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卵子の真実

コラム 不妊治療

卵子の真実

セミナーレポート160916

2016.12.12

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2016年9月16日に行われたジネコ 妊活セミナーより


「卵の真実」


 30歳の人は卵子も30年老化している


今は男女平等の時代ですが、赤ちゃんをつくるということに関しては、男女は平等ではありません。それぞれ役割分担が異なり、お互いの役割を尊重した上で同権でありたいという風に考えます。では、男と女はどこが違うか。一番大きな違いは卵巣と精巣という生殖器の働きや特徴だといえます。これをしっかり理解することで、様々なことがその本質からきちんと見えてくるでしょう。
精巣は精子をつくるところ。では、卵巣はどうでしょうか。卵巣は卵子をつくるところ? それは違います。卵巣では卵子をつくっていません。卵巣は卵子を保存しているだけの場所なんですね。
男性は80歳でも90歳でもずっと精子をつくり続け、射精されている精子、動いている精子はつねにつくり立てということになります。そのような意味で、精子は年をとりません。
しかし、卵子は年をとります。たとえば30歳の人が排卵したとします。その時排卵された卵子は、30年時間が経過した細胞ということに。30年経ってやっと出番が回ってきた細胞なんですね。このように卵子はそのまま古くなるという特徴があります。
精子には人の設計図である染色体の半分を卵子に持ち込み、卵子のスイッチをオンにするという役割があり、これだけしか仕事をしません。あとは全部卵子がやります。卵子、精子になる時に2本あった染色体は1本になりますが、その時、勝手に組み替えを起こしてから1本になります。組み替えが起きた精子の染色体、組み替えの起きた卵子の染色体が受精卵の中で組み合わさって、人の設計図になるんですね。
染色体をもとに受精卵の中ではどんどん人の部品がつくられていきます。受精卵というのは工場の役割があって、最初のうちはよそから材料が来ません。卵の中だけで仕事をしている。ですから、倉庫の役割もあるといえるでしょう。


 高齢になると妊娠率が下がり、流産率は上昇


女性が年をとると、工場、そして倉庫でもある卵子が古くなります。そうすると、工場の不良品が増える。学問的にいえば、染色体分離や遺伝子の発現等がうまくいかなくなってくるんですね。その結果、異常な細胞がどんどん増えていって、人の体の構成がうまくいかなくなります。途中でダメになるケースが増えてくる。つまり高齢になると、妊娠率がどんどん低くなり、流産率が跳ね上がってくるという現象が起きてきます。
妊娠率が下がることと流産率が上がるのは同じ現象です。妊娠反応より先にダメになったか、後にダメになったかだけのこと。実はこれはひどい話ではなく、お母さんの体を守る大事なしくみ。だんだん年をとってきて、妊娠・出産・子育てが体の負担になる頃には自然に妊娠しなくてもいいように、体を守っている大事なシステムなんです。
20代が高くて、30代からだんだん低くなり、38歳から43、44歳頃になるともうゼロになる、というのが妊娠率の一般的なパターンになります。逆に、流産率は年齢とともに上がっていきます。40歳を過ぎて妊娠すると半数は流産してしまうんですね。30歳くらいまでに赤ちゃんを産み終えていたら、流産率は20%以下。35歳で赤ちゃんが欲しくて妊娠したら、3回に1回は流産します。40歳だったら2回に1回、43、44歳だったら90%以上流産してしまうことに。体に良くないことをしたからというわけではなく、卵の本質からこのようなことが起きます。何かをすれば防げるというわけではありません。


 卵は1日30 ~40個減っていく


卵子は砂時計だとイメージしてください。砂時計の砂が落ちていくように時間が経つごとに、卵子の数はどんどん少なくなっていきます。生まれる前、お母さんのお腹の中にいる時に、1回だけ卵子のもとになる細胞が増えます。その数は500万~700万個。生まれた時にはすでに200万個に減っています。初潮が来た時には30万個程度に減少。生まれた時の200万個を基準に考えるのなら、35歳を迎えた頃には1~2%、2~3万個の卵子しか残っていません。これが卵子減少のしかたです。
卵子は細胞分裂をして増えることができません。原始卵胞は生まれる前が一番多いんですね。男性は1日に1000万個とか1億個とか、精子を毎日つくり続けています。女性は、赤ちゃんをつくることができるチャンスが最初は200万個あったのに、そこから増えず、逆に生殖年齢の頃には10分の1くらいになってしまいます。
卵子は毎月1個ずつなくなっていくのではなく、おおざっぱに計算すると毎月約1000個、1日に30~40個ずつ必ずなくなっていくんですね。生理や排卵の有無に関わらず、減少していきます。
砂時計の上部にある砂、つまり卵巣の中に残っている卵子の目安を卵巣予備能という風に呼んでいます。卵子のスタートは生まれる前。自分の年齢+αの古い細胞で勝負しています。原始卵胞という形で卵巣の中に保存されて、それがちゃんと排卵するまで成熟するのに約半年、あるいはそれ以上かかるといわれています。卵子は生理が始まってから育ってくるのではありません。半年前から育ってきた卵子の最後の1ヵ月の仕上げをしているのが、月経周期ということになります。
卵は原始卵胞からつねに一定の割合で成熟。ですから、ある時を除くと、卵巣の中にはいろいろな成熟段階の卵胞が見えます。
体外受精で卵巣を刺激すると何個か卵子が採れますが、採れた数に比例して妊娠率も高くなります。しかし、卵巣予備能の低い人に同じように注射を打って刺激をしても、採れる卵子の数は少ない。途中で増えるわけではなく、マキシマムの数はもう半年前に決まっているということなんですね。
若い人はたくさん卵があって、そのうち使えるものもたくさんあります。年齢が高くなってくると、卵の数も少ないし、使える卵も少ない。20代だったら体外受精でたくさん卵が採れて、しかもいい卵に出会える確率が高いのですが、30代、40代だとぐっと低くなってきます。女性が一番妊娠しやすいのは22歳くらいといわれています。卵子が老化し、どんどん数が減ってくると、妊よう性(妊娠できる可能性)はみなさんが思っている以上に急激に低くなっていく。どんなに健康に過ごしても、22、23歳を1とするなら、35歳を迎えた頃には半分になっていると考えていただいていいでしょう。


 生理があっても、いつの間にか妊娠力ゼロに


生理があるうちは妊娠できると思っている人も多いようですが、閉経する10年前からほとんど妊娠できない状態になります。毎月生理が来ていても知らないうちに妊娠する力はなくなっていきます。卵巣の中に残っている卵子が少なくなっても日常生活で気づくことはできません。なくなる直前でも自分ではわからないんですね。
前述したように、卵子は原始卵胞から成熟卵胞まで半年くらいかかって育っていきます。多くの卵胞が育っていくなか、人間の場合は最終的に1個の成熟卵胞が排卵するようになります。途中で捨てていくのは悪い卵というわけではありません。数を1個にするためだけで、良し悪しに関わらず、残りの卵を捨てていきます。この成熟卵胞が卵胞ホルモン、黄体ホルモン、女性ホルモンをつくり、月経周期をつくりますから、月経は正常に起こってきます。卵巣予備能が悪くなって原始卵胞が極端に少なくなったとしても、半年かかって成熟卵胞へ育つ卵胞があるうちは月経は正常。ですから、生理がおかしくなるなどの症状が出た時には、すでにほとんど妊娠できるような卵がない状態だということです。
赤ちゃんを希望されている方は、このような卵子老化や卵子減少の正しい知識や現実を知って、少しでも妊娠できる可能性が高いうちに妊活や不妊治療を始めていただきたいと思います。





浅田レディースクリニック 浅田 義正先生

名古屋大学医学部卒業。1993年、米国初の体外受精専門施設に留学し、主に顕微授精を研究。帰国後、日本初の精巣精子を用いた顕微授精による妊娠例を報告。2004年、浅田レディースクリニック開院。2006年、生殖医療専門医認定。2010年、浅田レディース名古屋駅前クリニック開院。

≫ 浅田レディースクリニック




 







 


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