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子宮内膜が薄いと診断された方に朗報!脂肪幹細胞移植による再生医療で胚の着床率改善へ

コラム 不妊治療

子宮内膜が薄いと診断された方に朗報!脂肪幹細胞移植による再生医療で胚の着床率改善へ

2018.6.8

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今、着床に大きな注目が集まっています!


この20年、生殖医療はめざましい進歩を遂げました。体外受精によって卵管因子が克服され、顕微授精によって男性因子が大きく改善しました。そして胚凍結の技術は、結果的に着床率の上昇をもたらし、ブラックボックスと言われた着床に光を当てました。ただ、世界的に広く行われているPGS(胚移植前に染色体の異数性を調べる検査)をもってしても妊娠継続率は約3分の2で、残り3割以上は、まだ出産までいきません。


 


最近この着床の世界で、子宮内フローラやERAといった特殊な検査が注目されています。また子宮筋腫や卵管水腫がなぜ着床障害をもたらすのか、子宮蠕動運動の方面からも研究が進んでいます。このように着床がようやく科学的に解明され、臨床応用されつつあるのです。






どうやっても子宮内膜が厚くならない方へ


こうした着床の問題のなかで、子宮内膜が菲薄化している状況は、一番やっかいで未解決のままでした。というのは、血流を改善するバファリンやバイアグラ、子宮内膜の成熟を促すG-CSFなどの治療法がほとんど無効だったからです。どうやっても子宮内膜が厚くならない方は決して少なくありません。


 


では、なぜ子宮内膜が薄くなるのでしょうか。不妊治療でやっと妊娠したと思ったら、流産してしまった方は多いでしょう。特に年齢が高い方は流産を繰り返してしまいがちで、明らかな子宮腔癒着症(アッシャーマン症候群)と診断されなくても、内膜が徐々に薄くなっていくことはよくあります。また出産後や頚管妊娠などで出血が止まらない時は、子宮動脈塞栓術は非常に効果的なのですが、その結果子宮内膜が十分に育たないこともあります。


 


そもそも子宮内膜は、生理のたびに剥がれて排出されるのに翌月新しく内膜が作られるという、とても神秘的なシステムを持っています。このことは、子宮内膜に自己複製能をもつ幹細胞が存在することの証明でもあり、このシステムに着目した福岡大学産婦人科宮本新吾教授、四元房典講師が中心となり脂肪幹細胞移植という治療法を確立したのです。


 


幹細胞には、大きく分けて胚性幹細胞(ES細胞)、組織幹細胞、iPS細胞の3つがあります。このうち組織幹細胞のひとつである脂肪幹細胞が注目される原因は、主に3つあります。第一に安全性。がん化する心配がなく、採取の痛みもあまりありません。次にコスト、そして最後に少ないダメージで量を確保できることがあります。こうした背景から乳房再建などの美容業界はもちろん、糖尿病、肝機能障害、自己免疫疾患などさまざまな分野への臨床応用が急速にすすんでいます。




脂肪幹細胞移植による画期的な治療法


現在、福岡大学の宮本教授らが取り組んでいるのは、子宮内に脂肪幹細胞を移植し、子宮内膜の血行を促し、子宮内膜の厚みを増加させることで着床率の改善をはかる再生医療研究です。脂肪幹細胞が有する血管新生の力に注目して研究が進められてきました。


 


子宮内膜が菲薄化したマウスの実験では、脂肪幹細胞移植を行ったマウスにおいて明らかに子宮内膜の肥厚が見られました。そこには血管新生が起こり、質の改善も見られ、内膜菲薄マウスでは妊娠がほとんど得られなかったのに対して、脂肪幹細胞移植マウスでは正常マウスと同様の妊娠が得られたのです。




安全性の確保は最も大事で、特定認定再生医療等委員会の承認、大学の倫理委員会、厚労省の承認を経て、昨年末から臨床応用が開始されています。


 


治療としては、臀部の脂肪から脂肪幹細胞を採取し、精製後に福岡大学で幹細胞を子宮内に注入、その後凍結しておいた胚を当院で移植するという流れになります。この治療法を行った1例目の女性では、それまで6mm未満だった子宮内膜が10mm以上になっていることが確認され、読売新聞に画期的な治療として掲載されました。




原因不明の着床障害にも効果がある可能性


脂肪幹細胞移植は、子宮内膜を厚くするだけではありません。強皮症のような自己免疫疾患がこの治療で軽快しており、その免疫改善のシステムは他の分野に応用可能であることで大いに注目されています。


 


形態的に良好胚を何度移植しても妊娠しなかった時に、胚の染色体異常だけでなく免疫的異常が関わっているかもしれません。この着床障害を改善する一つの方法として、子宮内膜への脂肪幹細胞移植は、将来的に常識になる可能性を秘めています。



 





古賀先生よりメッセージ


整形外科や美容外科などでは広く応用されてきた脂肪幹細胞による治療ですが、生殖医療の世界で初めて本格的な幹細胞移植が行われたことは、子宮内膜が薄い方だけでなく不妊に悩む方への大きな一歩。今後は免疫の改善による着床改善も見込まれます。

はじまったばかりの治療ですが、子宮内膜が薄いと診断され、不妊治療を続けておられる45歳までの女性であれば治療を受けることができます。良好胚を何度移植しても妊娠に至らなかった方も対象です。これまで有効な治療ができなかった患者さんにとっては、検討する価値のある治療法ではないでしょうか。




お話を伺った先生のご紹介

古賀 文敏 先生(古賀文敏ウイメンズクリニック 院長)


福岡県出身。大分医科大学(現・大分大学)卒業。久留米大学産婦人科学入局。久留米大学病院、国立小倉病院を経て2007年開業。日本産科婦人科学会専門医、臨床遺伝専門医。日本IVF学会理事、日本レーザーリプロダクション学会理事、日本生殖心理学会理事など。今年8月に東京ガーデンテラス紀尾井町にて第17回生殖バイオロジー東京シンポジウムの大会長として開催予定、着床をクローズアップし、今回の再生医療を福大宮本教授に講演してもらいます。

≫ 古賀文敏ウイメンズクリニック

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