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子宮内膜ポリープ掻爬後
「今度3月に採卵の予定です。このような内膜の状態でも妊娠することが出来るでしょうか?次の移植まで何か出来ることはないでしょうか?」
2018.1.27
専門医Q&A 女性の健康
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子宮内膜ポリープ掻爬後
こりんさん(29歳)妊活して4年目。不妊治療して2年目です。3年前子宮内膜ポリープ掻爬をやり体外受精4回ほどやりましたがすべて陰性。着床障害検査を先日やり3年前のポリープ掻爬で内膜が薄くなって着床しづらくなってると言われました。 今度3月に採卵の予定です。このような内膜の状態でも妊娠することが出来るでしょうか?次の移植まで何か出来ることはないでしょうか? 古賀文敏 先生 (古賀文敏ウイメンズクリニック) 昭和42年5月15日生まれ。 日本産科婦人科学会専門医、臨床遺伝専門医 母体保護法指定医、生殖バイオロジー東京シンポジウム世話人、ARTナースアカデミー世話人、日本IVF学会理事、日本レーザーリプロダクション学会理事、日本生殖心理学会理事 ■経歴 大分医科大学(現大分大学)卒業後、久留米大学産婦人科学教室入局。久留米大学病院、国立小倉病院を経て、聖マリア病院新生児センターにて出産後の母子ケアを学ぶ。 1999年1月 国立小倉病院成育センター周産期病棟医長、生殖医療部門立ち上げに関わる。 2004年4月 久留米大学病院にて不妊・内分泌部門主任として多くの不妊女性の治療にあたる。 2007年5月 福岡市中央区大名 サウスサイドテラス4Fに「古賀文敏ウイメンズクリニック」開院。 2014年6月 中央区天神2丁目 天神ルーチェ5Fに移転・拡張。 ≫ 古賀文敏ウイメンズクリニック 子宮内膜ポリープ掻爬によって、確かに子宮内膜が軽度薄くなることはあります。流産の掻爬術でも少し薄くなることがわかっています。そのため子宮内膜ポリープの手術は、子宮内膜の幹細胞が存在する子宮内膜の基底層を傷つけないようにすることが大事です。切除が不十分で、後に再発したとしても、子宮内膜に負担をかけないようにすることを私自身は心がけています。 ただ子宮内膜が軽度薄くなった場合でも、排卵誘発法によっては内膜が厚くなることがあります。私の経験では、ロングプロトコールが一番厚くなります。でもこの方法で7mm以下の場合は、一般的には厳しいと思われています。というのは、今まで低用量アスピリンやバイアグラ、G-CSFなどの薬剤では十分な効果が得られず、たまたま良い場所に着床する偶然を期待するしかなかったからです。 でもここで内膜が厚くならない方に朗報となる再生医療が、福岡大学の宮本教授らによって開発されています。それは他科でも話題になっている脂肪由来の幹細胞を移植して子宮内膜を厚くする方法です。マウスでの基礎データや他科での安全性から、厚労省の認可もおり、今年の春から臨床応用が開始されています。何度も良好胚を移植しても着床に至らなかった原因不明の着床障害も免疫的機構の改善により、大きく改善する可能性が示唆されています。 なかなか子宮内膜が厚くならない方、また厚さは問題ないのに着床になかなか至らない方には、お薦めかもしれません。
2018.1.27
専門医Q&A 女性の健康
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冬に流行する7つの感染症と、感染症を防ぐ3つの方法
寒い冬に心配な感染症。手洗いや消毒を何となくやるより、効果的な方法を知ってウイルスを寄せつけない冬を過ごしましょう!
2018.1.27
まとめ 女性の健康
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子宮内膜症★女性の健康を守る病気&治療の知識 その1
若い人から幅広い年代で女性が悩まされている子宮内膜症。病気の特色と治療について知っておきましょう!
2018.1.25
まとめ 女性の健康
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お正月に思わず増えた体重を落とそう!
お正月に実家でゆっくりしすぎて、思わず増えてしまった体重。定着する前に、日々の心がけで元の体形に戻しましょう!
2018.1.20
まとめ 女性の健康
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知っておきたい 子宮頸(けい)がん基礎知識
病名しか知らないという人も多い「子宮頸(けい)がん」。どんな病気なのかについて、基礎の基礎をまとめました。
2018.1.16
まとめ 女性の健康
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ダンナへの仕返しと讃えるところ
休みの日、家でダラダラする夫にイライラしませんか?夫への小さな仕返しと、それでも一つだけ讃えたいところ。ジネコに寄せられた声をまとめました。
2018.1.13
まとめ 女性の健康
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無痛分娩のリスクやメリット、デメリットについて3人の先生に聞きました
欧米では60%、韓国でも20%の妊婦が無痛分娩ですが、日本ではわずか5.2%。無痛分娩について、聞いてきました。
2018.1.4
まとめ 女性の健康
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お正月、どのように過ごしますか?知っておきたい日本の伝統とみんなの意見
お正月は家族の心を一つにして 一年間頑張る力を蓄える行事です。お正月のマナーとおせちについてご紹介します。
2018.1.2
まとめ 女性の健康
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だし取りを極めるーだしの基礎知識【その2】
和食の基本、ともいえる "だし" 。こんぶとかつお節の合わせだし、いりこだし、シイタケだし、だしの取り方と利用法をまとめました。
2017.12.28
まとめ 女性の健康
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なぜ、二人目の妊娠に繋がらないのでしょうか?
タコの花嫁さん(30歳)いつも大変興味深くジネコを利用させて頂いてます。専門の先生の意見を伺いたくご相談させて頂きました。よろしくお願い致します。現在二人目の妊娠を目指して、不妊専門クリニックに通院しています。二人目を希望して通院を始め、二年半が経ってしまいました。タイミング10回程度、現在は人工授精14回目を行いましたが結果が伴わず気持ち的に落ち込んでいる最中です。通院してから一年が経ったくらいに妊娠したのですが8周目で心拍の確認ができず繋留流産しています。その後は全く妊娠することもなく来ています。何度か検査したいような話もしたのですが、病院側としては妊娠の経験があるから妊娠は出来る。中略だから検査は必要ないとの事でした。妊娠の経験があるから次も妊娠出来るだろうっていうのは可能性はあるけど確実ではないと思うのですが、実際どうなのでしょう。2年も治療を続けていて妊娠に至ることない現状です。現状の治療めは妊娠は難しいのでしょうか?体外受精もお金がかかるので現段階ではステップアップは難しいと感じる反面、二人目は早くほしいし、ステップアップしないと妊娠も望めないのではないか?という気持ちがあり迷っています。年齢的にも若いし、二人目希望だから、まだ体外受精はいいでしょ?みたいなことを病院の方に言われてちょつとモメた事もありました。病院は患者さんの意見を尊重してくれるところではありますが、何もアドバイスも頂けないので、他の専門の先生にご相談させていただきました。また、なぜこんなにも妊娠に至らないのでしょうか?そこも原因が分からずモヤモヤしています…ごちゃごちゃした文面デ申し訳ありませんがよろしくお願い致します。 中村嘉宏 先生 (なかむらレディースクリニック) 大阪府出身 1994年 大阪市立大学医学部卒業 大阪市立大学付属病院 2001年 大阪市立大学医学部生殖発生発達講座助手 2004年 財団法人住友病院 2006年 医療法人仙養会北摂総合病院産婦人科部長 2013年 藤野婦人科クリニック 2015年4月 なかむらレディースクリニック開院 院長 医学博士 日本産婦人科学会専門医 日本生殖医学会生殖医療専門医 日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医 日本内視鏡外科学会技術認定医 生殖補助医療胚培養士 臨床遺伝専門医 アメリカンアンチエイジング学会(A4M)認定専 ≫ なかむらレディースクリニック 一度妊娠出産されていますが、人間の体の状態は一定ではなく、その時々で変化するものです。なにか妊娠しにくい原因が隠れている可能性があります。タコの花嫁さんは、一般検査からすべてやり直したほうがいいですね。検査すれば妊娠しにくい要因がわかります。たとえば、ホルモンの状態が変わっていたり、甲状腺の異常などが隠れているかもしれません。また、1人目の時は卵管が通っていても、出産後に詰まってしまったり、ご主人の精子が妊娠できるギリギリの数で確率的には妊娠しにくい場合もあります。原因がわかれば、それに応じた治療ができます。 タイミング10回、人工授精14回も治療を続けてこられて流産は1度とのことですので、総体的には妊娠しにくい状態にあると思います。妊娠率の低さを考えると、そろそろ体外受精に踏み切ってもいい時期でしょう。経済的な面では、助成金を活用されると負担は軽くなります。年齢が31歳とお若いので、1回あたりの体外受精の妊娠率も高いのでチャンスだと思います。通院されている病院で検査がどうしてもむずかしいということであれば、転院も一つの方法です。そのほうが精神的にもいいかもしれません。
2017.12.26
専門医Q&A 女性の健康
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年末、どのように過ごしますか?知っておきたい日本の伝統とみんなの意見
年末の行事は今も多くの人に受け継がれています。でも意外と本来の意味や決まりは知られていないのでは?
2017.12.26
まとめ 女性の健康
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排卵と基礎体温
あずだいさん(28歳)排卵検査薬で検査もしつつ基礎体温も測ってるのですが排卵予測日が26日で排卵検査薬で陽性が出たのは20日なので20日と21日にタイミングをとりました! そして基礎体温が中々あがらないのですが…これは無排卵の可能性があるのでしょうか?? 妊娠の可能性はありますか?? 山口剛史 先生 (醍醐渡辺クリニック) ≫ 醍醐渡辺クリニック 排卵検査薬はLH(黄体形成ホルモン)の上昇によって陽性反応を示します。陽性が出た当日と翌日にタイミングを取ることは問題ないと思いますが、排卵検査薬はそろそろ排卵するであろうという予測はできても、排卵検査薬の陽性=LHサージを示すものではありません。 また、LHサージの後、排卵するまでの時間には個人差がありますので、実際に排卵したかどうかを確認するには、超音波断層法検査で卵胞の縮小や消失を確認することが望ましいと思います。 排卵後の黄体化の時期や黄体ホルモンの分泌の程度も人それぞれですので、排卵後すぐに基礎体温が上昇しにくいケースもあります。基礎体温が二相性も、黄体化未破裂嚢胞のように排卵していないこともありますので、やはり超音波検査で排卵を確認したほうが良いでしょう。 基礎体温についてですが、排卵後の黄体からLHが分泌されると、脳・視床下部の体温中枢が刺激され高温相になります。排卵時すでにLHが分泌されていることもあり、体温上昇がその時期から認められることもあります。体温上昇時のLH値は3~5ng/ml以上といわれていますが、それ以上になってもLH値と体温が相関するわけではないといわれています。 あずだいさんは「基礎体温がなかなか上がらない」とのことですが、基礎体温にばらつきもありますので、実際に超音波検査で排卵を確認することと、黄体中期の血中のP(黄体ホルモン)の検査(教科書的には3ポイント採血するとあります)を1ポイントだけでも測定してみてはどうでしょうか? 市販の排卵検査薬には、陽性を出やすくしてあるキットもありますので、産婦人科を受診して月経開始からの卵胞をモニタリングして排卵を確認することをおすすめします。低温相と高温相に別れていれば排卵している可能性はありますが、基礎体温に変化がないのであれば無排卵の可能性もあるかもしれません。基礎体温に変化がない場合の妊娠の可能性についてお答えするのは難しいのですが、妊娠に至れば基礎体温は上昇するはずです。
2017.12.23
専門医Q&A 女性の健康
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排卵しない
ゆめちむさん(26歳)今年の2月から不妊治療をしています。 クロミッドも3錠まで飲みましたし、温経湯や芍薬甘草湯などとの併用もしました。メトホルミン(糖尿病薬)も飲みました。 フォルリモン注射75を隔日2週間、その後毎日2週間打ちました。 ですが、以上の事をしてもたまご一つ反応しませんでした。 先日ラパロ手術を受けました。これでも卵が育たなければどうなるんでしょう。不安です。 フェマーラがPCOSにも効くということを聞いたこともあるのですが、どうなのでしょう。 福田勝 先生 (福田ウイメンズクリニック) ●医師福田勝の信念は、不妊症に悩むご夫婦に元気な赤ちゃんが授かるように、現段階で最大限の医学的な成果を患者さんに提供することです。 ●研究の成果は多数の研究論文の形で発表しています。 ●最新の医療機器を設置し、最先端の治療法について日々研鑽を続けています。 ●プライベートクリニックの目的は、患者さんの負担を最少限にすることです。 身体的、精神的な負担はもちろん、時間と経済的な負担を軽減する努力を惜しみません。 ■院長プロフィール 昭和51年 順天堂大学医学部卒業 順天堂大学医学部大学院卒業 米国カリフォルニア大学産婦人科学教室留学 順天堂大学医学部産婦人科学教室講師 日本産科婦人科学会専門医 日本生殖医学会(旧日本不妊学会)生殖医療指導医 順天堂大学医学部産婦人科非常勤講師 東邦大学医学部産婦人科非常勤講師 ≫ 福田ウイメンズクリニックPCOSとは多囊胞性卵巣症候群のことで、診断方法は日本産科婦人科学会で定められており、排卵障害があり、血中の男性ホルモンとLHが高値かつFSHの基礎値が正常、そして多囊胞性卵巣である、という3つの条件を満たすこととされています。 PCOSでもクロミッド®を使えばだいたい80%くらいの人は排卵します。クロミッド®で排卵しない場合、通常であればHMGという注射を使ったりするのですが、PCOの場合は卵巣過剰刺激症候群(OHSS)という問題が出てくるので、容易には使えません。 ゆめちむさんはフォルリモン®注射を1カ月打ったとのことですが、それでも反応しなかったとのことですね。ただ、ラパロ手術を受けたとのことなので、これから自然排卵する可能性はあります。ここでのラパロ手術というのは腹腔鏡で卵巣の表面に小さな穴をたくさんあけて、自然排卵を促す手術です。もし自然排卵しない場合は、クロミッド®を使っていきます。ただし、ラパロ手術の効果は半年から1年です。 フェマーラ®は乳がんの治療薬ですが、クロミッド®と同じように使うことができます。クロミッド®で効果が出なかった人がフェマーラ®で排卵することもあるので、試してみる価値はあるでしょう。ただし、保険適用外になります。 クロミッド®と違う点は、薬の半減期がクロミッド®は5日~3週間なのに対して、フェマーラ®は48時間と短いです。影響が残らないということでフェマーラ®を好んで使う人もいます。また、クロミッド®を使うと頸管粘液が少なくなり、子宮内膜も薄くなりますが、フェマーラ®にはそういったデメリットもありません。ですので、一般不妊治療を行っている場合、フェマーラ®のほうが使いやすいという考えもあります。 ゆめちむさんはラパロ手術を受けて間もないようですから、次のお薬を考える前に、しばらく様子を見られたらいいのではないでしょうか。
2017.12.21
専門医Q&A 女性の健康
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女性ホルモンの乱れだけではない!がん予防なども。ピルの「新常識」
ピルの服用によって卵巣がん、子宮体がんなどのがんを防げることは、すでに統計上明らかになっています。ピルの「新常識」です。
2017.12.19
まとめ 女性の健康
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知れば知るほど奥深い「だし」ーだしの基礎知識【その1】
だしは日本が世界に誇れる食文化。だしのうまみは素材で変わります。だしを生かした和の料理をぜひ、健康維持のために役立てましょう。
2017.12.18
まとめ 女性の健康
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黄色いおりものについて
「やはり子宮筋腫が原因でしょうか。不妊治療の先生ではなく、ちゃんと婦人科で見てもらうべきですか?」
2017.12.13
専門医Q&A 女性の健康
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hcg注射は毎回同じ日数で影響なくなりますか?
はるはるさん(36歳)はじめまして。不妊治療初めて一年と少し経ちます。タイミングで今はトライ中です。今月hcg注射5000を排卵させるためと1週間後に2度打ち最後の注射からまだ6日目なのですが注射の影響は分かっていましたがドゥーテストでフライングしました。薄めですが太いラインが出ました。前回注射をしてから7日目で真っ白で今回は6日目ですぐわかるようなラインが出ました。 前回の注射後6日目のフライングはもっと薄いラインでした。 まだ早過ぎるのは分かっているんですが今回の太いラインは注射の影響なんでしょうか?いつも同じぐらいに注射はぬけるものですか?よろしくお願いします。 浅田義正 先生 (浅田レディース名古屋駅前クリニック) 医学博士 日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医 日本生殖医学会認定生殖医療専門医 1982年 名古屋大学医学部卒業 1988年 名古屋大学医学部附属病院産婦人科医員として「不妊外来」および、「健康外来(更年期障害・ホルモン補充医療法)」の専門外来を担当 1992年 医学博士 1993年~1994年 米国最初の体外受精専門施設に留学し、主に顕微授精(卵細胞質内精子注入法:ICSI)の基礎的研究に従事 The Jones Institute For Reproductive Medicine, Eastern Virginia Medical School, Norfolk, Vairginia 1995年 名古屋大学医学部附属病院分院にてICSIによる治療開始。以後、辞職まで名古屋大学の顕微授精症例の全症例を自ら担当同年5月、精巣精子を用いたICSIによる妊娠例の日本初の報告 1998年 ナカジマクリニック不妊センター開設 2004年 浅田レディースクリニック(現浅田レディース勝川クリニック)開院 2010年 浅田レディース名古屋駅前クリニック開院 2018年 浅田レディース品川クリニック開院 【著作本】 「浅田レディースクリニック パーフェクトガイドブック」 初めての不妊治療クリニック選びに迷っている方や 当院の治療方針に興味をお持ちの方にお読み頂きたい本です。 ≫ 浅田レディース名古屋駅前クリニック妊娠すると女性の体内では、hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンが分泌され、急激に増え始めます。 ドゥーテストなどの妊娠検査薬は、尿のなかに含まれるこのhCGホルモンに反応し、ある程度以上の濃度になると陽性反応が現れるという仕組みです。 HCG注射とは、妊娠中に出るhCGホルモンを製剤にしたものです。 本来、排卵のトリガーとなるのは、脳下垂体から大量に放出されるLH(黄体形成ホルモン)ですが、HCG注射はこのLHと構造が似ているため、投与することでLHサージを起こさせ、排卵を誘発することができます。 HCGを投与すると、体内にはしばらくの間HCGが残ります。 LHの血中半減期が約2時間なのに比べ、HCG注射の血中濃度は6時間後に最高となり、その後30~32時間の半減期で血中より消失するとされています。その減り方は、2日で半分、4日目でそのまた半分・・・という具合です。 治療によっては、HCG注射を何度も打ったとしたら、一概にいつから妊娠検査薬に反応しなくなるとは言い切れませんが、最後の注射から1週間ぐらいではギリギリ、プラスの反応が出てもおかしくありません。 さらに、血液中であれば、大体同じ速度で分解されていきますが、特に尿検査では、水を多く飲むと尿は薄くなり濃度も変わるため、より当てにならないといえます。 また、妊娠というのは着床すればOKというわけではありません。胚盤胞にまでなれば着床するのはごく当たり前で、胚盤胞の次の日に着床しています。そこから受精卵がどこまで生きていくかが問題です。 要するに、受精卵は着床後もいろいろな段階でダメになります。遅い段階でダメになっていれば、hCG検査をフライングしたら当然陽性にでます。 焦る気持ちはわかります。しかし、HCG注射を打っていれば尚更、フライング検査で偽陽性が出る可能性は高くなります。 不確かな結果で一喜一憂するよりは、自分が思うよりもさらに3、4日後に検査することで明らかな結果を得ることをおすすめします。臨床的な妊娠は、エコーで胎嚢を見てはじめて診断がつきます。それまでのhCGプラスは臨床的妊娠ではありませんし、よくあることだと思って下さい。
2017.12.7
専門医Q&A 女性の健康
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多嚢胞性卵巣症候群は薬が効きにくいのでしょうか?
多嚢胞性卵巣症候群は薬が効きにくいのでしょうか? 佐藤 雄一 先生(高崎ARTクリニック) 相談者:やんさん(31歳) クロミッド®が効きません 不妊治療を始めました。多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と診断されました。1周期目はクロミッド®を1日2錠服用。卵胞が4つ育ちましたが、妊娠に至りませんでした。2周期目もクロミッド®を1日2錠服用。前回と同じ時期に受診しましたが卵胞は育っておらず、その日にHMG注射を打ち3日後に受診。しかし卵胞は育っておらず、またHMG注射を打ちました。次は3日後に受診予定です。クロミッド®とHMG注射をしても効かない時は、次の周期で同じことをしても効かないのでしょうか? 次は効くことはありますか? 1周期目は卵胞が育ったのに落ち込んでいます。20歳から生理不順のため10年間ピルを服用。身長158㎝、体重41㎏です。 やんさんはクロミッド®が効きにくい体質なのでしょうか? 周期目はきちんと卵胞が育ったということなので、薬が効きにくい体質ではないと思います。 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は卵胞が排卵できる大きさに育たない状態のことで、肥満型の女性に多いのですが、この方のような痩せ型の女性にもみられます。 PCOSの疾患がベースにあって痩せ型で生理不順の体質の場合、薬の効き具合が体調によって大きく左右されることがあります。薬を使っても卵胞が成長しないのは、頭からのホルモン分泌指令がうまくいかないのかもしれません。その周期の体調が影響した可能性が考えられます。 薬の効きについては、心配しなくていいですか。 はい、不安になる必要はないと思います。 医師としては、この方の食事や生活習慣はどうだったのかが気になります。ダイエットや日々の忙しさで栄養が偏ってしまったのか、強いストレスがあって体調を崩していたのか…。そういう時に薬や注射をたくさん使っても、卵巣は反応せず卵胞が成長しないことも多いんです。 ですから、体調を良くすることで、次は同じ薬が効く可能性はあると思います。 今の治療薬をどのくらい続けるといいですか。 一般的には5~6周期と言われていますが、最近は3~4周期行って結果が出なければ、別の治療薬を検討することも多いです。 現在、レトロゾールという新しいタイプの薬がありますので、それを試してみるのもいいでしょう。 その薬の特徴を教えてください。 レトロゾールは多胎妊娠のリスクが低いと言われている薬です。 PCOSは、排卵できない卵胞がいくつも卵巣にたまっている状態です。薬を使うと、いくつもある卵胞が一気に育ち、その分、多胎妊娠のリスクも高まります。レトロゾールはクロミッド®より、少ない数の卵胞を育てるメカニズムをもっています。 ただ、PCOSでも不妊治療の第一選択薬は、保険適用になるクロミッドⓇが主流です。レトロゾールは保険適用外の薬になるため、医師とよく相談してから使用してください。治療費もやや高額になります。 今後のアドバイスをお願いします。 繰り返しになりますが、体調によって薬効が出ない周期もあります。極端なダイエットやストレスは卵巣のはたらきを悪くするので、正しい生活習慣を心がけてください。 そして不妊の治療中は精神的なストレスも強くなりがちです。主治医の先生と信頼関係をつくりながら、リラックスして前向きに治療をしてほしいと思います。 佐藤先生より まとめ ●やんさんの体調によって、薬が効かない周期も。 ●1周期目は薬が効いたので、次に効く可能性はあります。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 佐藤 雄一 先生(高崎ARTクリニック) 医学博士・産婦人科専門医・日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医・日本生殖医学会生殖医療専門医。佐藤病院院長・高崎ARTクリニック理事長を務める。最近、テレビCMでも話題のトレーニングジムに入会したという佐藤先生。目的はダイエットではなく、2カ月で3〜5kgの筋肉増加。マラソン、ヒルクライム、トライアスロンときて次はムキムキ!? 周囲から「いったい何を目指しているんだ?」と聞かれるのだとか。 ≫ 高崎ARTクリニック 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.36 2017 Winter≫ 掲載記事一覧はこちら 多嚢胞性卵巣症候群は薬が効きにくいのでしょうか? 佐藤 雄一 先生(高崎ARTクリニック) 相談者:やんさん(31歳) クロミッド®が効きません 不妊治療を始めました。多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と診断されました。1周期目はクロミッド®を1日2錠服用。卵胞が4つ育ちましたが、妊娠に至りませんでした。2周期目もクロミッド®を1日2錠服用。前回と同じ時期に受診しましたが卵胞は育っておらず、その日にHMG注射を打ち3日後に受診。しかし卵胞は育っておらず、またHMG注射を打ちました。次は3日後に受診予定です。クロミッド®とHMG注射をしても効かない時は、次の周期で同じことをしても効かないのでしょうか? 次は効くことはありますか? 1周期目は卵胞が育ったのに落ち込んでいます。20歳から生理不順のため10年間ピルを服用。身長158㎝、体重41㎏です。 やんさんはクロミッド®が効きにくい体質なのでしょうか? 周期目はきちんと卵胞が育ったということなので、薬が効きにくい体質ではないと思います。 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は卵胞が排卵できる大きさに育たない状態のことで、肥満型の女性に多いのですが、この方のような痩せ型の女性にもみられます。 PCOSの疾患がベースにあって痩せ型で生理不順の体質の場合、薬の効き具合が体調によって大きく左右されることがあります。薬を使っても卵胞が成長しないのは、頭からのホルモン分泌指令がうまくいかないのかもしれません。その周期の体調が影響した可能性が考えられます。 薬の効きについては、心配しなくていいですか。 はい、不安になる必要はないと思います。 医師としては、この方の食事や生活習慣はどうだったのかが気になります。ダイエットや日々の忙しさで栄養が偏ってしまったのか、強いストレスがあって体調を崩していたのか…。そういう時に薬や注射をたくさん使っても、卵巣は反応せず卵胞が成長しないことも多いんです。 ですから、体調を良くすることで、次は同じ薬が効く可能性はあると思います。 今の治療薬をどのくらい続けるといいですか。 一般的には5~6周期と言われていますが、最近は3~4周期行って結果が出なければ、別の治療薬を検討することも多いです。 現在、レトロゾールという新しいタイプの薬がありますので、それを試してみるのもいいでしょう。 その薬の特徴を教えてください。 レトロゾールは多胎妊娠のリスクが低いと言われている薬です。 PCOSは、排卵できない卵胞がいくつも卵巣にたまっている状態です。薬を使うと、いくつもある卵胞が一気に育ち、その分、多胎妊娠のリスクも高まります。レトロゾールはクロミッド®より、少ない数の卵胞を育てるメカニズムをもっています。 ただ、PCOSでも不妊治療の第一選択薬は、保険適用になるクロミッドⓇが主流です。レトロゾールは保険適用外の薬になるため、医師とよく相談してから使用してください。治療費もやや高額になります。 今後のアドバイスをお願いします。 繰り返しになりますが、体調によって薬効が出ない周期もあります。極端なダイエットやストレスは卵巣のはたらきを悪くするので、正しい生活習慣を心がけてください。 そして不妊の治療中は精神的なストレスも強くなりがちです。主治医の先生と信頼関係をつくりながら、リラックスして前向きに治療をしてほしいと思います。 佐藤先生より まとめ ●やんさんの体調によって、薬が効かない周期も。 ●1周期目は薬が効いたので、次に効く可能性はあります。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 佐藤 雄一 先生(高崎ARTクリニック) 医学博士・産婦人科専門医・日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医・日本生殖医学会生殖医療専門医。佐藤病院院長・高崎ARTクリニック理事長を務める。最近、テレビCMでも話題のトレーニングジムに入会したという佐藤先生。目的はダイエットではなく、2カ月で3〜5kgの筋肉増加。マラソン、ヒルクライム、トライアスロンときて次はムキムキ!? 周囲から「いったい何を目指しているんだ?」と聞かれるのだとか。 ≫ 高崎ARTクリニック 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.36 2017 Winter≫ 掲載記事一覧はこちら
2017.11.17
コラム 女性の健康
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妊活中は特に徹底的に予防を! 冬に流行する7つの感染症に注意
妊活中は特に徹底的に予防を! 冬に流行する7つの感染症に注意 佐藤 雄一 先生(佐藤病院) 冬に感染症が増えるのは、空気の乾燥が原因 そもそも冬になぜ感染症が増えるのでしょうか。原因の一つは空気の乾燥です。加えて他の季節に比べて水分摂取も減るため、体内の水分量はさらに少なくなりがち。つまり乾燥によって喉や気管支の粘膜が弱くなり、ウイルスの侵入を防ぐはずの喉や鼻の粘液も傷み、感染しやすくなるというわけです。 また冬は体温が下がるため代謝機能が低下し、免疫力が全体的にダウンするのも大きな原因です。一方、冬になると断然元気になるのがウイルス。低い気温と乾燥はウイルスにとっては非常に好環境で、感染力がよりいっそう強くなるのです。 感染経路としては飛沫感染、空気感染、接触感染、経口感染があります。飛沫感染の代表格はくしゃみと咳。風邪をひいている人が室内でくしゃみをすると約100万個のウイルスが飛散し、咳で出るウイルスは約10万個と言われています。空気感染も実は怖くて、湿度40%以下の乾燥した部屋ではウイルスは30分間漂い続けると言われています。また、接触感染で気をつけたいのは電車のつり革や不特定多数の人が使う道具や容器の使用。病原体が付着しているものを触り、手についた細菌やウイルスが口から入ると感染します。経口感染としては食べ物や水に注意が必要です。病原体の混入したものを食べたり汚染の可能性がある水を飲むと感染します。 ウイルス系の感染症に効く薬はありません 冬に流行する感染症で特に気をつけていただきたいのは、ウイルスが病原体の風邪、インフルエンザ、ノロウイルス、ロタウイルス、RSウイルス、細菌が病原体のA群溶血性連鎖球菌咽頭炎(A群溶連菌)、そのどちらにもあてはまらない性質をもつ菌が原因となるマイコプラズマ肺炎の7つです。各感染症の症状は左ページの表を参考にしてください。 皆さんに一つ覚えておいてほしいのは、風邪やその他のウイルス性の感染症には、基本的に治療薬がないということです。対処薬として解熱剤、咳止め、鼻水止めなどがありますが、これらはあくまで症状を緩和するための薬であって、治すための薬ではありません。鼻水や痰、咳、発熱などの症状は、実は感染症を治すうえで必要なことだからです。体に備わっている免疫機能が自動的に働くことでそうした症状が出るのであり、ウイルスを退治している証しなのです。対処薬を飲んで症状を抑えてしまうとかえって病気の回復を遅らせてしまうことがあります。以前は風邪で抗生剤を処方する病院も多かったのですが、最近は風邪に効く治療薬はないことが認知されたこともあり、処方しなくなっています。 いずれにしてもウイルス疾患にかかってしまったら暖かくして寝ることで体を休め、症状が治まるのを待つのが最善の方法です。 インフルエンザやA群溶血性連鎖球菌咽頭炎とマイコプラズマ肺炎に関しては治療薬があります。早めに診断を受け、必要に応じて薬を処方してもらいましょう。 インフルエンザは要注意。風疹は冬だけでなく1年中警戒 冬の感染症で一番、かからないように気をつけたいのはインフルエンザです。妊活中に高熱を出すと、その月は排卵しないこともあり妊活の治療をストップさせることになってしまいます。 また、妊娠判定が出る時にインフルエンザにかかっていると、それによって流産したり、着床しなかったりといったことの可能性もゼロではありません。ですから妊活中でもインフルエンザの予防接種を受けておきましょう。少なくとも高熱、肺炎などの重症化を防げます。 それと冬に限ったものではないのですが絶対にかかってほしくない感染症があります。風疹です。特に妊娠初期の女性が風疹にかかると胎児が風疹ウイルスに感染してしまい、難聴、心疾患、白内障、精神や体の発達の遅れ等の障害をもった赤ちゃんが生まれる可能性が高くなるからです。流行するのは春先から初夏にかけてですが、冬の間も気をつけましょう。 感染症にかからないよう日常生活から気をつけよう 一番良いのは、感染症にかからないこと。そのためにも普段からの予防が大切です。外出先から帰宅した際には必ず手を洗い、うがいをしましょう。市販のマスクは病原体の防御にはなりませんが、喉を乾燥から守ることができます。感染防御のためにマスクをしたい場合は医療用マスクを使ってください。人混みを避けることも大事です。人が多いところほど、感染症にかかる可能性は高まります。スーパーなども人の少ない時間帯を選んで行くようにしましょう。また、感染症にかからないよう免疫力を高めるためにも正しい食生活と十分な睡眠が大切です。年末は何かと忙しく寝不足になりがち。そうすると体力が落ちやすくなってしまいます。 ノロウイルスによる食中毒にも気をつけてください。意外に冬に多いのです。生牡蠣などを食べる機会があるからでしょうか。冬でも万が一に備え、できるかぎり加熱したものを食べましょう。 積極的に摂取してほしいのはビタミンDです。免疫力をアップさせるだけではなく、不妊治療にも実は効果があり、着床率も卵子の質も良くすると言われています。魚介類やきのこ類をたくさん食べましょう。感染症にかからないための一番の薬、それはご自身の体に備わった免疫力です。だからこそ以上のようなことを心がけ、免疫力を落とさない生活を実践してください。 冬に流行する7つの感染症 ウイルス:治療薬なし。インフルエンザとロタ(乳児)のみ予防ワクチンあり。 ● 風邪 上気道炎を一般的に風邪と総称する。 【症状】 くしゃみ、鼻水、鼻づまりといった鼻の症状からはじまり、喉の痛み、咳、声枯れ、痰といった症状が出て発熱が起こります。血液中にウイルスが入ると頭痛、関節痛が、腸の粘膜にウイルスが付着すると腹痛、下痢などの症状が出ます。特に喉の痛み、咳がある場合は保湿が大事です。 ● インフルエンザ インフルエンザウイルスに感染することによって起こる急性感染症。 【症状】 38℃以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛など全身に症状が出るのが特徴。風邪よりやや症状が重いです。ワクチンで感染を完全に抑えることはできませんが、重症化を防ぐことができます。事前に予防接種を受けておくことをおすすめします。 ● ノロウイルス ノロウイルスによって発症する感染性胃腸炎や食中毒のこと。特に冬季に流行。 【症状】 手や指、食品を介して口から感染し、腸管でウイルスが増殖します。嘔吐、吐き気、腹痛、下痢、発熱などの症状が出ます。ただ、それらのどれかが1~2日続いた後、治癒します。後遺症の心配もありません。 ● ロタウイルス ロタウイルスによって引き起こされる急性の胃腸炎。 【症状】 主に子どもがかかりやすい病気ですが、大人が感染する場合もたまにあります。大人の場合、軽いむかつきか倦怠感程度。とはいえ、子どもと接する仕事の人は多少気をつけたほうがいいでしょう。 ● RSウイルス RSウイルス(respiratory syncytial virus)によって発症する呼吸器感染症。 【症状】 2歳までに発症することが多く、大人は鼻風邪程度で済む場合がほとんど。ただ、まれに大人も気管支炎や肺炎を起こすケースもあり、その場合は、38℃以上の発熱が5日程度続いたりします。 細菌:治療薬あり(抗生剤)。予防ワクチンなし。 ● A群溶血性連鎖球菌咽頭炎(A群溶連菌) A群溶血性連鎖菌によって引き起こされる感染症。 【症状】 突然の発熱、喉の痛みなどを発症します。喉が真っ赤になったり、喉の痛みが強くなり、嘔吐や吐き気をもよおすことも。初期の段階では舌が白いコケに覆われ、数日後には苺舌といって赤いぶつぶつができたりしますが、原因が菌なので、抗生剤で治すことができます。 その他:治療薬あり(抗生剤の一種)。予防ワクチンなし。 ● マイコプラズマ肺炎 肺炎マイコプラズマという細菌に感染することによって起こる呼吸器感染症。 【症状】 発熱、全身倦怠感(だるさ)、頭痛、咳などの症状が出ます。咳は熱が下がった後も3~4週間ほど続くのが特徴です。患者の咳のしぶきを吸い込んだり、身近で接触したりすることで感染するので、かかっている人のそばに近寄らないように気をつけましょう。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 佐藤 雄一 先生(佐藤病院) 医学博士·産婦人科専門医·日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医·日本生殖医学会生殖医療専門医。佐藤病院院長·高崎ARTクリニック理事長を務める。最近、テレビCMでも話題のトレーニングジムに入会したという佐藤先生。目的はダイエットではなく、2カ月で3〜5kgの筋肉増加。マラソン、ヒルクライム、トライアスロンときて次はムキムキ!?周囲から「いったい何を目指しているんだ?」と聞かれるのだとか。 ≫ 佐藤病院 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.36 2017 Winter≫ 掲載記事一覧はこちら 妊活中は特に徹底的に予防を! 冬に流行する7つの感染症に注意 佐藤 雄一 先生(佐藤病院) 冬に感染症が増えるのは、空気の乾燥が原因 そもそも冬になぜ感染症が増えるのでしょうか。原因の一つは空気の乾燥です。加えて他の季節に比べて水分摂取も減るため、体内の水分量はさらに少なくなりがち。つまり乾燥によって喉や気管支の粘膜が弱くなり、ウイルスの侵入を防ぐはずの喉や鼻の粘液も傷み、感染しやすくなるというわけです。 また冬は体温が下がるため代謝機能が低下し、免疫力が全体的にダウンするのも大きな原因です。一方、冬になると断然元気になるのがウイルス。低い気温と乾燥はウイルスにとっては非常に好環境で、感染力がよりいっそう強くなるのです。 感染経路としては飛沫感染、空気感染、接触感染、経口感染があります。飛沫感染の代表格はくしゃみと咳。風邪をひいている人が室内でくしゃみをすると約100万個のウイルスが飛散し、咳で出るウイルスは約10万個と言われています。空気感染も実は怖くて、湿度40%以下の乾燥した部屋ではウイルスは30分間漂い続けると言われています。また、接触感染で気をつけたいのは電車のつり革や不特定多数の人が使う道具や容器の使用。病原体が付着しているものを触り、手についた細菌やウイルスが口から入ると感染します。経口感染としては食べ物や水に注意が必要です。病原体の混入したものを食べたり汚染の可能性がある水を飲むと感染します。 ウイルス系の感染症に効く薬はありません 冬に流行する感染症で特に気をつけていただきたいのは、ウイルスが病原体の風邪、インフルエンザ、ノロウイルス、ロタウイルス、RSウイルス、細菌が病原体のA群溶血性連鎖球菌咽頭炎(A群溶連菌)、そのどちらにもあてはまらない性質をもつ菌が原因となるマイコプラズマ肺炎の7つです。各感染症の症状は左ページの表を参考にしてください。 皆さんに一つ覚えておいてほしいのは、風邪やその他のウイルス性の感染症には、基本的に治療薬がないということです。対処薬として解熱剤、咳止め、鼻水止めなどがありますが、これらはあくまで症状を緩和するための薬であって、治すための薬ではありません。鼻水や痰、咳、発熱などの症状は、実は感染症を治すうえで必要なことだからです。体に備わっている免疫機能が自動的に働くことでそうした症状が出るのであり、ウイルスを退治している証しなのです。対処薬を飲んで症状を抑えてしまうとかえって病気の回復を遅らせてしまうことがあります。以前は風邪で抗生剤を処方する病院も多かったのですが、最近は風邪に効く治療薬はないことが認知されたこともあり、処方しなくなっています。 いずれにしてもウイルス疾患にかかってしまったら暖かくして寝ることで体を休め、症状が治まるのを待つのが最善の方法です。 インフルエンザやA群溶血性連鎖球菌咽頭炎とマイコプラズマ肺炎に関しては治療薬があります。早めに診断を受け、必要に応じて薬を処方してもらいましょう。 インフルエンザは要注意。風疹は冬だけでなく1年中警戒 冬の感染症で一番、かからないように気をつけたいのはインフルエンザです。妊活中に高熱を出すと、その月は排卵しないこともあり妊活の治療をストップさせることになってしまいます。 また、妊娠判定が出る時にインフルエンザにかかっていると、それによって流産したり、着床しなかったりといったことの可能性もゼロではありません。ですから妊活中でもインフルエンザの予防接種を受けておきましょう。少なくとも高熱、肺炎などの重症化を防げます。 それと冬に限ったものではないのですが絶対にかかってほしくない感染症があります。風疹です。特に妊娠初期の女性が風疹にかかると胎児が風疹ウイルスに感染してしまい、難聴、心疾患、白内障、精神や体の発達の遅れ等の障害をもった赤ちゃんが生まれる可能性が高くなるからです。流行するのは春先から初夏にかけてですが、冬の間も気をつけましょう。 感染症にかからないよう日常生活から気をつけよう 一番良いのは、感染症にかからないこと。そのためにも普段からの予防が大切です。外出先から帰宅した際には必ず手を洗い、うがいをしましょう。市販のマスクは病原体の防御にはなりませんが、喉を乾燥から守ることができます。感染防御のためにマスクをしたい場合は医療用マスクを使ってください。人混みを避けることも大事です。人が多いところほど、感染症にかかる可能性は高まります。スーパーなども人の少ない時間帯を選んで行くようにしましょう。また、感染症にかからないよう免疫力を高めるためにも正しい食生活と十分な睡眠が大切です。年末は何かと忙しく寝不足になりがち。そうすると体力が落ちやすくなってしまいます。 ノロウイルスによる食中毒にも気をつけてください。意外に冬に多いのです。生牡蠣などを食べる機会があるからでしょうか。冬でも万が一に備え、できるかぎり加熱したものを食べましょう。 積極的に摂取してほしいのはビタミンDです。免疫力をアップさせるだけではなく、不妊治療にも実は効果があり、着床率も卵子の質も良くすると言われています。魚介類やきのこ類をたくさん食べましょう。感染症にかからないための一番の薬、それはご自身の体に備わった免疫力です。だからこそ以上のようなことを心がけ、免疫力を落とさない生活を実践してください。 冬に流行する7つの感染症 ウイルス:治療薬なし。インフルエンザとロタ(乳児)のみ予防ワクチンあり。 ● 風邪 上気道炎を一般的に風邪と総称する。 【症状】 くしゃみ、鼻水、鼻づまりといった鼻の症状からはじまり、喉の痛み、咳、声枯れ、痰といった症状が出て発熱が起こります。血液中にウイルスが入ると頭痛、関節痛が、腸の粘膜にウイルスが付着すると腹痛、下痢などの症状が出ます。特に喉の痛み、咳がある場合は保湿が大事です。 ● インフルエンザ インフルエンザウイルスに感染することによって起こる急性感染症。 【症状】 38℃以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛など全身に症状が出るのが特徴。風邪よりやや症状が重いです。ワクチンで感染を完全に抑えることはできませんが、重症化を防ぐことができます。事前に予防接種を受けておくことをおすすめします。 ● ノロウイルス ノロウイルスによって発症する感染性胃腸炎や食中毒のこと。特に冬季に流行。 【症状】 手や指、食品を介して口から感染し、腸管でウイルスが増殖します。嘔吐、吐き気、腹痛、下痢、発熱などの症状が出ます。ただ、それらのどれかが1~2日続いた後、治癒します。後遺症の心配もありません。 ● ロタウイルス ロタウイルスによって引き起こされる急性の胃腸炎。 【症状】 主に子どもがかかりやすい病気ですが、大人が感染する場合もたまにあります。大人の場合、軽いむかつきか倦怠感程度。とはいえ、子どもと接する仕事の人は多少気をつけたほうがいいでしょう。 ● RSウイルス RSウイルス(respiratory syncytial virus)によって発症する呼吸器感染症。 【症状】 2歳までに発症することが多く、大人は鼻風邪程度で済む場合がほとんど。ただ、まれに大人も気管支炎や肺炎を起こすケースもあり、その場合は、38℃以上の発熱が5日程度続いたりします。 細菌:治療薬あり(抗生剤)。予防ワクチンなし。 ● A群溶血性連鎖球菌咽頭炎(A群溶連菌) A群溶血性連鎖菌によって引き起こされる感染症。 【症状】 突然の発熱、喉の痛みなどを発症します。喉が真っ赤になったり、喉の痛みが強くなり、嘔吐や吐き気をもよおすことも。初期の段階では舌が白いコケに覆われ、数日後には苺舌といって赤いぶつぶつができたりしますが、原因が菌なので、抗生剤で治すことができます。 その他:治療薬あり(抗生剤の一種)。予防ワクチンなし。 ● マイコプラズマ肺炎 肺炎マイコプラズマという細菌に感染することによって起こる呼吸器感染症。 【症状】 発熱、全身倦怠感(だるさ)、頭痛、咳などの症状が出ます。咳は熱が下がった後も3~4週間ほど続くのが特徴です。患者の咳のしぶきを吸い込んだり、身近で接触したりすることで感染するので、かかっている人のそばに近寄らないように気をつけましょう。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 佐藤 雄一 先生(佐藤病院) 医学博士·産婦人科専門医·日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医·日本生殖医学会生殖医療専門医。佐藤病院院長·高崎ARTクリニック理事長を務める。最近、テレビCMでも話題のトレーニングジムに入会したという佐藤先生。目的はダイエットではなく、2カ月で3〜5kgの筋肉増加。マラソン、ヒルクライム、トライアスロンときて次はムキムキ!?周囲から「いったい何を目指しているんだ?」と聞かれるのだとか。 ≫ 佐藤病院 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.36 2017 Winter≫ 掲載記事一覧はこちら
2017.11.13
コラム 女性の健康