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現場の先生に聞く!PCOSの傾向と治療について
現場の先生に聞く!PCOSの傾向と治療について 「藤野婦人科クリニックで聞く!」編 近年、注目を浴びているマイタケ由来の成分"グリスリン"。不妊原因の一つである多嚢胞性卵巣症候群の改善が期待される話題の天然成分です。今回は、本誌『ジネコ』でもおなじみ、藤野婦人科クリニックの藤野先生に、現場でどのように"グリスリン"を使用しているのか教えていただきます。 不妊原因の一つPCOSにみられる2つのタイプ 不妊原因の一つといわれる、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)。海外のデータでは、月経のある女性の10人に1人がPCOSともいわれています。また不妊症の原因になるばかりでなく、糖尿病、高脂血症、子宮内膜がんなどのリスクを高めるとの報告もあります。しかし近年、PCOSが血糖の代謝に不欠なホルモンである、インスリンと深い関わりがあることがわかってきました。そして、このインスリンの働きを調整する成分とし注目されているのが、マイタケに含まれる成分“グリスリン”。そこで今回は現場で実際に“グリスリン”を使用されている、藤野婦人科クリニックの藤野祐司先生に、“グリスリン”の可能性についてお話を聞きました。「PCOSの主な症状は、排卵障害と生理周期の異常、それにともなう不妊です。一般的にいわれているPCOSは肥満型ともいわれ、耐糖能異常の他、肥満、ニキビや多毛、低音声などの男性化症状といった特徴が挙げられます。しかし、日本人のPCOSには2つのタイプがあるんですよ。いわゆる肥満型とやせ型です」 肥満型PCOSに“グリスリン”天然成分だから副作用も安心 ひと口にPCOSといっても、タイプがあるのですね。 藤野婦人科クリニック 藤野 祐司 先生 大阪市立大学医学部卒業。米国留学、同大学医学部婦人科学教室講師を経て、1997年にクリニックを開業。現在、同大学で非常勤講師も務める。B型・おとめ座。 「実は、日本人のPCOSの約半数はやせ型です。このやせ型は、外見的にはやせていて、血糖やインスリンの数値にも異常が見当たらない。しかし卵巣や血液中のLHやFSH値を調べてみるとPCOSというケースです。やせ型で耐糖能異常のない人は、HMG注射で卵巣刺激を強くした場合に卵巣過剰刺激症候群(OHSS)になる可能性が高いと言われています。逆をいえば、OHSSのリスクファクターがやせ型であるともいえます」やせている人でもPCOSになる可能性があるということですね。先生は、どのような理由で“グリスリン”を採用されたのですか。「まず、アメリカの“グリスリン”の研究結果などから、肥満型のPCOSに対して、改善する力を秘めていると感じました。おそらくインスリンの抵抗を改善するメトホルミンに近い作用があるのではと思われます。そこで、これを前提に、僕はあえてやせ型のPCOSの人に処方しています。マイタケが主成分ですから、食生活の一環として安全性が高いこと、またクロミフェンやHMG製剤など、薬と併用できる点もいいですね。現在のところ、副作用の報告はありません」もともと“グリスリン”は、メタボリックシンドロームの改善に有効として開発された成分。アメリカでは“グリスリン”のもとになるマイタケは、薬用キノコとして知られ、免疫活性作用、血糖降下、血清脂質効果、血圧降下、体重抑制といった作用が報告されていると聞きました。だから、耐糖能異常のある肥満型のPCOSには、安全な治療法として期待できるということですね。 やせ型PCOSの改善に期待“グリスリン”の秘めた可能性 しかし、あえてやせ型のPCOSの人に処方されているのは、なぜなのでしょうか。「実は、やせ型のPCOSは有効で副作用の少ない治療法に悩む場合があります。まだ手探りの状態なのです。たとえば、クロミフェンは限られた人にしか効きませんし、HMG製剤という排卵誘発剤は、強力な作用で卵子を一度に排卵するため、卵巣が腫れ上がるといった副作用(OHSS)をともなうこともあります。残された選択肢として、いま期待しているのがフェマーラ®という薬ですが、それ以外の選択肢があってもいいと思いました。副作用の少ない植物由来の“グリスリン”がその役目を担ってくれると嬉しいですね」まだ未知ではありますが、先生の所見から期待されている効果はありますか?「“グリスリン”の予想される薬効とは異なるかもしれませんが、卵巣のホルモン代謝に微妙な影響を与えて、不妊原因の一つである月経異常に、いい兆しが現れるといいいですね」妊娠に不可欠な排卵をつかさどっているのが、さまざまなホルモンの働きだそうですね。もしかすると“グリスリン”は、子宮内ホルモンを調整する可能性も秘めているかもしれないということでしょうか。「卵巣のホルモン代謝を整える、あるいはホルモンバランスを調整する作用が見られればいいなと思っています。まだ処方して間もないので、これからの経過に期待しています」 【無料】100ページオールカラー! 女性のための健康生活マガジン JINEKO 現場の先生に聞く!PCOSの傾向と治療について 「藤野婦人科クリニックで聞く!」編 近年、注目を浴びているマイタケ由来の成分"グリスリン"。不妊原因の一つである多嚢胞性卵巣症候群の改善が期待される話題の天然成分です。今回は、本誌『ジネコ』でもおなじみ、藤野婦人科クリニックの藤野先生に、現場でどのように"グリスリン"を使用しているのか教えていただきます。 不妊原因の一つPCOSにみられる2つのタイプ 不妊原因の一つといわれる、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)。海外のデータでは、月経のある女性の10人に1人がPCOSともいわれています。また不妊症の原因になるばかりでなく、糖尿病、高脂血症、子宮内膜がんなどのリスクを高めるとの報告もあります。しかし近年、PCOSが血糖の代謝に不欠なホルモンである、インスリンと深い関わりがあることがわかってきました。そして、このインスリンの働きを調整する成分とし注目されているのが、マイタケに含まれる成分“グリスリン”。そこで今回は現場で実際に“グリスリン”を使用されている、藤野婦人科クリニックの藤野祐司先生に、“グリスリン”の可能性についてお話を聞きました。「PCOSの主な症状は、排卵障害と生理周期の異常、それにともなう不妊です。一般的にいわれているPCOSは肥満型ともいわれ、耐糖能異常の他、肥満、ニキビや多毛、低音声などの男性化症状といった特徴が挙げられます。しかし、日本人のPCOSには2つのタイプがあるんですよ。いわゆる肥満型とやせ型です」 肥満型PCOSに“グリスリン”天然成分だから副作用も安心 ひと口にPCOSといっても、タイプがあるのですね。 藤野婦人科クリニック 藤野 祐司 先生 大阪市立大学医学部卒業。米国留学、同大学医学部婦人科学教室講師を経て、1997年にクリニックを開業。現在、同大学で非常勤講師も務める。B型・おとめ座。 「実は、日本人のPCOSの約半数はやせ型です。このやせ型は、外見的にはやせていて、血糖やインスリンの数値にも異常が見当たらない。しかし卵巣や血液中のLHやFSH値を調べてみるとPCOSというケースです。やせ型で耐糖能異常のない人は、HMG注射で卵巣刺激を強くした場合に卵巣過剰刺激症候群(OHSS)になる可能性が高いと言われています。逆をいえば、OHSSのリスクファクターがやせ型であるともいえます」やせている人でもPCOSになる可能性があるということですね。先生は、どのような理由で“グリスリン”を採用されたのですか。「まず、アメリカの“グリスリン”の研究結果などから、肥満型のPCOSに対して、改善する力を秘めていると感じました。おそらくインスリンの抵抗を改善するメトホルミンに近い作用があるのではと思われます。そこで、これを前提に、僕はあえてやせ型のPCOSの人に処方しています。マイタケが主成分ですから、食生活の一環として安全性が高いこと、またクロミフェンやHMG製剤など、薬と併用できる点もいいですね。現在のところ、副作用の報告はありません」もともと“グリスリン”は、メタボリックシンドロームの改善に有効として開発された成分。アメリカでは“グリスリン”のもとになるマイタケは、薬用キノコとして知られ、免疫活性作用、血糖降下、血清脂質効果、血圧降下、体重抑制といった作用が報告されていると聞きました。だから、耐糖能異常のある肥満型のPCOSには、安全な治療法として期待できるということですね。 やせ型PCOSの改善に期待“グリスリン”の秘めた可能性 しかし、あえてやせ型のPCOSの人に処方されているのは、なぜなのでしょうか。「実は、やせ型のPCOSは有効で副作用の少ない治療法に悩む場合があります。まだ手探りの状態なのです。たとえば、クロミフェンは限られた人にしか効きませんし、HMG製剤という排卵誘発剤は、強力な作用で卵子を一度に排卵するため、卵巣が腫れ上がるといった副作用(OHSS)をともなうこともあります。残された選択肢として、いま期待しているのがフェマーラ®という薬ですが、それ以外の選択肢があってもいいと思いました。副作用の少ない植物由来の“グリスリン”がその役目を担ってくれると嬉しいですね」まだ未知ではありますが、先生の所見から期待されている効果はありますか?「“グリスリン”の予想される薬効とは異なるかもしれませんが、卵巣のホルモン代謝に微妙な影響を与えて、不妊原因の一つである月経異常に、いい兆しが現れるといいいですね」妊娠に不可欠な排卵をつかさどっているのが、さまざまなホルモンの働きだそうですね。もしかすると“グリスリン”は、子宮内ホルモンを調整する可能性も秘めているかもしれないということでしょうか。「卵巣のホルモン代謝を整える、あるいはホルモンバランスを調整する作用が見られればいいなと思っています。まだ処方して間もないので、これからの経過に期待しています」 【無料】100ページオールカラー! 女性のための健康生活マガジン JINEKO
2010.12.3
コラム 不妊治療
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体の芯が冷えている可能性も?お腹まわりを温めて深部体温を上げよう
体の芯まで冷えてしまうこの季節は、女性の体には大敵。冷気を外側から“ガード”することはもちろん、体の内側まで積極的に温める対策が大切です。ノア・ウィメンズクリニックの波多野先生にお聞きしました。
2010.12.3
コラム 不妊治療
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成熟卵を多く採ることよりも、患者さんに合った卵巣刺激法を選ぶことが大切 ~体外受精の目安~
不妊治療は、医師の方針や患者さんの希望などで、さまざまな治療の選択肢があるのが特徴です。 そこで今回は、5人の先生に同じ質問をしてみました。 Question2体外受精の際、目安(理想、目標)としている成熟卵の数、子宮内膜の厚さ、受精率(顕微授精含む)、培養液の種類について、基本としている治療方針をお聞かせください。 成熟卵を多く採ることよりも、患者さんに合った卵巣刺激法を選ぶことが大切 ジネコ:体外受精の際、吉田先生が理想とする成熟卵の数は?吉田先生:患者さんによって違いがありますから、「何個が理想」と明言することはできません。一人ひとりの卵巣予備能力が違いますし、どういう卵巣刺激をするかによっても違ってきます。1個でも大丈夫な人はいますし、8個は欲しいと思う人もいますが、多ければ多いほどいいという問題でもないと思っています。たくさんの成熟卵を採ることがゴールではありませんから。当院は高刺激が主流と思われているようですが、実は半分は低刺激です。「高刺激で、とにかくたくさん採ろう」という方針ではありません。成熟卵をできるだけたくさん採ることだけを目的にせず、それぞれの患者さんに合った卵巣刺激をするということを最も重視しています。卵巣刺激に関しては「若い患者さんだからロング法」というように決めてかからないことが重要だと思います。AMHをはじめとしたさまざまな検査で卵巣年齢や予備能力を測り、反応をみながら、1回目で結果が出なければ、また違う方法で刺激してみるというように、患者さんにできるだけ負担をかけないかたちで、ベストな状態の成熟卵が採れるのが理想ではないでしょうか。ジネコ:子宮内膜の厚さ、顕微授精の受精率についてはいかがですか。吉田先生:子宮内膜の厚さは、目標としては8mm。6mm程度でも、十分にチャンスはあると思います。受精率については、当院は低いほうになるかもしれませんね。ただ、クリニックを比較するうえで顕微授精の受精率を指標にするのは、非常に難しいと思いますよ。体外受精で済むようなケースをわざわざ顕微授精させているようなところや、卵胞が14mm以上でないと採卵しないといったクリニックであれば、当然受精率はかなり高くなるでしょう。精子が極端に少ない難しいケースを多く扱う当院のようなクリニックの受精率は、どうしても低くならざるを得ません。ジネコ:培養液の種類についてはいかがですか?吉田先生:最低でも、2種類には分けています。複数の培養液を使うようになったのは当院が先駆けではないでしょうか。仮に8個の卵が採れれば、4個はA社の培養液、他4個はB社の培養液というように分けています。2種類の培養液を用いれば、手間も2倍かかりますが、リスク分散としては大いに役立つと思います。一度結果が出ていて、こちらの培養液のほうがよかったとわかっていれば、次回は1つに絞ることもありますが、同じA社の培養液であっても、作られた時期などによって多少バラつきがあるように感じます。製薬会社によって成分がすべてオープンにされていない以上、何がよかったのか、悪かったのか、さらにどれを用いるかを見極めるのは非常に難しいところでもありますね。 木場公園クリニック 吉田 淳先生愛媛大学医学部卒業。産婦人科・泌尿器科医。東京警察病院産婦人科、池下レディースチャイルドクリニック、東邦大学第一泌尿器科非常勤講師などを経て、1999年木場公園クリニックを開院。≫ 木場公園クリニック 【特集】 先生の治療方針聞かせてください! Question1:体外受精の胚移植 ≫ 着床率が高いのは一度凍結させた胚の自然周期での移植だと考えています ≫ 妊娠率を上げるために胚盤胞で凍結させた胚の移植を基本に考えています ≫ 胚盤胞まで育てた受精卵の移植で、さらにすべて凍結してシート法で戻す方法を基本としています ≫ 初回は初期胚移植で。なるべく手を入れず、シンプルにいったほうがいいと思います ≫ 良好な胚盤胞を得ることが妊娠率を上げるポイントだと考えています Question2:体外受精の目安 ≫ 目安はあくまで目安、問題にぶつかった場合に他院の先生方との連携も重要だと感じています ≫ 初回採卵での高い妊娠率を目標に、患者さんに適した刺激法を選択します ≫ 卵巣予備能力=抗ミュラー管ホルモン(AMH)を一番の目安としています ≫ リスクと妊娠率のバランスを考えると低刺激法で6~8個が理想的だと思います Question3:ステップアップについて ≫ 女性の年齢と卵巣予備能力、精子の状態、治療回数、不妊原因を総合的に加味して考えています ≫ 基本的なデータを参考にしつつもご夫婦そろって納得できるかが決め手になります ≫ 生活や個人によって基準はそれぞれ。時にはジャンプアップも提案します ≫ ステップアップ治療は一つの目安。治療のプランや内容を知ることで不安は解消。 ≫ まずは効果的な治療方法や妊娠率などの情報を提供。ご夫婦の意思を最優先して一緒に決めていきます 女性のための健康生活マガジン JINEKO 不妊治療は、医師の方針や患者さんの希望などで、さまざまな治療の選択肢があるのが特徴です。 そこで今回は、5人の先生に同じ質問をしてみました。 Question2体外受精の際、目安(理想、目標)としている成熟卵の数、子宮内膜の厚さ、受精率(顕微授精含む)、培養液の種類について、基本としている治療方針をお聞かせください。 成熟卵を多く採ることよりも、患者さんに合った卵巣刺激法を選ぶことが大切 ジネコ:体外受精の際、吉田先生が理想とする成熟卵の数は?吉田先生:患者さんによって違いがありますから、「何個が理想」と明言することはできません。一人ひとりの卵巣予備能力が違いますし、どういう卵巣刺激をするかによっても違ってきます。1個でも大丈夫な人はいますし、8個は欲しいと思う人もいますが、多ければ多いほどいいという問題でもないと思っています。たくさんの成熟卵を採ることがゴールではありませんから。当院は高刺激が主流と思われているようですが、実は半分は低刺激です。「高刺激で、とにかくたくさん採ろう」という方針ではありません。成熟卵をできるだけたくさん採ることだけを目的にせず、それぞれの患者さんに合った卵巣刺激をするということを最も重視しています。卵巣刺激に関しては「若い患者さんだからロング法」というように決めてかからないことが重要だと思います。AMHをはじめとしたさまざまな検査で卵巣年齢や予備能力を測り、反応をみながら、1回目で結果が出なければ、また違う方法で刺激してみるというように、患者さんにできるだけ負担をかけないかたちで、ベストな状態の成熟卵が採れるのが理想ではないでしょうか。ジネコ:子宮内膜の厚さ、顕微授精の受精率についてはいかがですか。吉田先生:子宮内膜の厚さは、目標としては8mm。6mm程度でも、十分にチャンスはあると思います。受精率については、当院は低いほうになるかもしれませんね。ただ、クリニックを比較するうえで顕微授精の受精率を指標にするのは、非常に難しいと思いますよ。体外受精で済むようなケースをわざわざ顕微授精させているようなところや、卵胞が14mm以上でないと採卵しないといったクリニックであれば、当然受精率はかなり高くなるでしょう。精子が極端に少ない難しいケースを多く扱う当院のようなクリニックの受精率は、どうしても低くならざるを得ません。ジネコ:培養液の種類についてはいかがですか?吉田先生:最低でも、2種類には分けています。複数の培養液を使うようになったのは当院が先駆けではないでしょうか。仮に8個の卵が採れれば、4個はA社の培養液、他4個はB社の培養液というように分けています。2種類の培養液を用いれば、手間も2倍かかりますが、リスク分散としては大いに役立つと思います。一度結果が出ていて、こちらの培養液のほうがよかったとわかっていれば、次回は1つに絞ることもありますが、同じA社の培養液であっても、作られた時期などによって多少バラつきがあるように感じます。製薬会社によって成分がすべてオープンにされていない以上、何がよかったのか、悪かったのか、さらにどれを用いるかを見極めるのは非常に難しいところでもありますね。 木場公園クリニック 吉田 淳先生愛媛大学医学部卒業。産婦人科・泌尿器科医。東京警察病院産婦人科、池下レディースチャイルドクリニック、東邦大学第一泌尿器科非常勤講師などを経て、1999年木場公園クリニックを開院。≫ 木場公園クリニック 【特集】 先生の治療方針聞かせてください! Question1:体外受精の胚移植 ≫ 着床率が高いのは一度凍結させた胚の自然周期での移植だと考えています ≫ 妊娠率を上げるために胚盤胞で凍結させた胚の移植を基本に考えています ≫ 胚盤胞まで育てた受精卵の移植で、さらにすべて凍結してシート法で戻す方法を基本としています ≫ 初回は初期胚移植で。なるべく手を入れず、シンプルにいったほうがいいと思います ≫ 良好な胚盤胞を得ることが妊娠率を上げるポイントだと考えています Question2:体外受精の目安 ≫ 目安はあくまで目安、問題にぶつかった場合に他院の先生方との連携も重要だと感じています ≫ 初回採卵での高い妊娠率を目標に、患者さんに適した刺激法を選択します ≫ 卵巣予備能力=抗ミュラー管ホルモン(AMH)を一番の目安としています ≫ リスクと妊娠率のバランスを考えると低刺激法で6~8個が理想的だと思います Question3:ステップアップについて ≫ 女性の年齢と卵巣予備能力、精子の状態、治療回数、不妊原因を総合的に加味して考えています ≫ 基本的なデータを参考にしつつもご夫婦そろって納得できるかが決め手になります ≫ 生活や個人によって基準はそれぞれ。時にはジャンプアップも提案します ≫ ステップアップ治療は一つの目安。治療のプランや内容を知ることで不安は解消。 ≫ まずは効果的な治療方法や妊娠率などの情報を提供。ご夫婦の意思を最優先して一緒に決めていきます 女性のための健康生活マガジン JINEKO
2010.11.25
コラム 不妊治療
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子宮内膜症の影響で卵管采(らんかんさい)に異常あり 手術を受けたほうがいい?
「子宮内膜症による癒着があり、卵管采の動きを悪くしているため、すぐに腹腔鏡手術を受けるように言われました。」
2010.11.18
コラム 不妊治療
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精子の奇形率が98%以上顕微授精を続けていくしかない?
晴郎さん(主婦・33歳)からの投稿 男性不妊で顕微授精に挑戦しています。精液量、運動率は標準値を上回っていますが、奇形率だけが何度検査しても98%以上で、重度の男性不妊と診断されました。先生に「全部が奇形ではないので、良い精子が注入できれば大丈夫ですよ」と言われ、顕微授精を繰り返すものの、毎回失敗しています。泌尿器科で検査して、何か治療を受けたほうがいいでしょうか? ジネコ:98%の奇形率というのは、やはり異常という診断になりますか……。京野先生:Diff -Quickという染色液で精子を染めて形態を調べるクルーガーテストで、正常に染色されるものが15%以上あれば、一応正常と言われています。奇形率が98%というとやはり異常な数値で、奇形精子症と診断していいと思います。ジネコ:精子が奇形になる原因は?効果的な治療法はあるのでしょうか?京野先生:一部、先天的なものもありますが、その原因はほとんど解明されていません。ゴナドトロピン療法など、精子の造成能力をある程度高める治療法はありますが、精子の奇形を改善する画期的な治療法は、今のところないんですね。ジネコ:奇形精子症については、まだわかっていないことが多いんですね。京野先生:精子の奇形といっても、頭部が大きかったり、中片部が膨らんでいたり、尻尾が2本あるなど、さまざまな種類がありますが、そのなかの一つである、頭部円形精子症(Globozoospermia)という奇形については、受精できない原因と対処法が解明されつつあります。精子の頭部には、スパムファクターという活性化因子があり、それが卵子を活性化することによって受精することができるのですが、頭部が丸く円形状になっている精子はこの活性化因子を欠いていることが多い。当院の共同研究の結果では、このような奇形精子の場合、卵子を活性化してあげると受精率が上がるということがわかってきました。ジネコ:治療法はほとんどないということで、やはり顕微授精を続けていくしかないのでしょうか?京野先生:そう思いますが、その前に施設の選択が重要になってくると思います。知識や経験がない施設だと、「顕微授精を何度やってもダメだ」となってしまう可能性がありますから。どんな奇形で、どのような対処をしたらよいのかを正確に見極めることができる施設を選ぶことが大切。頭部円形精子症の場合も、電子顕微鏡を使って診断し、なおかつ卵子を活性化できる環境を整えている施設が必要になります。男性不妊に力を入れている病院で適切な対応をすれば、難しい奇形精子症であっても妊娠は望めると思います。諦めないで、頑張っていただきたいですね。 京野 廣一 先生 福島県立医科大学卒業後、東北大学医学部産科婦人科学教室入局。体外受精の第一人者、鈴木雅洲教授に学ぶ。1995年、レディースクリニック京野(古川市)開院。2007年、京野アートクリニック(仙台市)開院。男性不妊の科学的解明はもちろん、その前の段階である勃起障害や射精障害、夫婦のセックスレスのメンタル面における改善策も重要と考える。B型のおひつじ座。 ■ あわせて読みたい ■ 精子の精密検査が基準値に満たず顕微授精を検討中です 男性不妊の検査結果について詳しく知りたいです 男性不妊の場合の治療計画はどうやって立てたらいいでしょうか? 京野アートクリニック高輪 女性のための健康生活マガジン JINEKO 晴郎さん(主婦・33歳)からの投稿 男性不妊で顕微授精に挑戦しています。精液量、運動率は標準値を上回っていますが、奇形率だけが何度検査しても98%以上で、重度の男性不妊と診断されました。先生に「全部が奇形ではないので、良い精子が注入できれば大丈夫ですよ」と言われ、顕微授精を繰り返すものの、毎回失敗しています。泌尿器科で検査して、何か治療を受けたほうがいいでしょうか? ジネコ:98%の奇形率というのは、やはり異常という診断になりますか……。京野先生:Diff -Quickという染色液で精子を染めて形態を調べるクルーガーテストで、正常に染色されるものが15%以上あれば、一応正常と言われています。奇形率が98%というとやはり異常な数値で、奇形精子症と診断していいと思います。ジネコ:精子が奇形になる原因は?効果的な治療法はあるのでしょうか?京野先生:一部、先天的なものもありますが、その原因はほとんど解明されていません。ゴナドトロピン療法など、精子の造成能力をある程度高める治療法はありますが、精子の奇形を改善する画期的な治療法は、今のところないんですね。ジネコ:奇形精子症については、まだわかっていないことが多いんですね。京野先生:精子の奇形といっても、頭部が大きかったり、中片部が膨らんでいたり、尻尾が2本あるなど、さまざまな種類がありますが、そのなかの一つである、頭部円形精子症(Globozoospermia)という奇形については、受精できない原因と対処法が解明されつつあります。精子の頭部には、スパムファクターという活性化因子があり、それが卵子を活性化することによって受精することができるのですが、頭部が丸く円形状になっている精子はこの活性化因子を欠いていることが多い。当院の共同研究の結果では、このような奇形精子の場合、卵子を活性化してあげると受精率が上がるということがわかってきました。ジネコ:治療法はほとんどないということで、やはり顕微授精を続けていくしかないのでしょうか?京野先生:そう思いますが、その前に施設の選択が重要になってくると思います。知識や経験がない施設だと、「顕微授精を何度やってもダメだ」となってしまう可能性がありますから。どんな奇形で、どのような対処をしたらよいのかを正確に見極めることができる施設を選ぶことが大切。頭部円形精子症の場合も、電子顕微鏡を使って診断し、なおかつ卵子を活性化できる環境を整えている施設が必要になります。男性不妊に力を入れている病院で適切な対応をすれば、難しい奇形精子症であっても妊娠は望めると思います。諦めないで、頑張っていただきたいですね。 京野 廣一 先生 福島県立医科大学卒業後、東北大学医学部産科婦人科学教室入局。体外受精の第一人者、鈴木雅洲教授に学ぶ。1995年、レディースクリニック京野(古川市)開院。2007年、京野アートクリニック(仙台市)開院。男性不妊の科学的解明はもちろん、その前の段階である勃起障害や射精障害、夫婦のセックスレスのメンタル面における改善策も重要と考える。B型のおひつじ座。 ■ あわせて読みたい ■ 精子の精密検査が基準値に満たず顕微授精を検討中です 男性不妊の検査結果について詳しく知りたいです 男性不妊の場合の治療計画はどうやって立てたらいいでしょうか? 京野アートクリニック高輪 女性のための健康生活マガジン JINEKO
2010.11.18
コラム 不妊治療
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治療にあまり協力的じゃない夫 なぜ、不機嫌になるの?
不妊治療での、このような妻と夫の温度差は、男性のどんな心理や意識から来ているのでしょうか。秋山レディースクリニックの秋山先生に、医師として、また男性代表としてご意見を伺ってみました。
2010.11.18
コラム 不妊治療
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私たちの目を見て言ってくださった先生の言葉を信じ、 最後と思って受けた治療で夢がかないました。
「僕は諦めていません」――。私たちの目を見て言ってくださった先生の言葉を信じ、 最後と思って受けた治療で夢がかないました。 お見合い結婚で結ばれたご主人とともに闘った4年間の不妊治療――。 周りからのプレッシャー、薬による副作用などのつらい経験を乗り越え、40歳を前に幸せがやってきました!2004年の年明け、マシュマロマンさんとご主人は、産婦人科も併設しているクリニックへ。そこで初めて不妊に関する検査を受けます。「子宮卵管造影検査や精子の数を調べましたが、どちらも問題なし。様子をみながら、タイミングをとることになりました」 ところが1年経っても妊娠の兆しはなく、それどころか卵の質を良くするために服用したクロミフェンによって、卵巣が大きく腫れてしまうというつらい経験も。「それで治療が怖くなってしまって……。主人からも『きみの体が傷つくのを見ていられないから、無理しなくてもいい』と言われ、1年ほど治療をお休みしました」 お休み中にマシュマロマンさんは、まず自分の体を整えようと女性専門の鍼灸院に通うことに。そこで出会った鍼灸師に、都内にある不妊治療専門クリニックを紹介されました。「男性不妊にも定評があるそのクリニックで詳しい検査をしたら、主人の精子の運動率や高速直進運動率が悪く、さらに受精にかかわる精子中の酵素にも問題があることがわかりました」男性側の原因による、不妊――。ご主人はその結果にかなり落ち込み自分自身を責め、しばらく悩んだそうですが、「この方法しかないのなら……」と思い直し、お二人はそれまで躊躇していた高度不妊治療にトライすることになりました。「最初は2個の採卵で体外受精と顕微授精にトライしたけれど、移植までいきませんでした。次は1個の採卵で顕微授精1本に絞ったんですが、お腹に戻したのにダメ。ピペットの外側にスーッと勢いよく吸いついてしまうほどの元気な子だったのに……」 培養液の中では元気だったのに、自分のお腹に戻したら死んでしまった、と罪悪感にさいなまれ、物を投げるなど、その後荒れる日々が続いたと言います。「そんな私の様子を主人は何も言わず見ていました。でも、それが逆によかったですね。いろんな慰めの言葉を重ねてもらっても、やっぱり事実は事実ですから。ただ黙って見守ってくれた主人に感謝しています」 そして3回目の採卵をする前に、先生とのお話のなかで「『私たちはまだ大丈夫でしょうか?』と聞いたところ、先生が『まだ大丈夫。もうダメかなというときははっきり言いますから……僕は諦めていません』と、私たちの目を見ておっしゃってくださいました。その言葉を信じて、最後と思って受けた3回目の治療でこの子ができたんです」 2009年夏、40歳を前にして待望の女の子が誕生。「先生の『大丈夫』という言葉を最後まで信じてよかった!先生と出会えたことを本当に感謝しています。義母との確執や治療での副作用などつらいこともいろいろありましたが、今は一番大切な存在ができたから、あの頃のモヤモヤした感情は一切なくなりました。不思議なことに、幸せはつらい過去を消していってくれるんですね」 他のユーザーストーリーも読む ■ あわせて読みたい ■ 男性不妊、不育症を7年の治療で克服 周りの人に支えられ、励まされながら… 7年間の治療を通して強くなった夫婦の絆。 4度の人工授精、1年間の治療休止、そして3度の顕微授精を経て、そのときはやって来ました! まるで、“ゴールの見えないマラソン”8年間の不妊治療を、夫婦で走りぬきました。 女性のための健康生活マガジン JINEKO 「僕は諦めていません」――。私たちの目を見て言ってくださった先生の言葉を信じ、 最後と思って受けた治療で夢がかないました。 お見合い結婚で結ばれたご主人とともに闘った4年間の不妊治療――。 周りからのプレッシャー、薬による副作用などのつらい経験を乗り越え、40歳を前に幸せがやってきました!2004年の年明け、マシュマロマンさんとご主人は、産婦人科も併設しているクリニックへ。そこで初めて不妊に関する検査を受けます。「子宮卵管造影検査や精子の数を調べましたが、どちらも問題なし。様子をみながら、タイミングをとることになりました」 ところが1年経っても妊娠の兆しはなく、それどころか卵の質を良くするために服用したクロミフェンによって、卵巣が大きく腫れてしまうというつらい経験も。「それで治療が怖くなってしまって……。主人からも『きみの体が傷つくのを見ていられないから、無理しなくてもいい』と言われ、1年ほど治療をお休みしました」 お休み中にマシュマロマンさんは、まず自分の体を整えようと女性専門の鍼灸院に通うことに。そこで出会った鍼灸師に、都内にある不妊治療専門クリニックを紹介されました。「男性不妊にも定評があるそのクリニックで詳しい検査をしたら、主人の精子の運動率や高速直進運動率が悪く、さらに受精にかかわる精子中の酵素にも問題があることがわかりました」男性側の原因による、不妊――。ご主人はその結果にかなり落ち込み自分自身を責め、しばらく悩んだそうですが、「この方法しかないのなら……」と思い直し、お二人はそれまで躊躇していた高度不妊治療にトライすることになりました。「最初は2個の採卵で体外受精と顕微授精にトライしたけれど、移植までいきませんでした。次は1個の採卵で顕微授精1本に絞ったんですが、お腹に戻したのにダメ。ピペットの外側にスーッと勢いよく吸いついてしまうほどの元気な子だったのに……」 培養液の中では元気だったのに、自分のお腹に戻したら死んでしまった、と罪悪感にさいなまれ、物を投げるなど、その後荒れる日々が続いたと言います。「そんな私の様子を主人は何も言わず見ていました。でも、それが逆によかったですね。いろんな慰めの言葉を重ねてもらっても、やっぱり事実は事実ですから。ただ黙って見守ってくれた主人に感謝しています」 そして3回目の採卵をする前に、先生とのお話のなかで「『私たちはまだ大丈夫でしょうか?』と聞いたところ、先生が『まだ大丈夫。もうダメかなというときははっきり言いますから……僕は諦めていません』と、私たちの目を見ておっしゃってくださいました。その言葉を信じて、最後と思って受けた3回目の治療でこの子ができたんです」 2009年夏、40歳を前にして待望の女の子が誕生。「先生の『大丈夫』という言葉を最後まで信じてよかった!先生と出会えたことを本当に感謝しています。義母との確執や治療での副作用などつらいこともいろいろありましたが、今は一番大切な存在ができたから、あの頃のモヤモヤした感情は一切なくなりました。不思議なことに、幸せはつらい過去を消していってくれるんですね」 他のユーザーストーリーも読む ■ あわせて読みたい ■ 男性不妊、不育症を7年の治療で克服 周りの人に支えられ、励まされながら… 7年間の治療を通して強くなった夫婦の絆。 4度の人工授精、1年間の治療休止、そして3度の顕微授精を経て、そのときはやって来ました! まるで、“ゴールの見えないマラソン”8年間の不妊治療を、夫婦で走りぬきました。 女性のための健康生活マガジン JINEKO
2010.10.7
コラム 不妊治療
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不妊治療の現場と周辺 日本生殖補助医療標準化機関JISARTとは?その取り組みに迫る!2
不妊治療の現場と周辺1 ┃ 不妊治療の現場と周辺2 JISARTでは3年に1回、メンバー施設に施設認定審査を実施しています。今回は、その実態を探るべく、5月9日に行われた浅田レディースクリニックの審査にジネコスタッフが同行。 なかなか一般に公開されることのないその内容を、レポートします。 ■ 現場をレポート 医師から受付事務まで審査員が厳しくチェック 去る5月9日、愛知県にある浅田レディースクリニックで、JISARTの施設認定審査が行われました。 審査チームは医師、看護師、胚培養士、心理カウンセラー、受付事務に加え、患者代表も参加。丸一日をかけて、JISARTの実施規定通りの運営が行われているか、各部門別に厳格な審査が行われました。 午前9時から始まった審査開始会議では、事前に提出した質問表の回答に対して質疑応答がなされ、今回の審査チームのリーダーであるミオ・ファティリティ・クリニックの見尾先生をはじめ、各部門の審査員から規定に基づいた質問が飛び交う場面も見られました。 その後、浅田先生の案内で審査員が院内を視察。4グループに分かれ、施設内の各部署の詳しい審査がスタート。 まず、医師部門では、診察室で、見尾先生からカルテの保存方法や、患者のプライバシー保持、処置室での注射の説明の仕方など、実施規定に基づいた審査の質問が浅田先生に投げかけられました。一方、隣室では看護師部門の審査が行われ、「患者を呼び出すときはどうしているのか?」など、実施規定に従ってやり方を確認し合い、よりよい診療のあり方やプライバシー保持についてチェックされていました。 培養室の審査は特に厳格!スタッフ教育にまで質問が 診察室をひと通りチェックした後は、高度不妊治療の重要な現場である培養室へ移動。ジネコスタッフも特別に許可をいただき、滅菌処置をして培養室へ入れていただきました。 ここでは、インキュベーター(培養器)の圧力や培養室内の換気法など、専門的な審査が行われました。見尾先生と、この日オブザーバーとして参加した京野アートクリニックの京野先生も、浅田レディースクリニックの設備を前に、実施規定の項目を確認しながら、培養士の説明に聞き入っておられました。もちろん設備だけでなく、サンプルの記録方法やスタッフの教育などについても、審査員から質問が及びました。 午後も引き続き部門別審査、さらに患者グループとの面談も行われ、3時にすべての審査工程が終了。審査メンバーによる審議が行われた後、結果を報告。今回は、改善事項はなしという結果でしたが、細かな点でいくつか改善提案が挙げられました。 浅田先生をはじめ、スタッフの方々も合意し、改善していく意思が発表され、長い施設認定審査が終了。このように、よりよい医療を提供するために、厳密な審査が行われているのです。 ■ 施設認定審査について~医師の側から 施設同士が審査し合うのはとても有意義なことです 見尾 先生 今回、私は審査をする側で、来年は審査を受ける側になるわけですが、このように施設同士がお互いに審査をし合うというのは、とても有意義なことですね。自分たちの視点だけですと、どうしても一方向からの見方が優先しがちになります。しかし、不妊医療の本質で、一番大切なのは、患者さんに元気な赤ちゃんを授かっていただくことです。 JISARTに属する施設は、最善のかたちで患者さんの夢を叶えるために、各施設の工夫やこだわりを学び合い、患者さんの意見を聞き、改善すべき点は指摘し、より満足してもらえる施設を目指しています。本当に質のよい医療を提供するために、士気を高くし、自助努力を惜しまない団体だということを、多くの方々に知ってほしいですね。 看護師不足など、地域の現状も知らせることのできる機会 浅田 先生 今回で、当院は2回目の審査になります。このような審査システムがあることで施設全体のレベルが上がることはもちろん、医師にとっては他の施設の先生がいらっしゃることで、とてもよい情報交換の場にもなります。見尾先生は鳥取、京野先生は仙台ですから、普段なかなかゆっくりお話しできません。このような機会に、現場を見ていただきながら、スタッフ教育やリスクマネージメントなどの情報を交換できるので、お互い刺激になるなど、相乗効果がありますね。 また今回、当院の「メディカルアシスタント」という役職について審査側からご質問を受けましたが、これは地域の看護師不足という状況も深く関わっているもの。そのような名古屋の現状も知っていただけた、貴重な機会でした。 ■ 施設認定審査について~施設認定の面から 患者さんにも参加していただき、よりよい施設づくりを 高橋 先生 JISARTが実施している施設認定の一番の利点は、「相手を知って己を知る」ということだと思います。 生殖補助医療はやはりまだ新しい分野なので、日本の医療のなかでは歴史が浅いです。治療法についてきちんと教える機関がないので、不妊治療に関わる医師やスタッフは、独学あるいは海外留学で学んでいるということで、マニュアルが統一されていないのです。施設同士の横のつながりはほとんどないので、自分たちの経験だけをもとにやっている、という施設が多いのが現状なんですね。 そこで、施設認定審査を行うことで、ほかの施設を視察する機会が生まれます。これは今までの日本の医療にはなかった、大変有意義な活動だと思います。 それに施設にとって、3年に1回、施設認定審査があるというのは、客観的に施設のチェックができる貴重な機会ですからありがたいことだと思います。審査メンバーはチェックリストをもとに、客観的に必要な指摘をしてくれますから。 また医師のみならず、すべての部門をチェックすることで、看護師や培養士などスタッフの自己啓発にもつながることは大きな利点でしょう。特に、事務部門の審査は日本特有のもので、JISARTのモデルとなったオーストラリアの制度では行っていません。技術面だけではなく、心理面、サービス面など、総合的な視点でそれぞれの専門家が厳しく審査を行っているのです。 審査には、患者さんにも参加していただいていますが、患者さん側の意見が一番参考になる、というのはどの施設でも共通した声です。医療も患者さんの意見を求めている。最終的には患者さんがよいクリニックを育てるので、ぜひ多くの方に参加していただきたいですね。 不妊治療の現場と周辺1 ┃ 不妊治療の現場と周辺2 不妊治療の現場と周辺1 ┃ 不妊治療の現場と周辺2 JISARTでは3年に1回、メンバー施設に施設認定審査を実施しています。今回は、その実態を探るべく、5月9日に行われた浅田レディースクリニックの審査にジネコスタッフが同行。 なかなか一般に公開されることのないその内容を、レポートします。 ■ 現場をレポート 医師から受付事務まで審査員が厳しくチェック 去る5月9日、愛知県にある浅田レディースクリニックで、JISARTの施設認定審査が行われました。 審査チームは医師、看護師、胚培養士、心理カウンセラー、受付事務に加え、患者代表も参加。丸一日をかけて、JISARTの実施規定通りの運営が行われているか、各部門別に厳格な審査が行われました。 午前9時から始まった審査開始会議では、事前に提出した質問表の回答に対して質疑応答がなされ、今回の審査チームのリーダーであるミオ・ファティリティ・クリニックの見尾先生をはじめ、各部門の審査員から規定に基づいた質問が飛び交う場面も見られました。 その後、浅田先生の案内で審査員が院内を視察。4グループに分かれ、施設内の各部署の詳しい審査がスタート。 まず、医師部門では、診察室で、見尾先生からカルテの保存方法や、患者のプライバシー保持、処置室での注射の説明の仕方など、実施規定に基づいた審査の質問が浅田先生に投げかけられました。一方、隣室では看護師部門の審査が行われ、「患者を呼び出すときはどうしているのか?」など、実施規定に従ってやり方を確認し合い、よりよい診療のあり方やプライバシー保持についてチェックされていました。 培養室の審査は特に厳格!スタッフ教育にまで質問が 診察室をひと通りチェックした後は、高度不妊治療の重要な現場である培養室へ移動。ジネコスタッフも特別に許可をいただき、滅菌処置をして培養室へ入れていただきました。 ここでは、インキュベーター(培養器)の圧力や培養室内の換気法など、専門的な審査が行われました。見尾先生と、この日オブザーバーとして参加した京野アートクリニックの京野先生も、浅田レディースクリニックの設備を前に、実施規定の項目を確認しながら、培養士の説明に聞き入っておられました。もちろん設備だけでなく、サンプルの記録方法やスタッフの教育などについても、審査員から質問が及びました。 午後も引き続き部門別審査、さらに患者グループとの面談も行われ、3時にすべての審査工程が終了。審査メンバーによる審議が行われた後、結果を報告。今回は、改善事項はなしという結果でしたが、細かな点でいくつか改善提案が挙げられました。 浅田先生をはじめ、スタッフの方々も合意し、改善していく意思が発表され、長い施設認定審査が終了。このように、よりよい医療を提供するために、厳密な審査が行われているのです。 ■ 施設認定審査について~医師の側から 施設同士が審査し合うのはとても有意義なことです 見尾 先生 今回、私は審査をする側で、来年は審査を受ける側になるわけですが、このように施設同士がお互いに審査をし合うというのは、とても有意義なことですね。自分たちの視点だけですと、どうしても一方向からの見方が優先しがちになります。しかし、不妊医療の本質で、一番大切なのは、患者さんに元気な赤ちゃんを授かっていただくことです。 JISARTに属する施設は、最善のかたちで患者さんの夢を叶えるために、各施設の工夫やこだわりを学び合い、患者さんの意見を聞き、改善すべき点は指摘し、より満足してもらえる施設を目指しています。本当に質のよい医療を提供するために、士気を高くし、自助努力を惜しまない団体だということを、多くの方々に知ってほしいですね。 看護師不足など、地域の現状も知らせることのできる機会 浅田 先生 今回で、当院は2回目の審査になります。このような審査システムがあることで施設全体のレベルが上がることはもちろん、医師にとっては他の施設の先生がいらっしゃることで、とてもよい情報交換の場にもなります。見尾先生は鳥取、京野先生は仙台ですから、普段なかなかゆっくりお話しできません。このような機会に、現場を見ていただきながら、スタッフ教育やリスクマネージメントなどの情報を交換できるので、お互い刺激になるなど、相乗効果がありますね。 また今回、当院の「メディカルアシスタント」という役職について審査側からご質問を受けましたが、これは地域の看護師不足という状況も深く関わっているもの。そのような名古屋の現状も知っていただけた、貴重な機会でした。 ■ 施設認定審査について~施設認定の面から 患者さんにも参加していただき、よりよい施設づくりを 高橋 先生 JISARTが実施している施設認定の一番の利点は、「相手を知って己を知る」ということだと思います。 生殖補助医療はやはりまだ新しい分野なので、日本の医療のなかでは歴史が浅いです。治療法についてきちんと教える機関がないので、不妊治療に関わる医師やスタッフは、独学あるいは海外留学で学んでいるということで、マニュアルが統一されていないのです。施設同士の横のつながりはほとんどないので、自分たちの経験だけをもとにやっている、という施設が多いのが現状なんですね。 そこで、施設認定審査を行うことで、ほかの施設を視察する機会が生まれます。これは今までの日本の医療にはなかった、大変有意義な活動だと思います。 それに施設にとって、3年に1回、施設認定審査があるというのは、客観的に施設のチェックができる貴重な機会ですからありがたいことだと思います。審査メンバーはチェックリストをもとに、客観的に必要な指摘をしてくれますから。 また医師のみならず、すべての部門をチェックすることで、看護師や培養士などスタッフの自己啓発にもつながることは大きな利点でしょう。特に、事務部門の審査は日本特有のもので、JISARTのモデルとなったオーストラリアの制度では行っていません。技術面だけではなく、心理面、サービス面など、総合的な視点でそれぞれの専門家が厳しく審査を行っているのです。 審査には、患者さんにも参加していただいていますが、患者さん側の意見が一番参考になる、というのはどの施設でも共通した声です。医療も患者さんの意見を求めている。最終的には患者さんがよいクリニックを育てるので、ぜひ多くの方に参加していただきたいですね。 不妊治療の現場と周辺1 ┃ 不妊治療の現場と周辺2
2010.9.7
コラム 不妊治療
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不妊治療の現場と周辺 日本生殖補助医療標準化機関JISARTとは?その取り組みに迫る!1
不妊治療の現場と周辺1 ┃ 不妊治療の現場と周辺2 日本の生殖医療の質の向上と、安心して満足できる生殖補助医療の提供を目的とする団体として、日本生殖補助医療標準化機関(JISART)があります。 今回は、その理念や活動内容について、所属されている先生方にお話をお聞きし、普段は公開されることのない、施設認定審査の現場をレポートします。 ■ JISARTについて~理事の視点から 施設同士が切磋琢磨し合うことで、不妊治療のレベルが上がっていくのです 田中 先生 JISARTの取り組みにおいて最もよいと思われる部分は、まず一つに、同業者がお互いの施設を審査し合えるということです。 医師同士がチェックし合うということは、要するにライバルにすべてを見られるということ。よくないところはきちんと指摘し、それぞれの意見を述べて、チェックする。その結果、モチベーションが高まり、医療全体のレベルの向上に繋がっていくのだと思います。 もともとJISARTは、オーストラリアの制度をモデルに構築されています。オーストラリアの制度が日本と異なるところは、全額政府が負担している組織だということ。だからこそ厳しい部分もあります。お金がかからないかわりに、全データの提出を求められたり、規定を守らないような場合はライセンスを取り上げられたり。組織の背景は異なりますが、そういう部分を手本に組み立てているため、日本でもその厳しい面が生かされています。 もう一つの利点は、JISARTのなかに倫理委員会を設けていることです。医療の現場では、本当にさまざまな問題が起こりますよね。なぜ問題が起こるのかというと、医師と患者の一対一で契約が交わされ、第三者が入ってないからです。患者は医師の意見が絶対だと思い込みがちですし、かといって医師も人間ですから、常に絶対正しいかといえば、そうではない。そこで同業者、たとえば別の医師やカウンセラーが入って、第三者からの意見が加わることによって、新たな局面が見えるかもしれません。この2つの点が、JISARTにおける最も意義あるものだと思います。 ただ、JISARTに所属しているところだけが優れた施設であるということではありません。これからも、我々の目指す不妊治療の方針や活動に賛同してくれ、JISARTに参加してくれるクリニックが増えていくのではないかと考えています。理想のあり方は、不妊治療のための技術や設備が十分かどうか、厳しい検査をクリアし、前述の2点のような基準を生かして、それぞれが切磋琢磨していること。 JISARTとしては、この組織が持っている特殊性を生かして、今後の日本の生殖医療の向上に少しでも繋がればと望むばかりです。 ■ JISARTについて~培養環境とカウンセリングの面から 徹底された厳格な審査が世界レベルの施設をつくりあげます 宇津宮 先生 JISARTには第三者による審査システムがあります。これはJISARTに属する施設のなかで、審査される施設以外からランダムに選ばれた医師や看護 師、事務などがチームを組み、300以上もの審査項目を一つひとつ徹底的にチェックするというものです。 たとえば、培養環境の場合は、培養室の空気清浄度、培養液のpH値、凍結環境などの項目があり、すべての条件が基準に達していなければなりません。もし是正処置が必要な項目があれば、その施設は3ヶ月以内に指摘された箇所を改善しなければならず、それ以上かかる場合は一からやり直しになります。 また、心理カウンセリング業務についても厳しい審査項目が設けられていますが、実際にはまだ、その必要性やあり方についての認識に、各施設によって温度差があるというのが現状です。 本来、医師はデータに基づいた不妊治療を行い、心理カウンセラーは患者さんの心を支援するものです。医療とカウンセリングはまったく違う分野になるのですが、そういった認識を持っている施設がまだとても少ない。日本の生殖医療の技術は世界レベルの発展を遂げていますが、心理面のケアはまだまだ十分とはいえません。ですが、治療を行うなかで、カウンセリングを必要とする患者さんはたくさんいます。ただ「赤ちゃんが授かればいい」ではなく、そこに至るまでの心理状態もおろそかにはできません。 そのようなことを踏まえ、JISARTのなかで心理カウンセリング業務を機能させていくためにも、現在、しっかりとした基準をつくり始めています。 ■ JISARTについて~倫理委員会の面から 非配偶者間の生殖医療を正しいかたちで根付かせる努力をしています 辰巳 先生 JISARTでは、独自の倫理委員会を設けており、不妊治療における倫理的な問題をきちんと管理しています。 JISARTに所属する施設は国内のみならず、世界的に見てもレベルの高い施設です。そこで行われている最先端の医学研究や臨床応用について、生命倫理および医療倫理に基づき、さまざまな問題を、臨床医学系、生命科学系、倫理・法律系、一般市民代表ら、それぞれの分野の日本のエキスパートであるJISART倫理委員が審査しています。 そしてもう一つ、倫理委員会が力を入れて取り組んでいるのが、非配偶者間の生殖医療です。 この問題は10年以上前から厚生労働省で断続的に検討を続けているのですが、いまだに法律も整備されていません。早発卵巣不全などで、この方法しか妊娠の可能性のない方々が多くいます。このような方々は年齢的なこともあり、もう待ってはいられないのです。 そこで、JISARTでは、これまでの厚生労働省の委員会の答申にできるだけ沿ったガイドラインを作り、倫理委員会の厳しいチェックの下で非配偶者間生殖医療を始めているのです。 この問題は、人間の生命や人生を左右する大切な問題ですから、取り組むからにはそれに関わるすべての方が納得する最良の結果を出さなければいけません。そこで倫理委員会では、卵子の提供をする夫婦、提供を受ける夫婦から詳細なヒアリングを行い、この医療を行う施設の医師やカウンセラーに指示やアドバイスを行い、最終的に大丈夫と判断したケースのみを承認するのです。 実は、私個人としては、基本的には非配偶者間の生殖医療に反対の立場をとっているのですが、これだけのことをしたうえで行うのなら、よい結果が出るだろうと思っています。「当事者がやりたいと思っているのだからよいのでは」と安易に進めればいつか必ず問題が起こってしまいます。一組一組、しっかりとカウンセリングを行い、出生後も告知を含めた継続的なサポートを行っていく。 そのように丁寧に仕事をしていくことが、最終的に非配偶者間の生殖医療が正しいかたちで日本に根付いていくことに繋がるのではないかと考えています。 不妊治療の現場と周辺1 ┃ 不妊治療の現場と周辺2 不妊治療の現場と周辺1 ┃ 不妊治療の現場と周辺2 日本の生殖医療の質の向上と、安心して満足できる生殖補助医療の提供を目的とする団体として、日本生殖補助医療標準化機関(JISART)があります。 今回は、その理念や活動内容について、所属されている先生方にお話をお聞きし、普段は公開されることのない、施設認定審査の現場をレポートします。 ■ JISARTについて~理事の視点から 施設同士が切磋琢磨し合うことで、不妊治療のレベルが上がっていくのです 田中 先生 JISARTの取り組みにおいて最もよいと思われる部分は、まず一つに、同業者がお互いの施設を審査し合えるということです。 医師同士がチェックし合うということは、要するにライバルにすべてを見られるということ。よくないところはきちんと指摘し、それぞれの意見を述べて、チェックする。その結果、モチベーションが高まり、医療全体のレベルの向上に繋がっていくのだと思います。 もともとJISARTは、オーストラリアの制度をモデルに構築されています。オーストラリアの制度が日本と異なるところは、全額政府が負担している組織だということ。だからこそ厳しい部分もあります。お金がかからないかわりに、全データの提出を求められたり、規定を守らないような場合はライセンスを取り上げられたり。組織の背景は異なりますが、そういう部分を手本に組み立てているため、日本でもその厳しい面が生かされています。 もう一つの利点は、JISARTのなかに倫理委員会を設けていることです。医療の現場では、本当にさまざまな問題が起こりますよね。なぜ問題が起こるのかというと、医師と患者の一対一で契約が交わされ、第三者が入ってないからです。患者は医師の意見が絶対だと思い込みがちですし、かといって医師も人間ですから、常に絶対正しいかといえば、そうではない。そこで同業者、たとえば別の医師やカウンセラーが入って、第三者からの意見が加わることによって、新たな局面が見えるかもしれません。この2つの点が、JISARTにおける最も意義あるものだと思います。 ただ、JISARTに所属しているところだけが優れた施設であるということではありません。これからも、我々の目指す不妊治療の方針や活動に賛同してくれ、JISARTに参加してくれるクリニックが増えていくのではないかと考えています。理想のあり方は、不妊治療のための技術や設備が十分かどうか、厳しい検査をクリアし、前述の2点のような基準を生かして、それぞれが切磋琢磨していること。 JISARTとしては、この組織が持っている特殊性を生かして、今後の日本の生殖医療の向上に少しでも繋がればと望むばかりです。 ■ JISARTについて~培養環境とカウンセリングの面から 徹底された厳格な審査が世界レベルの施設をつくりあげます 宇津宮 先生 JISARTには第三者による審査システムがあります。これはJISARTに属する施設のなかで、審査される施設以外からランダムに選ばれた医師や看護 師、事務などがチームを組み、300以上もの審査項目を一つひとつ徹底的にチェックするというものです。 たとえば、培養環境の場合は、培養室の空気清浄度、培養液のpH値、凍結環境などの項目があり、すべての条件が基準に達していなければなりません。もし是正処置が必要な項目があれば、その施設は3ヶ月以内に指摘された箇所を改善しなければならず、それ以上かかる場合は一からやり直しになります。 また、心理カウンセリング業務についても厳しい審査項目が設けられていますが、実際にはまだ、その必要性やあり方についての認識に、各施設によって温度差があるというのが現状です。 本来、医師はデータに基づいた不妊治療を行い、心理カウンセラーは患者さんの心を支援するものです。医療とカウンセリングはまったく違う分野になるのですが、そういった認識を持っている施設がまだとても少ない。日本の生殖医療の技術は世界レベルの発展を遂げていますが、心理面のケアはまだまだ十分とはいえません。ですが、治療を行うなかで、カウンセリングを必要とする患者さんはたくさんいます。ただ「赤ちゃんが授かればいい」ではなく、そこに至るまでの心理状態もおろそかにはできません。 そのようなことを踏まえ、JISARTのなかで心理カウンセリング業務を機能させていくためにも、現在、しっかりとした基準をつくり始めています。 ■ JISARTについて~倫理委員会の面から 非配偶者間の生殖医療を正しいかたちで根付かせる努力をしています 辰巳 先生 JISARTでは、独自の倫理委員会を設けており、不妊治療における倫理的な問題をきちんと管理しています。 JISARTに所属する施設は国内のみならず、世界的に見てもレベルの高い施設です。そこで行われている最先端の医学研究や臨床応用について、生命倫理および医療倫理に基づき、さまざまな問題を、臨床医学系、生命科学系、倫理・法律系、一般市民代表ら、それぞれの分野の日本のエキスパートであるJISART倫理委員が審査しています。 そしてもう一つ、倫理委員会が力を入れて取り組んでいるのが、非配偶者間の生殖医療です。 この問題は10年以上前から厚生労働省で断続的に検討を続けているのですが、いまだに法律も整備されていません。早発卵巣不全などで、この方法しか妊娠の可能性のない方々が多くいます。このような方々は年齢的なこともあり、もう待ってはいられないのです。 そこで、JISARTでは、これまでの厚生労働省の委員会の答申にできるだけ沿ったガイドラインを作り、倫理委員会の厳しいチェックの下で非配偶者間生殖医療を始めているのです。 この問題は、人間の生命や人生を左右する大切な問題ですから、取り組むからにはそれに関わるすべての方が納得する最良の結果を出さなければいけません。そこで倫理委員会では、卵子の提供をする夫婦、提供を受ける夫婦から詳細なヒアリングを行い、この医療を行う施設の医師やカウンセラーに指示やアドバイスを行い、最終的に大丈夫と判断したケースのみを承認するのです。 実は、私個人としては、基本的には非配偶者間の生殖医療に反対の立場をとっているのですが、これだけのことをしたうえで行うのなら、よい結果が出るだろうと思っています。「当事者がやりたいと思っているのだからよいのでは」と安易に進めればいつか必ず問題が起こってしまいます。一組一組、しっかりとカウンセリングを行い、出生後も告知を含めた継続的なサポートを行っていく。 そのように丁寧に仕事をしていくことが、最終的に非配偶者間の生殖医療が正しいかたちで日本に根付いていくことに繋がるのではないかと考えています。 不妊治療の現場と周辺1 ┃ 不妊治療の現場と周辺2
2010.9.7
コラム 不妊治療
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成長が遅い受精卵は妊娠してもリスクがある?
「このまま黒色にまで培養をお願いしているのですが、成長が遅い受精卵は移植できたとしても着床しなかったり、染色体異常などが起こる可能性は高いのでしょうか?」
0217.5.5
コラム 不妊治療
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性交障害で人工授精へ。でも、診察痛が我慢できず…
性交障害で人工授精へ。でも、診察痛が我慢できず… 内田 昭弘 先生(内田クリニック) 相談者:アイダさん(32歳) 診察時の痛みと病院の対応について 結婚して2年。夫が性交障害です。人工授精にのぞもうと、地元の病院に通い始めました。2カ月間の検査でAIHの段階まできましたが、病院の対応に不信感をもっています。問診で、夫が性交障害と告げているにもかかわらず、「普通はタイミングで様子を見るので、最初から人工授精は……」のようなことを言われ、また私自身、あまり経験がないため、器具を入れられる際に体がこわばってしまいます。すると、「普通はこんなに痛がらない」「痛がるならドクターは人工授精しません」とも。女性の性器は、濡れてない状態で器具を入れて痛くないのですか? 地元で人工授精をしているのは、そこと総合病院しかありません。転院しようか悩んでいます。 アイダさんは、夫の性交障害で人工授精に踏み切ったようですが、診察の時に痛みがあるようです。 確かに診察できないと人工授精はできないので、工夫が必要です。不妊の原因はセックスができていないことなので、これまでの性交体験から、うまい具合に処女膜が破られていないのかもしれませんね。当院のやり方では、まずは痛みのない状況で診察できることに慣れてもらうことが大切なので、診察の前に表面に局所麻酔のゼリーを塗ってから超音波検査の器具を腟に挿入したり、診察器具であるクスコを使ったりします。クスコが入れば人工授精ができますから。それで人工授精ができた患者さんもいらっしゃいます。個人差はあっても、多くの人は痛みを伴うと思うので、今後そのような対処を考えてみてもいいのではないでしょうか。 アイダさんの痛みは、特に強いのでしょうか? もしかすると、アイダさんにも性交障害があるかもしれないですね。なかには、女性が痛がるから射精まで至らないパターンもあると思います。痛いのを無理にはできないですからね。これから先、セックスについてどう考えていくのかがポイントの一つではないでしょうか。妊娠を目指す治療としての人工授精と、セックスできるようになる治療が別という方向で進めてみてもいいのかなと思います。 性交障害には、どのような治療がありますか? ご主人には泌尿器科で性交障害に関する相談をされるようおすすめします。アイダさんは、慣れるしかないのかもしれません。診察でも、超音波検査の器具が入ったりすることで、だんだんと腟の入り口の痛みが軽減して麻酔薬も要らなくなることが多いですから。また、ご夫婦でそういう話ができるようになると、セックスをする状況が今までと変わるかもしれません。自分たちで取り組む延長線上で、自然とセックスができるようになっていけばいいなと僕は思いますね。 人工授精で子どもさえできればいい、という考えではないのですね。 セックスレスでも仲のいいカップルはあるのですが、カップルの関係性には医療者としては少し不安も感じます。生殖目的でないセックスができるのは人間だけで、ほかの動物は発情期があってセックスをします。そうであれば、妊娠のためだけではないセックスもできるようになることを考えてもいいと思いますよ。 アイダさんは、今かかっている病院に不信感を抱き、地元の総合病院へ転院するべきかどうかを悩んでいるようです。 今の施設では診察もままならないくらい痛くて、人工授精もできないような対応をされているのであれば、とりあえず総合病院へ行き、「こちらでは、このような状態でしたら、どのようにしているのですか?」と、相談することから始めるべきだと思いますね。転院しても同じ対応かもしれないし、もっとひどいと思えるかもしれませんから。そういう意味で、まずは相談することをおすすめします。 内田先生より まとめ ●性交障害の治療でセックスができるようになることを考えてみては? ●いきなり転院するのではなく、まずは相談をするところから。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 内田 昭弘 先生(内田クリニック) 島根医科大学医学部卒業。同大学の体外受精チームの一員として、1987年、島根県の体外受精による初の赤ちゃん誕生に携わる。1997年に内田クリニック開業。生殖医療中心の婦人科、奥様が副院長を務める内科、大阪より月1回来院の荒木先生による心理カウンセリングをもって現在のクリニックの完成形としている。 ≫ 内田クリニック 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.33 2017 Spring≫ 掲載記事一覧はこちら 性交障害で人工授精へ。でも、診察痛が我慢できず… 内田 昭弘 先生(内田クリニック) 相談者:アイダさん(32歳) 診察時の痛みと病院の対応について 結婚して2年。夫が性交障害です。人工授精にのぞもうと、地元の病院に通い始めました。2カ月間の検査でAIHの段階まできましたが、病院の対応に不信感をもっています。問診で、夫が性交障害と告げているにもかかわらず、「普通はタイミングで様子を見るので、最初から人工授精は……」のようなことを言われ、また私自身、あまり経験がないため、器具を入れられる際に体がこわばってしまいます。すると、「普通はこんなに痛がらない」「痛がるならドクターは人工授精しません」とも。女性の性器は、濡れてない状態で器具を入れて痛くないのですか? 地元で人工授精をしているのは、そこと総合病院しかありません。転院しようか悩んでいます。 アイダさんは、夫の性交障害で人工授精に踏み切ったようですが、診察の時に痛みがあるようです。 確かに診察できないと人工授精はできないので、工夫が必要です。不妊の原因はセックスができていないことなので、これまでの性交体験から、うまい具合に処女膜が破られていないのかもしれませんね。当院のやり方では、まずは痛みのない状況で診察できることに慣れてもらうことが大切なので、診察の前に表面に局所麻酔のゼリーを塗ってから超音波検査の器具を腟に挿入したり、診察器具であるクスコを使ったりします。クスコが入れば人工授精ができますから。それで人工授精ができた患者さんもいらっしゃいます。個人差はあっても、多くの人は痛みを伴うと思うので、今後そのような対処を考えてみてもいいのではないでしょうか。 アイダさんの痛みは、特に強いのでしょうか? もしかすると、アイダさんにも性交障害があるかもしれないですね。なかには、女性が痛がるから射精まで至らないパターンもあると思います。痛いのを無理にはできないですからね。これから先、セックスについてどう考えていくのかがポイントの一つではないでしょうか。妊娠を目指す治療としての人工授精と、セックスできるようになる治療が別という方向で進めてみてもいいのかなと思います。 性交障害には、どのような治療がありますか? ご主人には泌尿器科で性交障害に関する相談をされるようおすすめします。アイダさんは、慣れるしかないのかもしれません。診察でも、超音波検査の器具が入ったりすることで、だんだんと腟の入り口の痛みが軽減して麻酔薬も要らなくなることが多いですから。また、ご夫婦でそういう話ができるようになると、セックスをする状況が今までと変わるかもしれません。自分たちで取り組む延長線上で、自然とセックスができるようになっていけばいいなと僕は思いますね。 人工授精で子どもさえできればいい、という考えではないのですね。 セックスレスでも仲のいいカップルはあるのですが、カップルの関係性には医療者としては少し不安も感じます。生殖目的でないセックスができるのは人間だけで、ほかの動物は発情期があってセックスをします。そうであれば、妊娠のためだけではないセックスもできるようになることを考えてもいいと思いますよ。 アイダさんは、今かかっている病院に不信感を抱き、地元の総合病院へ転院するべきかどうかを悩んでいるようです。 今の施設では診察もままならないくらい痛くて、人工授精もできないような対応をされているのであれば、とりあえず総合病院へ行き、「こちらでは、このような状態でしたら、どのようにしているのですか?」と、相談することから始めるべきだと思いますね。転院しても同じ対応かもしれないし、もっとひどいと思えるかもしれませんから。そういう意味で、まずは相談することをおすすめします。 内田先生より まとめ ●性交障害の治療でセックスができるようになることを考えてみては? ●いきなり転院するのではなく、まずは相談をするところから。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 内田 昭弘 先生(内田クリニック) 島根医科大学医学部卒業。同大学の体外受精チームの一員として、1987年、島根県の体外受精による初の赤ちゃん誕生に携わる。1997年に内田クリニック開業。生殖医療中心の婦人科、奥様が副院長を務める内科、大阪より月1回来院の荒木先生による心理カウンセリングをもって現在のクリニックの完成形としている。 ≫ 内田クリニック 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.33 2017 Spring≫ 掲載記事一覧はこちら
0217.4.25
コラム 不妊治療
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くりかえす12週までの流産の3割は防ぐことができる
くりかえす12週までの流産の3割は防ぐことができる せっかく妊娠したのに流産してしまうと、肉体的にも精神的にもダメージが大きいものです。しかもそれが2回、3回と続き、習慣性流産になってしまうと、受精がうまくいっても「今度もだめになるかも」と、つねに不安がつきまといますよね。 流産の原因を医療機関で調べてもらうことも有効ですが、そこからどのように流産しない体づくりをしていくかが重要となります。 どうしても流産がさけられないのは染色体異常によるものです。もちろん染色体異常にも程度がありますが、ほとんど12週までに結論がでます。 ただし、習慣性流産の3割くらいは染色体異常ではなく卵巣機能不全で、12週までに流産していると、山東中医薬大学高度医療生殖センターの蓮方教授がおっしゃっていました。山東中医薬大学高度医療生殖センターは、IVFやICSIに中医学をプラスするという、私たちが理想としている不妊治療を行なっている施設です。日本の場合は高度医療と中医学の治療は単発で別々に行なっているのが現状です。 蓮方教授のお話からいうと、12週までの流産のうち、3割はそれを避けることが可能だということです。このとこからもわかるように、妊娠前から卵巣機能を高めておく、つまり卵巣の状態をよくしておくことで12週までの流産の3割が防げるのです。 卵巣機能低下を中医学では「腎虚」といいます。卵子の質、精子の質、子宮の質、すべてが腎の良し悪しで決まります。腎には「精血」という、人体の生命活動を維持する栄養物質をいかに充足させるかが重要なポイントになります。年齢とともに腎の精血が不足し、痰湿や瘀血などが入り込んだり、逆に痰湿や瘀血から精血の供給が不足し腎虚になるからです。腎虚になれば流産が起こりやすくなります。つまり、精血が不足すると赤ちゃんを育て上げられないため、痰湿や瘀血を取り除いて精血を補うことが流産には有効です。とくに習慣性流産になっている方は、痰湿や瘀血を取り除いて腎に精血をしっかり補う必要があります。 中医学ではこれらを同時に行うことができるのが大きな特徴です。もちろん染色体異常など、ダメージを受けてしまった卵を中医学で救うことはできません。しかし、卵が発育する140〜150日ほどの間に、「虚血再灌流(きょけつさいかんりゅう)」という、血流が悪い状態から発生する活性酸素がDNAのダメージを与えているとしたら、元気な卵を守ることは可能です。実際に50歳で自然妊娠され出産されたお客様がいることからも、十分に試す価値のある方法と言えます。 虚血再灌流は瘀血とも絡んでいます。つまりできるだけ虚血再灌流を起こさせないようにすることで、染色体異常を防げるケースもあるのです。そのためには、鍼と併用しながら血流量をあげて安定させることです。さらに漢方で腎精や腎血を補います。中医学の鍼と漢方を組み合わせることで、着床障害や流産、さらに卵の染色体のダメージをできるだけ軽くしていきます。習慣性流産の方はもちろん、そうでない方もお腹の赤ちゃんの発育を促すために、週に1度は鍼を打つことをおすすめします。 中医学の素晴らしさ 皆さんは中医学をご存知ですか? 漢方薬や鍼灸治療・薬膳・気功など様々なコンテンツがありますね。特に治療に関わる場合、漢方薬と鍼灸のことを指します。日本では別々に治療するケースが多いのですが、本来の治療では組み合わせることがとても重要です。 1+1は2ではありません。中医学では漢方薬と鍼灸治療の組み合わせることで、とても素晴らしい効果を発揮しています。 漢方薬は患部に届いて初めて効果が出ます。だから、弱った臓器の血流を鍼灸で回復させる。 ぜひ、あなたに合った組み合わせ方法を中医学の誠心堂へご相談ください。 株式会社誠心堂薬局代表取締役 西野 裕一先生株式会社誠心堂薬局代表取締役。 薬剤師・鍼灸師。北里大学薬学部卒。東京医療福祉専門学校鍼灸科卒。中国漢方普及協会会長。日本中医学会評議員。漢方・鍼灸をはじめとする中医学の有用性を啓発・普及させる活動に尽力。著書多数。≫ 誠心堂薬局 関連コラム ≫ 誠心堂での妊活レポート−3 ≫ 誠心堂での妊活レポート−2 ≫ 誠心堂での妊活レポート−1 ≫ 更年期の尿モレは漢方薬と鍼灸で相談を ≫ 尿モレの情報は出産前に収集しておこう ≫ 三焦調整法で卵子の質を守る-2 ≫ 三焦調整法で卵子の質を守る-1 <外部サイト>店舗で相談してみる→ 誠心堂薬局 http://www.seishin-do.co.jp/rd/ くりかえす12週までの流産の3割は防ぐことができる せっかく妊娠したのに流産してしまうと、肉体的にも精神的にもダメージが大きいものです。しかもそれが2回、3回と続き、習慣性流産になってしまうと、受精がうまくいっても「今度もだめになるかも」と、つねに不安がつきまといますよね。 流産の原因を医療機関で調べてもらうことも有効ですが、そこからどのように流産しない体づくりをしていくかが重要となります。 どうしても流産がさけられないのは染色体異常によるものです。もちろん染色体異常にも程度がありますが、ほとんど12週までに結論がでます。 ただし、習慣性流産の3割くらいは染色体異常ではなく卵巣機能不全で、12週までに流産していると、山東中医薬大学高度医療生殖センターの蓮方教授がおっしゃっていました。山東中医薬大学高度医療生殖センターは、IVFやICSIに中医学をプラスするという、私たちが理想としている不妊治療を行なっている施設です。日本の場合は高度医療と中医学の治療は単発で別々に行なっているのが現状です。 蓮方教授のお話からいうと、12週までの流産のうち、3割はそれを避けることが可能だということです。このとこからもわかるように、妊娠前から卵巣機能を高めておく、つまり卵巣の状態をよくしておくことで12週までの流産の3割が防げるのです。 卵巣機能低下を中医学では「腎虚」といいます。卵子の質、精子の質、子宮の質、すべてが腎の良し悪しで決まります。腎には「精血」という、人体の生命活動を維持する栄養物質をいかに充足させるかが重要なポイントになります。年齢とともに腎の精血が不足し、痰湿や瘀血などが入り込んだり、逆に痰湿や瘀血から精血の供給が不足し腎虚になるからです。腎虚になれば流産が起こりやすくなります。つまり、精血が不足すると赤ちゃんを育て上げられないため、痰湿や瘀血を取り除いて精血を補うことが流産には有効です。とくに習慣性流産になっている方は、痰湿や瘀血を取り除いて腎に精血をしっかり補う必要があります。 中医学ではこれらを同時に行うことができるのが大きな特徴です。もちろん染色体異常など、ダメージを受けてしまった卵を中医学で救うことはできません。しかし、卵が発育する140〜150日ほどの間に、「虚血再灌流(きょけつさいかんりゅう)」という、血流が悪い状態から発生する活性酸素がDNAのダメージを与えているとしたら、元気な卵を守ることは可能です。実際に50歳で自然妊娠され出産されたお客様がいることからも、十分に試す価値のある方法と言えます。 虚血再灌流は瘀血とも絡んでいます。つまりできるだけ虚血再灌流を起こさせないようにすることで、染色体異常を防げるケースもあるのです。そのためには、鍼と併用しながら血流量をあげて安定させることです。さらに漢方で腎精や腎血を補います。中医学の鍼と漢方を組み合わせることで、着床障害や流産、さらに卵の染色体のダメージをできるだけ軽くしていきます。習慣性流産の方はもちろん、そうでない方もお腹の赤ちゃんの発育を促すために、週に1度は鍼を打つことをおすすめします。 中医学の素晴らしさ 皆さんは中医学をご存知ですか? 漢方薬や鍼灸治療・薬膳・気功など様々なコンテンツがありますね。特に治療に関わる場合、漢方薬と鍼灸のことを指します。日本では別々に治療するケースが多いのですが、本来の治療では組み合わせることがとても重要です。 1+1は2ではありません。中医学では漢方薬と鍼灸治療の組み合わせることで、とても素晴らしい効果を発揮しています。 漢方薬は患部に届いて初めて効果が出ます。だから、弱った臓器の血流を鍼灸で回復させる。 ぜひ、あなたに合った組み合わせ方法を中医学の誠心堂へご相談ください。 株式会社誠心堂薬局代表取締役 西野 裕一先生株式会社誠心堂薬局代表取締役。 薬剤師・鍼灸師。北里大学薬学部卒。東京医療福祉専門学校鍼灸科卒。中国漢方普及協会会長。日本中医学会評議員。漢方・鍼灸をはじめとする中医学の有用性を啓発・普及させる活動に尽力。著書多数。≫ 誠心堂薬局 関連コラム ≫ 誠心堂での妊活レポート−3 ≫ 誠心堂での妊活レポート−2 ≫ 誠心堂での妊活レポート−1 ≫ 更年期の尿モレは漢方薬と鍼灸で相談を ≫ 尿モレの情報は出産前に収集しておこう ≫ 三焦調整法で卵子の質を守る-2 ≫ 三焦調整法で卵子の質を守る-1 <外部サイト>店舗で相談してみる→ 誠心堂薬局 http://www.seishin-do.co.jp/rd/
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コラム 不妊治療
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なかなか移植まで至りません。もう治療を諦めるべき?
なかなか移植まで至りません。もう治療を諦めるべき? 永井 泰 先生(永井マザーズホスピタル) 相談者:ちよさん(35歳)からの相談 治療のやめ時といわれてしまいました 今まで体外受精を5回しましたが、受精したのは1個だけで、それも胚盤胞までいかず移植できたことがありません。9カ月前に嚢腫が邪魔をして採卵できなくなり、嚢腫、筋腫、癒着剥離の手術を実施。癒着が広範囲で、先生からは「自然妊娠も可能性はあるが、体外受精がいいでしょう」といわれました。今年2月の採卵では受精せず。先日、採卵無麻酔の病院に転院して診てもらったところ、嚢腫と筋腫、癒着がまたできていて、AMHの値は0.18ng/ml、FSHは37mIU/mlでした。先生からは「嚢腫の隙間から見える卵子は採れないことはないが激痛で、そんな思いをして採ったところで良い卵子とは思えない。治療のやめ時でしょう。あと1~2年早かったら」といわれてしまいました。全身麻酔なら採卵できると思いますが、本当にもうやめ時なのでしょうか。 9カ月前に子宮内膜症や子宮筋腫などの手術を受けたのにもかかわらず、また再発をしたということです。 なかには手術をしても半年くらいで再発してしまう人もいます。特に多発筋腫の人はまたすぐにできてしまうことが多いようですね。筋層内筋腫でも子宮内膜を圧迫しているものや粘膜筋腫だと着床に影響することがあるので、そのような影響が考えられるのなら二度目の手術に臨むという選択もあるかと思います。 受精率が低く、胚盤胞までいかないというのは、やはり卵子の質が悪いからなのでしょうか。 確率は低いけれど一応受精はして、でも、その後がうまくいかないということは、やはり卵子の質が悪いことが考えられます。AMH(抗ミュラー管ホルモン)の値が低いのが気になりますね。これは卵巣の予備能、残っている卵子の数を表している数値といわれ、卵子の質とは関連していませんが、低いとそれだけ妊娠のチャンスも少なくなってきているということです。 さらに気になるのがFSHの数値。年齢の割に極端に高く、閉経に近い数値です。これは子宮の疾患があるから上がってしまったということではなく、もともと卵巣の働きが悪く、早発閉経になるような傾向があったのではないでしょうか。 確かに厳しい状態ですが、AMH値0.1以下の方でも妊娠している方はいらっしゃいます。FSHに関しても、カウフマン療法などでFSHを一度下げて安定させてから排卵誘発を行えば、妊娠するチャンスはあると思います。 治療する際のポイントなどはありますか。 これまでどのような方法をとってきたのかわかりませんが、もし同じような形で卵子をつくっていたのなら、排卵誘発の方法を変えると胚盤胞までいく可能性が出てくるかもしれません。 卵子をたくさん採ることを目指すのではなく、このような状況の方は低刺激でいいものが出てくるのを待つという方法もあるかと思います。ただ、採卵は急いだほうがいいでしょう。採れるうちに卵子を確保して受精卵を凍結し、再手術に臨むならその後に受けることを考えます。移植は急ぐことはありませんから。とにかく採卵を優先したほうがいいと思います。 「嚢腫が邪魔をして採卵しにくい」ということについてはどう思われますか。 これは無麻酔だから採りにくいということですよね。それなら、麻酔をして採卵をすれば問題ないでしょう。施設によって考え方が異なるかもしれませんが、ちよさんのような症例にも対応できる施設はあると思います。いろいろ問題があってハードルは高めではありますが、できることはまだあるはず。ここで諦めることなく、前向きに治療に臨んでいただきたいですね。 永井生より まとめ ●排卵誘発法を変えてみると、胚盤胞になる卵子が採れる可能性も。 ●AMH低値、FSH高値の人は採卵を優先して、早めに卵子の確保を。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 永井 泰 先生(永井マザーズホスピタル) 東京医科大学医学部卒業。産婦人科・麻酔科認定医。1989年、埼玉県三郷市に開院。さらに環境を整え、より良い医療を提供するために、2015年に診療所から病院へ改組。産科、婦人科をはじめ、不妊治療、形成・美容外科、小児科と、女性が生涯関わる総合的な医療を、温かく、優しい環境の中で提供。クリスマスに開催予定の院内コンサートを企画中。俳優さんが朗読する童謡に合わせて行うピアノやバイオリンの生演奏は以前開催した時も大好評で、小さな子どもたちも夢中になって聴いていたとか。 ≫ 永井マザーズホスピタル 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.36 2017 Winter≫ 掲載記事一覧はこちら なかなか移植まで至りません。もう治療を諦めるべき? 永井 泰 先生(永井マザーズホスピタル) 相談者:ちよさん(35歳)からの相談 治療のやめ時といわれてしまいました 今まで体外受精を5回しましたが、受精したのは1個だけで、それも胚盤胞までいかず移植できたことがありません。9カ月前に嚢腫が邪魔をして採卵できなくなり、嚢腫、筋腫、癒着剥離の手術を実施。癒着が広範囲で、先生からは「自然妊娠も可能性はあるが、体外受精がいいでしょう」といわれました。今年2月の採卵では受精せず。先日、採卵無麻酔の病院に転院して診てもらったところ、嚢腫と筋腫、癒着がまたできていて、AMHの値は0.18ng/ml、FSHは37mIU/mlでした。先生からは「嚢腫の隙間から見える卵子は採れないことはないが激痛で、そんな思いをして採ったところで良い卵子とは思えない。治療のやめ時でしょう。あと1~2年早かったら」といわれてしまいました。全身麻酔なら採卵できると思いますが、本当にもうやめ時なのでしょうか。 9カ月前に子宮内膜症や子宮筋腫などの手術を受けたのにもかかわらず、また再発をしたということです。 なかには手術をしても半年くらいで再発してしまう人もいます。特に多発筋腫の人はまたすぐにできてしまうことが多いようですね。筋層内筋腫でも子宮内膜を圧迫しているものや粘膜筋腫だと着床に影響することがあるので、そのような影響が考えられるのなら二度目の手術に臨むという選択もあるかと思います。 受精率が低く、胚盤胞までいかないというのは、やはり卵子の質が悪いからなのでしょうか。 確率は低いけれど一応受精はして、でも、その後がうまくいかないということは、やはり卵子の質が悪いことが考えられます。AMH(抗ミュラー管ホルモン)の値が低いのが気になりますね。これは卵巣の予備能、残っている卵子の数を表している数値といわれ、卵子の質とは関連していませんが、低いとそれだけ妊娠のチャンスも少なくなってきているということです。 さらに気になるのがFSHの数値。年齢の割に極端に高く、閉経に近い数値です。これは子宮の疾患があるから上がってしまったということではなく、もともと卵巣の働きが悪く、早発閉経になるような傾向があったのではないでしょうか。 確かに厳しい状態ですが、AMH値0.1以下の方でも妊娠している方はいらっしゃいます。FSHに関しても、カウフマン療法などでFSHを一度下げて安定させてから排卵誘発を行えば、妊娠するチャンスはあると思います。 治療する際のポイントなどはありますか。 これまでどのような方法をとってきたのかわかりませんが、もし同じような形で卵子をつくっていたのなら、排卵誘発の方法を変えると胚盤胞までいく可能性が出てくるかもしれません。 卵子をたくさん採ることを目指すのではなく、このような状況の方は低刺激でいいものが出てくるのを待つという方法もあるかと思います。ただ、採卵は急いだほうがいいでしょう。採れるうちに卵子を確保して受精卵を凍結し、再手術に臨むならその後に受けることを考えます。移植は急ぐことはありませんから。とにかく採卵を優先したほうがいいと思います。 「嚢腫が邪魔をして採卵しにくい」ということについてはどう思われますか。 これは無麻酔だから採りにくいということですよね。それなら、麻酔をして採卵をすれば問題ないでしょう。施設によって考え方が異なるかもしれませんが、ちよさんのような症例にも対応できる施設はあると思います。いろいろ問題があってハードルは高めではありますが、できることはまだあるはず。ここで諦めることなく、前向きに治療に臨んでいただきたいですね。 永井生より まとめ ●排卵誘発法を変えてみると、胚盤胞になる卵子が採れる可能性も。 ●AMH低値、FSH高値の人は採卵を優先して、早めに卵子の確保を。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 永井 泰 先生(永井マザーズホスピタル) 東京医科大学医学部卒業。産婦人科・麻酔科認定医。1989年、埼玉県三郷市に開院。さらに環境を整え、より良い医療を提供するために、2015年に診療所から病院へ改組。産科、婦人科をはじめ、不妊治療、形成・美容外科、小児科と、女性が生涯関わる総合的な医療を、温かく、優しい環境の中で提供。クリスマスに開催予定の院内コンサートを企画中。俳優さんが朗読する童謡に合わせて行うピアノやバイオリンの生演奏は以前開催した時も大好評で、小さな子どもたちも夢中になって聴いていたとか。 ≫ 永井マザーズホスピタル 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.36 2017 Winter≫ 掲載記事一覧はこちら
2017.11.21
コラム 不妊治療
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顕微授精の受精率が低く、胚盤胞まで到達しません
「採卵日の2日前に夫が風邪を引いて熱を出していました。当日までに熱は下がりましたが、これは精液の数値が悪くなる原因になりますか?」
2017.11.21
コラム 不妊治療
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人工、顕微授精の結果が出ない。転院または治療を諦めるべき?
人工、顕微授精の結果が出ない。転院または治療を諦めるべき? 蔵本 武志 先生(蔵本ウイメンズクリニック) 相談者:えりさん(39歳)からの相談 着床しません 37歳から不妊治療を開始、人工授精10回以上、顕微授精4回を行いました。現在、AMH0.64ng/mlと徐々に低下しています。あらゆる検査をし、一部卵管狭窄が認められました。主人に少々問題があり、精子濃度が少なく、奇形率が多いため、自然妊娠は厳しいという診断でした。今年1月に一時的に治療をお休みした期間に自然妊娠をしましたが、7週目で流産。現在は顕微授精4回目失敗、胚盤胞移植に向けて待機中です(胚盤胞移植は初めてです。今まで胚盤胞に到達しなかったので新鮮胚移植しか行ったことがありません)。失敗続きで転院も考えていますが、仕事との両立や生活を考えると物理的に厳しく感じます。もしくはこのまま諦めるべきなのか悩んでいます。 胚盤胞移植に向けて待機中、これからの治療に悩んでおられるようです。 情報が少ないのですが、初めての胚盤胞移植のため、おそらく事前に凍結された胚盤胞を融解して移植されるご予定ですね。今までえりさんが取り組まれていた新鮮胚移植は、採卵・体外受精後およそ2~3日目の分割胚移植を行っておられましたが、胚盤胞移植は採卵・体外受精後5~6日まで体外で培養した最終段階の胚で、新鮮胚移植に比べより生命力のある胚を選ぶことができます。着床率もおよそ2倍になると思います。 AMH(抗ミュラー管ホルモン:卵巣予備能を示す)の数値を見ると、確かに採卵数は多くないことが予想されますが、数字にガッカリしないでほしいですね。えりさんは数カ月前に自然妊娠を経験したという事実があります。39歳の卵子の4割以上は染色体異常があると言われていますが、だからといって年齢で諦める必要もありません。 不妊治療にあたり、心理的にダメージを受けていらっしゃるように見えます。 仕事については上司の方に不妊治療を行っていることを相談することで比較的通院しやすくなったという方も多く、ひとりで抱え込まないことが大切です。今後、政府も少子化対策として、企業に不妊治療の時間を取れるよう働きかけていくようです。また、メンタルケアのサポート窓口がある病院なら、ぜひ一度相談してみてほしいですね。 ご主人の精子についてですが、実は採取ごとに違うクオリティの精子が採取されることが多々あります。また、良い質の精子は、禁欲期間が2日以内と言われています。不妊治療は妻だけの問題ではなく、夫婦で取り組むものですから、ご主人との話し合いや意思の疎通をしっかりとって、ひとりで抱え込まないことが大切です。 これからどのような治療法を考えればいいでしょう。 新鮮胚移植に比べ、子宮内膜環境を整えた凍結胚の融解胚移植の妊娠率は平均10%以上高くなります。まず、胚移植する前の周期に子宮鏡で中の様子を確認し、内膜ポリープがないか、充血していないかなど着床する子宮内膜環境のチェックを行い、内膜の充血があれば慢性子宮内膜炎の可能性も考えられ、ビブラマイシン®などの抗生剤などをうまく利用して、えりさんの状態にあったケアをして子宮内環境を整えてみてはいかがですか。もちろんそのようなことをすべて行ったうえで、それでも妊娠しない場合は心機一転、転院を考えてみるのも良い選択かもしれません。 失敗を重ねてからの待機中でいろいろ考え込んでしまうことも多いでしょうが、リラックスして次のステップに進んでください。 蔵本先生より まとめ ●凍結した胚盤胞の融解胚移植が最も妊娠率が高い。 ●子宮鏡を使い、子宮内膜環境を確認。その状態を見て必要な処置を行ってみては。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 蔵本 武志 先生(蔵本ウイメンズクリニック) 山口県柳井市出身。1979年久留米大学医学部卒業。1985年山口大学大学院修了。医学博士。1995年6月蔵本ウイメンズクリニック開院。開院当時より、体外受精、顕微授精をはじめ、一般不妊治療や生殖医療の研究を広く行う。JISART(日本生殖補助医療標準化機関)理事長。山口大学非常勤講師、久留米大学医学部臨床教授。今年は劇団四季ミュージカル「リトルマーメイド」の観劇やアンコールワットへの一人旅などで大いにリフレッシュした蔵本先生。笑顔が3割増しと評判だそう。 ≫ 蔵本ウイメンズクリニック 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.36 2017 Winter≫ 掲載記事一覧はこちら 人工、顕微授精の結果が出ない。転院または治療を諦めるべき? 蔵本 武志 先生(蔵本ウイメンズクリニック) 相談者:えりさん(39歳)からの相談 着床しません 37歳から不妊治療を開始、人工授精10回以上、顕微授精4回を行いました。現在、AMH0.64ng/mlと徐々に低下しています。あらゆる検査をし、一部卵管狭窄が認められました。主人に少々問題があり、精子濃度が少なく、奇形率が多いため、自然妊娠は厳しいという診断でした。今年1月に一時的に治療をお休みした期間に自然妊娠をしましたが、7週目で流産。現在は顕微授精4回目失敗、胚盤胞移植に向けて待機中です(胚盤胞移植は初めてです。今まで胚盤胞に到達しなかったので新鮮胚移植しか行ったことがありません)。失敗続きで転院も考えていますが、仕事との両立や生活を考えると物理的に厳しく感じます。もしくはこのまま諦めるべきなのか悩んでいます。 胚盤胞移植に向けて待機中、これからの治療に悩んでおられるようです。 情報が少ないのですが、初めての胚盤胞移植のため、おそらく事前に凍結された胚盤胞を融解して移植されるご予定ですね。今までえりさんが取り組まれていた新鮮胚移植は、採卵・体外受精後およそ2~3日目の分割胚移植を行っておられましたが、胚盤胞移植は採卵・体外受精後5~6日まで体外で培養した最終段階の胚で、新鮮胚移植に比べより生命力のある胚を選ぶことができます。着床率もおよそ2倍になると思います。 AMH(抗ミュラー管ホルモン:卵巣予備能を示す)の数値を見ると、確かに採卵数は多くないことが予想されますが、数字にガッカリしないでほしいですね。えりさんは数カ月前に自然妊娠を経験したという事実があります。39歳の卵子の4割以上は染色体異常があると言われていますが、だからといって年齢で諦める必要もありません。 不妊治療にあたり、心理的にダメージを受けていらっしゃるように見えます。 仕事については上司の方に不妊治療を行っていることを相談することで比較的通院しやすくなったという方も多く、ひとりで抱え込まないことが大切です。今後、政府も少子化対策として、企業に不妊治療の時間を取れるよう働きかけていくようです。また、メンタルケアのサポート窓口がある病院なら、ぜひ一度相談してみてほしいですね。 ご主人の精子についてですが、実は採取ごとに違うクオリティの精子が採取されることが多々あります。また、良い質の精子は、禁欲期間が2日以内と言われています。不妊治療は妻だけの問題ではなく、夫婦で取り組むものですから、ご主人との話し合いや意思の疎通をしっかりとって、ひとりで抱え込まないことが大切です。 これからどのような治療法を考えればいいでしょう。 新鮮胚移植に比べ、子宮内膜環境を整えた凍結胚の融解胚移植の妊娠率は平均10%以上高くなります。まず、胚移植する前の周期に子宮鏡で中の様子を確認し、内膜ポリープがないか、充血していないかなど着床する子宮内膜環境のチェックを行い、内膜の充血があれば慢性子宮内膜炎の可能性も考えられ、ビブラマイシン®などの抗生剤などをうまく利用して、えりさんの状態にあったケアをして子宮内環境を整えてみてはいかがですか。もちろんそのようなことをすべて行ったうえで、それでも妊娠しない場合は心機一転、転院を考えてみるのも良い選択かもしれません。 失敗を重ねてからの待機中でいろいろ考え込んでしまうことも多いでしょうが、リラックスして次のステップに進んでください。 蔵本先生より まとめ ●凍結した胚盤胞の融解胚移植が最も妊娠率が高い。 ●子宮鏡を使い、子宮内膜環境を確認。その状態を見て必要な処置を行ってみては。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 蔵本 武志 先生(蔵本ウイメンズクリニック) 山口県柳井市出身。1979年久留米大学医学部卒業。1985年山口大学大学院修了。医学博士。1995年6月蔵本ウイメンズクリニック開院。開院当時より、体外受精、顕微授精をはじめ、一般不妊治療や生殖医療の研究を広く行う。JISART(日本生殖補助医療標準化機関)理事長。山口大学非常勤講師、久留米大学医学部臨床教授。今年は劇団四季ミュージカル「リトルマーメイド」の観劇やアンコールワットへの一人旅などで大いにリフレッシュした蔵本先生。笑顔が3割増しと評判だそう。 ≫ 蔵本ウイメンズクリニック 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.36 2017 Winter≫ 掲載記事一覧はこちら
2017.11.21
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顕微授精での良好胚を何度移植しても妊娠継続できません
顕微授精での良好胚を何度移植しても妊娠継続できません 内田 昭弘 先生(内田クリニック) 相談者:もものみさん(34歳) 良好胚を何度移植しても… 不妊治療を始めて2年。フーナーテストで精子が見えず、3回の人工授精で妊娠に至らず、体外受精専門のクリニックへ転院しました。初回採卵で1つしか卵子が採れず、ふりかけで受精しなかったので、2度目からは顕微授精をしています。7度の移植をしましたが、初めの3回は刺激の少ない方法で採卵。2回目は採卵周期に移植してhCGが0。次は凍結してから次の周期に移植してhCGが0。その後、ショート法で採卵し、5日目胚盤胞AAからBBまで4つ、初期胚グレード1が3つでき、2ステップで3回移植。子宮内膜は11㎜で、2回は着床したもののhCG20以下で化学流産。自然周期での移植はホルモンがうまく上がらず、2回キャンセルしています。うまくいかない原因はなんでしょうか。ほかに方法は考えられないでしょうか。 1回目で受精しなかった原因は? たまたま、卵子の状態が悪くて受精しなかった可能性もあります。1回目の採卵の際に卵子が1個しか採れなくて受精しなかったから、2回目以降はすべて顕微授精をしているとのことですが、卵子数が増えてきた時に、もう一度、体外受精を試してみたらどうでしょうか。人工授精が3回できているということは、精子に驚くほどの異常はないはず。ただ、精子の数、運動率がわからないので、実際、調整した時の精子の情報が欲しいです。また、採卵時に何個採取でき、顕微授精を何個やって何個受精卵になったのかという情報もあるといいですね。 もものみさんは、良好胚の着床がうまくいかないと感じておられるようです。 「自然周期での移植も試みましたが、ホルモンがうまく上がらず、2回キャンセル」ということなので、それまでホルモン補充周期で融解胚移植をしているだろうと推測すれば、ホルモン周期のほうがいいかもしれません。でも、この先生の自然周期をやってみようという発想は正しくて、ホルモン補充周期では妊娠成立はするけど育っていないから、自然周期の時に排卵誘発剤を使って着床の条件を整えるのもありだと思います。あとは、2ステップで3回移植とありますので、二段階胚移植をしているようですね。当院で融解胚移植周期に積極的に取り入れているシート法はやっていることになるので、アシストハッチング(AHA)という方法を検討してみてもいいのではないでしょうか。 内田クリニックでは、どのような治療を進めていくのでしょうか。 1回目に卵子が1つしかなく、ふりかけ(通常の体外受精)で受精しなかったようですが、2回目は受精卵になる卵子数が増えているので、もう一度体外受精をしてみましょうと伝えます。ショート法で胚盤胞にはなっていても、それが化学流産にしかなっていないので、残るのはロング法とアンタゴニスト法です。卵子の育て方を変えるという発想があってもいいと思います。 先生は、どの段階で顕微授精を提案するのでしょうか? 高度生殖補助医療のいろいろな治療を含めて、昨年は年間約5万1千人が誕生しているなかで、凍結周期で生まれているのが約4万人。顕微授精を行った新鮮胚移植では約4300人です。いくら治療件数があっても、体外受精での治療と比較しても妊娠出産率は低いのが現実です。だから僕は、明らかに精子の数が少ないとか、受精卵にならない(受精障害)という段階で顕微授精をすることにしています。もものみさんも顕微授精で胚盤胞にはなっているけど、化学流産に終わる受精卵にしかなっていない。ですから、受精卵になる経過を変えてみようという発想で、顕微授精をやめるという選択もあるのではないでしょうか。しかし、体外受精をやっても受精卵にならないことを想定して、顕微授精と体外受精を半々で行うことも提案すると思います。排卵誘発法も変えて、卵子が育っていく経過も変えようと。そこをご夫妻が納得してくれるかどうかですね。 内田先生より まとめ ●排卵誘発法、卵子が育っていく経過を変えてみましょう。 ●体外受精と顕微授精を半々にしてみるやり方もあります。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 内田 昭弘 先生(内田クリニック) 島根医科大学医学部卒業。同大学の体外受精チームの一員として、1987年、島根県の体外受精による初の赤ちゃん誕生に携わる。1997年に内田クリニック開業。生殖医療中心の婦人科、奥様が副院長を務める内科、大阪より月1回来院の荒木先生による心理カウンセリングをもって現在のクリニックの完成形としている。今年9月、内田クリニックのホームページがマイナーチェンジし、カウンセリング、相談室、セミナーの3つの情報にアクセスしやすくなりました。パソコン用と携帯用でも見せ方を変えているので、ぜひアクセスを。 ≫ 内田クリニック 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.36 2017 Winter≫ 掲載記事一覧はこちら 顕微授精での良好胚を何度移植しても妊娠継続できません 内田 昭弘 先生(内田クリニック) 相談者:もものみさん(34歳) 良好胚を何度移植しても… 不妊治療を始めて2年。フーナーテストで精子が見えず、3回の人工授精で妊娠に至らず、体外受精専門のクリニックへ転院しました。初回採卵で1つしか卵子が採れず、ふりかけで受精しなかったので、2度目からは顕微授精をしています。7度の移植をしましたが、初めの3回は刺激の少ない方法で採卵。2回目は採卵周期に移植してhCGが0。次は凍結してから次の周期に移植してhCGが0。その後、ショート法で採卵し、5日目胚盤胞AAからBBまで4つ、初期胚グレード1が3つでき、2ステップで3回移植。子宮内膜は11㎜で、2回は着床したもののhCG20以下で化学流産。自然周期での移植はホルモンがうまく上がらず、2回キャンセルしています。うまくいかない原因はなんでしょうか。ほかに方法は考えられないでしょうか。 1回目で受精しなかった原因は? たまたま、卵子の状態が悪くて受精しなかった可能性もあります。1回目の採卵の際に卵子が1個しか採れなくて受精しなかったから、2回目以降はすべて顕微授精をしているとのことですが、卵子数が増えてきた時に、もう一度、体外受精を試してみたらどうでしょうか。人工授精が3回できているということは、精子に驚くほどの異常はないはず。ただ、精子の数、運動率がわからないので、実際、調整した時の精子の情報が欲しいです。また、採卵時に何個採取でき、顕微授精を何個やって何個受精卵になったのかという情報もあるといいですね。 もものみさんは、良好胚の着床がうまくいかないと感じておられるようです。 「自然周期での移植も試みましたが、ホルモンがうまく上がらず、2回キャンセル」ということなので、それまでホルモン補充周期で融解胚移植をしているだろうと推測すれば、ホルモン周期のほうがいいかもしれません。でも、この先生の自然周期をやってみようという発想は正しくて、ホルモン補充周期では妊娠成立はするけど育っていないから、自然周期の時に排卵誘発剤を使って着床の条件を整えるのもありだと思います。あとは、2ステップで3回移植とありますので、二段階胚移植をしているようですね。当院で融解胚移植周期に積極的に取り入れているシート法はやっていることになるので、アシストハッチング(AHA)という方法を検討してみてもいいのではないでしょうか。 内田クリニックでは、どのような治療を進めていくのでしょうか。 1回目に卵子が1つしかなく、ふりかけ(通常の体外受精)で受精しなかったようですが、2回目は受精卵になる卵子数が増えているので、もう一度体外受精をしてみましょうと伝えます。ショート法で胚盤胞にはなっていても、それが化学流産にしかなっていないので、残るのはロング法とアンタゴニスト法です。卵子の育て方を変えるという発想があってもいいと思います。 先生は、どの段階で顕微授精を提案するのでしょうか? 高度生殖補助医療のいろいろな治療を含めて、昨年は年間約5万1千人が誕生しているなかで、凍結周期で生まれているのが約4万人。顕微授精を行った新鮮胚移植では約4300人です。いくら治療件数があっても、体外受精での治療と比較しても妊娠出産率は低いのが現実です。だから僕は、明らかに精子の数が少ないとか、受精卵にならない(受精障害)という段階で顕微授精をすることにしています。もものみさんも顕微授精で胚盤胞にはなっているけど、化学流産に終わる受精卵にしかなっていない。ですから、受精卵になる経過を変えてみようという発想で、顕微授精をやめるという選択もあるのではないでしょうか。しかし、体外受精をやっても受精卵にならないことを想定して、顕微授精と体外受精を半々で行うことも提案すると思います。排卵誘発法も変えて、卵子が育っていく経過も変えようと。そこをご夫妻が納得してくれるかどうかですね。 内田先生より まとめ ●排卵誘発法、卵子が育っていく経過を変えてみましょう。 ●体外受精と顕微授精を半々にしてみるやり方もあります。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 内田 昭弘 先生(内田クリニック) 島根医科大学医学部卒業。同大学の体外受精チームの一員として、1987年、島根県の体外受精による初の赤ちゃん誕生に携わる。1997年に内田クリニック開業。生殖医療中心の婦人科、奥様が副院長を務める内科、大阪より月1回来院の荒木先生による心理カウンセリングをもって現在のクリニックの完成形としている。今年9月、内田クリニックのホームページがマイナーチェンジし、カウンセリング、相談室、セミナーの3つの情報にアクセスしやすくなりました。パソコン用と携帯用でも見せ方を変えているので、ぜひアクセスを。 ≫ 内田クリニック 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.36 2017 Winter≫ 掲載記事一覧はこちら
2017.11.21
コラム 不妊治療
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2021.3.1
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