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育毛剤を1カ月やめれば精子状況は変わる? 人工授精でチャレンジできますか?

コラム 不妊治療

育毛剤を1カ月やめれば精子状況は変わる? 人工授精でチャレンジできますか?

「先生からまだ人工授精の話はされていませんが、「34歳からでは遅いのでは?」と私は焦っています。」

2017.8.16

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小田原 靖 先生(ファティリティクリニック東京)




 





つっきさん(34歳)からの相談


●男性不妊だと望み薄でしょうか?


クロミッド®などで排卵を強く起こして仲良くしていましたができず、1年半経ったので不妊専門の医院に行きました。検査をして私には異常がありませんでしたが、主人の精子の状況が悪かったです。精子の量は1.5ml、濃度は悪くて300万/ml、運動率は普通で50%、前進率は40%。SMI値はやばくて2でした。正直、今の段階で金銭的につらいし、検査も痛くて怖いので、やれたとしても人工授精までと思っています。この精子状況で人工授精、いけますか? また、前回から1カ月後に2度目の精液検査を予定していて、担当医からは「プロペシア®をやめてみて」といわれて使用を中止しています。1カ月程度で精子の状態は変わるものですか? 3カ月後くらいじゃないと変わらない気がするのですが……。それから、亜鉛のサプリを飲ませていますが、効果はあるのでしょうか。先生からまだ人工授精の話はされていませんが、「34歳からでは遅いのでは?」と私は焦っています。



 



育毛剤を3カ月中止すれば精子の状態が改善する例も


AGA(男性型脱毛症)の治療薬であるプロペシア®をお使いということですね。すべての製品に当てはまるとはいえませんが、一部の育毛剤には数や運動性など、精子の状態を低下させるリスクがあるといわれています。

プロペシア®は発売する前、他の薬と同様に一応臨床試験はされており、100例ずつ程度だと思うのですが、同薬を飲んだ人と飲まない人の精液所見の追跡調査をしています。その結果、特に両者に有意差は認められなかったようですが、何千人、何万人を対象とした大規模な調査ではないので、本当に精子に影響がないのかどうかは何ともいえません。

実際には臨床上、経験上、また学会発表などで「プロペシア®を使用した後は精液所見が悪くなる」という症例報告は多数存在しています。しかし、ほとんどの論文は症例の報告だけで、医学的な検証はされていません。ですので、この薬の何が悪くて、どこに作用するかということははっきりしていないんですね。

そのなかで確かだといえるのは、摂取する量は関係がないということ。1日の投与量が少なくても多くても、精液所見が悪くなることが起こりうる。もう1つ、精子が新しく生成されるサイクルである3カ月の間、服用をやめれば改善するケースがあるということです。


精液の状況は変動するので検査は2回以上受けること


つっきさんは担当医の先生から「1カ月間服用中止」といわれたようですが、やはり3カ月は中止したほうがいいと思いますね。

育毛剤を服用していない場合でも、精液の状態は体調や禁欲期間などの影響である程度の変動がありますから、1回の検査で男性不妊だと評価するのは難しいでしょう。最低でも2回は検査を受けていただくことが必要だと思います。

また、「SMI値が低くてやばい」とありますが、SMIというのは機械を使って精子を分析する方法で、実際に精子の数を測っているのではなく、ある程度予測値として出すというものなんですね。

SMIはかなり簡便な検査法なので、精子の状況を100%評価するものではありません。精子形態検査など、もう少し精度の高い検査を併用したほうがいいでしょう。


再検査の結果も悪ければ泌尿器科や専門外来の受診を


人工授精が可能かどうかは、精子を洗浄してある程度良好な精子を得た後のクオリティとか、別のさまざまな評価も必要になってくるので、今の段階では人工授精がいいのか、それとも顕微授精のほうがいいのかという判断は難しいと思います。

まずは3カ月間育毛剤を中止して、もう1回精液検査を受けていただく。それで治療を要するような異常が認められなければ、引き続きプロペシア®を中止したうえでタイミング法や人工授精など、一般不妊治療でトライされてもいいと思います。

もし再検査の結果も悪いようであれば、育毛剤の影響だけではなく、他の不妊要因も考えられるので、一度、泌尿器科や男性不妊専門外来の受診を。

ホルモンの異常や精索静脈瘤、精路の炎症などがないかどうか、確認する必要があると思います。診断の結果によってはホルモン療法や外科的な治療、もしくは顕微授精に進むという選択になるかもしれません。


サプリは治療と併用していくというスタンスで


サプリメントの使用に関しては精子は構造上、酸化ストレスに弱いので、抗酸化作用をもつものはある程度使ってもいいかもしれません。
 ただし、亜鉛もそうですが、それだけ飲んで治療効果があるものはなかなかないので、「サプリメントはあくまでも治療と併用していく」というスタンスで使っていただきたいと思います。

生活習慣が乱れていれば改善も必要だと思いますが、無理をしすぎると今度はそれがストレスになってしまうのでほどほどに。「体にいいことは精子にもいい、体に悪いことは精子にも悪い」という程度で考えていただければいいと思います。




TOPIC


育毛剤は本当に精子に悪影響を及ぼす?
プロペシア®については「服用することで精子の数や運動率が低下する」という報告例は多数あるが、その影響度は個人によって差があり、良好な状態だった人がどの程度下がったかというデータはほとんどないのが現状。


 


ほかに精子の状態を悪くする薬は?
抗がん剤のほか、痛風の薬なども精子のDNAに影響を与えるといわれているが、どの程度ダメージが起こるのかははっきりわかっていない。


 





 





小田原先生より まとめ


育毛剤を3カ月中止して再検査を。改善されていれば問題ないと思います



 



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お話を伺った先生のご紹介





小田原 靖 先生(ファティリティクリニック東京)


東京慈恵会医科大学卒業、同大学院修了。1987年、オーストラリア・ロイヤルウイメンズホスピタルに留学し、チーム医療などを学ぶ。東京慈恵会医科大学産婦人科助手、スズキ病院科長を経て、1996年恵比寿に開院。治療以外でも患者さんのフォロー体制が整っている同クリニック。毎月開催されるセミナーのほか、疑問が残る場合は、専門のカウンセラーによる治療や遺伝、心の悩みの相談も随時受け付けています。最近、医師の入れ替わりなどがあったので、新しい先生のトレーニングも含め、スタッフ全員でベストな診療体制作りに努めているとか。プライベートではジムに通い、筋肉増強に力を入れているそうです。

≫ ファティリティクリニック東京


 


 


出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.35 2017 Autumn
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