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不妊治療のストレスで生きる希望を見失いました。

専門医Q&A 不妊治療

不妊治療のストレスで生きる希望を見失いました。

2018.7.17

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相談者: おこちゃんさん(会社員/33歳)


不妊治療中、うつ病持ちの妊娠希望者です。数ヵ月前から妊娠希望で心療内科の薬を中断しました。でも飲まないと、地の底を這いずって生きているような気分で、体も重く辛い日々の始まりでした。いつも人は何が楽しくて生きているのか、何が楽しくて働くのかわらず苦しむ毎日です。
それでも結婚し、子供を欲し、不妊治療が始まり、体外受精にステップアップし、辛い採卵後の痛みにも耐えてきました。仕事と治療の両立が困難で辞めたいと話し合い、夫が了承しても、いつ夫がクビになるかを考えると恐ろしくて、退職の決断が出来ずに今に至ります。
最近は一睡も出来ず、思考回路が混乱しています。それでも何か生きる希望のようなものを見つけたい願望があります。良いアドバイスがあれば、叱咤激励でも何でも構いません。よろしくお願いします。



うつ病が悪化している状態なのでしょうか?


「うつ病持ち」ということで薬物治療もされていたということですね。うつ病になると憂鬱な気持ちが続き、何に対しても無気力になったりします。気持ちのコントロールが思うようにいかず、つい周りの人に厳しく当たってしまうようなことも起こります。妊娠を希望してお薬を中止したということですが、病気の種類や症状によっては妊娠中や授乳中でも服薬による治療を続けることがあります。心療内科の先生がどのような考えで中止を判断したか、少し聞いてみたいところです。


 


もし、主治医の先生が「お薬なしでも乗り越えなければならない」「あなたなら大丈夫」という判断をされたのなら、もしかしたら純粋なうつ病とは少し異なるのかもしれません。例えば、まわりの人に対して、もっと優しくしてほしい、もっと甘えたいという気持ちが強すぎるというタイプの人がいます。もし、自分にも当てはまるようなら、不妊治療のストレスで心がいっぱいいっぱいの状態で、自分の気持ちを満たしてくれない夫に怒りの感情がわいてしまっていることが問題なのかもしれません。


 


他人に対するネガティブな感情は、うつ病を悪化させることがあります。逆に、うつ病の悪化によってネガティブな感情が起こりやすくもなります。余裕があるときのおこちゃんさんなら、「自分はとても辛いけれど、夫も同じように辛いのかもしれないな」などと考えたかもしれません。


 


 


現状を打開できますか?


十分に打開できると思います。強いストレスを抱えて行き詰まっている人は、「八方塞がりでどうにもならない」と思いがちです。しかし、おこちゃんさんは同時に「生きる希望を見つけたい」「叱咤激励でも何でも構いません」とも、力強くおっしゃっています。そのような気持ちは、苦境を乗り越えるための心の支えになります。うつ病治療の基本も「必ず回復する」ということを忘れないことです。「絶対良くなるから、それは忘れないで」というメッセージを伝えたいですね。


 


まずは、現状を再認識することだと思います。「うつ病といわれているのに、不妊治療にもチャレンジしている。とても辛い状況にあるのによく頑張ってやっている」と、誰かから声かけてもらえたら、それだけでも心はずいぶん軽くなるはずです。そんなことを言ってくれる人が誰もいないとしても、まずは他の誰でもない、自分自身が自分の頑張りを認めてあげてほしいです。世知辛い世の中ですから、自分を理解してくれる人に出会うことは少ないかもしれませんが、焦らないことだと思いますよ。


 


 


今後、具体的にどんなことをしていけばいい?


上にも書きましたが、心療内科の薬を中断された経緯はどうだったのでしょう。心療内科の先生と、今一度、話し合ってみてはいかがでしょうか。妊娠したら服薬が絶対にダメということはありません。不妊治療を続けていくためにも、また妊娠した後も、メンタルのコントロールはとても大事です。
それから、不妊治療と仕事の両立で心も体も疲弊しているように思えます。自分でも仕事を辞めたいと思い、夫もそれでいいと言っている一方で、辞める決断ができないままでいますね。いろいろ迷いがあるのだと思います。こういう時、きっぱり辞めてしまうとあとで後悔してしまうかもしれないので、後戻りできる形で一度お休みをとるのがよいと思います。


 


心療内科の治療を再開し、しばらく仕事を休んで体をいたわるようにしたら、気持ちもだんだん落ち着いてくるはずです。気持ちに余裕が出てきたところで、あらためて夫のことを考えてみてください。夫はなぜ「子どもももういらない、離婚だってすれば良い」と言ったのか。それは決して本音ではないはず。これまでずっと、おこちゃんさんの愚痴を受けとめ続けてきた人です。あなたを支えてあげたいと願いながら、それができないくらい疲れてしまっていたのかもしれません。


 


「うつ病がなかなか治らず、長引いている」というときは、それ相応の原因が見落とされているものです。自分の考え方や感じ方の癖、人との付き合い方のスタイルといったところに、解決の鍵が潜んでいることもあります。このような自分自身のことに目を向けることは、苦い思いを伴うこともありますが、いろいろなアドバイスを受け入れ、叱咤激励をエネルギーに変えようという気持ちを持てていれば大丈夫です。悪い状況が好転することだって必ずあります。まずは今の自分の状況を素直に受け入れ、少し休養も取り入れながら、またご夫婦のことや妊娠のことを考えていけたら良いと思います。


 


 


安田先生より まとめ


うつ病の治療法は1つではありません。シンプルな病態であれば薬を飲んで、心身ともに休養をとれば回復していきますが、置かれている状況や周りの人への感情などが絡んでくると治療法も一様にはなりません。様々な方向から解決策を探っていくことになります。信頼できる精神科医のもとで、自分に合った適切な形の治療を行っていけば必ず回復しますので、希望を持っていただきたいですね。


 


 


お話を伺った先生のご紹介

安田 貴昭 先生 (俵IVFクリニック)


浜松医科大学医学部卒業。日本精神神経学会精神科専門医・指導医、精神保健指定医、臨床心理士。埼玉医科大学総合医療センター・メンタルクリニック講師。俵IVFクリニックでは毎月第4木曜日、メンタルヘルス外来を担当。心の専門医として、不妊治療中や妊娠初期の患者さんのメンタルケアを行っています 。

≫ 俵IVFクリニック

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