろん、生活の質に大きく影響を与えます。 深谷 幹子先生 湖北民族大学客員教授。薬剤師。妊娠授乳サポート薬剤師。毎年の妊娠報告が130名以上。周期調節法の第一人者夏教授、男性不妊専門病院曹先生の元で外来研修を受ける。妊娠出産に向け母体の健康維持も考えながら行う身体にあったアドバイスと漢方処方には定評がある。 ■ あわせて読みたい ■ 冷え性なのに汗っかきなので温めると逆に冷えてしまう。なにか対策はある? 冷え性や月経不順、イライラや落ち込みを解消して、妊娠力を上げたいのですが ひどい冷え性と不妊治療でストレスを感じていること に悩んでいます 女性のための健康生活マガジン JINEKO 専門家に相談してみる 相談者 tori さん(41歳) 【不妊の原因:男性不妊・高齢】 ○なんだか疲れやすい ○冷え性である ○イライラをため込みやすい ○肌や髪にツヤがない ○抜け毛や白髪が多くなってきた ○めまいや立ちくらみがよくある ○肩こりや頭痛が慢性的にある ○レバーのような経血の塊が出る ○肌が乾燥しやすい ○のどが乾きやすい ○寝汗をよくかく ○寝不足の日が多い ○寒がりである ○手足がいつも冷たい ○とくにおなかや下半身が冷える ○いつも眠い 体の冷えや月経の変化は温める力と血流を良くする代表的な漢方薬で改善をはかる 対策をとっても改善しない40年来の冷え性の改善は可能でしょうかというご質問ですね。大丈夫ですよ。私も冷え性で、20代から電気毛布のお世話にならないと寝られないくらい冷えきっていましたが、漢方薬を飲むことによって、自力で温まり眠れるようになりました。 漢方では冷えを体質に分けて改善していきます。体が冷えるのは、熱量や原料が少なく、温める力が不足しているタイプと血液の流れが悪いドロドロ血タイプ、その混合型に分けて考えるとわかりやすいです。 漢方では冷えなどの症状を体質に分けて考え漢方薬を飲むことでさまざまな症状を改善する 温める力が不足しているタイプには、疲れやすい、肌や髪に潤いが無くなってきた、抜け毛、白髪、めまい、立ちくらみ、肌の乾燥、喉の乾き、寒がり、寝汗をかきやすい、いつも眠い、高齢などが当てはまります。血流の悪いタイプには、肩こりや頭痛が起こりやすい、レバーのような経血の塊が出る、イライラをため込みやすいなどが当てはまります。 混合型には、おなかや下半身が冷える、冷え性である、寝不足の日が多い、手足がいつも冷たいなどがあります。 2つ目のご質問、33歳以降の月経の勢いが減り、期間や出血の仕方が変化したということですね。いらなくなった内膜が取れて、月経の出血になるといわれています。これも冷えのタイプ分けと同じで、温める力が不足しているタイプと、血液の流れが悪いタイプの影響が関係してきます。子宮内膜の原料と血液の流れの両方の対策を取ると改善しやすいでしょう。 月経の期間や出血の仕方への変化には子宮内膜の原料と血液の流れの両方を改善する toriさんは温める力と原料、血流の両方を考えると良い混合型タイプのようです。漢方薬を選ぶときは、舌の色を見たり、体調について詳しく話を聞いて選びますが、ここでは代表的な漢方薬をお伝えします。 温める力を上げて、原料を増やす漢方の代表は、「参茸補血丸(さんじょうほけつがん)」です。「参茸補血丸」は、動物実験でラットの子宮内膜の改善に良いことが証明されています。 血液の流れに良い漢方の代表は、「冠元顆粒(かんげんかりゅう)」になります。「冠元顆粒」は血液の流れを改善することで、老化の抑制、肝組織のコレステロールの改善、糖尿病の改善で特許を取っています。血液の流れは、妊娠、月経はもちろん、生活の質に大きく影響を与えます。 深谷 幹子先生 湖北民族大学客員教授。薬剤師。妊娠授乳サポート薬剤師。毎年の妊娠報告が130名以上。周期調節法の第一人者夏教授、男性不妊専門病院曹先生の元で外来研修を受ける。妊娠出産に向け母体の健康維持も考えながら行う身体にあったアドバイスと漢方処方には定評がある。 ■ あわせて読みたい ■ 冷え性なのに汗っかきなので温めると逆に冷えてしまう。なにか対策はある? 冷え性や月経不順、イライラや落ち込みを解消して、妊娠力を上げたいのですが ひどい冷え性と不妊治療でストレスを感じていること に悩んでいます 女性のための健康生活マガジン JINEKO 専門家に相談してみる
2015.1.15
コラム 不妊治療
-
排卵障害、軽度のPCOSです。 どうすれば排卵しますか? このまま人工授精をトライ?
相談者 かぐや0707さん(29歳)排卵障害で不妊治療をはじめて約半年。軽度のPCOSと診断されています。卵管造影検査など検査は一通り済ませ、排卵がうまく起こっていないことが原因だろうといわれています。AMHを測定したところ、3.2という数値で、同世代の女性より低いといわれました。ただ、いろいろ調べてみるとPCOSの人はそもそもAMHが高いと書いてありました。先生に聞くと「PCOSでもたまにAMHが低い人がいる」という的を得ない答えでした。タイミング周期を5回行っても妊娠に至らず、先日、クロミッド®の内服や排卵誘発剤の注射を3回行って人工授精をしたのに、排卵せず生理が来ました。どうすれば排卵するのでしょうか?このまま人工授精をトライする価値はあるのでしょうか? ジネコ:かぐや0707さんの現在の治療について、どうお考えでしょうか? 向田先生:まず、かぐや0707さんに対して、PCOSという診断がきちんとされているかどうか疑問ですね。本当に彼女がPCOSで排卵障害なのか、どういう理由で排卵障害なのか…。しかし、確定診断の有無にかかわらず、排卵障害を解決する方法はいろいろあります。初めはクロミッド®等の内服剤による治療で、生理初期に1錠5日間から始め、2錠~3錠に増やす場合があります。その後はFSH/hMGなどの、排卵誘発剤を投与します。注射による方法もさまざまな種類があります。患者さんに応じて、それらを組み合わせたりして治療を進め、排卵を誘発していく必要があります。ただそれを、どのような治療に向けて行うかで、一つの卵胞発育を目指すのか、複数の卵胞を発育させるのか、に違いがあります。タイミング法や、精子を子宮内に注入する人工授精の場合、複数(5個以上)を作ってしまうと多胎やOHSSになる危険性がありますが、体外受精の場合は採卵を行うので、複数(10個程度)を目標とします。だから、この場合も、多量の排卵誘発剤を使っていないので、きちんと排卵できていないのかもしれません。また、ある程度、卵胞が大きくなれば、自然に排卵するところ、結局排卵しなかったというケースもあります。かぐや0707さんが、「注射を3回したのに排卵しなかった」とありますが、3回の注射ではうまくいかなかったということでしょう。彼女のような患者さんは、当クリニックにも少なからずいらっしゃいます。一般的な不妊治療も行っている婦人科クリニックでは、タイミング法か人工授精が治療の中心ですので、基本的に1~2個の卵胞発育を目指します。このような目標設定だと、マイルドな誘発方法(数回投与のみ)定だと、マイルドな誘発方法(数回投与のみ)になり、十分卵胞が発育しない可能性があります。逆に、卵胞が複数個(3個以上)になると、通常排卵を起こすために投与するhCGという薬剤の投与量を中止するか、他の薬剤に変更するなどして対応したりする可能性もあるので、適切な排卵が起こらない場合もあります。 ジネコ:では、血液検査で排卵しなかったとありますが、これはどういうことでしょうか? 向田先生:一般的に、排卵前は卵胞ホルモンであるエストロゲンが分泌され、排卵後には黄体ホルモンであるプロゲステロンが分泌されますが、この方の場合は排卵が起こらなかったため、プロゲステロンが分泌されず、高温期にならなかったか、血液検査で低い値であったと思われます。排卵が起こらず、プロゲステロンが分泌されていない状態では、タイミングや人工授精を行っても妊娠する可能性はないと言わざるを得ません。 ジネコ:PCOSでAMHの値が低いという彼女ですが、どう思われますか? 向田先生:一般的には、PCOSの人はAMHの値が高いと報告されています。このため、この方の排卵障害はPCOSが原因ではなく、脳下垂体の機能不全によるものかもしれません。そのうえ、卵巣予備能力の指標であるAMHが同世代と比べて低くなっているので、29歳という年齢だけれども妊娠していないのかもしれません。 ジネコ:今後どのような治療を進めたらよいか、アドバイスいただけますか? 向田先生:PCOや脳下垂体機能不全など、排卵障害の原因はさまざまですが、クロミッド®やFSH/hMG剤を用いた適切な排卵誘発管理により、ほとんどの症例において、排卵を起こすことは可能です。しかし、連日の誘発剤投与では多数(5個以上)の卵胞が育ってしまい、タイミングや人工授精の際の目標である1~2個の卵胞発育に向けることが難しい場合が多々あり、その際は体外受精に向けるほうが適切と思われます。またこの方の場合は、既にタイミング、IUIなどを6周期行っても妊娠していないので、体外受精などの次のステップに向けるほうが、妊娠・出産に至る確率は、かなり高くなると思われます。また、排卵障害がある症例では、卵の質に問題がある場合も少なくなく、採卵し、受精後に分割した受精卵を確認することができる体外受精はその点でも有用です。当クリニックは、体外受精を治療法の中心として診療しているため、体外受精ばかりすすめると言われますが……。一般的に、挙児を希望して2年以内に9割近いご夫婦にお子さんができるので、タイミングや人工授精を1年試みて結果が出なければ、次のステップに進むかをご夫婦でしっかり考える必要があると思います。特に、AMHが年齢による平均値以下の症例で30歳以上の方が自然妊娠を待って1~2年過ごすということは、せっかくの治療機会を失う可能性もあります。そのうえ、体外受精などの治療を行ったとしてもお子さんができるに至る保証はなく、妊娠・出産するまで問題ないとは言えないのが現実です。そこで、不妊治療を考える際に最も重要なのは年齢であり、この方のように29歳で治療を開始し、すぐに妊娠したとしても、出産時は30歳、その子が小学校に入る時には36歳です。そして、2人目、3人目となると、さらに年齢が進むことになります。ですから、そのための一番確率の高い方法を、ある程度の段階で早めに試しては、というのが僕の考えです。排卵障害があり、AMHが低いということですから、今後ももっと厳しい状況になりうるということも、十分に考えられます。AMHが低い、排卵障害があるという状態から考えるに、早期に次のステップにいくほうがいいと思います。 向田 哲規 先生 高知医科大学卒業。同大学産婦人科医局に入り、不妊治療・体外受精を専門にするため、アメリカ・マイアミ大学生殖医療体外受精プログラムに在籍、1990年からNY・NJ州のダイヤモンド不妊センターに在籍後、1996年より広島HARTクリニックに勤務し、現在院長として、臨床に従事する。大学時代、テニス部、ヨット部に所属し、現在もテニスのレベル維持のため、身長171㎝、体重60㎏、ウエスト73㎝、体脂肪ひとケタ台をキープするためにジムトレーニングで余暇のほとんどを過ごしているのだそう。 相談者 かぐや0707さん(29歳)排卵障害で不妊治療をはじめて約半年。軽度のPCOSと診断されています。卵管造影検査など検査は一通り済ませ、排卵がうまく起こっていないことが原因だろうといわれています。AMHを測定したところ、3.2という数値で、同世代の女性より低いといわれました。ただ、いろいろ調べてみるとPCOSの人はそもそもAMHが高いと書いてありました。先生に聞くと「PCOSでもたまにAMHが低い人がいる」という的を得ない答えでした。タイミング周期を5回行っても妊娠に至らず、先日、クロミッド®の内服や排卵誘発剤の注射を3回行って人工授精をしたのに、排卵せず生理が来ました。どうすれば排卵するのでしょうか?このまま人工授精をトライする価値はあるのでしょうか? ジネコ:かぐや0707さんの現在の治療について、どうお考えでしょうか? 向田先生:まず、かぐや0707さんに対して、PCOSという診断がきちんとされているかどうか疑問ですね。本当に彼女がPCOSで排卵障害なのか、どういう理由で排卵障害なのか…。しかし、確定診断の有無にかかわらず、排卵障害を解決する方法はいろいろあります。初めはクロミッド®等の内服剤による治療で、生理初期に1錠5日間から始め、2錠~3錠に増やす場合があります。その後はFSH/hMGなどの、排卵誘発剤を投与します。注射による方法もさまざまな種類があります。患者さんに応じて、それらを組み合わせたりして治療を進め、排卵を誘発していく必要があります。ただそれを、どのような治療に向けて行うかで、一つの卵胞発育を目指すのか、複数の卵胞を発育させるのか、に違いがあります。タイミング法や、精子を子宮内に注入する人工授精の場合、複数(5個以上)を作ってしまうと多胎やOHSSになる危険性がありますが、体外受精の場合は採卵を行うので、複数(10個程度)を目標とします。だから、この場合も、多量の排卵誘発剤を使っていないので、きちんと排卵できていないのかもしれません。また、ある程度、卵胞が大きくなれば、自然に排卵するところ、結局排卵しなかったというケースもあります。かぐや0707さんが、「注射を3回したのに排卵しなかった」とありますが、3回の注射ではうまくいかなかったということでしょう。彼女のような患者さんは、当クリニックにも少なからずいらっしゃいます。一般的な不妊治療も行っている婦人科クリニックでは、タイミング法か人工授精が治療の中心ですので、基本的に1~2個の卵胞発育を目指します。このような目標設定だと、マイルドな誘発方法(数回投与のみ)定だと、マイルドな誘発方法(数回投与のみ)になり、十分卵胞が発育しない可能性があります。逆に、卵胞が複数個(3個以上)になると、通常排卵を起こすために投与するhCGという薬剤の投与量を中止するか、他の薬剤に変更するなどして対応したりする可能性もあるので、適切な排卵が起こらない場合もあります。 ジネコ:では、血液検査で排卵しなかったとありますが、これはどういうことでしょうか? 向田先生:一般的に、排卵前は卵胞ホルモンであるエストロゲンが分泌され、排卵後には黄体ホルモンであるプロゲステロンが分泌されますが、この方の場合は排卵が起こらなかったため、プロゲステロンが分泌されず、高温期にならなかったか、血液検査で低い値であったと思われます。排卵が起こらず、プロゲステロンが分泌されていない状態では、タイミングや人工授精を行っても妊娠する可能性はないと言わざるを得ません。 ジネコ:PCOSでAMHの値が低いという彼女ですが、どう思われますか? 向田先生:一般的には、PCOSの人はAMHの値が高いと報告されています。このため、この方の排卵障害はPCOSが原因ではなく、脳下垂体の機能不全によるものかもしれません。そのうえ、卵巣予備能力の指標であるAMHが同世代と比べて低くなっているので、29歳という年齢だけれども妊娠していないのかもしれません。 ジネコ:今後どのような治療を進めたらよいか、アドバイスいただけますか? 向田先生:PCOや脳下垂体機能不全など、排卵障害の原因はさまざまですが、クロミッド®やFSH/hMG剤を用いた適切な排卵誘発管理により、ほとんどの症例において、排卵を起こすことは可能です。しかし、連日の誘発剤投与では多数(5個以上)の卵胞が育ってしまい、タイミングや人工授精の際の目標である1~2個の卵胞発育に向けることが難しい場合が多々あり、その際は体外受精に向けるほうが適切と思われます。またこの方の場合は、既にタイミング、IUIなどを6周期行っても妊娠していないので、体外受精などの次のステップに向けるほうが、妊娠・出産に至る確率は、かなり高くなると思われます。また、排卵障害がある症例では、卵の質に問題がある場合も少なくなく、採卵し、受精後に分割した受精卵を確認することができる体外受精はその点でも有用です。当クリニックは、体外受精を治療法の中心として診療しているため、体外受精ばかりすすめると言われますが……。一般的に、挙児を希望して2年以内に9割近いご夫婦にお子さんができるので、タイミングや人工授精を1年試みて結果が出なければ、次のステップに進むかをご夫婦でしっかり考える必要があると思います。特に、AMHが年齢による平均値以下の症例で30歳以上の方が自然妊娠を待って1~2年過ごすということは、せっかくの治療機会を失う可能性もあります。そのうえ、体外受精などの治療を行ったとしてもお子さんができるに至る保証はなく、妊娠・出産するまで問題ないとは言えないのが現実です。そこで、不妊治療を考える際に最も重要なのは年齢であり、この方のように29歳で治療を開始し、すぐに妊娠したとしても、出産時は30歳、その子が小学校に入る時には36歳です。そして、2人目、3人目となると、さらに年齢が進むことになります。ですから、そのための一番確率の高い方法を、ある程度の段階で早めに試しては、というのが僕の考えです。排卵障害があり、AMHが低いということですから、今後ももっと厳しい状況になりうるということも、十分に考えられます。AMHが低い、排卵障害があるという状態から考えるに、早期に次のステップにいくほうがいいと思います。 向田 哲規 先生 高知医科大学卒業。同大学産婦人科医局に入り、不妊治療・体外受精を専門にするため、アメリカ・マイアミ大学生殖医療体外受精プログラムに在籍、1990年からNY・NJ州のダイヤモンド不妊センターに在籍後、1996年より広島HARTクリニックに勤務し、現在院長として、臨床に従事する。大学時代、テニス部、ヨット部に所属し、現在もテニスのレベル維持のため、身長171㎝、体重60㎏、ウエスト73㎝、体脂肪ひとケタ台をキープするためにジムトレーニングで余暇のほとんどを過ごしているのだそう。
2014.11.19
コラム 不妊治療
-
野田聖子先生×吉村泰典先生『もう待っていられない!日本の少子化問題を考える』
-- 今年6月、厚生労働省から、2013年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産むとされる子どもの人数)が、前年に比べて0・02ポイント高い1・43だったと発表がありました。2年連続の上昇ですが、これについてどう思われますか? 吉村先生●合計特殊出生率は2005年に1・26と過去最低を記録し、非常に危険な水準まで下がりました。それが徐々に1・43まで回復したのは前回の自民党政権の功績でもあると思っています。一時期、妊婦のたらい回し事件や未受診妊婦など、周産期医療について様々な問題が起こりました。 未受診とは、お金がないから妊婦健診に行けないということ。その時、僕は何度も厚生労働大臣にお願いに行って深刻さを訴えたら、妊婦健診を5回から14回に、都道府県によって違いはありますが、8~12万円ほど健診中にお金を出してくれることになったんです。さらに、出産育児一時金のアップも。当時38万円だった金額を4万円引き上げて42万円に。妊娠・分娩する時にお金がかからないということが未受診妊婦を減らし、少なからずとも合計特殊出生率の上昇につながっていったのではないかと思います。 野田先生●日本はちゃんと費用対効果というのを出しますよね。たとえば介護保険は世界に冠たるもので、高齢者に対しては相当社会保障で取り組んできました。それにより、日本の高齢者は超長寿になってきています。同じように、今度は子どもたちのためにしっかり費用を出す。やった分だけ必ず成果が出ると思います。 吉村先生●そうですね。それを早く実現していかなければいけません。実は合計特殊出生率は上昇しましたが、今、産んでくださる女性の数が少ないということから、子どもの出生数は前年より7400人減り、過去最少の102万9800人に。僕は勝手に2055年問題といっているんですが、2055年には日本の人口が9000万人を切る。人口が減るのはいいのですが、そのバランスが問題。65歳以上の人が全体の40%を超え、生まれてくる子どもの数は50万人を切ってしまう。4割の高齢者を支えていく社会なんて、世界のどの国を見てもありません。国としての存続さえ厳しくなると思います。 野田先生●ただ人口が減るのではなく、減ると同時に支える側と支えられる側のバランスが壊れてしまうのは大変なこと。そこがあまり議論されていないなという感じはしますね。子どもたちは成長して労働者になり、納税者になって必ず将来返してくれる。それを考えたら、国は借金をしてでも先行投資をすることが必要で、今すぐにでも始めないといけないと思います。 吉村先生●女性と子どものために費用をかけることはもちろんですが、女性が産みたいと思うような環境作りも大切だと思います。日本では女性は仕事との両立に悩まされて結婚や出産が遅れることが多いようですが、世界を見ると女性が活躍している国、つまり女性の高い就労率を示す国は出生率も高い傾向があるんです。女性の就業率が70%を超える北欧諸国は合計特殊出生率も2・0前後を示している。それだけ働く女性が子どもを産める環境が整っているのだと思います。 野田先生●実はアメリカは、日本では当たり前の産休や育休といった制度がありませんから、わが国のほうが先を行っている気がするのに、子どもを産む女性が少ない。日本は制度以前に、ほとんどの男性たちに「女性は働かないもの」という考えがまだ根強くあるようです。女性が働くことはオプションみたいなもので、ハードもソフトもまだ男性が中心。子どもを産み育てるための職場は依然として少ない気がします。少子化を食い止めるにはここもどんどん変えていかないと。「働く人は子どものいる人」という定義のもと、職場から公共機関まですべての施設に子どもがいられる空間を作る。最初にコストはかかると思いますが、女性が働き、子どもが増えることでそれ以上の収入が入ってくると思います。政治の中でもしっかり決断していく必要がありますね。 話題は変わりますが、厚生労働省は2016年度より不妊治療の公費助成に43歳未満という年齢制限を設けることになりました。これについてはどうお考えですか? 少子化対策に影響は出ないのでしょうか。 吉村先生●40歳以上になるとだいたい3分の1くらいの人が、43歳になると約半数の人が流産してしまう。赤ちゃんを連れて帰れる割合、生産率でいったら43歳で50人に1人、45歳だと100人に1人になってしまうんですね。助成回数も10回から6回に減りましたが、これは助成を受けて妊娠した人の9割以上は6回までで妊娠したというデータを受けてのこと。このような医学的判断などで年齢制限が提起されました。しかし、良い点もあり、1年に最大6回も助成を受けられるようになったんですね。これにより長期にわたって治療を続けるのではなく、短期決戦で治療に集中する方が増えてくるはずです。 この年齢制限は税金を有効に使っていくということだけではなく、妊娠の最良な適齢期を教えていくという意味もあります。40歳を超えた妊娠は非常にリスクが高く、できれば25~35歳の間に妊娠をしていただくという啓発でもあるんですね。 野田先生●恥ずかしながら、私も妊娠や出産に関しての正しい知識はほとんど持っていませんでした。40歳から不妊治療を始めて、息子に出会うまで体外受精を16回。もっと早く治療を始めていればと後悔しています。同じ思いをして欲しくないので、教育は大切だと思っています。実際に総務会長になった初仕事は、文部科学省へ小学校の保健体育の時間に「女性は適正な時期しか妊娠しない」と教えるべきだとかけあったことですから。 女性だけではなく、もちろん男性の教育も必要です。教育、そして職場や社会の環境作りなど、少子化問題に特化した拠点を政府に作り、10年間に限定して人・もの・お金を集中的に注いで対策するべきだと考えています。指をくわえて待っていたら産める人が産めなくなってしまう。各省庁や議員と連携して迅速に進めていきたいと思っています。 衆議院議員(自由民主党) 野田 聖子 先生 1960年、福岡県生まれ。上智大学卒業。岐阜県議を経て1993年に衆院議員初当選。自民党政権の下、郵政相、消費者相を歴任し、2012年12月から自民党総務会長を務める。40歳から16回にわたる体外受精を経験し、アメリカで卵子提供を受けて2011年に長男を出産。 産婦人科医 吉村 泰典 先生 慶應義塾大学医学部卒業。これまで数多くの不妊症治療や分娩を担当。2013年内閣官房参与に就任し、政府の少子化対策・子育て支援をサポート。自らも、女性と子どもの未来を考える「生命の環境研究所」を立ち上げ、SNSなどで積極的に情報を発信している。 -- 今年6月、厚生労働省から、2013年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産むとされる子どもの人数)が、前年に比べて0・02ポイント高い1・43だったと発表がありました。2年連続の上昇ですが、これについてどう思われますか? 吉村先生●合計特殊出生率は2005年に1・26と過去最低を記録し、非常に危険な水準まで下がりました。それが徐々に1・43まで回復したのは前回の自民党政権の功績でもあると思っています。一時期、妊婦のたらい回し事件や未受診妊婦など、周産期医療について様々な問題が起こりました。 未受診とは、お金がないから妊婦健診に行けないということ。その時、僕は何度も厚生労働大臣にお願いに行って深刻さを訴えたら、妊婦健診を5回から14回に、都道府県によって違いはありますが、8~12万円ほど健診中にお金を出してくれることになったんです。さらに、出産育児一時金のアップも。当時38万円だった金額を4万円引き上げて42万円に。妊娠・分娩する時にお金がかからないということが未受診妊婦を減らし、少なからずとも合計特殊出生率の上昇につながっていったのではないかと思います。 野田先生●日本はちゃんと費用対効果というのを出しますよね。たとえば介護保険は世界に冠たるもので、高齢者に対しては相当社会保障で取り組んできました。それにより、日本の高齢者は超長寿になってきています。同じように、今度は子どもたちのためにしっかり費用を出す。やった分だけ必ず成果が出ると思います。 吉村先生●そうですね。それを早く実現していかなければいけません。実は合計特殊出生率は上昇しましたが、今、産んでくださる女性の数が少ないということから、子どもの出生数は前年より7400人減り、過去最少の102万9800人に。僕は勝手に2055年問題といっているんですが、2055年には日本の人口が9000万人を切る。人口が減るのはいいのですが、そのバランスが問題。65歳以上の人が全体の40%を超え、生まれてくる子どもの数は50万人を切ってしまう。4割の高齢者を支えていく社会なんて、世界のどの国を見てもありません。国としての存続さえ厳しくなると思います。 野田先生●ただ人口が減るのではなく、減ると同時に支える側と支えられる側のバランスが壊れてしまうのは大変なこと。そこがあまり議論されていないなという感じはしますね。子どもたちは成長して労働者になり、納税者になって必ず将来返してくれる。それを考えたら、国は借金をしてでも先行投資をすることが必要で、今すぐにでも始めないといけないと思います。 吉村先生●女性と子どものために費用をかけることはもちろんですが、女性が産みたいと思うような環境作りも大切だと思います。日本では女性は仕事との両立に悩まされて結婚や出産が遅れることが多いようですが、世界を見ると女性が活躍している国、つまり女性の高い就労率を示す国は出生率も高い傾向があるんです。女性の就業率が70%を超える北欧諸国は合計特殊出生率も2・0前後を示している。それだけ働く女性が子どもを産める環境が整っているのだと思います。 野田先生●実はアメリカは、日本では当たり前の産休や育休といった制度がありませんから、わが国のほうが先を行っている気がするのに、子どもを産む女性が少ない。日本は制度以前に、ほとんどの男性たちに「女性は働かないもの」という考えがまだ根強くあるようです。女性が働くことはオプションみたいなもので、ハードもソフトもまだ男性が中心。子どもを産み育てるための職場は依然として少ない気がします。少子化を食い止めるにはここもどんどん変えていかないと。「働く人は子どものいる人」という定義のもと、職場から公共機関まですべての施設に子どもがいられる空間を作る。最初にコストはかかると思いますが、女性が働き、子どもが増えることでそれ以上の収入が入ってくると思います。政治の中でもしっかり決断していく必要がありますね。 話題は変わりますが、厚生労働省は2016年度より不妊治療の公費助成に43歳未満という年齢制限を設けることになりました。これについてはどうお考えですか? 少子化対策に影響は出ないのでしょうか。 吉村先生●40歳以上になるとだいたい3分の1くらいの人が、43歳になると約半数の人が流産してしまう。赤ちゃんを連れて帰れる割合、生産率でいったら43歳で50人に1人、45歳だと100人に1人になってしまうんですね。助成回数も10回から6回に減りましたが、これは助成を受けて妊娠した人の9割以上は6回までで妊娠したというデータを受けてのこと。このような医学的判断などで年齢制限が提起されました。しかし、良い点もあり、1年に最大6回も助成を受けられるようになったんですね。これにより長期にわたって治療を続けるのではなく、短期決戦で治療に集中する方が増えてくるはずです。 この年齢制限は税金を有効に使っていくということだけではなく、妊娠の最良な適齢期を教えていくという意味もあります。40歳を超えた妊娠は非常にリスクが高く、できれば25~35歳の間に妊娠をしていただくという啓発でもあるんですね。 野田先生●恥ずかしながら、私も妊娠や出産に関しての正しい知識はほとんど持っていませんでした。40歳から不妊治療を始めて、息子に出会うまで体外受精を16回。もっと早く治療を始めていればと後悔しています。同じ思いをして欲しくないので、教育は大切だと思っています。実際に総務会長になった初仕事は、文部科学省へ小学校の保健体育の時間に「女性は適正な時期しか妊娠しない」と教えるべきだとかけあったことですから。 女性だけではなく、もちろん男性の教育も必要です。教育、そして職場や社会の環境作りなど、少子化問題に特化した拠点を政府に作り、10年間に限定して人・もの・お金を集中的に注いで対策するべきだと考えています。指をくわえて待っていたら産める人が産めなくなってしまう。各省庁や議員と連携して迅速に進めていきたいと思っています。 衆議院議員(自由民主党) 野田 聖子 先生 1960年、福岡県生まれ。上智大学卒業。岐阜県議を経て1993年に衆院議員初当選。自民党政権の下、郵政相、消費者相を歴任し、2012年12月から自民党総務会長を務める。40歳から16回にわたる体外受精を経験し、アメリカで卵子提供を受けて2011年に長男を出産。 産婦人科医 吉村 泰典 先生 慶應義塾大学医学部卒業。これまで数多くの不妊症治療や分娩を担当。2013年内閣官房参与に就任し、政府の少子化対策・子育て支援をサポート。自らも、女性と子どもの未来を考える「生命の環境研究所」を立ち上げ、SNSなどで積極的に情報を発信している。
2014.10.7
コラム 不妊治療
-
次の採卵でも変性卵だったらと思うととても不安です
相談者 kumiさん(34歳)私は2回の異所性妊娠で両卵管を切除しているため、現在、体外受精を行っています。3年前に2回体外受精をして、2回目で妊娠しました。その時はどちらも受精卵のグレードは一番いいと言われました。でも、今回の体外受精では、採卵はできたのですが変性卵とのこと。医師には“古い殻”があったからじゃないかと言われましたが、次は前みたいにいい卵が採れるでしょうか?とても不安です。回答をよろしくお願いします。 ジネコ:変性卵はどんな時に生じるものですか? 藤野先生:体外受精においては、何より前周期からある程度のエストロゲンとプロゲステロンを補充したうえで卵巣機能をコントロールして採卵することが、質の良い受精卵を育てる秘訣ともいえます。kumiさんは「また次も変性卵?」と不安を感じていらっしゃるようですが、変性卵は何度もくり返すかというと、そういうものではありません。「古い殻」と表現されていますが、卵子の透明帯だけが残っていて、受精するべき卵子の細胞質がすでに死滅していたのかもしれません。卵巣には、以前の排卵周期に途中まで発育して、その後、閉鎖卵胞化してしまうものも多数残っています。そのような卵胞が今回の卵巣刺激で大きくなってきたものかもしれません。また、高温期のエストロゲンとプロゲステロンの分泌が不十分ですと、高温期の途中から中途半端な卵胞が大きくなってきたりします。このような場合、変性卵となってしまうかもしれません。前周期の高温期から、中用量ピルなどを使って高温期を14日くらいしっかりとつくり、卵巣のコンディションを整えてあげることが大切です。卵胞が育ち始めるのは月経が始まってからと皆さん解釈されているようですが、月経のリズムが乱れている方や、卵巣の機能が落ちている方というのは、前周期の高温期の半ばくらいから、すでに卵胞が育ってきている場合があるんですね。そこでエストロゲンやプロゲステロンを補いながら、LHやFSHの分泌を抑え込み、卵巣を整えた状態で、採卵に臨んだほうがいい。担当医のおっしゃった“古い殻”については、前周期の古い卵胞が残っていたことを、“古い殻”と表現されたのかなと思います。 ジネコ:排卵誘発の方法についてはいかがですか? 藤野先生:治療方針のところで気になったのは、月経の3日目からプ※レマリン®、5日目からクロミフェンを服用されているということ。プレマリン®は通常、FSHの値が高くて、卵巣の反応が悪い方によく処方される薬です。エストロゲンをあらかじめ補充しておくと、FSHの値が下がってきて、排卵誘発剤の効果が高まるので、年齢の高い方や、FSHの高い方に排卵誘発剤とエストロゲン製剤の併用を試みることがあります。ですから、30代でいきなりプレマリン®やクロミフェンから治療が始まっているのは、年齢の割にFSHの値が高め、あるいは排卵の周期に乱れがあるから、ということなのかなと。AMHやその他のホルモン値の記載がないので、なかなか内分泌、卵巣のコンディションを把握しづらいのですが、そこを治してからという担当医のご判断なのでしょう。変性卵だけが出てくるリスクを減らして、均質な前胞状卵胞がそろい、卵巣刺激に対して均等に大きくなってくるような状態をつくり出すことが必要ではないでしょうか。 ジネコ:今後の治療にアドバイスはありますか? 藤野先生:まだ年齢もお若いので、万全の準備をされて、卵巣刺激・採卵の準備をされれば、また良い卵子が採れる可能性は十分あると思います。2度の子宮外妊娠はつらい経験だったと思いますが、今後の治療の目標としては、スタートラインに立つ卵胞(前胞状卵胞)を均等な大きさにそろえることが大切。そのためにも前周期からしっかり卵巣をコントロールすることをすすめます。 藤野 祐司 先生 大阪市立大学医学部卒業。米国留学、同大学医学部婦人科学教室講師を経て、1997年にクリニックを開業。現在、同大学で非常勤講師も務める。B型・おとめ座。絵画と同様、先生が大好きなのが写真。若い頃は自分の手で現像やプリントするほど凝ったこともあるそう。「のんびりした台湾の田舎の風景などが好きですね。いつか時間ができたら風景写真を撮りにゆっくり出かけたいな」。 ■ あわせて読みたい ■ 13個採卵できたのに空胞や変性卵の数の説明がありません。 低AMH値で採卵しても変性卵のくり返しです。どんな採卵法がいい? 33歳でAMHの値が低く採れるのは変性卵か未熟卵。低刺激法しか無理ですか? なかむらレディースクリニック 女性のための健康生活マガジン JINEKO 専門家に相談してみる 相談者 kumiさん(34歳)私は2回の異所性妊娠で両卵管を切除しているため、現在、体外受精を行っています。3年前に2回体外受精をして、2回目で妊娠しました。その時はどちらも受精卵のグレードは一番いいと言われました。でも、今回の体外受精では、採卵はできたのですが変性卵とのこと。医師には“古い殻”があったからじゃないかと言われましたが、次は前みたいにいい卵が採れるでしょうか?とても不安です。回答をよろしくお願いします。 ジネコ:変性卵はどんな時に生じるものですか? 藤野先生:体外受精においては、何より前周期からある程度のエストロゲンとプロゲステロンを補充したうえで卵巣機能をコントロールして採卵することが、質の良い受精卵を育てる秘訣ともいえます。kumiさんは「また次も変性卵?」と不安を感じていらっしゃるようですが、変性卵は何度もくり返すかというと、そういうものではありません。「古い殻」と表現されていますが、卵子の透明帯だけが残っていて、受精するべき卵子の細胞質がすでに死滅していたのかもしれません。卵巣には、以前の排卵周期に途中まで発育して、その後、閉鎖卵胞化してしまうものも多数残っています。そのような卵胞が今回の卵巣刺激で大きくなってきたものかもしれません。また、高温期のエストロゲンとプロゲステロンの分泌が不十分ですと、高温期の途中から中途半端な卵胞が大きくなってきたりします。このような場合、変性卵となってしまうかもしれません。前周期の高温期から、中用量ピルなどを使って高温期を14日くらいしっかりとつくり、卵巣のコンディションを整えてあげることが大切です。卵胞が育ち始めるのは月経が始まってからと皆さん解釈されているようですが、月経のリズムが乱れている方や、卵巣の機能が落ちている方というのは、前周期の高温期の半ばくらいから、すでに卵胞が育ってきている場合があるんですね。そこでエストロゲンやプロゲステロンを補いながら、LHやFSHの分泌を抑え込み、卵巣を整えた状態で、採卵に臨んだほうがいい。担当医のおっしゃった“古い殻”については、前周期の古い卵胞が残っていたことを、“古い殻”と表現されたのかなと思います。 ジネコ:排卵誘発の方法についてはいかがですか? 藤野先生:治療方針のところで気になったのは、月経の3日目からプ※レマリン®、5日目からクロミフェンを服用されているということ。プレマリン®は通常、FSHの値が高くて、卵巣の反応が悪い方によく処方される薬です。エストロゲンをあらかじめ補充しておくと、FSHの値が下がってきて、排卵誘発剤の効果が高まるので、年齢の高い方や、FSHの高い方に排卵誘発剤とエストロゲン製剤の併用を試みることがあります。ですから、30代でいきなりプレマリン®やクロミフェンから治療が始まっているのは、年齢の割にFSHの値が高め、あるいは排卵の周期に乱れがあるから、ということなのかなと。AMHやその他のホルモン値の記載がないので、なかなか内分泌、卵巣のコンディションを把握しづらいのですが、そこを治してからという担当医のご判断なのでしょう。変性卵だけが出てくるリスクを減らして、均質な前胞状卵胞がそろい、卵巣刺激に対して均等に大きくなってくるような状態をつくり出すことが必要ではないでしょうか。 ジネコ:今後の治療にアドバイスはありますか? 藤野先生:まだ年齢もお若いので、万全の準備をされて、卵巣刺激・採卵の準備をされれば、また良い卵子が採れる可能性は十分あると思います。2度の子宮外妊娠はつらい経験だったと思いますが、今後の治療の目標としては、スタートラインに立つ卵胞(前胞状卵胞)を均等な大きさにそろえることが大切。そのためにも前周期からしっかり卵巣をコントロールすることをすすめます。 藤野 祐司 先生 大阪市立大学医学部卒業。米国留学、同大学医学部婦人科学教室講師を経て、1997年にクリニックを開業。現在、同大学で非常勤講師も務める。B型・おとめ座。絵画と同様、先生が大好きなのが写真。若い頃は自分の手で現像やプリントするほど凝ったこともあるそう。「のんびりした台湾の田舎の風景などが好きですね。いつか時間ができたら風景写真を撮りにゆっくり出かけたいな」。 ■ あわせて読みたい ■ 13個採卵できたのに空胞や変性卵の数の説明がありません。 低AMH値で採卵しても変性卵のくり返しです。どんな採卵法がいい? 33歳でAMHの値が低く採れるのは変性卵か未熟卵。低刺激法しか無理ですか? なかむらレディースクリニック 女性のための健康生活マガジン JINEKO 専門家に相談してみる
2014.7.4
コラム 不妊治療
-
自力で生理がこないのは長年のピルの服用で卵胞が減ったせい?
「高齢でFSHが高くてもピルを飲まずにプレマリン®とクロミッド®でFSHは下がるのではと思うのですが、ピルを飲むしか手がないのでしょうか?」
2013.10.16
コラム 不妊治療
-
採卵は多いほうがいい?最適な移植時期は?
相談者 シノさん(40歳)■ 3回目の胚盤胞移植で初めての陽性でしたが、2度目の流産が確定してしまいました。昨年採卵し凍結した胚盤胞があと2個ありますが、私の通う病院ではグレードを付けていないので心配です。高齢とAMH値の低さから、再度採卵したほうがいいのでは?と悩んでいます。 採卵しておくのも1つの方法 シノさんの場合は40歳と年齢が高いので、採卵しておきたいというお気持ちはわかります。たとえば、40歳で採った卵子を45歳で子宮に戻しても、40歳当時の妊娠率も凍結されているということなので、それも正解の1つ。ただ、残り2個の胚では心配とのことですが、年齢からいうと、去年採った卵子は今年採った卵子よりいいはず。だから、どちらも正解といえば正解なんですね。では、採卵するなら何個採ればいいのか……となると難しい。卵子が1個しか採れなくても1人産む方もいれば、200個採っても子どもをもてない方もいるように、すごく個人差がありますから。アメリカのデータでは、体外受精で15.1個に1人の赤ちゃんというのが平均です。1回の採卵で15個くらいまでは採れた卵子の数に従って妊娠率が上がっていくんですよ。ですから、1回の採卵で15~20個あればすごく有利です。現在は禁止されていますが、以前、韓国で卵子提供を行っていた時は、だいたい17個で1人の赤ちゃんが生まれるというデータがわかっています。もともと、それほど確率は高くないのです。だから、卵子を採っておくことも1つの方法ですし、あるいはその間に何か条件を整えるとか。当院では、42~43歳の重症の子宮筋腫の方が、先に何個か採卵した後に手術をして、44~45歳で移植して出産されたというケースもあります。 相談者 まるさん(32歳)■ 今まで移植5回のうち、4回初期胚移植↓陰性、1回凍結胚盤胞移植↓陽性、のち初期流産という結果でした。今週また採卵予定ですが、もし何個か受精できたら、胚盤胞まで培養してもらうか、初期胚で移植するか迷っています。 どちらがいいとは一概には言えません 初期胚と胚盤胞ではどちらを移植したほうがいいかというのは、本来、比べられないことです。そもそも体外受精は、初期胚移植から始まりました。体外受精の過程で、一番難しい技術が体外培養でした。胚盤胞培養は日進月歩で進歩し、今、ようやく実施できるようになってきた技術なのです。ですから、ラボの培養技術や手技が、胚盤胞の形成率にすごく影響してきます。ストレスに強い卵子かどうかの個人差や年齢の影響も大きく、若い方の場合は卵子が10個採れたら4~5個胚盤胞になるというのが平均ですが、40歳以上の方の場合は、胚盤胞になるのは1~3個ほどです。当初は期待して始められた治療法でしたが、決して成績がいいというわけではありません。その理由は、受精卵は長い間培養すると、負荷がかかります。胚盤胞培養は要するに、競技の予選と同じようなもので、負荷がかかっても、その逆境を乗り越えた卵は強く、妊娠率は高い。だから卵がたくさんある場合は「いい卵を選びやすい」という方法なのです。移植あたりの妊娠率は初期胚よりいいのですが、それは分母を絞っているだけなのです。胚盤胞までいかない胚は、数に入っていませんから。また、患者さんが高齢になると、予選でダメになる卵子が多いので、成績は期待できないということがあ ります。卵子が少なかったり、年齢が高い人の場合は、初期胚で早く子宮環境に戻してあげたほうが救える卵がいっぱいあるかもしれない。だから、胚盤胞と初期胚、どちらがいいかというのは、一概には言えないのです。どちらを選択するかは、その人の年齢や、予備能、できている受精卵の数などから判断して行うべきだと思います。 むしろ、新鮮胚移植か凍結胚移植かが重要 まるさんは、初期胚は新鮮胚移植をしたということですが、実は、ここにも大きな違いがあります。移植あたりの妊娠率は、新鮮胚移植と凍結胚移植で全然違うのです。同じ年齢の方で統計を取ると、凍結胚移植のほうが妊娠率は常にいいのです。そのため、当院では、新鮮胚移植は行わなくなりましたが、一応の基準は、40歳以下なら、一部の受精卵を1日目の一番ダメージが少ない前核期胚で凍結。残った受精卵のうち、胚盤胞になったものを凍結します。前核期胚も凍結しておくことで、胚盤胞に至る受精卵がなくても、移植できないという事態を防ぐのです。具体的にご説明すると、たとえば卵子が10個採れて、半分を前核期胚で凍結し、半分を培養したが1個も胚盤胞の凍結ができなかったとします。その場合、同じ時期に採れた卵子の前核期胚ですから、前核期胚の凍結卵でも妊娠は難しいのでは、と思いますよね。ところが、それを移植すると、ちゃんと妊娠率が出るのです。このように、無理に胚盤胞培養に持っていくと、移植のチャンスがあった方の機会をなくしてしまうと考え、当院では両方の凍結を行っているのです。また、40歳以上の方は凍結できる胚盤胞の数がグッと減りますので、基本的に前核期胚で凍結し、分割期胚で移植します。日本産科婦人科学会の全国平均や世界の状況を見ても、凍結胚のほうがいいという考えは間違いないので、私はすべて凍結しようと考えていますが、凍結技術が低い施設では、新鮮胚のほうが安全ですよ、ということになります。つまり、施設の技術の差がすごく大きく影響するんですね。ですから、凍結したほうがいいけれど、その施設の技術が高いことが前提条件です。 浅田 義正 先生 名古屋大学医学部卒業。1993年、米国初の体外受精専門施設に留学し、主に顕微授精を研究。帰国後、日本初の精巣精子を 用いた顕微授精による妊娠例を報告。2004年、浅田レディースクリニック開院。2006年、生殖医療専門医認定。2010年、浅 田レディース名古屋駅前クリニック開院。最近はテレビや雑誌などの取材が増えているそう。マスコミを通じて先生が推奨するAMHの計測などの認知度が高まり、「僕の望んできた状況になってきたというのが、今一番感じていることですね」と先生。 【PR】体外受精をお考えなら。田村秀子産婦人科医院 ■ あわせて読みたい ■ 体外受精の胚移植 6回の胚移植で結果が出ないのは卵子の質のせい?方法を変えたほうがいい? 子宮内膜症があります 9回胚移植していますが着床しないのはなぜ? 浅田レディースクリニック 女性のための健康生活マガジン JINEKO 専門家に相談してみる 相談者 シノさん(40歳)■ 3回目の胚盤胞移植で初めての陽性でしたが、2度目の流産が確定してしまいました。昨年採卵し凍結した胚盤胞があと2個ありますが、私の通う病院ではグレードを付けていないので心配です。高齢とAMH値の低さから、再度採卵したほうがいいのでは?と悩んでいます。 採卵しておくのも1つの方法 シノさんの場合は40歳と年齢が高いので、採卵しておきたいというお気持ちはわかります。たとえば、40歳で採った卵子を45歳で子宮に戻しても、40歳当時の妊娠率も凍結されているということなので、それも正解の1つ。ただ、残り2個の胚では心配とのことですが、年齢からいうと、去年採った卵子は今年採った卵子よりいいはず。だから、どちらも正解といえば正解なんですね。では、採卵するなら何個採ればいいのか……となると難しい。卵子が1個しか採れなくても1人産む方もいれば、200個採っても子どもをもてない方もいるように、すごく個人差がありますから。アメリカのデータでは、体外受精で15.1個に1人の赤ちゃんというのが平均です。1回の採卵で15個くらいまでは採れた卵子の数に従って妊娠率が上がっていくんですよ。ですから、1回の採卵で15~20個あればすごく有利です。現在は禁止されていますが、以前、韓国で卵子提供を行っていた時は、だいたい17個で1人の赤ちゃんが生まれるというデータがわかっています。もともと、それほど確率は高くないのです。だから、卵子を採っておくことも1つの方法ですし、あるいはその間に何か条件を整えるとか。当院では、42~43歳の重症の子宮筋腫の方が、先に何個か採卵した後に手術をして、44~45歳で移植して出産されたというケースもあります。 相談者 まるさん(32歳)■ 今まで移植5回のうち、4回初期胚移植↓陰性、1回凍結胚盤胞移植↓陽性、のち初期流産という結果でした。今週また採卵予定ですが、もし何個か受精できたら、胚盤胞まで培養してもらうか、初期胚で移植するか迷っています。 どちらがいいとは一概には言えません 初期胚と胚盤胞ではどちらを移植したほうがいいかというのは、本来、比べられないことです。そもそも体外受精は、初期胚移植から始まりました。体外受精の過程で、一番難しい技術が体外培養でした。胚盤胞培養は日進月歩で進歩し、今、ようやく実施できるようになってきた技術なのです。ですから、ラボの培養技術や手技が、胚盤胞の形成率にすごく影響してきます。ストレスに強い卵子かどうかの個人差や年齢の影響も大きく、若い方の場合は卵子が10個採れたら4~5個胚盤胞になるというのが平均ですが、40歳以上の方の場合は、胚盤胞になるのは1~3個ほどです。当初は期待して始められた治療法でしたが、決して成績がいいというわけではありません。その理由は、受精卵は長い間培養すると、負荷がかかります。胚盤胞培養は要するに、競技の予選と同じようなもので、負荷がかかっても、その逆境を乗り越えた卵は強く、妊娠率は高い。だから卵がたくさんある場合は「いい卵を選びやすい」という方法なのです。移植あたりの妊娠率は初期胚よりいいのですが、それは分母を絞っているだけなのです。胚盤胞までいかない胚は、数に入っていませんから。また、患者さんが高齢になると、予選でダメになる卵子が多いので、成績は期待できないということがあ ります。卵子が少なかったり、年齢が高い人の場合は、初期胚で早く子宮環境に戻してあげたほうが救える卵がいっぱいあるかもしれない。だから、胚盤胞と初期胚、どちらがいいかというのは、一概には言えないのです。どちらを選択するかは、その人の年齢や、予備能、できている受精卵の数などから判断して行うべきだと思います。 むしろ、新鮮胚移植か凍結胚移植かが重要 まるさんは、初期胚は新鮮胚移植をしたということですが、実は、ここにも大きな違いがあります。移植あたりの妊娠率は、新鮮胚移植と凍結胚移植で全然違うのです。同じ年齢の方で統計を取ると、凍結胚移植のほうが妊娠率は常にいいのです。そのため、当院では、新鮮胚移植は行わなくなりましたが、一応の基準は、40歳以下なら、一部の受精卵を1日目の一番ダメージが少ない前核期胚で凍結。残った受精卵のうち、胚盤胞になったものを凍結します。前核期胚も凍結しておくことで、胚盤胞に至る受精卵がなくても、移植できないという事態を防ぐのです。具体的にご説明すると、たとえば卵子が10個採れて、半分を前核期胚で凍結し、半分を培養したが1個も胚盤胞の凍結ができなかったとします。その場合、同じ時期に採れた卵子の前核期胚ですから、前核期胚の凍結卵でも妊娠は難しいのでは、と思いますよね。ところが、それを移植すると、ちゃんと妊娠率が出るのです。このように、無理に胚盤胞培養に持っていくと、移植のチャンスがあった方の機会をなくしてしまうと考え、当院では両方の凍結を行っているのです。また、40歳以上の方は凍結できる胚盤胞の数がグッと減りますので、基本的に前核期胚で凍結し、分割期胚で移植します。日本産科婦人科学会の全国平均や世界の状況を見ても、凍結胚のほうがいいという考えは間違いないので、私はすべて凍結しようと考えていますが、凍結技術が低い施設では、新鮮胚のほうが安全ですよ、ということになります。つまり、施設の技術の差がすごく大きく影響するんですね。ですから、凍結したほうがいいけれど、その施設の技術が高いことが前提条件です。 浅田 義正 先生 名古屋大学医学部卒業。1993年、米国初の体外受精専門施設に留学し、主に顕微授精を研究。帰国後、日本初の精巣精子を 用いた顕微授精による妊娠例を報告。2004年、浅田レディースクリニック開院。2006年、生殖医療専門医認定。2010年、浅 田レディース名古屋駅前クリニック開院。最近はテレビや雑誌などの取材が増えているそう。マスコミを通じて先生が推奨するAMHの計測などの認知度が高まり、「僕の望んできた状況になってきたというのが、今一番感じていることですね」と先生。 【PR】体外受精をお考えなら。田村秀子産婦人科医院 ■ あわせて読みたい ■ 体外受精の胚移植 6回の胚移植で結果が出ないのは卵子の質のせい?方法を変えたほうがいい? 子宮内膜症があります 9回胚移植していますが着床しないのはなぜ? 浅田レディースクリニック 女性のための健康生活マガジン JINEKO 専門家に相談してみる
2013.10.10
コラム 不妊治療
-
胚移植後に三陰交へお灸をするのは、流産の原因になるのでしょうか?
相談者 ゆいかさん(35歳)■ 先月の29日に体外受精し、2日目に新鮮胚移植をしました。今月の1日に不妊に詳しいといわれている鍼灸院で、三陰交などへの鍼やお灸をしてもらいました。自宅での三陰交や関元へのお灸をすすめられ、計3回行いました。ところが、移植後は三陰交への鍼やお灸はしない方がいい、流産の原因になるという記事をネットで読みました。真実はどうなのか、とても不安です。 鍼灸は全身のツボを組み合わせて効果をだすから、1つのツボが流産を誘導はしない。三陰交は子宮の血流を増加させ、生殖機能を高める補腎・補血のツボとして古来より重要とされてきました。三陰交が流産を促すツボであれば、不妊の方への使用は禁忌となるはず ゆいかさんの月経の状態が年齢とともに変化してきたのは、加齢による「腎気」の低下かと思われます。「腎」は、月経や卵巣機能などの生殖器系をつかさどります。また、めまいや立ちくらみをおこしたり、落ち込みやすいことから気虚や血虚、腹部瘀血 やのぼせなどもあるかと思われます。東洋医学では「五行(木・火・土・金・水)」を体と対応させ、それらのバランスを調整することで妊娠力を向上させます。鍼灸の治療は全身のツボを組み合わせて効果をだすので、1つのツボが流産を引き起こすことはないのです。三陰交が流産を促すツボであれば、不妊の方への使用は禁忌となるでしょうが、そのような事実はまったくありません。 心と体は密接に結びついているので、ゆったりした気持ちで過ごすことが大切 心配事は体を緊張させ、気・血・津液の流れがとどこおり、子宮内の環境が悪化します。安心してゆったり過ごすことで、妊娠力を高めることができます。インターネットではさまざまなうわさが事実のように書き込まれていますので、心配の種を見つけることもあるかと思います。情報に振り回される性格だからと、妊娠中不要不急なネット検索を控えた方もいました。心と体は密接に結びついています。ゆったりした気持ちで過ごし、食事はバランスよく、冷たいものは控えます。さらに薄着は避けて冷えが気になるときはしっかり保温、それでも冷えるならカイロなどで加温し てください。しめつける服や下着は避けて、できれば靴下は五本指ソックスを履きましょう。赤ちゃんは天からの授かりものです。その赤ちゃんをお母さんがしっかり受け止めてあげることで、子宮に根を張り成長してくれます。赤ちゃんの生命力を信じ、ていねいな生活を送ることで妊娠力が向上します。ゆいかさんにコウノトリが飛んできますよう、心よりお祈りしております。 山田 紘子 先生 整形外科クリニックで鍼灸治療を学んだ後、外資系ホテル内スパ、表参道ヒルズ内スパにて、スパマネージャーとして勤務。予約の取れないセラピストとして活躍。現在八王子市に女性専用治療院を開設。東洋医学、西洋医学両方の観点から研究したオリジナルの子宝鍼灸治療を行っている。 相談者 ゆいかさん(35歳)■ 先月の29日に体外受精し、2日目に新鮮胚移植をしました。今月の1日に不妊に詳しいといわれている鍼灸院で、三陰交などへの鍼やお灸をしてもらいました。自宅での三陰交や関元へのお灸をすすめられ、計3回行いました。ところが、移植後は三陰交への鍼やお灸はしない方がいい、流産の原因になるという記事をネットで読みました。真実はどうなのか、とても不安です。 鍼灸は全身のツボを組み合わせて効果をだすから、1つのツボが流産を誘導はしない。三陰交は子宮の血流を増加させ、生殖機能を高める補腎・補血のツボとして古来より重要とされてきました。三陰交が流産を促すツボであれば、不妊の方への使用は禁忌となるはず ゆいかさんの月経の状態が年齢とともに変化してきたのは、加齢による「腎気」の低下かと思われます。「腎」は、月経や卵巣機能などの生殖器系をつかさどります。また、めまいや立ちくらみをおこしたり、落ち込みやすいことから気虚や血虚、腹部瘀血 やのぼせなどもあるかと思われます。東洋医学では「五行(木・火・土・金・水)」を体と対応させ、それらのバランスを調整することで妊娠力を向上させます。鍼灸の治療は全身のツボを組み合わせて効果をだすので、1つのツボが流産を引き起こすことはないのです。三陰交が流産を促すツボであれば、不妊の方への使用は禁忌となるでしょうが、そのような事実はまったくありません。 心と体は密接に結びついているので、ゆったりした気持ちで過ごすことが大切 心配事は体を緊張させ、気・血・津液の流れがとどこおり、子宮内の環境が悪化します。安心してゆったり過ごすことで、妊娠力を高めることができます。インターネットではさまざまなうわさが事実のように書き込まれていますので、心配の種を見つけることもあるかと思います。情報に振り回される性格だからと、妊娠中不要不急なネット検索を控えた方もいました。心と体は密接に結びついています。ゆったりした気持ちで過ごし、食事はバランスよく、冷たいものは控えます。さらに薄着は避けて冷えが気になるときはしっかり保温、それでも冷えるならカイロなどで加温し てください。しめつける服や下着は避けて、できれば靴下は五本指ソックスを履きましょう。赤ちゃんは天からの授かりものです。その赤ちゃんをお母さんがしっかり受け止めてあげることで、子宮に根を張り成長してくれます。赤ちゃんの生命力を信じ、ていねいな生活を送ることで妊娠力が向上します。ゆいかさんにコウノトリが飛んできますよう、心よりお祈りしております。 山田 紘子 先生 整形外科クリニックで鍼灸治療を学んだ後、外資系ホテル内スパ、表参道ヒルズ内スパにて、スパマネージャーとして勤務。予約の取れないセラピストとして活躍。現在八王子市に女性専用治療院を開設。東洋医学、西洋医学両方の観点から研究したオリジナルの子宝鍼灸治療を行っている。
2013.6.26
コラム 不妊治療
-
不妊治療と鍼灸治療を併用していますが、日常生活で気をつけたらいいことは何ですか?
相談者 penginさん(38歳)■ 不妊治療をはじめて2年になり、体外受精にステップアップして4か月目です。今まで二度体外受精に挑戦し、1回目は移植後途中で分割がストップし、2回目は移植前に成長が止まってしまいました。先月から鍼灸院にも通っていますが、直後はポカポカしていてもすぐに腰から足にかけて冷えてしまいます。辛いものは苦手ですが、香味野菜は好きなので意識的に摂っています。 鍼で腎気を補って瘀血を改善させ、お灸で骨盤や内臓を温めてホルモンのバランスを調整する 20代の若い時期に、子宮内膜症になりかけて、8年間もピルを服用されていたことがとても気になります。というのも、ピルの長期間服用は腎虚傾向になりやすいからです。 過度のストレスは卵胞ホルモン、黄体放出ホルモンをアンバランスにする 腎虚になると、結果的に血流が悪くなり瘀血になります。Penginさんも腎虚からくる瘀血になっていると思います。瘀血になると、代謝異常や月経困難、湿疹など皮膚への影響もおきやすく、血圧異常や肥満傾向にもなります。また、腎の陽気を損なうので、下半身がとくに冷えやすくなります。腎は生殖機能をつかさどっているので、子宮・卵巣などへの影響も少なくないのです。間脳にある、視床下部は情動行動中枢で、ストレスの影響を受けやすい。また、体温調節中枢・下垂体ホルモン調節中枢でもあるので、過度のストレスは卵胞ホルモン・黄体放出ホルモンにアンバランスをおこすことがあります。趣味を見つけたり、気分転換をするなどして、できるだけストレスをためない生活を心がけましょう。 不妊治療のすべての過程が、幸せな気持ちで行えるような心構えが大切 辛いものは苦手とのことですが、適量の辛味は腎を助けます。また、肺や大腸にも効能があり、ストレスを発散し、体を温めてくれます。らっきょう、しそ、たまねぎなどを使ってみてはいかがでしょうか。鍼で腎気を補うことで瘀血を改善させ、お灸で骨盤や内臓を温めていくことでホルモンのバランスを調整していくことをおすすめします。鍼灸を続けることで、良い卵子ができるようになり、栄養に満ちたフカフカの子宮内膜に改善し、受精卵をしっかり着床することができるようになります。ただ、受精卵を着床させるために最も大切なことは、不妊治療が機械的な作業になるのではなく、プロセスをふくめて、すべての過程が幸せな気持ちで行えること、幸せな時間であることが、より効果をあげ てくれると思います。イライラやストレスがあると、せっかくの不妊治療、鍼灸治療も効果が半減されてしまいますから。 原 徳子 先生 女性特有の症状を専門にした治療を長年行っています。婦人科・マタニティ・不妊・ストレスなど、メンタル面のカウンセリングも同時に進めながら、心と体の両面をサポートしています。 相談者 penginさん(38歳)■ 不妊治療をはじめて2年になり、体外受精にステップアップして4か月目です。今まで二度体外受精に挑戦し、1回目は移植後途中で分割がストップし、2回目は移植前に成長が止まってしまいました。先月から鍼灸院にも通っていますが、直後はポカポカしていてもすぐに腰から足にかけて冷えてしまいます。辛いものは苦手ですが、香味野菜は好きなので意識的に摂っています。 鍼で腎気を補って瘀血を改善させ、お灸で骨盤や内臓を温めてホルモンのバランスを調整する 20代の若い時期に、子宮内膜症になりかけて、8年間もピルを服用されていたことがとても気になります。というのも、ピルの長期間服用は腎虚傾向になりやすいからです。 過度のストレスは卵胞ホルモン、黄体放出ホルモンをアンバランスにする 腎虚になると、結果的に血流が悪くなり瘀血になります。Penginさんも腎虚からくる瘀血になっていると思います。瘀血になると、代謝異常や月経困難、湿疹など皮膚への影響もおきやすく、血圧異常や肥満傾向にもなります。また、腎の陽気を損なうので、下半身がとくに冷えやすくなります。腎は生殖機能をつかさどっているので、子宮・卵巣などへの影響も少なくないのです。間脳にある、視床下部は情動行動中枢で、ストレスの影響を受けやすい。また、体温調節中枢・下垂体ホルモン調節中枢でもあるので、過度のストレスは卵胞ホルモン・黄体放出ホルモンにアンバランスをおこすことがあります。趣味を見つけたり、気分転換をするなどして、できるだけストレスをためない生活を心がけましょう。 不妊治療のすべての過程が、幸せな気持ちで行えるような心構えが大切 辛いものは苦手とのことですが、適量の辛味は腎を助けます。また、肺や大腸にも効能があり、ストレスを発散し、体を温めてくれます。らっきょう、しそ、たまねぎなどを使ってみてはいかがでしょうか。鍼で腎気を補うことで瘀血を改善させ、お灸で骨盤や内臓を温めていくことでホルモンのバランスを調整していくことをおすすめします。鍼灸を続けることで、良い卵子ができるようになり、栄養に満ちたフカフカの子宮内膜に改善し、受精卵をしっかり着床することができるようになります。ただ、受精卵を着床させるために最も大切なことは、不妊治療が機械的な作業になるのではなく、プロセスをふくめて、すべての過程が幸せな気持ちで行えること、幸せな時間であることが、より効果をあげ てくれると思います。イライラやストレスがあると、せっかくの不妊治療、鍼灸治療も効果が半減されてしまいますから。 原 徳子 先生 女性特有の症状を専門にした治療を長年行っています。婦人科・マタニティ・不妊・ストレスなど、メンタル面のカウンセリングも同時に進めながら、心と体の両面をサポートしています。
2013.6.26
コラム 不妊治療
-
低温期に36.5℃以上あることが多い体温を下げるにはどうしたらいいのでしょうか?
相談者 くるみさん(41歳)■ 低温期には低温にならないと良い卵ができないと聞きました。低温期に36.5℃以上あることが多い体温を下げるにはどうしたらいいのでしょうか。また、手足が冷たくなる冷え性も改善したいと思っています。 腎の働きが低下し、体に必要な潤いが不足していることが低温期の体温を高くする くるみさんがとくに改善されたいのは、低温期の体温を下げたいことですね。足腰のだるさや手足が冷たくなる、性欲がない、初経が遅かったなどの症状から「腎虚陰虚証」の状態が考えられます。腎には性行為、妊娠、出産などの生殖機能や、人の成長や発育を促進したり、若々しさを維持するなどの働きがあります。 腎の働きが低下した「腎虚」は生殖機能の働きが悪くなり未妊の原因となる 腎の働きが十分であれば、女性の月経・妊娠、出産は正常に機能します。逆に働きが低下すれば「腎虚」という状態になり、未妊などの原因となります。また、古典には「腎は水をつかさどり」と書かれており、腎に体液である水が不足すると熱が発生します。その熱があちこちに波及して、ほてりや寝汗、口が渇く、動悸といった症状がおこります。つまり体に必要な潤いが不足している状態ということです。くるみさんが気にされている低温期の体温が高い症状を、東洋医学では以上のように捉えます。腎の水が不足する原因は肉体労働による疲労や、性生活の回数が多すぎるなどです。とくに、性欲が落ちたと感じている方の、無理は禁物です。 鍼灸で腎をしっかり補いバランスを取ることで、妊娠力を高める 腎虚陰虚証を改善する食材としては、黒ゴマ、黒豆、ひじき、山芋、オクラ、ナマコ、なめこなど、黒いもの、ねばりのあるものを積極的に摂るといいでしょう。さらに潤い不足の人は、体に熱を生む唐辛子、こしょう、山椒などの香辛料を摂り過ぎないことです。香辛料は、体をほてらせるだけでなく、体の潤いを奪う作用があるからです。それから食養生には優先順位があります。まずは少食であること、良く噛んで食べること(最低30回)、体質に合わないものを摂らないようにすることです。この3つができていなくては、体質に合って妊娠に良いものでも、効果は半減します。鍼灸では腎をしっかり補いバランスをとることで、妊娠力を高めます。体に優しい鍼灸治療の応援で、くるみさんにコウノトリが訪れることをお祈りしています。 三ツ川 友一郎 先生 平成7年に三ツ川鍼灸院を開院。10年以上にわたり不妊鍼灸治療に取り組み、妊娠へと導いた実績は多く、今では約9割の方が未妊治療で来院。鍼灸で妊娠しやすい身体づくり、心づくりの応援をしている。 相談者 くるみさん(41歳)■ 低温期には低温にならないと良い卵ができないと聞きました。低温期に36.5℃以上あることが多い体温を下げるにはどうしたらいいのでしょうか。また、手足が冷たくなる冷え性も改善したいと思っています。 腎の働きが低下し、体に必要な潤いが不足していることが低温期の体温を高くする くるみさんがとくに改善されたいのは、低温期の体温を下げたいことですね。足腰のだるさや手足が冷たくなる、性欲がない、初経が遅かったなどの症状から「腎虚陰虚証」の状態が考えられます。腎には性行為、妊娠、出産などの生殖機能や、人の成長や発育を促進したり、若々しさを維持するなどの働きがあります。 腎の働きが低下した「腎虚」は生殖機能の働きが悪くなり未妊の原因となる 腎の働きが十分であれば、女性の月経・妊娠、出産は正常に機能します。逆に働きが低下すれば「腎虚」という状態になり、未妊などの原因となります。また、古典には「腎は水をつかさどり」と書かれており、腎に体液である水が不足すると熱が発生します。その熱があちこちに波及して、ほてりや寝汗、口が渇く、動悸といった症状がおこります。つまり体に必要な潤いが不足している状態ということです。くるみさんが気にされている低温期の体温が高い症状を、東洋医学では以上のように捉えます。腎の水が不足する原因は肉体労働による疲労や、性生活の回数が多すぎるなどです。とくに、性欲が落ちたと感じている方の、無理は禁物です。 鍼灸で腎をしっかり補いバランスを取ることで、妊娠力を高める 腎虚陰虚証を改善する食材としては、黒ゴマ、黒豆、ひじき、山芋、オクラ、ナマコ、なめこなど、黒いもの、ねばりのあるものを積極的に摂るといいでしょう。さらに潤い不足の人は、体に熱を生む唐辛子、こしょう、山椒などの香辛料を摂り過ぎないことです。香辛料は、体をほてらせるだけでなく、体の潤いを奪う作用があるからです。それから食養生には優先順位があります。まずは少食であること、良く噛んで食べること(最低30回)、体質に合わないものを摂らないようにすることです。この3つができていなくては、体質に合って妊娠に良いものでも、効果は半減します。鍼灸では腎をしっかり補いバランスをとることで、妊娠力を高めます。体に優しい鍼灸治療の応援で、くるみさんにコウノトリが訪れることをお祈りしています。 三ツ川 友一郎 先生 平成7年に三ツ川鍼灸院を開院。10年以上にわたり不妊鍼灸治療に取り組み、妊娠へと導いた実績は多く、今では約9割の方が未妊治療で来院。鍼灸で妊娠しやすい身体づくり、心づくりの応援をしている。
2013.6.26
コラム 不妊治療
-
漢方薬や鍼灸の治療が自分の体質に合っているのか、合わないのかがわかりません
相談者 Pandaさん(37歳)■ 不妊治療に漢方薬、鍼灸などありますが、自分に本当に合っているのかどうかがわかりません。何か判断基準などはあるのでしょうか?西洋医学の薬はほぼ明らかに効果を認識できますが、東洋医学の効果の判断基準を教えてください。 東洋医学の四診を通して、今の不妊状態に必要なのは何かを考えることが先決 東洋医学では、治療の前にしておくべきことが2つあります。1つは情報集めの「四診」。問診や脈、舌、腹、全身の経穴などを実際に見て触れることなどを通して、情報を引きだしていきます。2つ目は「治療方針の決定」。四診で得られた情報を基に、「赤ちゃんと出会うには、どのような体づくりをしていくのが良いのか」を考えていきます。最後に「鍼灸治療」。治療方針に沿って行われます。不妊で悩んでいると「赤ちゃんができる、体に良い」ということは、何でも試してみたくなりますよね。でも、あれもこれもと、足し算していって無理を重ねると、それが逆にストレスになることもあります。 西洋医学、東洋医学両方の観点からあわせた視点で、最善の選択を考える 年齢や、いままでの不妊治療歴なども大切な情報です。また、現代の不妊治療は、高度生殖医療もふくめ、多くの「技術」の選択をすることができます。ですから、四診によって得られた現在の状況と、西洋医学もふくめた、さまざまな選択肢を併せて考えながら、統合的に「治療方針の決定」を行なっていくことがとても大切です。鍼灸が合うのかどうかということは、この統合的な治療方針に沿って考えます。鍼灸が必要であるのか、漢方も考えた方がいいのか、西洋医学を優先すべきか、食生活や養生が一番必要なのかなど、時間の問題も含め、あなたの不妊治療に必要なことを、しっかり優先順位をつかんで進めていきましょう。 鍼灸治療にはいろいろなアプローチの仕方があるから、効果も期待できる 赤ちゃんを授かるためには、体を温め養うことが必要だし、子宮や卵巣の血流を良くしていくことも大事です。また、全身のストレス状態を解消することがポイントでもあるというように、さまざまなケースがあります。鍼灸治療は、鍼とお灸を使い、いろいろな形でアプローチすることで、それらに対し多くの効果を発揮しています。 治療院での鍼灸治療と平行して、自宅で毎日お灸をしていただくと、効果をより高めることもができます。Pandaさんにとって、効果が期待できる方法を、鍼灸院で提案されるといいですね。 米山 章子 先生 東海大学大磯病院東洋医学科にて研修研鑽を積み、平成9年「鍼灸リラクゼーションビッグママ治療室」を開業 。平成20年たにぐち書店より「不妊!大作戦」を出版。平成23 年不妊カウンセリング学会にて発表、奨励賞を受賞 。不妊治療などの講演にて不妊鍼灸治療の啓蒙活動を行っている。 相談者 Pandaさん(37歳)■ 不妊治療に漢方薬、鍼灸などありますが、自分に本当に合っているのかどうかがわかりません。何か判断基準などはあるのでしょうか?西洋医学の薬はほぼ明らかに効果を認識できますが、東洋医学の効果の判断基準を教えてください。 東洋医学の四診を通して、今の不妊状態に必要なのは何かを考えることが先決 東洋医学では、治療の前にしておくべきことが2つあります。1つは情報集めの「四診」。問診や脈、舌、腹、全身の経穴などを実際に見て触れることなどを通して、情報を引きだしていきます。2つ目は「治療方針の決定」。四診で得られた情報を基に、「赤ちゃんと出会うには、どのような体づくりをしていくのが良いのか」を考えていきます。最後に「鍼灸治療」。治療方針に沿って行われます。不妊で悩んでいると「赤ちゃんができる、体に良い」ということは、何でも試してみたくなりますよね。でも、あれもこれもと、足し算していって無理を重ねると、それが逆にストレスになることもあります。 西洋医学、東洋医学両方の観点からあわせた視点で、最善の選択を考える 年齢や、いままでの不妊治療歴なども大切な情報です。また、現代の不妊治療は、高度生殖医療もふくめ、多くの「技術」の選択をすることができます。ですから、四診によって得られた現在の状況と、西洋医学もふくめた、さまざまな選択肢を併せて考えながら、統合的に「治療方針の決定」を行なっていくことがとても大切です。鍼灸が合うのかどうかということは、この統合的な治療方針に沿って考えます。鍼灸が必要であるのか、漢方も考えた方がいいのか、西洋医学を優先すべきか、食生活や養生が一番必要なのかなど、時間の問題も含め、あなたの不妊治療に必要なことを、しっかり優先順位をつかんで進めていきましょう。 鍼灸治療にはいろいろなアプローチの仕方があるから、効果も期待できる 赤ちゃんを授かるためには、体を温め養うことが必要だし、子宮や卵巣の血流を良くしていくことも大事です。また、全身のストレス状態を解消することがポイントでもあるというように、さまざまなケースがあります。鍼灸治療は、鍼とお灸を使い、いろいろな形でアプローチすることで、それらに対し多くの効果を発揮しています。 治療院での鍼灸治療と平行して、自宅で毎日お灸をしていただくと、効果をより高めることもができます。Pandaさんにとって、効果が期待できる方法を、鍼灸院で提案されるといいですね。 米山 章子 先生 東海大学大磯病院東洋医学科にて研修研鑽を積み、平成9年「鍼灸リラクゼーションビッグママ治療室」を開業 。平成20年たにぐち書店より「不妊!大作戦」を出版。平成23 年不妊カウンセリング学会にて発表、奨励賞を受賞 。不妊治療などの講演にて不妊鍼灸治療の啓蒙活動を行っている。
2013.6.26
コラム 不妊治療