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精子の奇形率が高い男性不妊でも妊娠できる?

コラム 不妊治療

精子の奇形率が高い男性不妊でも妊娠できる?

「乏精子症、精子無力症、奇形精子で顕微授精を2回しましたが、受精できても胚盤胞まで一度も育ったことがありません。特に奇形率が高く、濃縮処理後でも80~90%です。」

2017.8.16

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精子の奇形率が高い男性不妊でも妊娠できる?


吉田 仁秋 先生(仙台ARTクリニック)




 





なみ平さん(33歳)からの相談


●奇形率の高い男性不妊でも妊娠できる?


乏精子症、精子無力症、奇形精子で顕微授精を2回しましたが、受精できても胚盤胞まで一度も育ったことがありません。特に奇形率が高く、濃縮処理後でも80~90%です。通院している病院からは「奇形率が高いのが一番難易度が高く、治療方法はない。当分は3週間ごとに精液検査をして、良い結果の時に凍結することを何度か繰り返して顕微授精をするしかない。長期戦になりますよ」といわれました。ちなみにこの病院ではTESEを行っているようですが、特にすすめられませんでした。30代半ばなので、数年もかけたくありません。もう途方に暮れています。



 



濃縮後の精子奇形率80~90%は高い割合?


2010年にWHOが精液検査における正常値を見直し、新たな基準を発表したのですが、それによると正常形態率で4%以上、すなわち奇形率では96%未満が正常となっています。

ご主人は濃縮処理をして、良い状態の精子をより分けてみても80~90%ということですから、やはり高い奇形率だと思いますね。

奇形精子には、頭が極端に大きい・小さい、2つに分かれている、首が折れているなど、いろいろなパターンがあります。このように形態的に異常な精子は受精能力がなく、仮に受精したとしても、その後、受精卵が正常に成長していくのは難しいといわれています。


奇形精子が増える根本の原因は未だ解明されていない


精子の奇形率が高くなる原因は遺伝や病気、喫煙や飲酒などの生活習慣などが影響しているのではないかという報告もありますが、根本的な原因は未だ解明されていません。

原因がわからないということは、なみ平さんの担当医の先生がおっしゃっているように、治療できる確実な方法や特効薬は現時点ではないということです。

しかし、何が影響しているのか、詳しく検査すればある程度わかる場合もあるので、気になるようでしたら男性不妊専門の泌尿器科を受診されてみてはどうでしょうか。

睾丸に腫瘍がないか触診したり、血液検査で染色体などを調べてみる。精子は3カ月ごとにフレッシュなものに更新されていきますが、その過程、つくられていく途中で何らかの影響によって異常なことが起きているかもしれません。


Lーカルニチンのサプリで改善が見られたケースも


直接精子に働きかけるわけではありませんが、体全体のコンディションを整えていくというのもひとつの手かもしれません。

そのために、一般的には乏精子症の人と同じように、精子の奇形率が高い人には漢方薬やビタミンB 12製剤を処方することがあります。どなたにも確実に効果があるとはいえませんが、なかには奇形率が下がるなど改善が見られる方もいるようですね。

当院では薬以外でできることとして、Lーカルニチンが入ったサプリメントをおすすめしています。Lーカルニチンという成分には、ミトコンドリアに力を与える働きがあるんですね。細胞のエネルギー工場であるミトコンドリアが元気になれば、細胞も賦活。そうなれば、造精機能にも良い影響を与えるのではないかと考えています。

生活習慣が乱れている人はきちんと改め、サプリメントなどを続けて体調を整えましょう。精子のDNAの損傷具合がわかる検査があるので、それを受けてみれば、どの程度精子の状態が改善されてきたか調べることもできると思います。


正常な精子が確保できれば妊娠の可能性は十分ある


なみ平さんはTESE(精巣内精子採取術)についても少し触れられていますが、TESEは睾丸にメスを入れる施術です。通常、射出精子があって、数は少なくても形態的に見て正常な精子が得られれば、患者さんにとって負担がかかる治療の提案・選択はしないでしょう。

正常な精子がほとんど採れない極度の乏精子症、無精子症という場合でないと、TESEの適応にならないというのが一般的だと思いますね。

前述したように、現状では精子の奇形率を劇的に下げる治療法はありません。ご主人の治療をメインに考えるのではなく、担当医の先生が提案されているように、正常な精子を使って顕微授精を続けていくことが妊娠への近道だと思います。

顕微授精では形態的な観察になりますが、胚培養士が正常な精子のみを選んで使っています。これまでの顕微授精では20個の採卵で受精2個と受精率が悪く、受精できても胚盤胞まで育たないということ。奇形の精子は使うことはないので、これが精子側の問題だけなのかどうかはわかりません。

先が見えなくて不安になるお気持ちはわかりますが、正常な精子が10%でもあれば顕微授精は十分可能ですから、悲観することはないと思います。奥さまの年齢がまだ33歳で、卵子が20個も採れているということですから、妊娠のチャンスはあると思いますね。

通っている病院や先生に疑問を感じていらっしゃるようですが、標準的な治療をされているので、転院を考える必要はないのでは。

長期戦になるか、次の顕微授精で結果が出るか、いつまでとははっきりいえませんが、ご主人もサプリメントなど、できることをしつつ、希望をもってこのまま今の治療を続けていただきたいですね。




TOPIC


TESEとは?
局部麻酔をして、睾丸の皮膚を1~1.5㎝程度切開して組織を採取。そこに精子細胞があるかどうか、病理的に調べる施術。検査がおもな目的だが、ケースによっては組織から精子を採取することもある。


 


Micro-TESEとは?
手術用の顕微鏡を用いて精巣内の精細管を見つけ、そこから精子を回収する方法。顕微鏡で観察しながら行うので通常のTESEよりも精度が高く、無精子症の人でも精子を見つけられることが多い。


 





 





吉田先生より まとめ


奇形精子症の根本的治療はありません。顕微授精を続けることが一番の近道に



 



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お話を伺った先生のご紹介





吉田 仁秋 先生(仙台ARTクリニック)


獨協医科大学卒業。東北大学医学部産婦人科学教室入局、不妊・体外受精チーム研究室へ。米国マイアミ大学留学後、竹田綜合病院産婦人科部長、東北公済病院医長を経て、吉田レディースクリニックを開設。2016年1月に「仙台ARTクリニック」として移転・リニューアルオープン。今秋、仙台で開催される日本IVF学会の準備に忙しい吉田先生。プライベートでは初孫のご誕生など、公私ともに充実した1年に。

≫ 仙台ARTクリニック


 


 


出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.35 2017 Autumn
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