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受精が失敗したのは卵の質が悪いから?それとも培養士の技術不足?

コラム 不妊治療

受精が失敗したのは卵の質が悪いから?それとも培養士の技術不足?

「失敗というのは単に受精しなかったということ?それとも培養士さんが失敗したのか?」

2015.11.9

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受精が失敗したのは卵の質が悪いから?それとも培養士の技術不足?



相談者:ぬこぬこさん(43歳)


卵の質の問題だけでしょうか
先日、初めて体外受精を行いました。9個採れて初期胚を1個戻し、そのほかは培養を続けていただきましたが、1つも胚盤胞に育ちませんでした。年齢が高いことも原因ではあると思いますが、ちょっと気がかりなことがあります。採卵の翌日に培養士さんとお話しした時、「9個採卵して、すべて顕微授精をしました。そのうち1個は失敗したので、8個受精しました」といわれました。失敗というのは単に受精しなかったということ?それとも培養士さんが失敗したのか?私の通っている病院は不妊治療専門で、県内随一といわれているのですが、培養士さんがみんな若くて、「経験が浅いのでは?」とちょっと不安に思っています。



 ぬこぬこさんは培養士からの「失敗しました」という言葉が気になっているようですが。


堀川先生:受精しなかったことを表しているのか、技術的に問題があったのか、本当のところ、どんな意味でおっしゃったのかはわかりません。もしかしたら、ぬこぬこさんは失敗=医療ミスのようなニュアンスで受け取ってしまったのかもしれませんね。
しかしおそらくこれは、未受精か受精卵が途中で変性してしまった例ではないかと思われます。高齢の方、若い方にかかわらず、もともと弱い卵は壊れてしまうことがあるので、9個のうち1個くらいの割合で受精卵が変性するのは珍しいケースではありません。
疑念や不安を持ち続けているようでしたら、どこが失敗したのか、どのような受精状態だったのか、ドクターや培養士に直接説明を求めてはいかがでしょうか。


 その後、8個の受精卵のうち2個戻し、1個は3前核胚で、残り5個のうち2個は成長が止まり、3個はグレード2の胚で、「多くて2~3個、少なくとも1個は胚盤胞まで育つかもしれません」と培養士から説明を受けたとのこと。しかしながら、結果は全滅。そんなに急激に成長は止まるのか、予測と外れるのか、ということにも疑念をもたれているようです。


堀川先生:残念ながら、そのようなこともあります。胚盤胞になる段階というのは卵の質が一番問われるところ。そうなるとやはり、年齢の高さが影響してしまうんですね。当院の胚盤胞になる確率を調べたら、41、42歳だと全体の4割程度、43歳だと約3割。3割というと、10個のうち3個しか胚盤胞に育たないということです。これが0だから技術的な問題かというと、施設の環境によってないとはいえませんが、患者さんの卵側の要因が大きいのではないでしょうか。高齢になると初期胚までは分割しても、最終段階の胚盤胞まで到達するのは大きなハードルが。そのような現実も認識していただきたいと思います。
胚の成長予測や患者さんへの対応に関しては、当院のケースについて、培養士からご説明しましょう。


培養室主任・藤村佳子さん:当院の場合、体外受精や顕微授精の後、受精の結果は培養士から患者様にご説明するのですが、その時に、ぬこぬこさんが治療を受けている施設と同様に「何割くらいの胚が胚盤胞になりそうです」というお話もしています。ただし、あくまでもそれは統計的なデータであって、患者様個々の条件によって異なってくるということも同時にお話ししているんですね。体外受精が初めての方だと「卵子が多く採れて受精すれば、必ず胚盤胞になるはず」と思っている方もいらっしゃるので、そのような時は「全部胚盤胞になるのは難しいですよ」という現実もきちんとお伝えするようにしています。


 では、「培養士の技術に問題があったわけではない」と思っていいのでしょうか。


堀川先生:これまである程度症例をこなしている施設なら問題ないと思います。胚培養士の教育システムもしっかりしているでしょうし、ぬこぬこさんが疑念を抱いている意味での“失敗”を繰り返していたら、施設の評判にも関わってしまいますよね。
当院でも培養士の教育は徹底しています。当然、新人のスタッフも入ってきますが、やみくもに担当させるのではなく、知識習得や手技のトレーニングをして先輩たちの指導のもとで症例を積み重ね、ベテランの培養士と技術に大差ないと認定されるまで患者さんの大切な卵を任せることはありません。それに培養士は1人ではなく、つねにチームで仕事をしているので、1組のご夫婦の場合でも複数の人間のチェックが入ります。
しかし、ぬこぬこさんのように説明足らずで患者さんを不安にさせてしまうことがあるかもしれないので、その点は医師も培養士もつねに気を配らなくてはいけない部分だと思います。


 1つも胚盤胞にならなかったことにショックを受けているようですが、今後、どのように治療をしていけばいいですか。


堀川先生:現在の治療方針でも問題はないような気がします。複数卵子が採れれば、培養して胚盤胞まで育つことを期待したいと思いますが、培養液という環境が受精卵にとって本当にベストなのかはわかりません。体内の環境をまねているものなので、人によっては何年も胚盤胞まで到達しないというケースも。それで初期胚で戻してみたら妊娠したという例も少なくないので、現在のやり方のように初期胚でも戻す形はあると思いますね。
また、1回目から顕微授精でトライされていますが、この精子の所見なら、「振りかけ法」ともいわれる通常の体外受精でもいいのでは。卵子に針を刺すとそれだけストレスをかけてしまいますから、特に高齢の方の卵子だと負担がかかって受精がうまくいかないことも増えるかもしれません。妊娠率においてはあまり差がないので、なるべく自然な形での受精を選択されてもいいかと思います。



高崎ARTクリニック 堀川 隆 先生
琉球大学医学部卒業。国立国際医療センター、国立成育医療センター不妊診療科勤務を経て、2009年12月より高崎ARTクリニック院長に就任。国際医療センター勤務時より内視鏡手術・生殖補助医療に従事。成育医療センターでは難治性不妊治療・加齢と不妊についての研究に取り組む。培養士の藤村さんによると、堀川先生は繊細なくらい気遣いされるとか。「みんな疲れているな」と感じたら、お昼休みにこっそりケーキを買ってきて女性スタッフを感激させているそうです。




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藤村 佳子


1%でも妊娠の確率を上げられるよう、日々、新たな方法を模索しています


培養室 主任 藤村 佳子さんさん




当院の培養室には8人のスタッフがいるのですが、患者様から見たらベテランでも新人でもプロの培養士。つねにそのような目で見られるので、スタッフ全員が一定した技術レベルや知識をもち、情報を共有するようにしています。
ラボの環境やスタッフの教育を徹底することはもちろんですが、私たち培養士の最終的な目的は患者様が妊娠して出産できる卵を戻すということなので、より良い胚をつくるためにさまざまな検討も。培養液の研究など、1%でも受精や妊娠の確率が上がる方法があれば、きちんと検証したうえで柔軟に取り入れるようにしています。
卵子や精子の微妙な変化、声なき声を敏感に受け止めて日々真剣に臨んでいるので、安心して大切な卵を任せていただきたいと思います。





出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.27 2015 Winter
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