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無痛分娩の真実「選びたいけれど怖い! 」と思っていませんか?
麻酔技術に長けた医師さえいれば、安心なお産が可能無痛分娩では、背骨から腰のあたりの脊髄の近く、“硬膜外腔”という部分にカテーテルを入れ、加減しながら麻酔薬を直接投与することにより、局所麻酔で出産における痛みをやわらげます。完全に痛みはなくなりますが、息んでもらう行為は通常通り必要です。 赤ちゃんが降りてくる圧迫感、赤ちゃんが産道を通り抜ける感覚などは残っていますし、もちろん意識ははっきりしています。 「あ、もうすぐ産まれる!」と携帯電話を通してご家族に実況中継される産婦さんもいらっしゃいます。 無痛分娩の場合、出産を終えたばかりの産婦さんでも少しも疲弊していなくて、生まれたばかりの赤ちゃんを笑顔で抱っこしてあげられます。 痛みを我慢したり、強すぎるほど力まないので産後の筋肉痛もほとんどありません。 体力回復も良好で退院も早く、すぐに育児に専念できますし、私としては無痛分娩にはメリットしかないと思っています。 “苦痛を伴わず、赤ちゃんを産める方法もある”ことが広まれば、少子化さえ改善できるのではないかと思うほどです。二人目、三人目のお産だからこそする「無痛分娩」という選択当院では、特にはお勧めしているわけではありませんが、6~7割の妊婦さんが無痛分娩を希望します。第二子はもちろん第三子を無痛で産む方もいらっしゃいます。 「二人目はラクよ」という周囲の言葉にはげまされて普通に産んだら、やはり痛かった。だから「第三子は絶対に痛くなく産みたい。負担なく産むぞ!」という気持ちのようです。 日本には、「お腹を痛めて産んだ子」という表現があり、それゆえ母親や姑の年代では“苦労して産むこと”を尊いことと考えがちです。 でも、その痛みにどんな意味があるのでしょうか? 私自身は男性ですが、私が産婦さんの男親だったら娘がむやみに痛みを感じることに耐えられないでしょう。 娘が苦しんでいたら、すぐに痛みを取り去って欲しいと感じると思います。 フランスでは約80%、アメリカでは約60%が無痛分娩による出産であるとするデータもあります。 女性の就業率も高く、体力を温存してできるだけ早く体を回復させ、職場に復帰したいという意図もあるでしょう。無痛分娩は産院選びが重要なポイント麻酔を使ったお産を“和痛”といった表現をする産院もあるのも事実です。 実は、無痛分娩をあつかっている産院でも、きちんと麻酔をあつかえる医師は必ずしも多くないと思います。 麻酔の量と入れる位置や角度には、本当に微妙な調整が必要です。 麻酔薬を大量に投与すれば無痛になりますが、産む感覚がほとんどなくなってしまう場合もありますし、 感覚も意識も薄くなりますし、投与量が少なければ痛みが少し緩和されるだけになります。 不幸にも、日本では無痛分娩にまつわる事故がありました。 それゆえに、選択に二の足を踏む方が増えたのも事実です。 でも、それは非常にまれな事故です。わずかな例です。 無痛分娩を扱った経験の多い産院を選べば心配は少ないでしょう。 むしろ、メリットの方が多いと思うので、ぜひ冷静に検討してください。 新中野女性クリニック 海老原 肇先生 産婦人科学会専門医/母体保護法指定医。1988年聖マリアンナ医科大学卒業。1988年聖マリアンナ医科大学大学院卒業、医学博士号取得。1989年聖マリアンナ医大横浜市西部病院周産期センター医長および産婦人科医長を兼務。2001年10月新中野女性クリニック開院。2004年10月医療法人化(医療法人社団千房会)。≫ 新中野女性クリニック
2018.1.12
インタビュー 妊娠・出産
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HPVワクチンで防げる、咽頭乳頭腫とは?
HPVワクチンで防げる、咽頭乳頭腫とは? 2017/12/15 柴田 哲生 先生(こまざわレディースクリニック) ワクチン接種で、赤ちゃんへの感染を防ごう!HPVワクチンは咽頭乳頭腫も予防できる HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンは、子宮頸がんや尖圭(せんけい)コンジローマなどを引き起こすHPV感染症を予防することで知られていますが、詳しく調べるうちに「咽頭乳頭腫(いんとうにゅうとうしゅ)」という病気も予防することがわかってきました。HPVは、咽頭乳頭腫の引き金にもなっていたのです。婦人科系の疾患ではなく、耳鼻咽喉科系の疾患ですので、知らない婦人科医も少なくないかもしれません。 咽頭乳頭腫ができる原因とは? どんな症状? 咽頭乳頭腫は大人になってからも発生するケースはありますが、多くの場合、赤ちゃんが出産時に感染します。母親の産道を通り抜ける際にHPVウイルスがあると、それが赤ちゃんののど、声帯粘膜に付着することで引き起こされると考えられています。 ウイルスの影響で乳頭腫が発生すると声帯の振動が妨げられ、まず声枯れが起きます。腫瘍が声帯全体におよぶと、まったく声が出なくなることもあります。さらに腫瘍が増殖すると気道も圧迫されて狭くなり、呼吸困難や喘鳴(ぜんめい)といった喘息に似た症状が出ることもあります。酸素不足でチアノーゼになることもあるので、小さな子どもは特に注意が必要です。現状では確立した治療法はなく、腫瘍の切除手術で対処するしかありません。しかし、切除しても再発の可能性は極めて高く、根治は困難とされています。本来は良性の腫瘍ですが、まれにがん化することもあります。 HPVワクチンを接種して、母子感染を防ぎましょう 母親がHPVウイルスを持っていたら、必ず赤ちゃんに感染するというわけではありませんが、HPV感染症はHPVワクチンの接種さえしていれば防ぐことができる感染症です。ご自身の子宮頸がん予防や尖圭コンジローマ予防だけでなく、いつか生まれてくる赤ちゃんのためにも、HPVワクチンの接種を積極的に考えてほしいと思っています。 残念ながら、すでにHPVウイルスに感染している方には、ワクチンの効力はありません。そのため、セクシュアル・デビュー前の思春期の女子へのワクチン投与がすすめられてきましたが、副作用を恐れるケースが増えて、接種がひかえられてしまいました。しかし、その副作用もHPVワクチンと因果関係があるとは証明されていないのが現状です。 もしこれから妊娠を希望される方が、現時点でHPVウイルスに感染していないのであれば、今からでもワクチンは接種した方がいいと私は思います。子どもへの感染症、病気のリスクを下げることができるのですから、ぜひかかりつけ医にご相談ください。 お話を伺った先生のご紹介 柴田 哲生(こまざわレディースクリニック) 昭和大学医学部、医学部大学院卒業。牧田総合病院産婦人科医長、大和徳洲会病院産婦人科部長、昭和大学産科婦人科専任講師、せんぽ東京高輪病院婦人科部長を経て、平成21年、こまざわレディースクリニックを開設。日本産科婦人科学会専門医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医。プライベートでは、愛猫にメロメロ。また、ビリヤードなど趣味も多彩。 ≫ こまざわレディースクリニック HPVワクチンで防げる、咽頭乳頭腫とは? 2017/12/15 柴田 哲生 先生(こまざわレディースクリニック) ワクチン接種で、赤ちゃんへの感染を防ごう!HPVワクチンは咽頭乳頭腫も予防できる HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンは、子宮頸がんや尖圭(せんけい)コンジローマなどを引き起こすHPV感染症を予防することで知られていますが、詳しく調べるうちに「咽頭乳頭腫(いんとうにゅうとうしゅ)」という病気も予防することがわかってきました。HPVは、咽頭乳頭腫の引き金にもなっていたのです。婦人科系の疾患ではなく、耳鼻咽喉科系の疾患ですので、知らない婦人科医も少なくないかもしれません。 咽頭乳頭腫ができる原因とは? どんな症状? 咽頭乳頭腫は大人になってからも発生するケースはありますが、多くの場合、赤ちゃんが出産時に感染します。母親の産道を通り抜ける際にHPVウイルスがあると、それが赤ちゃんののど、声帯粘膜に付着することで引き起こされると考えられています。 ウイルスの影響で乳頭腫が発生すると声帯の振動が妨げられ、まず声枯れが起きます。腫瘍が声帯全体におよぶと、まったく声が出なくなることもあります。さらに腫瘍が増殖すると気道も圧迫されて狭くなり、呼吸困難や喘鳴(ぜんめい)といった喘息に似た症状が出ることもあります。酸素不足でチアノーゼになることもあるので、小さな子どもは特に注意が必要です。現状では確立した治療法はなく、腫瘍の切除手術で対処するしかありません。しかし、切除しても再発の可能性は極めて高く、根治は困難とされています。本来は良性の腫瘍ですが、まれにがん化することもあります。 HPVワクチンを接種して、母子感染を防ぎましょう 母親がHPVウイルスを持っていたら、必ず赤ちゃんに感染するというわけではありませんが、HPV感染症はHPVワクチンの接種さえしていれば防ぐことができる感染症です。ご自身の子宮頸がん予防や尖圭コンジローマ予防だけでなく、いつか生まれてくる赤ちゃんのためにも、HPVワクチンの接種を積極的に考えてほしいと思っています。 残念ながら、すでにHPVウイルスに感染している方には、ワクチンの効力はありません。そのため、セクシュアル・デビュー前の思春期の女子へのワクチン投与がすすめられてきましたが、副作用を恐れるケースが増えて、接種がひかえられてしまいました。しかし、その副作用もHPVワクチンと因果関係があるとは証明されていないのが現状です。 もしこれから妊娠を希望される方が、現時点でHPVウイルスに感染していないのであれば、今からでもワクチンは接種した方がいいと私は思います。子どもへの感染症、病気のリスクを下げることができるのですから、ぜひかかりつけ医にご相談ください。 お話を伺った先生のご紹介 柴田 哲生(こまざわレディースクリニック) 昭和大学医学部、医学部大学院卒業。牧田総合病院産婦人科医長、大和徳洲会病院産婦人科部長、昭和大学産科婦人科専任講師、せんぽ東京高輪病院婦人科部長を経て、平成21年、こまざわレディースクリニックを開設。日本産科婦人科学会専門医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医。プライベートでは、愛猫にメロメロ。また、ビリヤードなど趣味も多彩。 ≫ こまざわレディースクリニック
2017.12.15
インタビュー 妊娠・出産
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無痛分娩について
無痛分娩について 2017/11/20 牛丸 敬祥 先生(ガーデンヒルズウィメンズクリニック) 無痛分娩とは。その方法など 30年以上前の無痛分娩とは、単に睡眠薬を飲ませて、妊婦がもうろうとした時に出産させるというものだったり、吸入麻酔による出産でした。吸入麻酔では使用する麻酔薬が肝臓機能への負担が大きすぎるということで徐々にすたれ、現在、世界中の無痛分娩の主流は「硬膜外麻酔」です。硬膜外麻酔とは、背中から脊髄近くの硬膜の外側の硬膜外腔にカテーテルを挿入し、そのカテーテルから、麻酔薬をゆっくりと出産まで、長時間注入する方法です。分娩は長くて5日かかる人もいます。そんな方には、長時間の陣痛の痛みを我慢しながらのご出産は負担が大きいと思われます。 硬膜外麻酔は世界的にも最も多く使われている安全な無痛分娩の方法なのです。 無痛分娩は人工的で危険なのでは?というイメージも未だにあるそうですが、実は立派な自然分娩の方法のひとつです。特に当院では陣痛促進剤はなるべく使わず、すなわち計画分娩は行わず、自然に起こる陣痛を待ってから処置を行いますので極めて安全な無痛分娩です。お産は自然が一番安全です。なるべく人工的な処置を加えないお産が安全なので、そのように対応しています。 無痛分娩のメリット、デメリットは? 無痛分娩の痛みは通常の出産の痛みのわずか1/10程度と言われているだけでなく、陣痛の痛みを軽減することによって、副交感神経が優位になり、リラックスできますので、産道が広がりやすく分娩時間も半分ほどで済み、赤ちゃんも母体もストレスが少ないのが特徴。余裕を持って出産に挑むことができます。自然分娩にこだわるあまり、痛みで食事もとれず恐怖でパニックになり過呼吸で苦しむなど、せっかくの新しい命の誕生前に修羅場のような状態で果たして良いのでしょうか。 また、出産時には、痛みのために血圧の数値が、通常よりも40~60mmHGほど上がると言われています。通常の血圧150mmHGの人が200mmHGを超えたら脳出血などの危険性が高まります。また、無痛分娩の場合、痛みで出産時に呼吸を止めるようなことがほぼないので赤ちゃんへ酸素が充分に行き渡り、お母様も赤ちゃんも苦しさが大幅に減少します。 さらに、自然分娩時には早くこの痛みから逃れたいという辛さから、いきんではいけない時にいきんでしまい、会陰裂傷がひどくなる場合があります。しかし無痛分娩時は母体も落ち着いているので医師や看護師の指示をしっかり聞いてくれ、裂傷が最小限に抑えられた出産になります。出血も少なく、快復も早く良いことずくめ。30〜40年ほど前は、日本で年間300~400人の女性が「産後の失血」で命を落としていました。それを考えると安全な無痛分娩が享受できるいまのお母さんたちは本当に幸せです。 デメリットといえば、自然分娩より少し余分に費用がかかることくらい。また、昨今無痛分娩の事故のニュースが世間を騒がせています。当院は院長が、産婦人科医でも有り、麻酔医でもありますのでみなさん安心して出産を迎えられます。麻酔に不安がある方は、事前にじっくりと医師と相談したり、クリニックが行う無痛分娩教室などで納得いくまで知識を得ることも大切です。 無痛分娩ができない場合はある? ほとんどありませんが、神経や血液疾患、感染症に罹患している方などは事前に主治医にご相談ください。自然でも無痛でも言えることですが、安産のためには「肥満は避ける」こと。そして医師の指示はちゃんと聞くこと。患者さんに「先生は厳しかった。でも言うことを聞いて良かった」と言われますよ(笑) 先日90kgオーバーの妊婦の無痛分娩を行いました。どんな方にもおすすめできますが、中でも高齢出産や血圧に不安がある人などは、出産時の危険性を減らすためにも積極的に無痛分娩を考えてみてはいかがでしょう。 分娩方法に悩んでいるママにメッセージを 欧米では60%、お隣韓国でも20%の妊婦が無痛分娩を選ぶ現代社会において、日本での無痛分娩率はわずか5.2%という低さです。そんな「お腹を痛めて産まないと」という考えはもやは時代錯誤でナンセンス。あなたは麻酔なしで手術を受けることができますか? お産の痛みも、手術の痛みも同じ痛みだと思います。陣痛の痛みは、「男性ならば気絶するくらいの強い痛みだと言われています」楽しく、疲れない出産があるのになぜ自ら苦しむの? という価値観の家族が増えてきました。不安要素をひとつずつ潰しながら、最終的には産むあなたが納得できる分娩方法を決めてください。出産を最初から最後まで笑顔で楽しめることを願っています。 お話を伺った方のご紹介 牛丸敬祥先生(ガーデンヒルズウィメンズクリニック) 長崎大学医学部卒。長崎大学産婦人科入局後、産婦人科医療や体外受精に関する卵巣のホルモンの電子顕微鏡的研究を行うなど研鑽を重ね、現在まで15,000例以上の出産を経験。2007年「ガーデンヒルズウィメンズクリニック」を開院。小児科、麻酔科での経験も生かし、安心できる新生児の管理と硬膜外麻酔による無痛分娩を得意とする。 ≫ ガーデンヒルズウィメンズクリニック 無痛分娩について 2017/11/20 牛丸 敬祥 先生(ガーデンヒルズウィメンズクリニック) 無痛分娩とは。その方法など 30年以上前の無痛分娩とは、単に睡眠薬を飲ませて、妊婦がもうろうとした時に出産させるというものだったり、吸入麻酔による出産でした。吸入麻酔では使用する麻酔薬が肝臓機能への負担が大きすぎるということで徐々にすたれ、現在、世界中の無痛分娩の主流は「硬膜外麻酔」です。硬膜外麻酔とは、背中から脊髄近くの硬膜の外側の硬膜外腔にカテーテルを挿入し、そのカテーテルから、麻酔薬をゆっくりと出産まで、長時間注入する方法です。分娩は長くて5日かかる人もいます。そんな方には、長時間の陣痛の痛みを我慢しながらのご出産は負担が大きいと思われます。 硬膜外麻酔は世界的にも最も多く使われている安全な無痛分娩の方法なのです。 無痛分娩は人工的で危険なのでは?というイメージも未だにあるそうですが、実は立派な自然分娩の方法のひとつです。特に当院では陣痛促進剤はなるべく使わず、すなわち計画分娩は行わず、自然に起こる陣痛を待ってから処置を行いますので極めて安全な無痛分娩です。お産は自然が一番安全です。なるべく人工的な処置を加えないお産が安全なので、そのように対応しています。 無痛分娩のメリット、デメリットは? 無痛分娩の痛みは通常の出産の痛みのわずか1/10程度と言われているだけでなく、陣痛の痛みを軽減することによって、副交感神経が優位になり、リラックスできますので、産道が広がりやすく分娩時間も半分ほどで済み、赤ちゃんも母体もストレスが少ないのが特徴。余裕を持って出産に挑むことができます。自然分娩にこだわるあまり、痛みで食事もとれず恐怖でパニックになり過呼吸で苦しむなど、せっかくの新しい命の誕生前に修羅場のような状態で果たして良いのでしょうか。 また、出産時には、痛みのために血圧の数値が、通常よりも40~60mmHGほど上がると言われています。通常の血圧150mmHGの人が200mmHGを超えたら脳出血などの危険性が高まります。また、無痛分娩の場合、痛みで出産時に呼吸を止めるようなことがほぼないので赤ちゃんへ酸素が充分に行き渡り、お母様も赤ちゃんも苦しさが大幅に減少します。 さらに、自然分娩時には早くこの痛みから逃れたいという辛さから、いきんではいけない時にいきんでしまい、会陰裂傷がひどくなる場合があります。しかし無痛分娩時は母体も落ち着いているので医師や看護師の指示をしっかり聞いてくれ、裂傷が最小限に抑えられた出産になります。出血も少なく、快復も早く良いことずくめ。30〜40年ほど前は、日本で年間300~400人の女性が「産後の失血」で命を落としていました。それを考えると安全な無痛分娩が享受できるいまのお母さんたちは本当に幸せです。 デメリットといえば、自然分娩より少し余分に費用がかかることくらい。また、昨今無痛分娩の事故のニュースが世間を騒がせています。当院は院長が、産婦人科医でも有り、麻酔医でもありますのでみなさん安心して出産を迎えられます。麻酔に不安がある方は、事前にじっくりと医師と相談したり、クリニックが行う無痛分娩教室などで納得いくまで知識を得ることも大切です。 無痛分娩ができない場合はある? ほとんどありませんが、神経や血液疾患、感染症に罹患している方などは事前に主治医にご相談ください。自然でも無痛でも言えることですが、安産のためには「肥満は避ける」こと。そして医師の指示はちゃんと聞くこと。患者さんに「先生は厳しかった。でも言うことを聞いて良かった」と言われますよ(笑) 先日90kgオーバーの妊婦の無痛分娩を行いました。どんな方にもおすすめできますが、中でも高齢出産や血圧に不安がある人などは、出産時の危険性を減らすためにも積極的に無痛分娩を考えてみてはいかがでしょう。 分娩方法に悩んでいるママにメッセージを 欧米では60%、お隣韓国でも20%の妊婦が無痛分娩を選ぶ現代社会において、日本での無痛分娩率はわずか5.2%という低さです。そんな「お腹を痛めて産まないと」という考えはもやは時代錯誤でナンセンス。あなたは麻酔なしで手術を受けることができますか? お産の痛みも、手術の痛みも同じ痛みだと思います。陣痛の痛みは、「男性ならば気絶するくらいの強い痛みだと言われています」楽しく、疲れない出産があるのになぜ自ら苦しむの? という価値観の家族が増えてきました。不安要素をひとつずつ潰しながら、最終的には産むあなたが納得できる分娩方法を決めてください。出産を最初から最後まで笑顔で楽しめることを願っています。 お話を伺った方のご紹介 牛丸敬祥先生(ガーデンヒルズウィメンズクリニック) 長崎大学医学部卒。長崎大学産婦人科入局後、産婦人科医療や体外受精に関する卵巣のホルモンの電子顕微鏡的研究を行うなど研鑽を重ね、現在まで15,000例以上の出産を経験。2007年「ガーデンヒルズウィメンズクリニック」を開院。小児科、麻酔科での経験も生かし、安心できる新生児の管理と硬膜外麻酔による無痛分娩を得意とする。 ≫ ガーデンヒルズウィメンズクリニック
2017.11.20
コラム 妊娠・出産
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教えて!「バースプラン」ってどういうもの?
教えて! 「バースプラン」ってどういうもの? 2017/11/17 大塩 達弥先生(おおしおウィメンズクリニック 院長) 「バースプラン」で何ができるの? 「バースプラン」とは、出産・産後の入院期間中、どのように過ごしたいかという希望を、私たち医師や助産師に伝える、いわば“お産のリクエスト”です。昔、アメリカのサンタクルーズにある病院を見学した際、ドクターと妊婦さんが、出産というイベントに向けて自分がどうしたいかと話し合い、理想のお産をしている姿を見て、これはまだ日本にないシステムだと感じました。そこで、当院では1997年の開設時から、妊婦さんには必ず「バースプラン」を書いてもらっています。「お産なんてみんな一緒でしょ?」と最初は驚かれる方もいますが、詳しく説明していくと「自分はお産の時にこういうことをしたい」という希望がだんだんと見えてきます。 具体的に何を書いたらいいの? そうは言っても、特に初産の場合、一体何をリクエストしたら良いのかわからない方がほとんどです。当院では、マタニティクラスに参加してもらったり、助産外来に来てもらい、助産師さんと「バースプラン」を決めていくことがほとんどです。 例えば、陣痛、出産のとき、誰に立ち会ってもらいたい、好きな音楽をかけたい、アロマをたきたい、へその緒を自分で切りたい、会陰切開はできるだけ避けたい…、そんなリクエストから始まり、当院であれば、無痛分娩か普通分娩か、また、自分が一番楽な姿勢で出産するフリースタイル分娩を選ぶこともできます。そして、産後は生まれたらすぐにカンガルーケアをしたい、母乳で育てたいなど、助産師さんから具体的に話を聞くと自分の理想とするお産が見えてくるはずです。当院では外国の方も多く出産されるので、胎盤を持ち帰りたい、自分の胎盤を食べたい……などのリクエストまでありますよ! 「バースプラン」がない病院の場合、どうしたらいいの? 個人的には「バースプラン」は書いてもらったほうが、妊婦さんの個性が分かって良いのですが、助産院は別として、クリニックによっては「バースプラン」の用紙が用意されていないことも多いでしょう。用意されていない場合は「バースプラン」を提出していいかを聞いてみても良いと思います。リクエストによっては、施設やスタッフの都合で「これはできません」と断られることもあるかもしれませんが、それを知っておくことも大切です。出産は人生のビッグイベントでもあります。ぜひ「バースプラン」を立てて、理想の出産をしてください。 お話を伺った先生のご紹介 大塩 達弥先生(おおしおウィメンズクリニック 院長) 日本大学医学部卒業 横須賀市立市民病院産婦人科、川口市立市民病院、関東逓信病院産婦人科、セントマーガレット病院産婦人科部長を経て、平成9年おおしおウィメンズクリニックを開設。クリニックは産科、婦人科だけでなく、不妊外来、胎児ドック、ピル外来、産後の美容・エステなど、女性をトータルでサポートしてくれる。日本産科婦人科学会専門医、日本母性衛生学会会員 母体保護法指定医 日本受精着床学会評議員 日本不妊学会会員。ほか、日本大学医学部産婦人科兼任 講師としても活躍中。 ≫ おおしおウィメンズクリニック 教えて! 「バースプラン」ってどういうもの? 2017/11/17 大塩 達弥先生(おおしおウィメンズクリニック 院長) 「バースプラン」で何ができるの? 「バースプラン」とは、出産・産後の入院期間中、どのように過ごしたいかという希望を、私たち医師や助産師に伝える、いわば“お産のリクエスト”です。昔、アメリカのサンタクルーズにある病院を見学した際、ドクターと妊婦さんが、出産というイベントに向けて自分がどうしたいかと話し合い、理想のお産をしている姿を見て、これはまだ日本にないシステムだと感じました。そこで、当院では1997年の開設時から、妊婦さんには必ず「バースプラン」を書いてもらっています。「お産なんてみんな一緒でしょ?」と最初は驚かれる方もいますが、詳しく説明していくと「自分はお産の時にこういうことをしたい」という希望がだんだんと見えてきます。 具体的に何を書いたらいいの? そうは言っても、特に初産の場合、一体何をリクエストしたら良いのかわからない方がほとんどです。当院では、マタニティクラスに参加してもらったり、助産外来に来てもらい、助産師さんと「バースプラン」を決めていくことがほとんどです。 例えば、陣痛、出産のとき、誰に立ち会ってもらいたい、好きな音楽をかけたい、アロマをたきたい、へその緒を自分で切りたい、会陰切開はできるだけ避けたい…、そんなリクエストから始まり、当院であれば、無痛分娩か普通分娩か、また、自分が一番楽な姿勢で出産するフリースタイル分娩を選ぶこともできます。そして、産後は生まれたらすぐにカンガルーケアをしたい、母乳で育てたいなど、助産師さんから具体的に話を聞くと自分の理想とするお産が見えてくるはずです。当院では外国の方も多く出産されるので、胎盤を持ち帰りたい、自分の胎盤を食べたい……などのリクエストまでありますよ! 「バースプラン」がない病院の場合、どうしたらいいの? 個人的には「バースプラン」は書いてもらったほうが、妊婦さんの個性が分かって良いのですが、助産院は別として、クリニックによっては「バースプラン」の用紙が用意されていないことも多いでしょう。用意されていない場合は「バースプラン」を提出していいかを聞いてみても良いと思います。リクエストによっては、施設やスタッフの都合で「これはできません」と断られることもあるかもしれませんが、それを知っておくことも大切です。出産は人生のビッグイベントでもあります。ぜひ「バースプラン」を立てて、理想の出産をしてください。 お話を伺った先生のご紹介 大塩 達弥先生(おおしおウィメンズクリニック 院長) 日本大学医学部卒業 横須賀市立市民病院産婦人科、川口市立市民病院、関東逓信病院産婦人科、セントマーガレット病院産婦人科部長を経て、平成9年おおしおウィメンズクリニックを開設。クリニックは産科、婦人科だけでなく、不妊外来、胎児ドック、ピル外来、産後の美容・エステなど、女性をトータルでサポートしてくれる。日本産科婦人科学会専門医、日本母性衛生学会会員 母体保護法指定医 日本受精着床学会評議員 日本不妊学会会員。ほか、日本大学医学部産婦人科兼任 講師としても活躍中。 ≫ おおしおウィメンズクリニック
2017.11.17
インタビュー 妊娠・出産
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ソフロロジー分娩について
ソフロロジー分娩とは? ソフロロジーとは本来精神科医によって創案された「プラス思考を進ませる学問」。これをフランス人の産婦人科医ジャンヌ・クレフ博士が初めて分娩法に取り入れたのがソフロロジー分娩です。前向きな分娩とは「心身ともにリラックス」したソフロリミナル状態が続くこと。ラマーズ法が呼吸などを元にした「テクニックが必要な分娩」と考えると、ソフロロジー法は哲学を元にした「母性による前向きな分娩」です。 ソフロロジー分娩には三要素あり「エクササイズ10%」「呼吸法10%」そして「イメージトレーニング80%」と言われています。そのイメージトレーニングの指導法はとても簡単で、同じ旋律が繰り返される環境音楽のような心地よいBGMを1日1回30分聞いて過ごします。繰り返し曲を聞くことで脳からβ波が出て心身ともにぼんやりとリラックスした状態になります。これを聞きながら、お腹の赤ちゃんとコミュニケーションをする時間をとります。赤ちゃんの存在をしっかりイメージしながら「母性」を育んでいくことがソフロロジー分娩に最も必要なトレーニングなのです。 ソフロロジーのメリット、デメリットは? 無痛ではなく減痛分娩と言われる分娩法なので出産の痛みはもちろんありますが、それでも麻酔によるリスクを避け、特別な機器のある施設でなくても分娩することができるのが一番のメリットです。母性を高め、リラックスしてお産に臨むので、パニックにならず母体の回復も早いと言われています。 デメリットは「指導や実践に手間がかかる」こと。大きい病院では大勢の妊婦を前にラマーズ法を指導するのが一番効率がよく手間がかからないという理由で続いていますが、小規模な病院ではひとりひとりと十分接する時間があるため、ソフロロジー教育が行き渡りやすく、一度ソフロロジーを経験した産婦は次の出産もソフロロジーを希望するほど母体に優しい分娩と言えます。毎日CDを聞いてイメージトレーニングをするということも「面倒くさい」と思う方にはデメリットなのかもしれません。 ソフロロジー分娩が向かない人は? 向いていないとされる条件はほとんどありません。しかし、トレーニングに最低1カ月、平均2~3カ月は必要とされるので、その時間が取れないほど忙しいという方には難しいかもしれませんね。しかしイメージトレーニングはすればするほど分娩時の前向き思考につながり、育児にも豊かな母性が続き、良い親子関係を築くことができます。初産婦さん、特に母性に自信のない女性こそ「自らの母性を高めてお産に集中できる」このソフロロジー法を取り入れてほしいと思っています。 分娩方法に悩んでいるママにメッセージを 当院の8割はパートナーも一緒の立会い分娩です。ソフロロジー式の場合は産婦がパニックにならない静かな分娩なので、パートナーの心の負担も減り、出産の感動もより大きく妻への愛情や感謝が高まると言われています。 母性を高めずに出産を迎えると、それが産後うつや虐待につながるケースも。今だから見直されている分娩法がソフロロジー法です。ラマーズ法、アクティブバースなど多彩な分娩法から、あなたが納得するスタイルを選び、楽しいお産を迎えてください。 お話を伺った方のご紹介 日高輝幸先生(エンゼルマタニティクリニック) 昭和大学医学部卒。日本産科婦人科学会専門医。母体保護法指定医。昭和大学医学部講師などを経て1991年「エンゼルマタニティクリニック」を開院。「自然分娩による安心のお産」をモットーとし、優秀なスタッフ体制や先端機器の導入と、快適なホスピタリティで新しい命を迎えるサポートを行う。 ≫ エンゼルマタニティクリニック ソフロロジー分娩について 2017/11/15 日高 輝幸 先生(エンゼルマタニティクリニック) ソフロロジー分娩とは? ソフロロジーとは本来精神科医によって創案された「プラス思考を進ませる学問」。これをフランス人の産婦人科医ジャンヌ・クレフ博士が初めて分娩法に取り入れたのがソフロロジー分娩です。前向きな分娩とは「心身ともにリラックス」したソフロリミナル状態が続くこと。ラマーズ法が呼吸などを元にした「テクニックが必要な分娩」と考えると、ソフロロジー法は哲学を元にした「母性による前向きな分娩」です。 ソフロロジー分娩には三要素あり「エクササイズ10%」「呼吸法10%」そして「イメージトレーニング80%」と言われています。そのイメージトレーニングの指導法はとても簡単で、同じ旋律が繰り返される環境音楽のような心地よいBGMを1日1回30分聞いて過ごします。繰り返し曲を聞くことで脳からβ波が出て心身ともにぼんやりとリラックスした状態になります。これを聞きながら、お腹の赤ちゃんとコミュニケーションをする時間をとります。赤ちゃんの存在をしっかりイメージしながら「母性」を育んでいくことがソフロロジー分娩に最も必要なトレーニングなのです。 ソフロロジーのメリット、デメリットは? 無痛ではなく減痛分娩と言われる分娩法なので出産の痛みはもちろんありますが、それでも麻酔によるリスクを避け、特別な機器のある施設でなくても分娩することができるのが一番のメリットです。母性を高め、リラックスしてお産に臨むので、パニックにならず母体の回復も早いと言われています。 デメリットは「指導や実践に手間がかかる」こと。大きい病院では大勢の妊婦を前にラマーズ法を指導するのが一番効率がよく手間がかからないという理由で続いていますが、小規模な病院ではひとりひとりと十分接する時間があるため、ソフロロジー教育が行き渡りやすく、一度ソフロロジーを経験した産婦は次の出産もソフロロジーを希望するほど母体に優しい分娩と言えます。毎日CDを聞いてイメージトレーニングをするということも「面倒くさい」と思う方にはデメリットなのかもしれません。 ソフロロジー分娩が向かない人は? 向いていないとされる条件はほとんどありません。しかし、トレーニングに最低1カ月、平均2~3カ月は必要とされるので、その時間が取れないほど忙しいという方には難しいかもしれませんね。しかしイメージトレーニングはすればするほど分娩時の前向き思考につながり、育児にも豊かな母性が続き、良い親子関係を築くことができます。初産婦さん、特に母性に自信のない女性こそ「自らの母性を高めてお産に集中できる」このソフロロジー法を取り入れてほしいと思っています。 分娩方法に悩んでいるママにメッセージを 当院の8割はパートナーも一緒の立会い分娩です。ソフロロジー式の場合は産婦がパニックにならない静かな分娩なので、パートナーの心の負担も減り、出産の感動もより大きく妻への愛情や感謝が高まると言われています。 母性を高めずに出産を迎えると、それが産後うつや虐待につながるケースも。今だから見直されている分娩法がソフロロジー法です。ラマーズ法、アクティブバースなど多彩な分娩法から、あなたが納得するスタイルを選び、楽しいお産を迎えてください。 お話を伺った方のご紹介 日高輝幸先生(エンゼルマタニティクリニック) 昭和大学医学部卒。日本産科婦人科学会専門医。母体保護法指定医。昭和大学医学部講師などを経て1991年「エンゼルマタニティクリニック」を開院。「自然分娩による安心のお産」をモットーとし、優秀なスタッフ体制や先端機器の導入と、快適なホスピタリティで新しい命を迎えるサポートを行う。 ≫ エンゼルマタニティクリニック
2017.11.15
コラム 妊娠・出産
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出生前診断!正しく聞いてみよう。
出生前診断!正しく聞いてみよう。 2017/11/13 宗田 聡 先生(広尾レディース) 「出生前診断」とはどういうもの? 妊婦さんであれば「出生前診断」という言葉を耳にしたことがある方は多いでしょう。ネットでは、「出生前診断」と検索するとセンセーショナルな病名が並び、驚かれる方も多いのですが、皆さんに知ってほしい大事なことは「出生前診断は“命の選別”ではなく、おなかの中にいる赤ちゃんの病気や奇形、染色体異常などがあるかないかを調べる検査」ということです。 例えば、赤ちゃんに心臓の病気があったとします。産院が田舎や個人病院で赤ちゃんの病気に対応できない場合には大きな病院に転院する、またお腹の中の赤ちゃんの胸に水がたまる病気が見つかったら妊娠中から胸水を抜くことができる、血液の流れで双子の赤ちゃんの発育に差がある場合、お腹の中でレーザーにより血管を焼くなどの治療ができる…など、病気や奇形がお腹の中にいるときにわかることで、「出産するまでの準備・治療ができ、対応できる」ことがメリットなのです。 「出生前診断」の世界の現状 日本で「出生前診断」を受けるには、今のところ年齢などいくつかの制限があります。一方世界では、ほとんどの国で希望すれば年齢に関係なくだれでも受けられる検査となっています。その理由としては、「染色体異常」の赤ちゃんが800人に1人という比較的高い確率で生まれてくること、もうひとつは母親の出産年齢が世界的にも上がっていて、「染色体異常」は年齢が上がるごとに確率が高くなっているという点にあります。事前に分かることで、家族は対応を考え、病気について学ぶ時間が作られるというメリットがあります。 日本でも年齢を問わず、「出生前診断」を希望される方が増えてきていますが、まだオープンに議論されていないという現状があります。 「出生前診断」は赤ちゃんのすべての病気が分かるものではない ネットではあらゆる情報があふれていて、「出生前診断を受けさえすれば赤ちゃんのすべての病気がわかる、赤ちゃんが健康だというお墨付きがもらえる」と勘違いされている方も少なくありませんが、そうではありません。生まれる前に見つけることのできる病気はまだまだ限られていて、ほとんどの病気は出産後に見つかります。 また、最近では「手軽な検査」を連想させるようなうたい文句で「出生前診断」を案内していている医療機関があるのも大きな問題です。赤ちゃんに奇形や染色体異常が見つかった場合、大事なのはアフターケア。各専門家と連携して赤ちゃんのケアをしていくことが大切なのに、検査を済ませたらあとは放置され、今後どうしたらいいのか相談もできずに行き場がなくなる妊婦さんがいるのも現状です。「出生前診断」はその場だけの検査ではなく、何か起こった場合に、「どう対応するのか」が最も大切な検査です。 お腹の赤ちゃんの将来にかかわる大切な問題ですから、専門家としっかり相談したうえで、受けるべき検査だと考えています。 お話を伺った先生のご紹介 宗田 聡 先生(広尾レディース) 筑波大学卒業後、同大産婦人科にて研修。平成9年より筑波大学講師として臨床・研究・教育に従事。Tufts大学(ボストン)遺伝医学特別研究員として留学後、水戸済生会総合病院産婦人科部長・茨城県周産期センター長(筑波大学産婦人科臨床准教授兼任)、 パークサイド広尾レディスクリニック院長を経て、平成24年 広尾レディース院長に就任。現在、筑波大学大学院人間総合科学研究科非常勤講師。不妊、うつに関する著書も多数。著書に『これからはじめる周産期メンタルヘルス』等。 ≫ 広尾レディース 出生前診断!正しく聞いてみよう。 2017/11/13 宗田 聡 先生(広尾レディース) 「出生前診断」とはどういうもの? 妊婦さんであれば「出生前診断」という言葉を耳にしたことがある方は多いでしょう。ネットでは、「出生前診断」と検索するとセンセーショナルな病名が並び、驚かれる方も多いのですが、皆さんに知ってほしい大事なことは「出生前診断は“命の選別”ではなく、おなかの中にいる赤ちゃんの病気や奇形、染色体異常などがあるかないかを調べる検査」ということです。 例えば、赤ちゃんに心臓の病気があったとします。産院が田舎や個人病院で赤ちゃんの病気に対応できない場合には大きな病院に転院する、またお腹の中の赤ちゃんの胸に水がたまる病気が見つかったら妊娠中から胸水を抜くことができる、血液の流れで双子の赤ちゃんの発育に差がある場合、お腹の中でレーザーにより血管を焼くなどの治療ができる…など、病気や奇形がお腹の中にいるときにわかることで、「出産するまでの準備・治療ができ、対応できる」ことがメリットなのです。 「出生前診断」の世界の現状 日本で「出生前診断」を受けるには、今のところ年齢などいくつかの制限があります。一方世界では、ほとんどの国で希望すれば年齢に関係なくだれでも受けられる検査となっています。その理由としては、「染色体異常」の赤ちゃんが800人に1人という比較的高い確率で生まれてくること、もうひとつは母親の出産年齢が世界的にも上がっていて、「染色体異常」は年齢が上がるごとに確率が高くなっているという点にあります。事前に分かることで、家族は対応を考え、病気について学ぶ時間が作られるというメリットがあります。 日本でも年齢を問わず、「出生前診断」を希望される方が増えてきていますが、まだオープンに議論されていないという現状があります。 「出生前診断」は赤ちゃんのすべての病気が分かるものではない ネットではあらゆる情報があふれていて、「出生前診断を受けさえすれば赤ちゃんのすべての病気がわかる、赤ちゃんが健康だというお墨付きがもらえる」と勘違いされている方も少なくありませんが、そうではありません。生まれる前に見つけることのできる病気はまだまだ限られていて、ほとんどの病気は出産後に見つかります。 また、最近では「手軽な検査」を連想させるようなうたい文句で「出生前診断」を案内していている医療機関があるのも大きな問題です。赤ちゃんに奇形や染色体異常が見つかった場合、大事なのはアフターケア。各専門家と連携して赤ちゃんのケアをしていくことが大切なのに、検査を済ませたらあとは放置され、今後どうしたらいいのか相談もできずに行き場がなくなる妊婦さんがいるのも現状です。「出生前診断」はその場だけの検査ではなく、何か起こった場合に、「どう対応するのか」が最も大切な検査です。 お腹の赤ちゃんの将来にかかわる大切な問題ですから、専門家としっかり相談したうえで、受けるべき検査だと考えています。 お話を伺った先生のご紹介 宗田 聡 先生(広尾レディース) 筑波大学卒業後、同大産婦人科にて研修。平成9年より筑波大学講師として臨床・研究・教育に従事。Tufts大学(ボストン)遺伝医学特別研究員として留学後、水戸済生会総合病院産婦人科部長・茨城県周産期センター長(筑波大学産婦人科臨床准教授兼任)、 パークサイド広尾レディスクリニック院長を経て、平成24年 広尾レディース院長に就任。現在、筑波大学大学院人間総合科学研究科非常勤講師。不妊、うつに関する著書も多数。著書に『これからはじめる周産期メンタルヘルス』等。 ≫ 広尾レディース
2017.11.13
コラム 妊娠・出産
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病院主導の産後ケアは、高齢出産する女性の強い味方
妊娠・お産という大仕事を終えて、初めて育児を始める女性は不安がいっぱい。そんなとき、心強い味方になってくれるのが産後ケアです。東峯婦人クリニック院長/産前産後ケアセンター 東峯サライセンター長の松峯寿美先生にお聞きしました。
2017.10.27
インタビュー 妊娠・出産
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妊娠期の栄養管理について
妊娠期の栄養管理について 2017/10/10 田村 和司 先生(たむらレディースクリニック) 妊娠したからといって、栄養を摂りすぎない 妊娠中はお腹の赤ちゃんの成長のためだけではなく、妊婦の方自身の健康を維持するために食べ物や飲み物に気を配る必要があります。といっても、特に食事内容を変えることはありません。例えば仕事で忙しい方が、妊娠したから食事をすべて手づくりするというわけにもいかないでしょう。栄養バランスに気を配りながら、今までと同様の食事をしてください。 それよりも注意したいのは『赤ちゃんの分と二人分の栄養を摂らなくては』という間違った考え方。これは、親世代の方や年配の方から言われることが多いようです。しかし、妊娠初期には、妊娠前に比べて一日あたり150キロカロリー増やせばいいとされており、これは小さなお茶碗にごはん軽く一杯程度の量です。妊娠すると栄養吸収率が上がり運動量が減るので、どうしてもふっくらされる方が多いです。出産時までに、標準体型の方なら体重10キロ増までが目安とされていますから、必要以上に栄養を摂りすぎないことが大切です。 アルコールは避け、乳製品、肉や魚の加工方法にも注意して とはいえ、避けなくてはならない食品もあります。赤ちゃんの発育に悪影響を与えるリスクがあるアルコールは控え、カフェインの摂取もほどほどにしましょう。また、加熱処理されていない乳製品、生ハムなどの食肉加工食品、スモークサーモンなどの魚介類加工品は食中毒のリスクがあり、レアステーキやレバ刺しなど、加熱不十分な肉はトキソプラズマ感染の恐れがあるので避けたほうがいいでしょう。妊婦が感染すると赤ちゃんにも感染する恐れが生じ、これが流産や早産などの原因となる場合もあります。 サプリメントを上手に活用して葉酸の補充を 一方で妊娠中には特に意識して摂りたい栄養素もあります。まず、鉄分です。妊娠中は貧血になりやすく、歩いている時にふらつくと危険なので、小松菜や大豆食品などで鉄分を多く摂取して貧血対策をとりましょう。 そして葉酸の摂取も大切です。妊娠初期に葉酸の摂取量が不足すると、赤ちゃんの神経管閉塞障害などのリスクが高まります。葉酸はブロッコリーやホウレン草、イチゴなどに多く含まれていますが、当院では手軽に確実に摂取できる方法としてサプリメントの飲用を勧めています。 さらに、赤ちゃんの骨や歯をつくるカルシウムも、妊婦中にきちんと摂りたい栄養素です。乳製品や小魚などに多く含まれています。 妊娠する前から、栄養バランスのいい食事を心がけたい 妊娠したら食生活を見直すのではなく、健康管理のためにも日頃からバランスのいい食生活を心がけることが大切です。また、初めての妊娠ではネットの情報や周りの人たちの意見に振り回されやすいので、気になることは医師や看護師に直接相談してください。心配だからといって自分で情報を集めすぎて、逆に混乱してしまう方もいらっしゃいます。 サプリメントの是非についても、当院ではていねいに説明し、納得したうえで利用してもらっています。正しい情報を得るために、我々のような妊娠出産の専門家を上手に活用してください。 お話を伺った先生のご紹介 田村 和司 先生(たむらレディースクリニック院長) 昭和大学医学部卒業後、昭和大学病院、共立蒲原総合病院、国立伊東温泉病院など地域中核病院を経て平成12年にクリニック開業。妊娠、出産から産後まで、常にお母さんと赤ちゃんが心身ともに健康でリラックスして過ごせるよう、トータルなサポートを提供している。 自他ともに認めるガンダムファン。趣味はゴルフ。雄大な富士山を望む地元のゴルフ場でプレーを楽しんでいる。 ≫ たむらレディースクリニック 妊娠期の栄養管理について 2017/10/10 田村 和司 先生(たむらレディースクリニック) 妊娠したからといって、栄養を摂りすぎない 妊娠中はお腹の赤ちゃんの成長のためだけではなく、妊婦の方自身の健康を維持するために食べ物や飲み物に気を配る必要があります。といっても、特に食事内容を変えることはありません。例えば仕事で忙しい方が、妊娠したから食事をすべて手づくりするというわけにもいかないでしょう。栄養バランスに気を配りながら、今までと同様の食事をしてください。 それよりも注意したいのは『赤ちゃんの分と二人分の栄養を摂らなくては』という間違った考え方。これは、親世代の方や年配の方から言われることが多いようです。しかし、妊娠初期には、妊娠前に比べて一日あたり150キロカロリー増やせばいいとされており、これは小さなお茶碗にごはん軽く一杯程度の量です。妊娠すると栄養吸収率が上がり運動量が減るので、どうしてもふっくらされる方が多いです。出産時までに、標準体型の方なら体重10キロ増までが目安とされていますから、必要以上に栄養を摂りすぎないことが大切です。 アルコールは避け、乳製品、肉や魚の加工方法にも注意して とはいえ、避けなくてはならない食品もあります。赤ちゃんの発育に悪影響を与えるリスクがあるアルコールは控え、カフェインの摂取もほどほどにしましょう。また、加熱処理されていない乳製品、生ハムなどの食肉加工食品、スモークサーモンなどの魚介類加工品は食中毒のリスクがあり、レアステーキやレバ刺しなど、加熱不十分な肉はトキソプラズマ感染の恐れがあるので避けたほうがいいでしょう。妊婦が感染すると赤ちゃんにも感染する恐れが生じ、これが流産や早産などの原因となる場合もあります。 サプリメントを上手に活用して葉酸の補充を 一方で妊娠中には特に意識して摂りたい栄養素もあります。まず、鉄分です。妊娠中は貧血になりやすく、歩いている時にふらつくと危険なので、小松菜や大豆食品などで鉄分を多く摂取して貧血対策をとりましょう。 そして葉酸の摂取も大切です。妊娠初期に葉酸の摂取量が不足すると、赤ちゃんの神経管閉塞障害などのリスクが高まります。葉酸はブロッコリーやホウレン草、イチゴなどに多く含まれていますが、当院では手軽に確実に摂取できる方法としてサプリメントの飲用を勧めています。 さらに、赤ちゃんの骨や歯をつくるカルシウムも、妊婦中にきちんと摂りたい栄養素です。乳製品や小魚などに多く含まれています。 妊娠する前から、栄養バランスのいい食事を心がけたい 妊娠したら食生活を見直すのではなく、健康管理のためにも日頃からバランスのいい食生活を心がけることが大切です。また、初めての妊娠ではネットの情報や周りの人たちの意見に振り回されやすいので、気になることは医師や看護師に直接相談してください。心配だからといって自分で情報を集めすぎて、逆に混乱してしまう方もいらっしゃいます。 サプリメントの是非についても、当院ではていねいに説明し、納得したうえで利用してもらっています。正しい情報を得るために、我々のような妊娠出産の専門家を上手に活用してください。 お話を伺った先生のご紹介 田村 和司 先生(たむらレディースクリニック院長) 昭和大学医学部卒業後、昭和大学病院、共立蒲原総合病院、国立伊東温泉病院など地域中核病院を経て平成12年にクリニック開業。妊娠、出産から産後まで、常にお母さんと赤ちゃんが心身ともに健康でリラックスして過ごせるよう、トータルなサポートを提供している。 自他ともに認めるガンダムファン。趣味はゴルフ。雄大な富士山を望む地元のゴルフ場でプレーを楽しんでいる。 ≫ たむらレディースクリニック
2017.10.10
インタビュー 妊娠・出産
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超高齢出産と子どもへの影響について
超高齢出産と子どもへの影響について 2017/10/10 村林 奈緒 先生(俵IVFクリニック) 相談者:高齢ママさん(主婦/44歳) 主人共々、全ての検査で問題なしと診断され、最終的に残った妊娠しにくい原因は、最初から予想していましたが、やはり私の年齢でした。1人目は自然妊娠+出産で39歳(40歳目前)で、先日顕微授精で妊娠判定をいただき、現在5週に入ります。毎回検査のたびに「流産したらどうしよう?」との不安がよぎりますが、今のところ何とか順調です。このまま継続できるかは、本当に神のみぞ知る、でわからないのですが、最近私のような高齢(超高齢といった方がよいかも)で出産した場合、子どもへの影響はどうなるのだろうと、不安を感じるようになりました。妊娠を望んでいたのに、こんな不安を感じるのは矛盾しているのですが。先日同じように治療をしていて出産された方が、障害のあるお子さんを出産されたことを知りました。障害の原因は、治療なのか高齢なのか、誰にも知ることはできないと思います。とてもぶしつけな質問になってしまうのですが、超高齢出産での子どもへの影響は、どのようなものがあるのでしょうか。 高齢妊娠における染色体異常、流産の確率は? 高齢妊娠での最初のリスクとして考えられるのは、染色体異常の割合が高いということです。染色体異常の中でもっとも頻度の高い胎児の疾患はダウン症といわれていますが、子どもがダウン症になる確率は25歳で約1250人に1人、35歳で約380人に1人、45歳で約30人に1人といわれており、高齢になればなるほどその確率は上がっていきます。 染色体異常に関してご心配のようでしたら、遺伝カウンセリングを受けるという方法もあります。羊水検査などを受けて出生前診断をするかどうかに関しては、最終的にはご夫婦で決められるのがいいと思うのですが、「高齢だと染色体異常のリスクが高くなる」ということは理解したうえで、決定したほうがいいでしょう。 また、年齢が高くなると流産率も上昇します。妊娠初期の流産率は全体でみると15%程度。年齢が高くなるとどんどん高くなり、45歳になると流産の割合は半数以上といわれているので、今後、定期的な経過観察が必要になってくると思います。 ほかにもリスクはありますが? 40歳半ば、いわゆる中高年という世代になると高血圧や糖尿病などの疾患を持つ方も増えてくるので、そういった合併妊娠である場合、もしくは妊娠することによって血圧や血糖が高くなる妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病も年齢が高くなることでリスクが上昇するので、そういった注意も必要になってくるでしょう。 また、臨床の印象だと、高齢の方は子宮が繊維化して硬くなってくるので、年齢が若い方に比べると出産後の出血量が多くなるような気がします。 村林先生より まとめ 高齢で妊娠しても、元気なお子さんを出産している方もいらっしゃいます。しかし、母体や赤ちゃんへのさまざまな影響やリスクは、若い人に比べて高まることは確かなので、ただ心配するだけでなく、正しい事実をきちんと知って、自覚を持ったうえで妊娠・出産に臨みましょう。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 村林 奈緒 先生(俵IVFクリニック) 浜松医科大学、三重大学大学院医学系研究科(博士課程)卒業。浜松医科大学「生殖周産期医学講座」准教授。俵IVFクリニックでは不妊治療全般に加え、毎週月曜日・木曜日の午後、生殖周産期外来(妊娠初期の健康管理)を担当。 ≫ 俵IVFクリニック 超高齢出産と子どもへの影響について 2017/10/10 村林 奈緒 先生(俵IVFクリニック) 相談者:高齢ママさん(主婦/44歳) 主人共々、全ての検査で問題なしと診断され、最終的に残った妊娠しにくい原因は、最初から予想していましたが、やはり私の年齢でした。1人目は自然妊娠+出産で39歳(40歳目前)で、先日顕微授精で妊娠判定をいただき、現在5週に入ります。毎回検査のたびに「流産したらどうしよう?」との不安がよぎりますが、今のところ何とか順調です。このまま継続できるかは、本当に神のみぞ知る、でわからないのですが、最近私のような高齢(超高齢といった方がよいかも)で出産した場合、子どもへの影響はどうなるのだろうと、不安を感じるようになりました。妊娠を望んでいたのに、こんな不安を感じるのは矛盾しているのですが。先日同じように治療をしていて出産された方が、障害のあるお子さんを出産されたことを知りました。障害の原因は、治療なのか高齢なのか、誰にも知ることはできないと思います。とてもぶしつけな質問になってしまうのですが、超高齢出産での子どもへの影響は、どのようなものがあるのでしょうか。 高齢妊娠における染色体異常、流産の確率は? 高齢妊娠での最初のリスクとして考えられるのは、染色体異常の割合が高いということです。染色体異常の中でもっとも頻度の高い胎児の疾患はダウン症といわれていますが、子どもがダウン症になる確率は25歳で約1250人に1人、35歳で約380人に1人、45歳で約30人に1人といわれており、高齢になればなるほどその確率は上がっていきます。 染色体異常に関してご心配のようでしたら、遺伝カウンセリングを受けるという方法もあります。羊水検査などを受けて出生前診断をするかどうかに関しては、最終的にはご夫婦で決められるのがいいと思うのですが、「高齢だと染色体異常のリスクが高くなる」ということは理解したうえで、決定したほうがいいでしょう。 また、年齢が高くなると流産率も上昇します。妊娠初期の流産率は全体でみると15%程度。年齢が高くなるとどんどん高くなり、45歳になると流産の割合は半数以上といわれているので、今後、定期的な経過観察が必要になってくると思います。 ほかにもリスクはありますが? 40歳半ば、いわゆる中高年という世代になると高血圧や糖尿病などの疾患を持つ方も増えてくるので、そういった合併妊娠である場合、もしくは妊娠することによって血圧や血糖が高くなる妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病も年齢が高くなることでリスクが上昇するので、そういった注意も必要になってくるでしょう。 また、臨床の印象だと、高齢の方は子宮が繊維化して硬くなってくるので、年齢が若い方に比べると出産後の出血量が多くなるような気がします。 村林先生より まとめ 高齢で妊娠しても、元気なお子さんを出産している方もいらっしゃいます。しかし、母体や赤ちゃんへのさまざまな影響やリスクは、若い人に比べて高まることは確かなので、ただ心配するだけでなく、正しい事実をきちんと知って、自覚を持ったうえで妊娠・出産に臨みましょう。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 村林 奈緒 先生(俵IVFクリニック) 浜松医科大学、三重大学大学院医学系研究科(博士課程)卒業。浜松医科大学「生殖周産期医学講座」准教授。俵IVFクリニックでは不妊治療全般に加え、毎週月曜日・木曜日の午後、生殖周産期外来(妊娠初期の健康管理)を担当。 ≫ 俵IVFクリニック
2017.10.10
専門医Q&A 妊娠・出産
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妊娠糖尿病について伺いたいです
妊娠糖尿病について伺いたいです 2017/10/10 村林 奈緒 先生(俵IVFクリニック) 相談者:トマトさん(主婦/32歳) 今日ブドウ糖検査で妊娠糖尿病と診断されました。現在10週です。まずは食事療法といわれましたが、今つわりで、食べてるものといえば素麺やパンなど質素なものしか食べていません。この状態で妊娠糖尿病と診断されたのに、食事療法をして改善するのでしょうか? また初期に妊娠糖尿病だと奇形の確率が高くなるとネットに書いてあったため、不安で不安で仕方ありません。初期に妊娠糖尿病と診断されてご出産された方がおられましたら、どのような生活をすればよいか教えていただけないでしょうか? 妊娠糖尿病の診断法は? 妊娠中の初期と中期の2回、スクリーニング検査をして、妊娠糖尿病ではないかどうか確認します。この検査で陽性と判断された場合、トマトさんのようにブドウ糖負荷試験を行って確定診断をするのですが、もともと日本人はインスリン分泌が少ない人種であることに加え、高齢妊娠も増えてきているので、最近は妊娠糖尿病と診断される人が増えてきています。割合でいえば全体の8.5%程度。11~12人に1人くらいは妊娠糖尿病になるといわれているのですね。 妊娠初期に関しては、基本的には随時血糖値(食事をしていても構わない)をみているところが多く、95または100mg/dl以上という値が診断基準となっています。 妊娠糖尿病が胎児に与える影響は? トマトさんは胎児の先天異常の心配をされていますが、先天異常は初期の血糖コントロールが非常に悪い場合に確率が高くなるといわれています。有名なところでは、四肢欠損とか脊椎の下のほうがうまく形成されないような異常ですね。 1つの指標になるのがHbA1cという値。この値が6.4%以上だと先天異常の割合が5.4%、7.4%以上だと17.4%という報告も。妊娠糖尿病と診断されたけれど、値が正常範囲内であれば、先天異常の割合は妊娠糖尿病でない人と同程度といわれています。 このようにHbA1cの値が上がるにつれて先天異常のリスクも高くなるので、通常の血糖値だけではなく、HbA1cにも着目していただくといいかと思います。 また、妊娠初期だけでなく、血糖がずっと高い状態だと赤ちゃんが大きく育ちすぎてしまったり、逆に栄養状態が悪くて育たなくなってしまうことも。肺の成熟が遅れる、生まれてから黄疸になりやすくなる、低血糖になるなどのリスクも考えられます。 お母さん、赤ちゃんともに健康な状態で妊娠継続、出産するためには、きちんと血糖コントロールをすることが重要になってきます。 妊娠糖尿病の治療法は? 治療としては、トマトさんも指導されたようにまずは食事療法ということになります。食事療法を開始し、必要であれば血糖測定をして、血糖値が基準値よりも高い状態が何度か出てくるようであれば、インスリン治療を行います。 インスリンは分子量が大きく胎盤を通過しないので、妊娠中でも使用できるのですが、注射でしか使うことができないので、1日何回もとなると妊婦さんにとっては負担になるかもしれません。ですから、まずは食事でしっかりコントロールしていくのが最初の選択になるでしょう。 食事療法は、やみくもにカロリーを制限したらいいというものではありません。糖尿病というと糖質制限を考えますが、炭水化物は赤ちゃんの唯一の栄養になってくるので、バランスよくコントロールしていくことが必要です。 村林先生より まとめ 妊娠糖尿病の治療は食事療法が基本。体重過多でダイエットが必要だったり、つわりできちんと食事が摂れない場合、何を食べたらいいか迷ってしまう人も多いと思います。不安な時は通院している施設や保健所などに相談して、管理栄養士による栄養指導を受けてみましょう。適切なメニュー提案や必要な栄養素など、わかりやすく指導してもらえると思います。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 村林 奈緒 先生(俵IVFクリニック) 浜松医科大学、三重大学大学院医学系研究科(博士課程)卒業。浜松医科大学「生殖周産期医学講座」准教授。俵IVFクリニックでは不妊治療全般に加え、毎週月曜日・木曜日の午後、生殖周産期外来(妊娠初期の健康管理)を担当。 ≫ 俵IVFクリニック 妊娠糖尿病について伺いたいです 2017/10/10 村林 奈緒 先生(俵IVFクリニック) 相談者:トマトさん(主婦/32歳) 今日ブドウ糖検査で妊娠糖尿病と診断されました。現在10週です。まずは食事療法といわれましたが、今つわりで、食べてるものといえば素麺やパンなど質素なものしか食べていません。この状態で妊娠糖尿病と診断されたのに、食事療法をして改善するのでしょうか? また初期に妊娠糖尿病だと奇形の確率が高くなるとネットに書いてあったため、不安で不安で仕方ありません。初期に妊娠糖尿病と診断されてご出産された方がおられましたら、どのような生活をすればよいか教えていただけないでしょうか? 妊娠糖尿病の診断法は? 妊娠中の初期と中期の2回、スクリーニング検査をして、妊娠糖尿病ではないかどうか確認します。この検査で陽性と判断された場合、トマトさんのようにブドウ糖負荷試験を行って確定診断をするのですが、もともと日本人はインスリン分泌が少ない人種であることに加え、高齢妊娠も増えてきているので、最近は妊娠糖尿病と診断される人が増えてきています。割合でいえば全体の8.5%程度。11~12人に1人くらいは妊娠糖尿病になるといわれているのですね。 妊娠初期に関しては、基本的には随時血糖値(食事をしていても構わない)をみているところが多く、95または100mg/dl以上という値が診断基準となっています。 妊娠糖尿病が胎児に与える影響は? トマトさんは胎児の先天異常の心配をされていますが、先天異常は初期の血糖コントロールが非常に悪い場合に確率が高くなるといわれています。有名なところでは、四肢欠損とか脊椎の下のほうがうまく形成されないような異常ですね。 1つの指標になるのがHbA1cという値。この値が6.4%以上だと先天異常の割合が5.4%、7.4%以上だと17.4%という報告も。妊娠糖尿病と診断されたけれど、値が正常範囲内であれば、先天異常の割合は妊娠糖尿病でない人と同程度といわれています。 このようにHbA1cの値が上がるにつれて先天異常のリスクも高くなるので、通常の血糖値だけではなく、HbA1cにも着目していただくといいかと思います。 また、妊娠初期だけでなく、血糖がずっと高い状態だと赤ちゃんが大きく育ちすぎてしまったり、逆に栄養状態が悪くて育たなくなってしまうことも。肺の成熟が遅れる、生まれてから黄疸になりやすくなる、低血糖になるなどのリスクも考えられます。 お母さん、赤ちゃんともに健康な状態で妊娠継続、出産するためには、きちんと血糖コントロールをすることが重要になってきます。 妊娠糖尿病の治療法は? 治療としては、トマトさんも指導されたようにまずは食事療法ということになります。食事療法を開始し、必要であれば血糖測定をして、血糖値が基準値よりも高い状態が何度か出てくるようであれば、インスリン治療を行います。 インスリンは分子量が大きく胎盤を通過しないので、妊娠中でも使用できるのですが、注射でしか使うことができないので、1日何回もとなると妊婦さんにとっては負担になるかもしれません。ですから、まずは食事でしっかりコントロールしていくのが最初の選択になるでしょう。 食事療法は、やみくもにカロリーを制限したらいいというものではありません。糖尿病というと糖質制限を考えますが、炭水化物は赤ちゃんの唯一の栄養になってくるので、バランスよくコントロールしていくことが必要です。 村林先生より まとめ 妊娠糖尿病の治療は食事療法が基本。体重過多でダイエットが必要だったり、つわりできちんと食事が摂れない場合、何を食べたらいいか迷ってしまう人も多いと思います。不安な時は通院している施設や保健所などに相談して、管理栄養士による栄養指導を受けてみましょう。適切なメニュー提案や必要な栄養素など、わかりやすく指導してもらえると思います。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 村林 奈緒 先生(俵IVFクリニック) 浜松医科大学、三重大学大学院医学系研究科(博士課程)卒業。浜松医科大学「生殖周産期医学講座」准教授。俵IVFクリニックでは不妊治療全般に加え、毎週月曜日・木曜日の午後、生殖周産期外来(妊娠初期の健康管理)を担当。 ≫ 俵IVFクリニック
2017.10.10
専門医Q&A 妊娠・出産
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妊娠初期の出血について
妊娠初期の出血について 2017/10/5 村林 奈緒 先生(俵IVFクリニック) 相談者:ねこむすめさん(主婦/31歳) 現在妊娠6週前半なのですが、出血があって不安です。 4週頃から着床出血らしい出血が少量続くことがあったりして、病院でも、多少の出血や茶色のおりものは正常の範囲だといわれて、その後も時々茶色のおりものが続いていても、「大丈夫かな」と思っていました。 でも、一昨日の夜から出血が増えて昨日慌てて病院に行ったら、超音波写真を見て「胎のうの側で出血していますね。赤ちゃんの姿もまだ見えていませんね。これが正常の範囲か、流産の可能性があるかは何ともいえません」といわれてしまいました。 病院から帰った後も一時出血が増えていましたが、だんだん色が赤から茶色に変わってきていて量も減ったので、とりあえず今は家で安静にして過ごしています。 でも茶色の血に粘膜みたいなものも混じっていることがあって、「これは何?」という感じです。こんな出血があっても、無事に赤ちゃんが生まれたよ、という話が聞ければ少しは安心できるのですが……。 これはどんな状態だといえるのでしょうか? 病名をつけるとすると、切迫流産という状態になります。妊娠初期、子宮の入り口は閉じているのですが、子宮からの出血が起こってきている。そのような状況を全部まとめて、切迫流産という病名で呼んでいます。ただ、出血が起こったから必ず流産するというわけではなく、その後、出血が止まっていけば妊娠継続が可能になることもあります。 ねこむすめさんは胎のうの横に出血があるそうですが、これは絨毛膜下血腫といわれるもので、切迫流産に伴って認められることがあるのですね。絨毛膜下血腫がある人とない人を比べると、ある人のほうが流産になる確率は高く、全体の2割くらいといわれています。今後、出血が増えていかないかどうか、注意して観察していく必要があるでしょう。 出血したら流産を疑ったほうがいいのですか? 出血自体が流産の原因ではなく、出血を来す状態というのが流産につながる場合が多いということで、その量が増えていけば流産の確率も高まります。 下着に少し付着するくらいの出血で、その後増えていかなければ、様子を見ていただく方向でいいと思うのですが、普段の生理くらいの量になってくる場合には、一度かかっている施設に連絡して状況の説明を。 出血量が多いと血液の色は赤くなるのですが、量が少ない場合、ちょっと時間が経ってから出てきた血液なので、酸化により茶色になったり、ちょっと黒っぽくなったりします。ねこむすめさんの今の状態は、出血が減ってきていると考えていいでしょう。 出血した場合、対処法は? 安静にしているくらいしか対処法はないのですが、絨毛膜下血腫がある人は、安静にしなかった人に比べて安静にしていた人のほうが流産率は下がったという報告もあるので、やはりこの間は安静を心がけるように。 終日ベッドで寝たきりで過ごすまでではなく、遠出や旅行、運動などは避けて、いつもよりは少し安静を心がける程度と考えていただければいいと思います。 村林先生より まとめ 出血も注意が必要ですが、今後、胎のうが大きくなっていくか、赤ちゃんの心拍が見えてくるかどうか、妊娠継続について最終的にはそこが一番重要になってくるかと思います。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 村林 奈緒 先生(俵IVFクリニック) 浜松医科大学、三重大学大学院医学系研究科(博士課程)卒業。浜松医科大学「生殖周産期医学講座」准教授。俵IVFクリニックでは不妊治療全般に加え、毎週月曜日・木曜日の午後、生殖周産期外来(妊娠初期の健康管理)を担当。 ≫ 俵IVFクリニック 妊娠初期の出血について 2017/10/5 村林 奈緒 先生(俵IVFクリニック) 相談者:ねこむすめさん(主婦/31歳) 現在妊娠6週前半なのですが、出血があって不安です。 4週頃から着床出血らしい出血が少量続くことがあったりして、病院でも、多少の出血や茶色のおりものは正常の範囲だといわれて、その後も時々茶色のおりものが続いていても、「大丈夫かな」と思っていました。 でも、一昨日の夜から出血が増えて昨日慌てて病院に行ったら、超音波写真を見て「胎のうの側で出血していますね。赤ちゃんの姿もまだ見えていませんね。これが正常の範囲か、流産の可能性があるかは何ともいえません」といわれてしまいました。 病院から帰った後も一時出血が増えていましたが、だんだん色が赤から茶色に変わってきていて量も減ったので、とりあえず今は家で安静にして過ごしています。 でも茶色の血に粘膜みたいなものも混じっていることがあって、「これは何?」という感じです。こんな出血があっても、無事に赤ちゃんが生まれたよ、という話が聞ければ少しは安心できるのですが……。 これはどんな状態だといえるのでしょうか? 病名をつけるとすると、切迫流産という状態になります。妊娠初期、子宮の入り口は閉じているのですが、子宮からの出血が起こってきている。そのような状況を全部まとめて、切迫流産という病名で呼んでいます。ただ、出血が起こったから必ず流産するというわけではなく、その後、出血が止まっていけば妊娠継続が可能になることもあります。 ねこむすめさんは胎のうの横に出血があるそうですが、これは絨毛膜下血腫といわれるもので、切迫流産に伴って認められることがあるのですね。絨毛膜下血腫がある人とない人を比べると、ある人のほうが流産になる確率は高く、全体の2割くらいといわれています。今後、出血が増えていかないかどうか、注意して観察していく必要があるでしょう。 出血したら流産を疑ったほうがいいのですか? 出血自体が流産の原因ではなく、出血を来す状態というのが流産につながる場合が多いということで、その量が増えていけば流産の確率も高まります。 下着に少し付着するくらいの出血で、その後増えていかなければ、様子を見ていただく方向でいいと思うのですが、普段の生理くらいの量になってくる場合には、一度かかっている施設に連絡して状況の説明を。 出血量が多いと血液の色は赤くなるのですが、量が少ない場合、ちょっと時間が経ってから出てきた血液なので、酸化により茶色になったり、ちょっと黒っぽくなったりします。ねこむすめさんの今の状態は、出血が減ってきていると考えていいでしょう。 出血した場合、対処法は? 安静にしているくらいしか対処法はないのですが、絨毛膜下血腫がある人は、安静にしなかった人に比べて安静にしていた人のほうが流産率は下がったという報告もあるので、やはりこの間は安静を心がけるように。 終日ベッドで寝たきりで過ごすまでではなく、遠出や旅行、運動などは避けて、いつもよりは少し安静を心がける程度と考えていただければいいと思います。 村林先生より まとめ 出血も注意が必要ですが、今後、胎のうが大きくなっていくか、赤ちゃんの心拍が見えてくるかどうか、妊娠継続について最終的にはそこが一番重要になってくるかと思います。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 村林 奈緒 先生(俵IVFクリニック) 浜松医科大学、三重大学大学院医学系研究科(博士課程)卒業。浜松医科大学「生殖周産期医学講座」准教授。俵IVFクリニックでは不妊治療全般に加え、毎週月曜日・木曜日の午後、生殖周産期外来(妊娠初期の健康管理)を担当。 ≫ 俵IVFクリニック
2017.10.5
専門医Q&A 妊娠・出産
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出生前診断を受けるべきか
出生前診断を受けるべきか 2017/10/3 村林 奈緒 先生(俵IVFクリニック) 相談者:タンスさん(主婦/35歳) 産院で出生前診断の案内をされ、こういう検査を受けるかどうかはどう判断すればいいのだろうかと悩んでいます。全員に説明しているそうです。 私は4年の不妊治療で5回目のIVFの末にやっと授かったので、異常があってもあきらめることなんてとてもできないと思っています。でもこの考えは甘いのか?とも……。 羊水検査で障害がわかったのに産むのは、一生苦しむことになる子供には迷惑でしかなく、親のエゴのような気もします。 といいつつ、今15週ですでに胎動が始まっているので、心情的にますますさよならするのはつらい。でも、特に21トリソミーで長生きだった場合、並大抵の苦労ではないでしょうから、あとから後悔なんてしたりするかもしれない? 覚悟がないなら受けない、あるなら受ければいい、という話も聞きますが……。 受ける・受けないの判断はどうすればいいのかわかりません。 出生前診断の対象になる人は? タンスさんが通っている病院では妊婦さん全員に説明しているようですね。染色体異常は高齢妊娠で確率が高くなってきます。施設によって考え方が異なると思いますが、35歳以上、あるいは40歳以上など、ある程度高齢の方に情報提供している場合が多いと思います。 当院では35歳以上の方に検査の説明を、40歳以上の方については「お子さんの染色体異常の確率がかなり高くなります」ということをお伝えしています。積極的にすすめるのではなく、あくまでも情報を提供するという形ですね。 なかには「自分には染色体異常がないことを確認するために受けたい」という方もいらっしゃいますが、陽性に出る確率はある一定の割合であるので、自分が陽性である可能性というのも想定したうえで、検査を受けるか受けないかを決めていただきたいと思います。 出生前診断ではどんな検査をするのですか? 種類としては、胎児の異常を形態的に診断する超音波検査、血液検査、羊水を採って調べる羊水検査などがあります。今回のケースではおそらく、羊水検査を受けるかどうかで悩まれているのではないでしょうか。羊水検査では、染色体異常の中でもっとも多いダウン症の有無を調べることが可能で、その診断精度は98~99%といわれています。 検査を受ける・受けないの診断は? 検査を受けたほうがいいかどうかというのは、非常に難しい問題だと思います。「もし染色体異常の子が生まれたら?」という状況をご主人とよく話し合い、育てていけるのかどうかなど今後のこともしっかり考えたうえで、決めていただくのがいいかと思います。 それでも迷われているようなら、検査を受けて結果を知った時点でもう一度、「妊娠継続すべきか」ということを考えるのも1つの方法なのではないかと思います。 村林先生より まとめ 40歳を過ぎると出生前診断を受ける方の割合は増えます。とはいえ、長い不妊治療を経て妊娠された場合は「どんな子でも受け入れる」と、検査を受けない選択をされる方も。考え方はお一人おひとり違うので、ご家族ともよく話し合ったうえで決めることをおすすめします。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 村林 奈緒 先生(俵IVFクリニック) 浜松医科大学、三重大学大学院医学系研究科(博士課程)卒業。浜松医科大学「生殖周産期医学講座」准教授。俵IVFクリニックでは不妊治療全般に加え、毎週月曜日・木曜日の午後、生殖周産期外来(妊娠初期の健康管理)を担当。 ≫ 俵IVFクリニック 出生前診断を受けるべきか 2017/10/3 村林 奈緒 先生(俵IVFクリニック) 相談者:タンスさん(主婦/35歳) 産院で出生前診断の案内をされ、こういう検査を受けるかどうかはどう判断すればいいのだろうかと悩んでいます。全員に説明しているそうです。 私は4年の不妊治療で5回目のIVFの末にやっと授かったので、異常があってもあきらめることなんてとてもできないと思っています。でもこの考えは甘いのか?とも……。 羊水検査で障害がわかったのに産むのは、一生苦しむことになる子供には迷惑でしかなく、親のエゴのような気もします。 といいつつ、今15週ですでに胎動が始まっているので、心情的にますますさよならするのはつらい。でも、特に21トリソミーで長生きだった場合、並大抵の苦労ではないでしょうから、あとから後悔なんてしたりするかもしれない? 覚悟がないなら受けない、あるなら受ければいい、という話も聞きますが……。 受ける・受けないの判断はどうすればいいのかわかりません。 出生前診断の対象になる人は? タンスさんが通っている病院では妊婦さん全員に説明しているようですね。染色体異常は高齢妊娠で確率が高くなってきます。施設によって考え方が異なると思いますが、35歳以上、あるいは40歳以上など、ある程度高齢の方に情報提供している場合が多いと思います。 当院では35歳以上の方に検査の説明を、40歳以上の方については「お子さんの染色体異常の確率がかなり高くなります」ということをお伝えしています。積極的にすすめるのではなく、あくまでも情報を提供するという形ですね。 なかには「自分には染色体異常がないことを確認するために受けたい」という方もいらっしゃいますが、陽性に出る確率はある一定の割合であるので、自分が陽性である可能性というのも想定したうえで、検査を受けるか受けないかを決めていただきたいと思います。 出生前診断ではどんな検査をするのですか? 種類としては、胎児の異常を形態的に診断する超音波検査、血液検査、羊水を採って調べる羊水検査などがあります。今回のケースではおそらく、羊水検査を受けるかどうかで悩まれているのではないでしょうか。羊水検査では、染色体異常の中でもっとも多いダウン症の有無を調べることが可能で、その診断精度は98~99%といわれています。 検査を受ける・受けないの診断は? 検査を受けたほうがいいかどうかというのは、非常に難しい問題だと思います。「もし染色体異常の子が生まれたら?」という状況をご主人とよく話し合い、育てていけるのかどうかなど今後のこともしっかり考えたうえで、決めていただくのがいいかと思います。 それでも迷われているようなら、検査を受けて結果を知った時点でもう一度、「妊娠継続すべきか」ということを考えるのも1つの方法なのではないかと思います。 村林先生より まとめ 40歳を過ぎると出生前診断を受ける方の割合は増えます。とはいえ、長い不妊治療を経て妊娠された場合は「どんな子でも受け入れる」と、検査を受けない選択をされる方も。考え方はお一人おひとり違うので、ご家族ともよく話し合ったうえで決めることをおすすめします。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 村林 奈緒 先生(俵IVFクリニック) 浜松医科大学、三重大学大学院医学系研究科(博士課程)卒業。浜松医科大学「生殖周産期医学講座」准教授。俵IVFクリニックでは不妊治療全般に加え、毎週月曜日・木曜日の午後、生殖周産期外来(妊娠初期の健康管理)を担当。 ≫ 俵IVFクリニック
2017.10.3
専門医Q&A 妊娠・出産
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妊娠前に知っておきたい 出生前診断でわかること
妊娠前に知っておきたい出生前診断でわかること 2017/9/6 種村 光代 先生(種村ウィメンズクリニック) 出生前診断を受ける前に知っておきたいこと 妊娠中の不安を解消し、生まれてくる赤ちゃんの健康を確認するために大きな役割を果たす「出生前診断」。 妊娠の初~中期に胎児の染色体異常や遺伝性疾患、先天性の異常などを調べる出生前診断ですが、いきなり胎児の疾患の確定診断を受けるのは一般的ではありません。そもそも、すべての病気を診断できるわけではありませんし、検査を受ければかならず健康な赤ちゃんが産めるわけでもありません。 まずは主治医に相談し、遺伝カウンセリングやスクリーニング検査を受け、その後、確定診断へと進むのが通常の流れ。 では、最初のスクリーニングではどんなことがわかるのか、確定診断にせまる出生前診断とは一体どんなものなのか、順を追って知っていきましょう。 超音波や母体の採血で調べるスクリーニング検査 スクリーニングの代表的な検査には、胎児の超音波検査や母体血清マーカー検査があります。 超音波スクリーニングは胎児ドックとも呼ばれ、超音波で確認できる、染色体異常を持つ胎児が示しやすい特徴、サイン(ソフトマーカーと呼びます)を捉えて、染色体の異常の確率を推定していく方法です。 妊娠11~13週の初期胎児ドックと、赤ちゃんの臓器のでき始めや目立つ外表奇形をチェックする18~20週頃の中期の胎児ドックがあります。初期では胎児の染色体異常を中心にスクリーニングしますが、中期では、赤ちゃんの推定体重や羊水量、胎盤や臍帯(さいたい)なども観察します。 母体血清マーカー検査は妊娠15週になってから受けることができ、妊婦さんの血清中の成分値を調べることで、赤ちゃんの染色体異常の確率を推定する検査。日本ではクアトロテストとトリプルマーカーの2つが主流です。 クアトロテストは21番染色体トリソミーのダウン症と18番トリソミー、トリプルマーカー検査では21番染色体トリソミーのダウン症の確率を調べます。また、これらの検査で無脳症や二分脊椎などの開放性神経管欠損といわれる疾患も推定されます。 このほか、妊婦健診で受けるトキソプラズマやサイトメガロウイルスなどの母児感染の抗体検査も、スクリーニングのひとつといえます。 また、まだ一般的ではありませんが、クアトロテストやトリプルマーカーとは別の、2種類の母体の血液成分と、初期胎児ドックの所見を組み合わせたオスカー検査というものもあります。 35歳以上の妊婦なら新型出生前検査も スクリーニングの検査はあくまでも病気の確率を推定するもので、当然、その検査結果は絶対ではありません。しかし、なかには非常に信頼度が高いといわれるものもあります。 それが、妊娠10~18週くらいに受けることができる、新型出生前検査(無侵襲的出生前遺伝学的検査:NIPT検査)です。 母体血漿中の胎児由来のDNAを利用して胎児の遺伝学的検査を行うもので、高齢の妊婦さんの赤ちゃんに多いとされる、21、18、13番の染色体異常を検査するもので、陰性的中率、つまり陰性を保証する精度が非常に高いといわれています。 これにより、新型出生前検査で21、18、13番の染色体異常はないだろうという結果が出れば、その3つに限ってはかなり安心と言えます。 ただ、逆に陽性であった場合には偽陽性は皆無ではないため、確定のためには羊水検査を受ける必要があります。なお、日本では現在この検査は臨床研究として実施されており、高齢妊娠などのリスクの高い妊婦さんのみを対象として、検査可能な施設も限定されています。 出生前診断のメインとなるのは羊水検査 スクリーニングでの結果を受けて、次に考えるのが、確定診断となるいわゆる出生前診断です。 出生前診断の中心となるのは羊水検査ですが、妊娠の早い時期に行われる絨毛検査、週数が進めば胎児のへその緒から採血をする臍帯血検査という方法もあります。 羊水検査とは、お腹から子宮内に細くて長い特殊な針を刺して羊水を採取し、羊水中の赤ちゃん由来の物質や細胞によって染色体や遺伝子異常、ウイルス感染の有無を調べる検査。羊水量が増える15週以降で可能となる検査ですが、結果が得られるまでに通常2〜3週間かかります。 絨毛検査は、超音波で胎盤のもととなる絨毛膜有毛部という部位の位置を確認しながら、膣から鉗子やカテーテルを挿入、もしくはお腹から専用の針を刺して絨毛を採取して、異常の有無を調べます。だいたい11~14週くらいに受ける検査です。 どちらも胎児の遺伝情報そのものを解析するため確定診断となりますが、全ての染色体や遺伝子の異常が見つかるわけではありません。なお、現在、日本国内では絨毛検査を受けることのできる施設は限られます。 出生前診断にはリスクがあることも知ろう 出生前診断は、母体に針などを刺して直接サンプルを採るため、検査精度は高いですが、同時に0.3%程度と低頻度ではありますが、流産や破水、子宮内感染が起きるリスクもあります。また、どこまで出生前診断を徹底しても、実際の出産後には私たちに予想の付かない疾患が見つかることがあるのも事実です。 出生前診断を受ける場合、そういったリスクやサポート情報をしっかり伝えてくれるクリニックを選択することはとても重要です。 また、検査結果によっては大きな選択を迫られることもあり得ます。スクリーニングも出生前診断も事前にしっかりとカウンセリングを受けて、パートナーと十分に話し合い、納得した上で検査を受けることをおすすめします。 検査結果が陽性・・・! 治療はできる? 染色体異常や遺伝性疾患は、必ずしも治療ができるわけではありません。 しかし、早期に発見することで、分娩施設を考え直したり、出生後のサポートや療育プログラムを早めに考えることができ、赤ちゃんの予後がよくなることが期待できます。 また、ウイルスなどの母子感染については疾患の種類によって、胎児の治療という選択肢がないわけではありません。 私たち医師も診断をするだけではなく、できるだけ治療やサポートができる方向での情報提供をすることが大切だと思っています。 お話を伺った先生のご紹介 種村 光代 先生(種村ウィメンズクリニック院長) 名古屋市立大学医学部医学科・名古屋市立大学大学院医学研究科卒業、医学博士号修得。名古屋市立大学産科婦人科講師、同臨床遺伝医療部副部長を経て、2008年に開業。胎児スクリーニング、羊水検査、胎児治療、遺伝カウンセリングの症例経験は、全国的にもトップレベルを誇る。 ≫ 種村ウィメンズクリニック 妊娠前に知っておきたい出生前診断でわかること 2017/9/6 種村 光代 先生(種村ウィメンズクリニック) 出生前診断を受ける前に知っておきたいこと 妊娠中の不安を解消し、生まれてくる赤ちゃんの健康を確認するために大きな役割を果たす「出生前診断」。 妊娠の初~中期に胎児の染色体異常や遺伝性疾患、先天性の異常などを調べる出生前診断ですが、いきなり胎児の疾患の確定診断を受けるのは一般的ではありません。そもそも、すべての病気を診断できるわけではありませんし、検査を受ければかならず健康な赤ちゃんが産めるわけでもありません。 まずは主治医に相談し、遺伝カウンセリングやスクリーニング検査を受け、その後、確定診断へと進むのが通常の流れ。 では、最初のスクリーニングではどんなことがわかるのか、確定診断にせまる出生前診断とは一体どんなものなのか、順を追って知っていきましょう。 超音波や母体の採血で調べるスクリーニング検査 スクリーニングの代表的な検査には、胎児の超音波検査や母体血清マーカー検査があります。 超音波スクリーニングは胎児ドックとも呼ばれ、超音波で確認できる、染色体異常を持つ胎児が示しやすい特徴、サイン(ソフトマーカーと呼びます)を捉えて、染色体の異常の確率を推定していく方法です。 妊娠11~13週の初期胎児ドックと、赤ちゃんの臓器のでき始めや目立つ外表奇形をチェックする18~20週頃の中期の胎児ドックがあります。初期では胎児の染色体異常を中心にスクリーニングしますが、中期では、赤ちゃんの推定体重や羊水量、胎盤や臍帯(さいたい)なども観察します。 母体血清マーカー検査は妊娠15週になってから受けることができ、妊婦さんの血清中の成分値を調べることで、赤ちゃんの染色体異常の確率を推定する検査。日本ではクアトロテストとトリプルマーカーの2つが主流です。 クアトロテストは21番染色体トリソミーのダウン症と18番トリソミー、トリプルマーカー検査では21番染色体トリソミーのダウン症の確率を調べます。また、これらの検査で無脳症や二分脊椎などの開放性神経管欠損といわれる疾患も推定されます。 このほか、妊婦健診で受けるトキソプラズマやサイトメガロウイルスなどの母児感染の抗体検査も、スクリーニングのひとつといえます。 また、まだ一般的ではありませんが、クアトロテストやトリプルマーカーとは別の、2種類の母体の血液成分と、初期胎児ドックの所見を組み合わせたオスカー検査というものもあります。 35歳以上の妊婦なら新型出生前検査も スクリーニングの検査はあくまでも病気の確率を推定するもので、当然、その検査結果は絶対ではありません。しかし、なかには非常に信頼度が高いといわれるものもあります。 それが、妊娠10~18週くらいに受けることができる、新型出生前検査(無侵襲的出生前遺伝学的検査:NIPT検査)です。 母体血漿中の胎児由来のDNAを利用して胎児の遺伝学的検査を行うもので、高齢の妊婦さんの赤ちゃんに多いとされる、21、18、13番の染色体異常を検査するもので、陰性的中率、つまり陰性を保証する精度が非常に高いといわれています。 これにより、新型出生前検査で21、18、13番の染色体異常はないだろうという結果が出れば、その3つに限ってはかなり安心と言えます。 ただ、逆に陽性であった場合には偽陽性は皆無ではないため、確定のためには羊水検査を受ける必要があります。なお、日本では現在この検査は臨床研究として実施されており、高齢妊娠などのリスクの高い妊婦さんのみを対象として、検査可能な施設も限定されています。 出生前診断のメインとなるのは羊水検査 スクリーニングでの結果を受けて、次に考えるのが、確定診断となるいわゆる出生前診断です。 出生前診断の中心となるのは羊水検査ですが、妊娠の早い時期に行われる絨毛検査、週数が進めば胎児のへその緒から採血をする臍帯血検査という方法もあります。 羊水検査とは、お腹から子宮内に細くて長い特殊な針を刺して羊水を採取し、羊水中の赤ちゃん由来の物質や細胞によって染色体や遺伝子異常、ウイルス感染の有無を調べる検査。羊水量が増える15週以降で可能となる検査ですが、結果が得られるまでに通常2〜3週間かかります。 絨毛検査は、超音波で胎盤のもととなる絨毛膜有毛部という部位の位置を確認しながら、膣から鉗子やカテーテルを挿入、もしくはお腹から専用の針を刺して絨毛を採取して、異常の有無を調べます。だいたい11~14週くらいに受ける検査です。 どちらも胎児の遺伝情報そのものを解析するため確定診断となりますが、全ての染色体や遺伝子の異常が見つかるわけではありません。なお、現在、日本国内では絨毛検査を受けることのできる施設は限られます。 出生前診断にはリスクがあることも知ろう 出生前診断は、母体に針などを刺して直接サンプルを採るため、検査精度は高いですが、同時に0.3%程度と低頻度ではありますが、流産や破水、子宮内感染が起きるリスクもあります。また、どこまで出生前診断を徹底しても、実際の出産後には私たちに予想の付かない疾患が見つかることがあるのも事実です。 出生前診断を受ける場合、そういったリスクやサポート情報をしっかり伝えてくれるクリニックを選択することはとても重要です。 また、検査結果によっては大きな選択を迫られることもあり得ます。スクリーニングも出生前診断も事前にしっかりとカウンセリングを受けて、パートナーと十分に話し合い、納得した上で検査を受けることをおすすめします。 検査結果が陽性・・・! 治療はできる? 染色体異常や遺伝性疾患は、必ずしも治療ができるわけではありません。 しかし、早期に発見することで、分娩施設を考え直したり、出生後のサポートや療育プログラムを早めに考えることができ、赤ちゃんの予後がよくなることが期待できます。 また、ウイルスなどの母子感染については疾患の種類によって、胎児の治療という選択肢がないわけではありません。 私たち医師も診断をするだけではなく、できるだけ治療やサポートができる方向での情報提供をすることが大切だと思っています。 お話を伺った先生のご紹介 種村 光代 先生(種村ウィメンズクリニック院長) 名古屋市立大学医学部医学科・名古屋市立大学大学院医学研究科卒業、医学博士号修得。名古屋市立大学産科婦人科講師、同臨床遺伝医療部副部長を経て、2008年に開業。胎児スクリーニング、羊水検査、胎児治療、遺伝カウンセリングの症例経験は、全国的にもトップレベルを誇る。 ≫ 種村ウィメンズクリニック
2017.9.6
インタビュー 妊娠・出産
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子育てに役立つ? 今こそ見直したい自然分娩のメリット
子育てに役立つ? 今こそ見直したい自然分娩のメリット 2017/8/28 北原 慶幸 先生(北原産婦人科) 日本でも欧米流の無痛分娩を望む妊婦さんが増えているようですが、それと並行して今、自然な形での出産も見直されつつあります。自然分娩のメリットや、実際に経験した人の感想などを、産科医として多くの実績がある北原産婦人科の北原慶幸先生に伺いました。 自然分娩で得られるメリットとは? 自然分娩は太古の昔から動物がやってきたことで、本来は多くの方が、普通にできることですが、実際に経験してみると「自分で産んだ」という実感が強く、感動する方が多いようですね。 1人目のお子さんを無痛分娩で出産した方は「全然痛くなかったわけじゃなくて、それはそれでしんどかったのだけれど、周りが動いてくれていつの間にか産まれてきて……」とおっしゃいます。人にやってもらったという感じで、「自分で産んだよ」という実感が得にくいようですね。 自然分娩の場合も、当院では陣痛が発来するところからスタッフがずっとつきっきりで妊婦さんをサポートしていくのですが、その励ましがあって乗り切り、最後は自分で産んだということをしっかり感じることができます。 無痛分娩とは? 不自然な分娩なのですか? 無痛分娩は硬膜外麻酔を使い、お産の痛みをなくして分娩する方法で、欧米では当たり前のように行われています。麻酔を入れると確かに痛みはとれますが、子宮の収縮力も落ちてしまうことがあり、人によっては陣痛が弱くなってしまうことがあるんですね。 そうなると陣痛促進剤を使わなくてはいけない。自然に陣痛が来るのではなく、誘発で計画的に陣痛を発来させることになります。 あらかじめ出産日と入院日を決めて、麻酔薬を入れて、促進剤で陣痛を発来させる――。医師の管理下において、赤ちゃんを生むまでのプロセスすべてを人為的にやっていかなくてはいけません。自然分娩と比べると、やはり人工的な分娩ということになると思います。 また、最後の段階で、赤ちゃんを押し出す力が弱くなる場合もあります。そうなると吸引分娩になってしまいます。吸引分娩になる確率は明らかに無痛分娩の人のほうが高いですね。 吸引分娩は医学的に分類すると、異常分娩に入ります。赤ちゃんを救うためにはやむを得ない手段ですが、僕は大人の都合で必要以上に促進剤を使ったり、異常分娩させるのは間違っているように思います。 無痛分娩は自然分娩から痛みをとるだけのものではなく、管理下に置かれた人為的な分娩の形で、リスクもあることを知っておいていただきたいと思います。ただし、麻酔と産科に習熟した医師が、充分な設備やマンパワーを整えて行えば、決して危険だと言うわけではありません。 自然妊娠にもリスクはありますか? 自然妊娠でもリスクがないとはいえません。たとえば、出てくる赤ちゃんの頭とママの骨盤の大きさが釣り合っていない「児頭骨盤不均衡(じとうこつばんふきんこう)」というケースがあります。 これは150cm以下の身長が低い人に多いんですね。ほとんどの方は6cmまでは子宮口が開き、赤ちゃんの頭が下がって来るのですが、そこでピタッと止まってしまい、陣痛促進剤を強くしてもそれ以上子宮口が開かないし、赤ちゃんが下がらないという場合があります。そうなると帝王切開を選択せざるを得ません。 当院では初産で身長が150cm以下の方は、事前に必ずレントゲンを撮って骨盤の状態を確認し、分娩時のリスクや対処法についてきちんとご説明するようにしています。 「立ち会い出産」でパパのスイッチが入る? 女性は妊娠して、自分のお腹の中に命があると実感したとたん、ママのスイッチが入ります。ところが男性は、超音波で赤ちゃんの画像を見ても「へぇ~」というくらいの感覚。その頃はどんなに女性がパートナーに父性を求めても無理なことで、強制すればケンカになってしまうだけです。 僕はパパのスイッチが入るのは9ヵ月後でいいと思っています。スイッチを強くオンにするには、ぜひパートナーの方も出産に立ち会っていただきたいですね。当院では全体の7割が立ち会い出産です。 立ち会い出産はお産を見に来ることではなく、妊婦が分娩室に入るまでパートナーの男性に仕事をしてもらうことだと思っています。 まだいきんではいけない時、ママに「ひっひっふ~」という呼吸をしてもらいますが、本人はつらいから途中で止まってしまう。止まってこわばったままでいると、子宮頸部裂傷や胎児回旋異常が起きて帝王切開になってしまう可能性も。そんな時、パパに「ひっひっふ~」と声を掛けてもらうようにしています。 二人で何時間も頑張って、その後、分娩室に入って赤ちゃんが無事に出てくるところを見る。当院ではパパにへその緒を切ってもらいますから、夫婦共同出産ということで、パパも感動してスイッチが入りますよね。つらい時間を頑張って乗り越えたお互いの姿を見て、ご夫婦の絆もいっそう強まります。 ただし、いきなり立ち会うとトラウマになってしまう男性もいるので、当院では立ち会いの前には必ず、ご夫婦一緒に両親学級に参加して講義を聴いてもらうようにしています。講義を聴いてやめる方もいるし、「迷いましたが、話を聞いて出産に立ち会うことを決めました。実際に体験できて良かったです」という方も。 家族の絆は出産後からではなく、出産時から生まれると思っています。ですから、お産の時にはパパはできるだけママの横にいて欲しいと思いますね。 お話を伺った先生のご紹介 北原産婦人科 北原 慶幸院長 1985年東京慈恵会医科大学卒業。日本産婦人科学会認定医。母体保護法指定医。同院では命の誕生は限りなく自然な状態で迎えられるべきだと考え、病院の都合で陣痛促進剤を使うことはなく、分娩も緊急を要する場合を除いて、できるだけ自然分娩ができるように心がけている。初めての自然分娩を考えている方は、ぜひ同院ホームページの「ひっひっふ~のーと」を参考に。体験者の貴重なメッセージが閲覧可能。 ≫ 北原産婦人科 子育てに役立つ? 今こそ見直したい自然分娩のメリット 2017/8/28 北原 慶幸 先生(北原産婦人科) 日本でも欧米流の無痛分娩を望む妊婦さんが増えているようですが、それと並行して今、自然な形での出産も見直されつつあります。自然分娩のメリットや、実際に経験した人の感想などを、産科医として多くの実績がある北原産婦人科の北原慶幸先生に伺いました。 自然分娩で得られるメリットとは? 自然分娩は太古の昔から動物がやってきたことで、本来は多くの方が、普通にできることですが、実際に経験してみると「自分で産んだ」という実感が強く、感動する方が多いようですね。 1人目のお子さんを無痛分娩で出産した方は「全然痛くなかったわけじゃなくて、それはそれでしんどかったのだけれど、周りが動いてくれていつの間にか産まれてきて……」とおっしゃいます。人にやってもらったという感じで、「自分で産んだよ」という実感が得にくいようですね。 自然分娩の場合も、当院では陣痛が発来するところからスタッフがずっとつきっきりで妊婦さんをサポートしていくのですが、その励ましがあって乗り切り、最後は自分で産んだということをしっかり感じることができます。 無痛分娩とは? 不自然な分娩なのですか? 無痛分娩は硬膜外麻酔を使い、お産の痛みをなくして分娩する方法で、欧米では当たり前のように行われています。麻酔を入れると確かに痛みはとれますが、子宮の収縮力も落ちてしまうことがあり、人によっては陣痛が弱くなってしまうことがあるんですね。 そうなると陣痛促進剤を使わなくてはいけない。自然に陣痛が来るのではなく、誘発で計画的に陣痛を発来させることになります。 あらかじめ出産日と入院日を決めて、麻酔薬を入れて、促進剤で陣痛を発来させる――。医師の管理下において、赤ちゃんを生むまでのプロセスすべてを人為的にやっていかなくてはいけません。自然分娩と比べると、やはり人工的な分娩ということになると思います。 また、最後の段階で、赤ちゃんを押し出す力が弱くなる場合もあります。そうなると吸引分娩になってしまいます。吸引分娩になる確率は明らかに無痛分娩の人のほうが高いですね。 吸引分娩は医学的に分類すると、異常分娩に入ります。赤ちゃんを救うためにはやむを得ない手段ですが、僕は大人の都合で必要以上に促進剤を使ったり、異常分娩させるのは間違っているように思います。 無痛分娩は自然分娩から痛みをとるだけのものではなく、管理下に置かれた人為的な分娩の形で、リスクもあることを知っておいていただきたいと思います。ただし、麻酔と産科に習熟した医師が、充分な設備やマンパワーを整えて行えば、決して危険だと言うわけではありません。 自然妊娠にもリスクはありますか? 自然妊娠でもリスクがないとはいえません。たとえば、出てくる赤ちゃんの頭とママの骨盤の大きさが釣り合っていない「児頭骨盤不均衡(じとうこつばんふきんこう)」というケースがあります。 これは150cm以下の身長が低い人に多いんですね。ほとんどの方は6cmまでは子宮口が開き、赤ちゃんの頭が下がって来るのですが、そこでピタッと止まってしまい、陣痛促進剤を強くしてもそれ以上子宮口が開かないし、赤ちゃんが下がらないという場合があります。そうなると帝王切開を選択せざるを得ません。 当院では初産で身長が150cm以下の方は、事前に必ずレントゲンを撮って骨盤の状態を確認し、分娩時のリスクや対処法についてきちんとご説明するようにしています。 「立ち会い出産」でパパのスイッチが入る? 女性は妊娠して、自分のお腹の中に命があると実感したとたん、ママのスイッチが入ります。ところが男性は、超音波で赤ちゃんの画像を見ても「へぇ~」というくらいの感覚。その頃はどんなに女性がパートナーに父性を求めても無理なことで、強制すればケンカになってしまうだけです。 僕はパパのスイッチが入るのは9ヵ月後でいいと思っています。スイッチを強くオンにするには、ぜひパートナーの方も出産に立ち会っていただきたいですね。当院では全体の7割が立ち会い出産です。 立ち会い出産はお産を見に来ることではなく、妊婦が分娩室に入るまでパートナーの男性に仕事をしてもらうことだと思っています。 まだいきんではいけない時、ママに「ひっひっふ~」という呼吸をしてもらいますが、本人はつらいから途中で止まってしまう。止まってこわばったままでいると、子宮頸部裂傷や胎児回旋異常が起きて帝王切開になってしまう可能性も。そんな時、パパに「ひっひっふ~」と声を掛けてもらうようにしています。 二人で何時間も頑張って、その後、分娩室に入って赤ちゃんが無事に出てくるところを見る。当院ではパパにへその緒を切ってもらいますから、夫婦共同出産ということで、パパも感動してスイッチが入りますよね。つらい時間を頑張って乗り越えたお互いの姿を見て、ご夫婦の絆もいっそう強まります。 ただし、いきなり立ち会うとトラウマになってしまう男性もいるので、当院では立ち会いの前には必ず、ご夫婦一緒に両親学級に参加して講義を聴いてもらうようにしています。講義を聴いてやめる方もいるし、「迷いましたが、話を聞いて出産に立ち会うことを決めました。実際に体験できて良かったです」という方も。 家族の絆は出産後からではなく、出産時から生まれると思っています。ですから、お産の時にはパパはできるだけママの横にいて欲しいと思いますね。 お話を伺った先生のご紹介 北原産婦人科 北原 慶幸院長 1985年東京慈恵会医科大学卒業。日本産婦人科学会認定医。母体保護法指定医。同院では命の誕生は限りなく自然な状態で迎えられるべきだと考え、病院の都合で陣痛促進剤を使うことはなく、分娩も緊急を要する場合を除いて、できるだけ自然分娩ができるように心がけている。初めての自然分娩を考えている方は、ぜひ同院ホームページの「ひっひっふ~のーと」を参考に。体験者の貴重なメッセージが閲覧可能。 ≫ 北原産婦人科
2017.8.28
インタビュー 妊娠・出産
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「無痛分娩」の疑問、不安を解決しよう
「無痛分娩」の疑問、不安を解決しよう 2017/8/16 林 聡 先生(東京マザーズクリニック 院長) リラックスして産めるから、お母さんへも赤ちゃんにも負担が少ない 「無痛分娩」=恐い、というイメージを持つ方もいるかもしれませんが、無痛分娩は、硬膜外麻酔を打つことで陣痛の痛みを和らげ、体力の消耗を最小限に抑えられるというメリットがあります。産後のお母さんは、2~3時間おきの授乳など初めてのことだらけで、体力の消耗は大変なものです。産前の体力の消耗を最小限にできれば、育児もスムーズにスタートすることができます。また、自然分娩のラマーズ法(呼吸法)でうまく呼吸を整えることができず赤ちゃんに上手に酸素がいかない、あるいはお母さんがもともと高血圧で、陣痛の痛みでさらに血圧が上昇してしまうこともありますが、無痛分娩であれば落ち着いて呼吸を整えられるため、お母さんにも赤ちゃんにもストレスがかかりにくいというメリットもあります。 麻酔による合併症や副作用は約10万分の1 硬膜外麻酔は背骨の脊髄に近い場所にカテーテル(麻酔のチューブ)を挿入します。これにより、頭痛、かゆみ、吐き気などを起こすケースもごくまれにあります。また、神経の近くに針が刺さってしまい、長期間足が痺れてしまった、というケースも過去にあったようですが、これは約10万分の1とも言われています。 また、歯医者さんの麻酔が身体に合わないので、無痛分娩の硬膜外麻酔も合わないのでは?と心配される妊婦さんも多くいるのですが、歯医者さんの麻酔とは麻酔の種類も使う場所も違うため、その心配はまずありません。 母体の準備が整った時点で予定日を決める 計画出産といって、あらかじめ出産する日を決められるのも無痛分娩のメリットのひとつです。ご主人の仕事の都合にどうしても合わせたい、上にお子さんがいるので、日にちを決めておいたほうが安心、などという方は計画出産を選ばれますが、自然な陣痛をいったん待ってから病院に来て硬膜外麻酔を打つ方もいます。 計画出産にしても、あくまでも子宮の準備が整っていることが前提です。妊娠10カ月に入ったら内診が始まり、母体の状態を見ながら日にちを決めるので、何か月も前から日にちを決められるわけではありません。また、計画していても数日前に自然に陣痛が来てしまう、ということもあります。 症例数や医者の人数を見るのも産院選びのポイント 10年前は2、3%だった無痛分娩ですが、ここ数年は分娩の約6%が無痛分娩とも言われています。それだけ無痛分娩を扱う病院も急速に増えてきました。 無痛分娩をする際の産院選びのポイントですが、症例数が多い大病院がいいかというと必ずしもそうではありません。何故なら医師が10人以上、助産師も大勢いたら、一人あたりの経験数は当然ながら低くなるためです。例えば当クリニックの場合、医師が2名いて月40件ほどの分娩を扱っているので、一人の医師につき月20件の分娩を扱っています。このような症例数と医師の経験数から判断するのもひとつの手でしょう。 お話を伺った先生のご紹介 林 聡(東京マザーズクリニック 院長) 広島大学医学部卒業後、県立広島病院産科婦人科医員、副部長を経て、フィラデルフィアこども病院、ペンシルバニア大学胎児診断・胎児治療センター留学後、国立成育医療センター周産期診療部胎児診療科医長を経て、平成24年より東京マザーズクリニック院長に就任。 ≫ 東京マザーズクリニック 「無痛分娩」の疑問、不安を解決しよう 2017/8/16 林 聡 先生(東京マザーズクリニック 院長) リラックスして産めるから、お母さんへも赤ちゃんにも負担が少ない 「無痛分娩」=恐い、というイメージを持つ方もいるかもしれませんが、無痛分娩は、硬膜外麻酔を打つことで陣痛の痛みを和らげ、体力の消耗を最小限に抑えられるというメリットがあります。産後のお母さんは、2~3時間おきの授乳など初めてのことだらけで、体力の消耗は大変なものです。産前の体力の消耗を最小限にできれば、育児もスムーズにスタートすることができます。また、自然分娩のラマーズ法(呼吸法)でうまく呼吸を整えることができず赤ちゃんに上手に酸素がいかない、あるいはお母さんがもともと高血圧で、陣痛の痛みでさらに血圧が上昇してしまうこともありますが、無痛分娩であれば落ち着いて呼吸を整えられるため、お母さんにも赤ちゃんにもストレスがかかりにくいというメリットもあります。 麻酔による合併症や副作用は約10万分の1 硬膜外麻酔は背骨の脊髄に近い場所にカテーテル(麻酔のチューブ)を挿入します。これにより、頭痛、かゆみ、吐き気などを起こすケースもごくまれにあります。また、神経の近くに針が刺さってしまい、長期間足が痺れてしまった、というケースも過去にあったようですが、これは約10万分の1とも言われています。 また、歯医者さんの麻酔が身体に合わないので、無痛分娩の硬膜外麻酔も合わないのでは?と心配される妊婦さんも多くいるのですが、歯医者さんの麻酔とは麻酔の種類も使う場所も違うため、その心配はまずありません。 母体の準備が整った時点で予定日を決める 計画出産といって、あらかじめ出産する日を決められるのも無痛分娩のメリットのひとつです。ご主人の仕事の都合にどうしても合わせたい、上にお子さんがいるので、日にちを決めておいたほうが安心、などという方は計画出産を選ばれますが、自然な陣痛をいったん待ってから病院に来て硬膜外麻酔を打つ方もいます。 計画出産にしても、あくまでも子宮の準備が整っていることが前提です。妊娠10カ月に入ったら内診が始まり、母体の状態を見ながら日にちを決めるので、何か月も前から日にちを決められるわけではありません。また、計画していても数日前に自然に陣痛が来てしまう、ということもあります。 症例数や医者の人数を見るのも産院選びのポイント 10年前は2、3%だった無痛分娩ですが、ここ数年は分娩の約6%が無痛分娩とも言われています。それだけ無痛分娩を扱う病院も急速に増えてきました。 無痛分娩をする際の産院選びのポイントですが、症例数が多い大病院がいいかというと必ずしもそうではありません。何故なら医師が10人以上、助産師も大勢いたら、一人あたりの経験数は当然ながら低くなるためです。例えば当クリニックの場合、医師が2名いて月40件ほどの分娩を扱っているので、一人の医師につき月20件の分娩を扱っています。このような症例数と医師の経験数から判断するのもひとつの手でしょう。 お話を伺った先生のご紹介 林 聡(東京マザーズクリニック 院長) 広島大学医学部卒業後、県立広島病院産科婦人科医員、副部長を経て、フィラデルフィアこども病院、ペンシルバニア大学胎児診断・胎児治療センター留学後、国立成育医療センター周産期診療部胎児診療科医長を経て、平成24年より東京マザーズクリニック院長に就任。 ≫ 東京マザーズクリニック
2017.8.16
インタビュー 妊娠・出産
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その憂うつ、「妊娠うつ」かも?
その憂うつ、「妊娠うつ」かも? 2017/7/31 宗田 聡 先生(広尾レディース) 産後だけでなく、妊娠中にもある「うつ」 「マタニティブルー」(産後の一時的なうつ)、「産後うつ」という言葉を耳にしたことがある方は多いと思いますが、妊娠中にも「うつ」はあるのです。 1980年代まで女性は妊娠したらハッピーになるもの、と考えられていました。ところが、ここ最近は女性の社会進出がさかんになり、それに伴い結婚、出産年齢も上がってきました。同時に会社の人間関係などでうつになってしまう人も増えてきました。そして、精神疾患を抱えるのは、男性より女性のほうが1.6倍も多いことがわかっています。 このような背景があり、産前から「うつ」の既往症がある女性が増えてきました。そして、妊娠期にも「うつ」の症状があることが論文として発表され、認知されてきました。2014年には妊娠中、または出産後4週間以内に始まっているうつを「周産期うつ」と呼ぶようになってきています。 妊娠前にうつ、拒食症、不妊治療を受けた人になりやすい傾向が 「妊娠うつ」は、妊娠初期にかかりやすい人がほとんどで、たいていの方は自然に治ります。罹りやすいのは、もともとうつ病の既往症がある方、若いころに拒食症の経験がある方、不妊治療をしてやっと「妊娠」というゴールにたどりついたのに、今度は赤ちゃんのことが心配で不安になる方、このような方が多いです。また、几帳面、生真面目、パニックになりやすい、何でもきちんできないと気が済まない…このような性格の方にも多い傾向があります。 「妊娠うつ」の判断基準は2つ。まず、気持ちが落ち込んでしまうこと、そして物事に興味が持てなくなることが大きな特徴です。これが続くと、悲しくなって意味もなく泣き出してしまったり、眠れなくなってしまったり、食べ過ぎたり、逆に食べられなくなったり…とさまざまな症状が出てきます。よく「妊娠中のホルモン値の変動と関係あるのでは?」という質問がありますが、これは全く関係ありません。その方の環境とキャラクターが複合して発症するものなのです。 「妊娠うつ」はかかりつけ医に相談を 異変を感じたらまずは、ふだん妊婦健診を受けている産婦人科に相談してみましょう。治療は基本的に心理療法を受けてもらいます。抗うつ剤は使用せず、カウンセリングなどで治療していきます。ただ、もともとうつ病があって薬を服用している場合は慎重に治療を進めていきます。抗うつ剤を飲み続けることは、赤ちゃんにリスクがある、という考え方が以前にはありましたが、抗うつ剤を辞めてしまうと、逆に産後にもっと大変な「産後うつ」を発症してしまうケースがあるからです。そのため、最近では妊娠しても安易に薬はやめないこともあります。 一人で考え込まず、周りの人に相談を 「妊娠うつ」の一番の治療は、周りの人に不安や悩みを聞いてもらうことです。パートナー、両親、友達など身近な人に相談して、まわりのサポートを受けましょう。また、かかりつけの病院の助産師さんやドクターに聞いてもらっても良いでしょう。 一人で悩んで、根拠や取材元がはっきりしていないネットの情報などに振り回されないようにしてください。正しい情報を見極める力も必要です。 お話を伺った先生のご紹介 宗田聡(広尾レディース) 筑波大学卒業後、同大産婦人科にて研修。平成9年より筑波大学講師として臨床・研究・教育に従事。Tufts大学(ボストン)遺伝医学特別研究員として留学後、水戸済生会総合病院産婦人科部長・茨城県周産期センター長(筑波大学産婦人科臨床准教授兼任)、 パークサイド広尾レディスクリニック院長を経て、平成24年 広尾レディース院長に就任。現在、筑波大学大学院人間総合科学研究科非常勤講師。不妊、うつに関する著書も多数。著書に『これからはじめる周産期メンタルヘルス』等。 ≫ 広尾レディース その憂うつ、「妊娠うつ」かも? 2017/7/31 宗田 聡 先生(広尾レディース) 産後だけでなく、妊娠中にもある「うつ」 「マタニティブルー」(産後の一時的なうつ)、「産後うつ」という言葉を耳にしたことがある方は多いと思いますが、妊娠中にも「うつ」はあるのです。 1980年代まで女性は妊娠したらハッピーになるもの、と考えられていました。ところが、ここ最近は女性の社会進出がさかんになり、それに伴い結婚、出産年齢も上がってきました。同時に会社の人間関係などでうつになってしまう人も増えてきました。そして、精神疾患を抱えるのは、男性より女性のほうが1.6倍も多いことがわかっています。 このような背景があり、産前から「うつ」の既往症がある女性が増えてきました。そして、妊娠期にも「うつ」の症状があることが論文として発表され、認知されてきました。2014年には妊娠中、または出産後4週間以内に始まっているうつを「周産期うつ」と呼ぶようになってきています。 妊娠前にうつ、拒食症、不妊治療を受けた人になりやすい傾向が 「妊娠うつ」は、妊娠初期にかかりやすい人がほとんどで、たいていの方は自然に治ります。罹りやすいのは、もともとうつ病の既往症がある方、若いころに拒食症の経験がある方、不妊治療をしてやっと「妊娠」というゴールにたどりついたのに、今度は赤ちゃんのことが心配で不安になる方、このような方が多いです。また、几帳面、生真面目、パニックになりやすい、何でもきちんできないと気が済まない…このような性格の方にも多い傾向があります。 「妊娠うつ」の判断基準は2つ。まず、気持ちが落ち込んでしまうこと、そして物事に興味が持てなくなることが大きな特徴です。これが続くと、悲しくなって意味もなく泣き出してしまったり、眠れなくなってしまったり、食べ過ぎたり、逆に食べられなくなったり…とさまざまな症状が出てきます。よく「妊娠中のホルモン値の変動と関係あるのでは?」という質問がありますが、これは全く関係ありません。その方の環境とキャラクターが複合して発症するものなのです。 「妊娠うつ」はかかりつけ医に相談を 異変を感じたらまずは、ふだん妊婦健診を受けている産婦人科に相談してみましょう。治療は基本的に心理療法を受けてもらいます。抗うつ剤は使用せず、カウンセリングなどで治療していきます。ただ、もともとうつ病があって薬を服用している場合は慎重に治療を進めていきます。抗うつ剤を飲み続けることは、赤ちゃんにリスクがある、という考え方が以前にはありましたが、抗うつ剤を辞めてしまうと、逆に産後にもっと大変な「産後うつ」を発症してしまうケースがあるからです。そのため、最近では妊娠しても安易に薬はやめないこともあります。 一人で考え込まず、周りの人に相談を 「妊娠うつ」の一番の治療は、周りの人に不安や悩みを聞いてもらうことです。パートナー、両親、友達など身近な人に相談して、まわりのサポートを受けましょう。また、かかりつけの病院の助産師さんやドクターに聞いてもらっても良いでしょう。 一人で悩んで、根拠や取材元がはっきりしていないネットの情報などに振り回されないようにしてください。正しい情報を見極める力も必要です。 お話を伺った先生のご紹介 宗田聡(広尾レディース) 筑波大学卒業後、同大産婦人科にて研修。平成9年より筑波大学講師として臨床・研究・教育に従事。Tufts大学(ボストン)遺伝医学特別研究員として留学後、水戸済生会総合病院産婦人科部長・茨城県周産期センター長(筑波大学産婦人科臨床准教授兼任)、 パークサイド広尾レディスクリニック院長を経て、平成24年 広尾レディース院長に就任。現在、筑波大学大学院人間総合科学研究科非常勤講師。不妊、うつに関する著書も多数。著書に『これからはじめる周産期メンタルヘルス』等。 ≫ 広尾レディース
2017.7.31
インタビュー 妊娠・出産
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ここが知りたい!「無痛分娩」
ここが知りたい!「無痛分娩」 2017/7/27 大塩 達弥先生(おおしおウィメンズクリニック 院長) 痛みを取り、穏やかな気持ちでお産ができる「無痛分娩」 無痛分娩は、腰椎のL3-4間の硬膜外腔にカテーテル(硬膜外カテーテル)を挿入し、麻酔で痛みを取りのぞいて分娩を行います。このため、痛みは感じません。陣痛の波に合わせて、いきむ事ができます。当院では、妊婦さんの要望に合わせ、あらかじめご主人が立ち会えるスケジュールに日を合わせて分娩をする「計画無痛分娩」も行いますが、リスクを伴うケースもあるため、基本的にはすすめていません。ほとんどは自然に陣痛が来るのを待ち、痛みを感じたらすぐにカテーテルを挿入する方法をとっています。こちらの方がより安全で、お産がスムーズに進むからです。カテーテルを挿入すると痛みは10分ぐらいで取れて、お産が進んでいきます。痛みを感じない分、妊婦さんはとても冷静になり、赤ちゃんの頭の位置が今どこにあるかが把握でき、だんだん下りてくる感覚がわかります。痛みがなくても意識ははっきりしているので、お産を楽しんでいらっしゃる方が多いです。 「無痛分娩」のメリット・リスク 痛みを伴わない無痛分娩のメリットは、先に話した通り、お産を冷静に楽しめることにあります。よく第一子を自然分娩で出産して、二人目は無痛を選択する人がいるのですが「こんなに痛くないなんて! お産が楽しめた!」と驚かれています。また、自然分娩は体力を消耗しますが、無痛分娩は体力を消耗しない分、母体の回復が早く、お産の翌日から赤ちゃんのケアを十分にできるという利点もあります。分娩時に痛みを感じない分、お産の後にくる「後陣痛」に痛みを感じる方がいます。 無痛分娩のリスクとしては、硬膜外腔の先にある脊髄腔に硬膜外カテーテルが入ってしまうケースがあります。この状態のままお産を進めないよう、麻酔薬をカテーテルに注入する前に位置確認をします。カテーテルからせき髄液が出てこないことを確認し、カテーテルの位置を把握してから麻酔薬を使います。それでもごくまれにカテーテルが入ってしまう時があることが報告されています。この場合は、麻酔科専門医、産科麻酔医が常駐している当院ではすみやかに対応可能です。 高齢の人、痛みに敏感な人におすすめ 10年前は当院での分娩のうち10%ほどだった無痛分娩ですが、最近では年間約400に及ぶ分娩の約50%は無痛分娩です。それだけ無痛分娩を選択する方が増えてきています。 無痛分娩を選ぶ方に多いのは、高齢で体力を温存しておきたいという方です。このなかには体外受精を経験された方も少なくありません。また、痛みの感じ方は本当に人それぞれなので、ちょっとした痛みにも弱い、と思っている方も選択されます。 ただ、もともと子宮筋腫を持っていて、筋腫が大きくなっているケース、胎盤の位置が悪いケース、また途中で赤ちゃんが逆子だとわかった場合などには無痛分娩ができないこともあります。 “お産は楽しくあるべき”。だから無痛分娩がおすすめ 特に日本では、「お腹を痛めてこそ母親になれる」という考え方もまだあり、それはそれで間違いではないと思います。実際、そこで迷って無痛分娩を躊躇される方もいます。私はそういった方に無理強いはせず、どちらも選択できるように用意します。ただ、せっかくのお産は、楽しくあるべき、家族にも出産シーンをオープンにして、ママにはニコッと笑いながら分娩を楽しんでほしいと思います。人生の一大イベントのお産に、無痛分娩と言う選択肢を加えてみてはいかがでしょう。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 大塩 達弥先生(おおしおウィメンズクリニック 院長) 日本大学医学部卒業 横須賀市立市民病院産婦人科、川口市立市民病院、関東逓信病院産婦人科、セントマーガレット病院産婦人科部長を経て、平成9年おおしおウィメンズクリニックを開設。クリニックは産科、婦人科だけでなく、不妊外来、胎児ドック、ピル外来、産後の美容・エステなど、女性をトータルでサポートしてくれる。日本産科婦人科学会専門医、日本母性衛生学会会員 母体保護法指定医 日本受精着床学会評議員 日本不妊学会会員。ほか、日本大学医学部産婦人科兼任 講師としても活躍中。 ≫ おおしおウィメンズクリニック ここが知りたい!「無痛分娩」 2017/7/27 大塩 達弥先生(おおしおウィメンズクリニック 院長) 痛みを取り、穏やかな気持ちでお産ができる「無痛分娩」 無痛分娩は、腰椎のL3-4間の硬膜外腔にカテーテル(硬膜外カテーテル)を挿入し、麻酔で痛みを取りのぞいて分娩を行います。このため、痛みは感じません。陣痛の波に合わせて、いきむ事ができます。当院では、妊婦さんの要望に合わせ、あらかじめご主人が立ち会えるスケジュールに日を合わせて分娩をする「計画無痛分娩」も行いますが、リスクを伴うケースもあるため、基本的にはすすめていません。ほとんどは自然に陣痛が来るのを待ち、痛みを感じたらすぐにカテーテルを挿入する方法をとっています。こちらの方がより安全で、お産がスムーズに進むからです。カテーテルを挿入すると痛みは10分ぐらいで取れて、お産が進んでいきます。痛みを感じない分、妊婦さんはとても冷静になり、赤ちゃんの頭の位置が今どこにあるかが把握でき、だんだん下りてくる感覚がわかります。痛みがなくても意識ははっきりしているので、お産を楽しんでいらっしゃる方が多いです。 「無痛分娩」のメリット・リスク 痛みを伴わない無痛分娩のメリットは、先に話した通り、お産を冷静に楽しめることにあります。よく第一子を自然分娩で出産して、二人目は無痛を選択する人がいるのですが「こんなに痛くないなんて! お産が楽しめた!」と驚かれています。また、自然分娩は体力を消耗しますが、無痛分娩は体力を消耗しない分、母体の回復が早く、お産の翌日から赤ちゃんのケアを十分にできるという利点もあります。分娩時に痛みを感じない分、お産の後にくる「後陣痛」に痛みを感じる方がいます。 無痛分娩のリスクとしては、硬膜外腔の先にある脊髄腔に硬膜外カテーテルが入ってしまうケースがあります。この状態のままお産を進めないよう、麻酔薬をカテーテルに注入する前に位置確認をします。カテーテルからせき髄液が出てこないことを確認し、カテーテルの位置を把握してから麻酔薬を使います。それでもごくまれにカテーテルが入ってしまう時があることが報告されています。この場合は、麻酔科専門医、産科麻酔医が常駐している当院ではすみやかに対応可能です。 高齢の人、痛みに敏感な人におすすめ 10年前は当院での分娩のうち10%ほどだった無痛分娩ですが、最近では年間約400に及ぶ分娩の約50%は無痛分娩です。それだけ無痛分娩を選択する方が増えてきています。 無痛分娩を選ぶ方に多いのは、高齢で体力を温存しておきたいという方です。このなかには体外受精を経験された方も少なくありません。また、痛みの感じ方は本当に人それぞれなので、ちょっとした痛みにも弱い、と思っている方も選択されます。 ただ、もともと子宮筋腫を持っていて、筋腫が大きくなっているケース、胎盤の位置が悪いケース、また途中で赤ちゃんが逆子だとわかった場合などには無痛分娩ができないこともあります。 “お産は楽しくあるべき”。だから無痛分娩がおすすめ 特に日本では、「お腹を痛めてこそ母親になれる」という考え方もまだあり、それはそれで間違いではないと思います。実際、そこで迷って無痛分娩を躊躇される方もいます。私はそういった方に無理強いはせず、どちらも選択できるように用意します。ただ、せっかくのお産は、楽しくあるべき、家族にも出産シーンをオープンにして、ママにはニコッと笑いながら分娩を楽しんでほしいと思います。人生の一大イベントのお産に、無痛分娩と言う選択肢を加えてみてはいかがでしょう。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 大塩 達弥先生(おおしおウィメンズクリニック 院長) 日本大学医学部卒業 横須賀市立市民病院産婦人科、川口市立市民病院、関東逓信病院産婦人科、セントマーガレット病院産婦人科部長を経て、平成9年おおしおウィメンズクリニックを開設。クリニックは産科、婦人科だけでなく、不妊外来、胎児ドック、ピル外来、産後の美容・エステなど、女性をトータルでサポートしてくれる。日本産科婦人科学会専門医、日本母性衛生学会会員 母体保護法指定医 日本受精着床学会評議員 日本不妊学会会員。ほか、日本大学医学部産婦人科兼任 講師としても活躍中。 ≫ おおしおウィメンズクリニック
2017.7.27
インタビュー 妊娠・出産
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マグロは食べていいの?妊娠中の栄養と運動について
マグロは食べていいの?妊娠中の栄養と運動について 2017/7/25 堀量博(かずひろ)先生(堀産婦人科) 「妊婦中にマグロを食べないほうがいい」と言われているのはなぜ? ほかにも気をつけたい食べ物は? 運動はどのくらいすればいいの? 気になり出すととまらない疑問の数々。そこで今回は、胎児の成長のカギを握る妊娠中の栄養と運動について堀量博(かずひろ)先生にお聞きしました。 心配し過ぎなくても大丈夫。週80g程度なら問題なし 2016年末、マグロやメカジキなどの大きな魚には食物連鎖のためメチル水銀が蓄積しやすく、妊婦が食べ過ぎると、生まれた子の運動機能や知能の発達に悪影響の恐れがあるといった話が話題になりました。そのため、「マグロを食べていいの?」と心配される方も多いようです。 マグロやメカジキだけでなく、魚介類のなかには微量の水銀を有しているものもいますが健康を害するほどの含有量はありません。 厚労省が妊婦に推奨するマグロの摂取量は週に一度、刺身一人前(80g)程度となっています。これを目安に食べれば問題ないでしょう。 魚を敬遠しないで!EPAは胎児にも良い マグロの水銀を気にしすぎて、魚全般を敬遠して食べないほうが問題です。 そもそも魚介類は健康な食生活には必要不可欠な食材です。良質なたんぱく質や、体に良い不飽和脂肪酸というエイコサペンタエン酸(EPA)が豊富に含まれているからです。 ※エイコサペンタエン酸(EPA)……魚類の中でも特にイワシ、マグロなど海産魚の脂質に含まれる脂肪酸の一種で、血管障害を予防し、アレルギー反応を抑制する作用があると言われている EPAは胎児の発達に不可欠なことは実証されています。ですから、ぜひ魚を変に敬遠せず、気軽に食べるようにしてください。マグロでなくてもイワシ、アジ、サバなど近海の魚を食べるといいでしょう。 サプリによる摂取では、効果がみられないという研究や、最近、過剰摂取による分娩後の異常などの報告もあり注意が必要です。 気になるビタミンAは緑黄色野菜で摂取する 妊婦はビタミンAの推奨量を超えるような過剰摂取に気をつけるようにといわれますが、主に植物性食品に含まれるβカロテン(プロビタミンA)であれば、摂取しても問題ありません。 実はビタミンAには2つの種類があります。 動物性由来の「レチノール」(脂溶性ビタミン) 植物性由来の「β(ベータ)カロチン」(植物性ビタミンA) 妊娠中のビタミンA摂取で問題になるのは、高濃度にレチノールを含む食品を継続的に摂取した場合やサプリメントや医薬品によりビタミンAを過剰摂取した場合です。 レチノールは鶏や豚のレバー、うなぎに含まれています。レチノールは、肝臓に蓄積し、体外に排出されにくい特性があります。厚生労働省によると、このような場合にビタミンAが体内にとどまり、胎児の奇形を発症するリスクが高まるといわれています(※1) 特に妊娠初期(妊娠15週まで)は、胎盤が未完成で、食べ物による胎児への影響が大きいため、レチノールの摂取量に注意が必要です。 積極的に摂取してほしい「βカロチン」は、にんじん、ほうれん草、モロヘイヤなど緑黄色野菜に多く含まれています。こちらは不足分だけビタミンAに腸で変換されるので、過剰摂取しても尿として排出されるので、いくら食べても大丈夫です。 ビタミンAは皮膚や肺などの粘膜、免疫を正常に保つ働きや、胎児の細胞の分化にも重要です。そのため、特に妊婦の方にはビタミンAは緑黄色野菜をたくさん食べて摂取するようにしていただきたいです。 妊婦に必要な葉酸の一日の摂取量は0.4㎎。ほうれん草約7束分です。さすがにそれは無理なので、葉酸をサプリで摂取することはおすすめしますが、それ以外のものは基本的にふだんの食事の中で摂取してくださいというのが、僕自身の考え方です。 堀先生より まとめ 日本人の赤ちゃんの出生体重は毎年減少しています。今は、生まれた赤ちゃんの体重が少ないとその赤ちゃんが大人になった時、糖尿病や高血圧症になるリスクが高くなる事がわかっています。 その一因として、今まで私たちは妊婦さんの体重増加は悪いものだと指導してきましたが、適正な体重増加である7〜12kgを心がけましょう。 異常な体重増加はお菓子や炭酸飲料、間食によるものです。お産の後の体重増加を気にして食事を控えるひともいますが、赤ちゃんのためを思って食事はしっかり摂るようにしましょう。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 堀量博(かずひろ)先生(堀産婦人科) 東京都出身。東京医科大学卒。1991年、東京医科大学病院産婦人科勤務。婦人科腫瘍(子宮がん、卵巣がん)治療の中心スタッフとして臨床、研究に長く携わる。2004年、東京高輪で祖父の代から70余年続く産婦人科医院の3代目院長に就く。また堀産婦人科診療のかたわら2003年から山王病院リプリダクションセンターで最先端の不妊治療スタッフとしても活躍。父子3代「オーダーメードの診察で女性の一生を医療面から支える」を心がけており、地域住民からの信頼度は高い。大局的な視点に立ったアドバイスで、妊活中や妊娠中の女性を元気づける。 ≫ 堀産婦人科 マグロは食べていいの?妊娠中の栄養と運動について 2017/7/25 堀量博(かずひろ)先生(堀産婦人科) 「妊婦中にマグロを食べないほうがいい」と言われているのはなぜ? ほかにも気をつけたい食べ物は? 運動はどのくらいすればいいの? 気になり出すととまらない疑問の数々。そこで今回は、胎児の成長のカギを握る妊娠中の栄養と運動について堀量博(かずひろ)先生にお聞きしました。 心配し過ぎなくても大丈夫。週80g程度なら問題なし 2016年末、マグロやメカジキなどの大きな魚には食物連鎖のためメチル水銀が蓄積しやすく、妊婦が食べ過ぎると、生まれた子の運動機能や知能の発達に悪影響の恐れがあるといった話が話題になりました。そのため、「マグロを食べていいの?」と心配される方も多いようです。 マグロやメカジキだけでなく、魚介類のなかには微量の水銀を有しているものもいますが健康を害するほどの含有量はありません。 厚労省が妊婦に推奨するマグロの摂取量は週に一度、刺身一人前(80g)程度となっています。これを目安に食べれば問題ないでしょう。 魚を敬遠しないで!EPAは胎児にも良い マグロの水銀を気にしすぎて、魚全般を敬遠して食べないほうが問題です。 そもそも魚介類は健康な食生活には必要不可欠な食材です。良質なたんぱく質や、体に良い不飽和脂肪酸というエイコサペンタエン酸(EPA)が豊富に含まれているからです。 ※エイコサペンタエン酸(EPA)……魚類の中でも特にイワシ、マグロなど海産魚の脂質に含まれる脂肪酸の一種で、血管障害を予防し、アレルギー反応を抑制する作用があると言われている EPAは胎児の発達に不可欠なことは実証されています。ですから、ぜひ魚を変に敬遠せず、気軽に食べるようにしてください。マグロでなくてもイワシ、アジ、サバなど近海の魚を食べるといいでしょう。 サプリによる摂取では、効果がみられないという研究や、最近、過剰摂取による分娩後の異常などの報告もあり注意が必要です。 気になるビタミンAは緑黄色野菜で摂取する 妊婦はビタミンAの推奨量を超えるような過剰摂取に気をつけるようにといわれますが、主に植物性食品に含まれるβカロテン(プロビタミンA)であれば、摂取しても問題ありません。 実はビタミンAには2つの種類があります。 動物性由来の「レチノール」(脂溶性ビタミン) 植物性由来の「β(ベータ)カロチン」(植物性ビタミンA) 妊娠中のビタミンA摂取で問題になるのは、高濃度にレチノールを含む食品を継続的に摂取した場合やサプリメントや医薬品によりビタミンAを過剰摂取した場合です。 レチノールは鶏や豚のレバー、うなぎに含まれています。レチノールは、肝臓に蓄積し、体外に排出されにくい特性があります。厚生労働省によると、このような場合にビタミンAが体内にとどまり、胎児の奇形を発症するリスクが高まるといわれています(※1) 特に妊娠初期(妊娠15週まで)は、胎盤が未完成で、食べ物による胎児への影響が大きいため、レチノールの摂取量に注意が必要です。 積極的に摂取してほしい「βカロチン」は、にんじん、ほうれん草、モロヘイヤなど緑黄色野菜に多く含まれています。こちらは不足分だけビタミンAに腸で変換されるので、過剰摂取しても尿として排出されるので、いくら食べても大丈夫です。 ビタミンAは皮膚や肺などの粘膜、免疫を正常に保つ働きや、胎児の細胞の分化にも重要です。そのため、特に妊婦の方にはビタミンAは緑黄色野菜をたくさん食べて摂取するようにしていただきたいです。 妊婦に必要な葉酸の一日の摂取量は0.4㎎。ほうれん草約7束分です。さすがにそれは無理なので、葉酸をサプリで摂取することはおすすめしますが、それ以外のものは基本的にふだんの食事の中で摂取してくださいというのが、僕自身の考え方です。 堀先生より まとめ 日本人の赤ちゃんの出生体重は毎年減少しています。今は、生まれた赤ちゃんの体重が少ないとその赤ちゃんが大人になった時、糖尿病や高血圧症になるリスクが高くなる事がわかっています。 その一因として、今まで私たちは妊婦さんの体重増加は悪いものだと指導してきましたが、適正な体重増加である7〜12kgを心がけましょう。 異常な体重増加はお菓子や炭酸飲料、間食によるものです。お産の後の体重増加を気にして食事を控えるひともいますが、赤ちゃんのためを思って食事はしっかり摂るようにしましょう。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 堀量博(かずひろ)先生(堀産婦人科) 東京都出身。東京医科大学卒。1991年、東京医科大学病院産婦人科勤務。婦人科腫瘍(子宮がん、卵巣がん)治療の中心スタッフとして臨床、研究に長く携わる。2004年、東京高輪で祖父の代から70余年続く産婦人科医院の3代目院長に就く。また堀産婦人科診療のかたわら2003年から山王病院リプリダクションセンターで最先端の不妊治療スタッフとしても活躍。父子3代「オーダーメードの診察で女性の一生を医療面から支える」を心がけており、地域住民からの信頼度は高い。大局的な視点に立ったアドバイスで、妊活中や妊娠中の女性を元気づける。 ≫ 堀産婦人科
2017.7.25
インタビュー 妊娠・出産
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尿の臭いで妊娠兆候がわかる?
尿の臭いで妊娠兆候がわかる? 2017/7/21 中村 嘉宏(なかむらレディースクリニック 院長) 相談者:モンさん(主婦/ヒミツ) ちょっと汚い質問ですみません。私の生理が毎月40周期前後なんですが、先々週末あたりから高温期に入りました。子宮がいつもの生理前みたいにキューってうずいているので、そろそろ生理が来る頃だとは思うんですが( ; ; )。 ここ4〜5日、尿の臭いが変なんです。今まで感じたことのなかったような臭いなんです。普通の尿なら軽いアンモニア臭みたいのがありますよね。それが今回は違うんです。うまく表現できないんですけど…。すみません。 今まで生理前とかもこんな臭いはなかったし…。妊娠前は毎月大いに胸を膨らませて期待しているんですが、いつも撃沈でした。生理前とかまたは妊娠兆候で、尿の臭いが変わったことのある方いらっしゃいませんでしょうか。 妊娠すると尿の臭いに変化がありますか。 結論からいいますと、尿の臭いの変化で妊娠しているかどうかはわかりません。尿の臭いは妊娠とは関係なく、飲物や食べ物の影響によって変化します。たとえばコーヒーやビタミンの摂取で尿のにおいは変わります。また、アスパラガスで臭いが変わるという面白い話もあります。 このような方にアドバイスをお願いします。 失礼かもしれませんが、悩まれていることは取るに足らないことです。このようなことに悩まれるのは時間とエネルギーの無駄です。「妊娠はしたいけど、受診のハードルが高い」ということなのでしょう。検査してみないと妊娠かどうかはわかりませんし、妊娠の結果は経過を追っていかないとわかりません。早く受診して検査や治療を受けましょう。そうすれば、取るに足りないことで悩まずに済みますし、妊娠への近道です。 中村先生より まとめ 妊娠しても尿の臭いは変化しません。尿の臭いは妊娠に関係なく、飲物や食べ物の影響によって変化します。このようなことで悩むのは時間の無駄です。妊娠を希望されているなら、早く検査や治療を受けましょう。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 中村 嘉宏 先生(なかむらレディースクリニック) 大阪市立大学医学部卒業。 同大学院で山中伸弥教授(現CiRA所長)の指導で学位取得。大阪市立大学附属病院、住友病院、北摂総合病院産婦人科部長を経て、2013年より藤野婦人科クリニック勤務。2015年4月なかむらレディースクリニック開院。 ≫ なかむらレディースクリニック 尿の臭いで妊娠兆候がわかる? 2017/7/21 中村 嘉宏(なかむらレディースクリニック 院長) 相談者:モンさん(主婦/ヒミツ) ちょっと汚い質問ですみません。私の生理が毎月40周期前後なんですが、先々週末あたりから高温期に入りました。子宮がいつもの生理前みたいにキューってうずいているので、そろそろ生理が来る頃だとは思うんですが( ; ; )。 ここ4〜5日、尿の臭いが変なんです。今まで感じたことのなかったような臭いなんです。普通の尿なら軽いアンモニア臭みたいのがありますよね。それが今回は違うんです。うまく表現できないんですけど…。すみません。 今まで生理前とかもこんな臭いはなかったし…。妊娠前は毎月大いに胸を膨らませて期待しているんですが、いつも撃沈でした。生理前とかまたは妊娠兆候で、尿の臭いが変わったことのある方いらっしゃいませんでしょうか。 妊娠すると尿の臭いに変化がありますか。 結論からいいますと、尿の臭いの変化で妊娠しているかどうかはわかりません。尿の臭いは妊娠とは関係なく、飲物や食べ物の影響によって変化します。たとえばコーヒーやビタミンの摂取で尿のにおいは変わります。また、アスパラガスで臭いが変わるという面白い話もあります。 このような方にアドバイスをお願いします。 失礼かもしれませんが、悩まれていることは取るに足らないことです。このようなことに悩まれるのは時間とエネルギーの無駄です。「妊娠はしたいけど、受診のハードルが高い」ということなのでしょう。検査してみないと妊娠かどうかはわかりませんし、妊娠の結果は経過を追っていかないとわかりません。早く受診して検査や治療を受けましょう。そうすれば、取るに足りないことで悩まずに済みますし、妊娠への近道です。 中村先生より まとめ 妊娠しても尿の臭いは変化しません。尿の臭いは妊娠に関係なく、飲物や食べ物の影響によって変化します。このようなことで悩むのは時間の無駄です。妊娠を希望されているなら、早く検査や治療を受けましょう。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 中村 嘉宏 先生(なかむらレディースクリニック) 大阪市立大学医学部卒業。 同大学院で山中伸弥教授(現CiRA所長)の指導で学位取得。大阪市立大学附属病院、住友病院、北摂総合病院産婦人科部長を経て、2013年より藤野婦人科クリニック勤務。2015年4月なかむらレディースクリニック開院。 ≫ なかむらレディースクリニック
2017.7.21
専門医Q&A 妊娠・出産
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胎児検査・診断専門クリニックの役割とは?
胎児検査・診断専門クリニックの役割とは? 2017/7/19 中村 靖 先生(FMC東京クリニック) 妊娠・出産の高年齢化に伴い、今、「胎児検査・診断」を専門とするクリニックに来院する人が増えています。実際に受診者さんからはどのような相談が多いのか、FMC東京クリニックの中村靖院長にお話を伺いました。 胎児の首のうしろの皮下組織の厚みで染色体異常の可能性を予測 当院で診察・検査を望む患者さんには、ご本人や親族、最初に生まれたお子さんに遺伝的疾患があり、「次に生まれてくる子どもにも病気が出るのではないか」という相談で来られるケースもあるのですが、それよりも圧倒的に多いのが、ダウン症候群など胎児の染色体異常についての心配です。 胎児の染色体異常の可能性を調べる検査の1つにNT計測というものがあります。これは1990年代にイギリスの医師が報告した方法で、胎児の頚部を超音波で調べるもの。妊娠11週から13週の胎児の首の後ろの皮下組織の厚みを計測すると、その厚さに応じて染色体異常の可能性が高まることが知られています。 最初の報告から25年ほど経ち、欧米を中心に今や世界的に行われている検査ですが、日本では出生前検査の普及に反対する声を反映した厚生科学審議会からの見解もあって、ほとんど普及することなく、教育・研修も行われてきませんでした。 最初の評価に疑問と不安を抱いて来院する人も 本来、NTの計測には決められた方法があり、その基準に基づいて正確に測る必要があるのですが、正確に計測するにはそれなりの時間と技術を要します。しかし、超音波診断装置はどこの産科診療施設にもあり、胎児頚部後方の厚みは見ることができるので、正確ではないながらも厚みが目立つと判断されることは通常の妊婦健診の中でも十分にありえます。 「むくみが目立つから、赤ちゃんに何か障害が起こるに違いない」といわれて心配になり、当院に相談に来る方は多くいらっしゃいます。 残念ながら忙しい産科診療の中で、時間をかけてデータに基づいた説明をしてくれることはあまりなく、感覚的に心配が強くなる説明になってしまうことも多々あるため、なかには、妊娠の継続に関して絶望的な気持ちになってしまう人もいるかもしれません。 NT計測は病気を診断するものではなく、一時的な現象をみているものです。きちんと評価すれば、必ずしも染色体異常が出るというわけではなく、健康なお子さんが生まれる可能性が高いというケースもあります。 知りたい人に正しい知識を提供することが必要 当院は「遺伝カウンセリング」と「胎児検査・診断」の専門施設ですが、このように一般施設での評価や診断に疑問を持った妊婦さんの受け皿としての役割も担っています。 妊婦さんにとって「異常があるようだが何が原因なのかわからない」「どこで聞いたらいいかわからない」「高齢だったら異常が出るの? 出ないの?」など、「詳しいことがわからない」のが一番不安なことなのではないでしょうか。 経験豊富な医師や遺伝カウンセラーほかスタッフが正しい情報を提供し、その方にとって必要な検査を受けることができて、結果のその先はきちんと対処が可能な施設にリレーできる。これが、検査・診断ができるクリニックの責任です。将来的には全国に高い水準の検査や診断が受けられる拠点を増やし、妊婦健診の流れの中で、本人の希望に応じて出生前診断を専門施設で受けられるようになるなど、もっとポジティブな形で妊婦さんや家族の不安を解消できる体制づくりが必要だと思っています。 お話を伺った先生のご紹介 FMC東京クリニック中村 靖院長 臨床遺伝専門医 超音波専門医・指導医 産婦人科専門医 禁煙専門医 医学博士 日本人類遺伝学会評議員 元順天堂大学助教授(先任准教授)。順天堂大学医学部附属順天堂医院および練馬病院にて診療・研究に従事。産婦人科・小児科・小児外科の三科が一堂に会する “周産期カンファレンス”の中心メンバーとしてこれを発展に導いた。 2009年、国内の胎児診療を発展させるべく米国に留学し、2010年にはベルギーのルーベンカトリック大学産婦人科で臨床・研究に携わる。帰国後、湘南藤沢徳洲会病院に胎児科を開設。 2013年、よりきめ細かい胎児診療を行うべく胎児クリニック東京を開設。2015年に場所を移してFMC東京クリニックとして再スタートを切る。 ≫ FMC東京クリニック 胎児検査・診断専門クリニックの役割とは? 2017/7/19 中村 靖 先生(FMC東京クリニック) 妊娠・出産の高年齢化に伴い、今、「胎児検査・診断」を専門とするクリニックに来院する人が増えています。実際に受診者さんからはどのような相談が多いのか、FMC東京クリニックの中村靖院長にお話を伺いました。 胎児の首のうしろの皮下組織の厚みで染色体異常の可能性を予測 当院で診察・検査を望む患者さんには、ご本人や親族、最初に生まれたお子さんに遺伝的疾患があり、「次に生まれてくる子どもにも病気が出るのではないか」という相談で来られるケースもあるのですが、それよりも圧倒的に多いのが、ダウン症候群など胎児の染色体異常についての心配です。 胎児の染色体異常の可能性を調べる検査の1つにNT計測というものがあります。これは1990年代にイギリスの医師が報告した方法で、胎児の頚部を超音波で調べるもの。妊娠11週から13週の胎児の首の後ろの皮下組織の厚みを計測すると、その厚さに応じて染色体異常の可能性が高まることが知られています。 最初の報告から25年ほど経ち、欧米を中心に今や世界的に行われている検査ですが、日本では出生前検査の普及に反対する声を反映した厚生科学審議会からの見解もあって、ほとんど普及することなく、教育・研修も行われてきませんでした。 最初の評価に疑問と不安を抱いて来院する人も 本来、NTの計測には決められた方法があり、その基準に基づいて正確に測る必要があるのですが、正確に計測するにはそれなりの時間と技術を要します。しかし、超音波診断装置はどこの産科診療施設にもあり、胎児頚部後方の厚みは見ることができるので、正確ではないながらも厚みが目立つと判断されることは通常の妊婦健診の中でも十分にありえます。 「むくみが目立つから、赤ちゃんに何か障害が起こるに違いない」といわれて心配になり、当院に相談に来る方は多くいらっしゃいます。 残念ながら忙しい産科診療の中で、時間をかけてデータに基づいた説明をしてくれることはあまりなく、感覚的に心配が強くなる説明になってしまうことも多々あるため、なかには、妊娠の継続に関して絶望的な気持ちになってしまう人もいるかもしれません。 NT計測は病気を診断するものではなく、一時的な現象をみているものです。きちんと評価すれば、必ずしも染色体異常が出るというわけではなく、健康なお子さんが生まれる可能性が高いというケースもあります。 知りたい人に正しい知識を提供することが必要 当院は「遺伝カウンセリング」と「胎児検査・診断」の専門施設ですが、このように一般施設での評価や診断に疑問を持った妊婦さんの受け皿としての役割も担っています。 妊婦さんにとって「異常があるようだが何が原因なのかわからない」「どこで聞いたらいいかわからない」「高齢だったら異常が出るの? 出ないの?」など、「詳しいことがわからない」のが一番不安なことなのではないでしょうか。 経験豊富な医師や遺伝カウンセラーほかスタッフが正しい情報を提供し、その方にとって必要な検査を受けることができて、結果のその先はきちんと対処が可能な施設にリレーできる。これが、検査・診断ができるクリニックの責任です。将来的には全国に高い水準の検査や診断が受けられる拠点を増やし、妊婦健診の流れの中で、本人の希望に応じて出生前診断を専門施設で受けられるようになるなど、もっとポジティブな形で妊婦さんや家族の不安を解消できる体制づくりが必要だと思っています。 お話を伺った先生のご紹介 FMC東京クリニック中村 靖院長 臨床遺伝専門医 超音波専門医・指導医 産婦人科専門医 禁煙専門医 医学博士 日本人類遺伝学会評議員 元順天堂大学助教授(先任准教授)。順天堂大学医学部附属順天堂医院および練馬病院にて診療・研究に従事。産婦人科・小児科・小児外科の三科が一堂に会する “周産期カンファレンス”の中心メンバーとしてこれを発展に導いた。 2009年、国内の胎児診療を発展させるべく米国に留学し、2010年にはベルギーのルーベンカトリック大学産婦人科で臨床・研究に携わる。帰国後、湘南藤沢徳洲会病院に胎児科を開設。 2013年、よりきめ細かい胎児診療を行うべく胎児クリニック東京を開設。2015年に場所を移してFMC東京クリニックとして再スタートを切る。 ≫ FMC東京クリニック
2017.7.19
コラム 妊娠・出産