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初めてでもよくわかる!秋山先生の不妊治療ABC|体外受精と顕微授精

コラム 不妊治療

初めてでもよくわかる!秋山先生の不妊治療ABC|体外受精と顕微授精

これから不妊治療を始める方に、秋山レディースクリニックの秋山先生が不妊治療の基本をお伝えしていきます。第4回目は、体外受精と顕微授精について詳しくご説明します。

2015.6.19

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STEP 4 体外受精と顕微授精の違いは?



相談者:よぺいさん(32歳)


体外受精か、顕微授精かの決め方今月、採卵を控えており、医師には顕微授精をすすめられています。理由は精子の数が少ないからで、悪い時は250万個/mL、良い時でも1000万個/mLくらいです。体外受精では受精しない可能性があり、顕微にすれば受精率が上がるとのこと。調べてみると、体外受精のほうは自力なので良好な精子が残るけれど、顕微授精は目で見て良さそうな精子を選ぶので、必ずしも良い精子とは限らない。そのため、奇形や着床しづらいこともある、と見かけました。採卵したのに受精しなかったら、「顕微にすれば良かった」と後悔が残る気がしますが、少しでも自然に近いほうがいいのかなとも思えます。



 20人に1人の赤ちゃんが体外受精で生まれている


体外受精や顕微授精は、一般不妊治療よりもさらに進んだ、高度な不妊治療です。体外受精胚移植は、卵巣から直接卵子を取り出し(採卵)、特殊な培養液の中で一定濃度の精子を加え(媒精)、受精した卵(受精卵)を培養後、子宮の中に戻す(胚移植)という治療法です。本来、女性の体内で起こる現象を、体外で人工的に行うこの治療を受けることに、不安や戸惑いをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。しかしながら、体外受精は、実施され始めてからすでに40年以上が経過しており、現在では、生まれてくる赤ちゃんの20人に1人はこの方法によって妊娠した赤ちゃんといわれています。一般的に、体外受精による妊娠率は約25%です。当院でもほぼ同様の成績ですが、患者さんの年齢や卵子の状態によって成績も変わってきます。では、どのような方が体外受精を受けるのに適するのでしょうか。その適応は次のようになっています。
体外受精の適応
●卵管因子
卵管の閉塞や卵管周囲の癒着が疑わしい場合
●男性因子
乏精子症や精子無力症などで、従来のタイミング法や人工授精では妊娠が難しい場合
●高齢
年齢が高いために、通常の治療法では妊娠が難しい場合
●抗精子抗体陽性
抗精子抗体陽性によって、人工授精でも妊娠が難しい場合
●原因不明
明らかな原因はないが、長年通常のタイミング法や人工授精をくり返しても妊娠が難しい場合


体外受精

 治療に臨む前にリスクや副作用についても理解しておこう


体外受精は、きちんとしたコントロール下で行えば安全な治療法ですが、まれに副作用が出ることもあります。主な副作用としては、①卵巣刺激により卵巣が腫れる、腹水が溜まるなどの症状(卵巣過剰刺激症候群)、薬に対するアレルギー、②採卵で針を使うことによる出血や炎症、③多胎妊娠のリスク、④子宮外妊娠、⑤自然流産、などがあります。医療側では、これらの副作用やリスクを防ぐために最大限の措置をとりますが、ゼロとはいえませんので、治療を受ける前に医師の説明をしっかり聞き、ご理解・ご納得のうえで進めていただきたいと思います。


 顕微授精は顕微鏡下で卵子の細胞質に精子を注入する治療法


次に、顕微授精についてご説明していきましょう。顕微授精は1980年代から行われている治療法で、顕微鏡下でピペットと呼ばれる細いガラス管で精子を吸い取り、卵子に精子を直接注入して受精させる方法です。卵子の透明帯に穴を開けて、精子が入りやすくする透明帯開孔術(PZD)や、卵子の透明帯と細胞質の間に精子を注入する(SUZI)などがありますが、現在行われているほとんどは、卵子の細胞質に直接精子を注入する卵細胞質内精子注入法(ICSI)とされています。顕微授精の適応となるのは、顕微授精以外の方法では妊娠の成立が見込めないケースです。学会では「男性不妊や受精障害など、本法以外での治療においては妊娠の可能性がないか、極めて低いと判断される夫婦」が対象になると定めており、具体的には以下のような場合が適応になります。
顕微授精の適応
●精子の状態が良くない方精子の数が少ない、精子濃度が低い、運動率が悪い、奇形率が高いなど、精子側に受精しにくい原因がある場合。総運動精子数が100万個以下の場合は重症の男性不妊症と考え、顕微授精の適応になる。また、無精子症の方で、精巣上体から精子が採取できた場合、顕微授精を行うことになる。●体外受精で受精がうまくいかなかった方
過去に行った体外受精で受精しなかった、あるいは受精率が低くてうまくいかなかった方も顕微授精の対象となる。また、抗精子抗体がある方も適応となることがある。●その他
前述のケースに当てはまらないものの、受精の確実性を上げる目的で次のような場合にも顕微授精を行うことがある。
・採卵できた卵子の数が少ない場合
・女性の年齢が高い場合
・凍結保存した精子を用いる場合など


顕微受精

体外受精と顕微授精の詳細な妊娠率の比較データはありませんが、精子を確実に卵子の細胞質の中に入れることで、より受精がしやすくなることはあるのではないかと思います。現在、顕微授精によって生まれた赤ちゃんは年間数千人といわれており、臨床の現場では特に大きな危険をともなう治療とは考えられていませんが、赤ちゃんの奇形のリスクが高くなるという報告もあり、今後さらなるデータの集積が待たれるところです。体外受精と顕微授精、半分ずつ行う方法もあるので、どの方法をとるのかは医師と相談したうえで選択されてはいかがでしょうか。

 


卵巣刺激の種類


患者さんの状態や過去の治療歴、先生のお考えなどによりさまざまな方法がありますが、大まかに分類して以下の5つの方法があります。



































GnRHアゴニストロング法
採卵周期の生理約7日前よりGnRHアゴニスト(点鼻薬)を開始し、生理開始後よりその後FSHやHMGの注射を行う。ホルモン値や超音波検査で卵の発育が一定の条件に達した時点でHCGの注射(夜間)を行い、その34~36時間後に採卵する。十分に脳からのホルモンを下げてから卵巣を刺激するため、質や発育状態の揃った卵ができやすいと考えられるが、必要な注射の量が多く、卵巣過剰刺激症候群のリスクが高くなる。また高齢の患者さんや卵の数の少ない患者さんには不向きである。
GnRHアゴニストショート法
採卵周期の生理開始日からGnRHアゴニスト(点鼻薬)を開始し、その後FSHやHMGの注射を行う。ホルモン値や超音波検査で卵の発育が一定の条件に達した時点でHCGの注射(夜間)や
GnRHアゴニストの点鼻を行い、その34~36時間後に採卵する。必要な注射の量はロング法に比べて少なくて済む場合が多い。卵胞の発育が不揃いになったり、採卵前に排卵が起こってしまう可能性がある。
クロミフェン法(FSH/HMG併用)
生理3日目よりクロミフェンを内服し、その後、必要に応じてFSHやHMGの注射を行う。ホルモン値や超音波検査で卵の発育が一定の条件に達した時点でHCGの注射(夜間)やGnRHアゴニスト(点鼻薬)を行い、その34~36時間後に採卵する。ロング法やショート法に比べて刺激がマイルドになり採卵数は減るが、卵巣過剰刺激症候群のリスクが低くなったり、患者さんの肉体的・経済的負担が軽くなるメリットがある。
アンタゴニスト法
多くの場合、FSHやHMGの注射のみ(クロミフェン併用の場合もあり)で卵巣刺激を行い、卵胞が一定の大きさになった時点でGnRHアンタゴニスト(排卵の引き金が起こるのを防ぐ注射)を併用していく。ホルモン値や超音波検査で卵の発育が一定の条件に達した時点でHCGの注射(夜間)やGnRHアゴニスト(点鼻薬)を行い、その34~36時間後に採卵する。卵巣過剰刺激症候群のリスクが著明に低くなるとの報告がある。
自然周期法
一部の施設で行われている方法で、まったくの自然周期あるいはわずかなFSHの注射のみで自然な排卵に合わせて採卵する方法。肉体的な負担が最も軽い方法と考えられる。

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