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重度乏精子症で治療中。結果が出ないのですが、転院はもったいない?

コラム 不妊治療

重度乏精子症で治療中。結果が出ないのですが、転院はもったいない?

2016春p50

2016.2.22

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重度乏精子症で治療中。結果が出ないのですが、転院はもったいない?



相談者:匿名さん(35歳)


転院すべきでしょうか?
主人が重度の乏精子症で、男性不妊で有名なクリニックに通っています。AMHの値は1.83ng/mlで、採卵すると10個は採れ、成熟卵です。今まで二段階胚移植、2個戻し、スクラッチング、不育症や子宮内膜炎のチェック、子宮鏡、子宮卵管造影検査などもしましたが、何もひっかからず。通院歴は1年半で、毎月必ず通院してきました。しかし、出血してしまい、胚移植キャンセルの周期が2度あったり、すべて受精はするものの胚盤胞に至らなかったり、反応がないのが続いています。残り3本の凍結精子があり、今の病院で採卵しても同じ結果しか得られないのでは?と、転院を考えています。今の状況で転院するのはもったいないですか?



 ご主人が重度の乏精子症とのこと。現在はMD-TESEによって回収された精巣
内精子を使って治療を行われていますが、転院を希望されています。先生からご覧になって気になる点などあるでしょうか?


中村先生:基本的に当院では、射出精液に精子が見つかれば、それを用いての顕微授精を行っております。この方の場合も射出精子で顕微授精し受精、分割までしているので射出精子で特に問題なかったのではないかと思います。重度の乏精子症の場合、MD-TESEで採取した精巣内精子のほうがDNAの断片化がより少ないというデータも報告されていますが、MD-TESEの適応に少し疑問が残ります。次に採卵数が10個なので、卵巣の反応性自体は問
題ありません。ただ、胚盤胞の形成率が低いと思います。その場合に当院で行っている工夫としては、培養液の変更です。培養液の組成は製品によって微妙に違うので培養液の変更で胚盤胞形成率が向上する場合があります。
培養液を変更しても胚盤胞形成率が低い場合は、初期胚の段階で移植していくのも方法の一つかと考えます。長期に渡る体外での培養が胚細胞にとってストレスになる場合があり、胚盤胞移植が適さない症例も存在します。初期胚移植も試してみる価値はあるでしょうね。


 受精、培養、移植の段階で、すでにあらゆる高度な治療法を試みておられるのですが、ほかに試してみるべきことがありますか?


中村先生:高倍率の顕微鏡を用いた顕微授精(IMSI)など、かなり高度なことをされているのですが、どこまで有効なのかは疑問が残ります。胚盤胞形成率の低さを考慮すると技術的な問題もある
可能性があります。
治療の状況が少しわかりづらいのですが、その他に気になる点としてはホルモン補充周期の胚移植で、子宮内膜の作成時に出血が頻発し移植のキャンセルが起こっていることです。細かいプロトコールがわからないので何ともいえませんが、通常のホルモン剤の量であれば、あまり起きることではないのでひょっとしたらエストロゲンの量が多い可能性もありますね。子宮内膜の調整法を見直してみる必要があります。患者さんの体質によってはホルモン補充周期が合わないケースもあります。ホルモン補充周期で結果が出ず、自然周期でうまくいく症例も多数経験しているので、自然周期による胚移植も考慮に入れたいと思います。低プロラクチン血症の治療、不育症や子宮内膜炎のチェックなどかなり高度な検査や治療をされていますが、これらは特に必要ないのかなと思い拝見しました。プロラクチンの値が極端に低い場合は甲状腺機能
の異常も疑われますので、甲状腺機能の検査も考慮するべきでしょう。
もし現在の治療に疑問を感じられるのなら転院するのも一つの選択肢かと考えます。


 転院すると今までの治療がもったいないのでは?とも感じていらっしゃるのですが、治療や検査がムダになってしまうようなことがありませんか?先生から今後のアドバイスをお願いします。


中村先生:これまでの治療に要した時間や費用を考えて「もったいない」と思われるのかもしれませんが、決して無駄にはならないと思います。ただ一つ酷なことを言いますと、転院したからといって必ずしも治療がうまくいくわけではありません。要はご自身が納得されるかどうかです。
不妊治療の場合、必ずしも治療=積み重ねではありません。1回1回、1周期1周期リセットされて、また新たな治療が始まるのです。不妊治療ではちょっとした手法の違いや差が思わぬ結果を生み出すこともあります。その施設が使っている培養液、顕微授精の方法、ホルモン剤の使い方など、全て微妙に異なります。
男性不妊に関しては、MD-TESEで採取された凍結精子も移送が可能ですので、無駄になることはありません。当院でも転勤などで、凍結精子や受精卵を移送したり受け入れたりすることもよくあります。今まで受けられた検査結果も、紹介状にまとめてもらうか、画像やコピーを貰うと転院されてもこれらの情報も無駄にはなりません。
今後はご自身が納得できる病院を選ぶことが妊娠への近道になるのではないかと思います。





なかむらレディースクリニック 中村 嘉宏先生

大阪市立大学医学部卒業。同大学院で山中伸弥氏(現CiRA所長)の指導で学位取得。大阪市立大学附属病院、住友病院、北摂総合病院産婦人科部長を経て、2013年より藤野婦人科クリニック勤務。2015年4月なかむらレディースクリニック開院。最近、アウトドアブランドのショップで、かわいい携帯用野点セットを購入された先生。40歳で始めた庸軒流の茶道のお稽古は、多忙な先生にとって季節や自然を感じる至福の時間に。「いつか万博公園の桜の下で野点をするのが夢」なのだそうです。

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坂元 綾子さん


高い技術力と共にスタッフ一丸のチームワークが最大の強みです


培養室長 駒 由佳さん




体外受精を行う施設において培養室は要です。そして、ドクター、ナース、事務など、クリニック内のスタッフ全員の連携がしっかり取れたとき、初めて培養室の力が最大限に発揮されます。現在、培養室には13名のスタッフがいて、そのうち顕微授精ができる胚培養士は6名。当院の場合、自然周期治療が中心のため、採れる卵の数が少なく、患者さんの平均年齢も39.3歳と高いので、より良い結果を得るためには一人一人の高い技術力が必須です。そのため、訓練期間を長くとり、厳しい技術試験をクリアした者だけをそれぞれの作業に従事させています。前院長の藤野先生から「人を大切にする」という良き伝統を引き継ぐ当院は、スタッフ一丸のチームワークが何よりの強み。培養をパターン化せず、スタッフそれぞれの得意分野を決めて特化させながら、提供できる技術を上げる工夫を常に模索しています。





出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.29 2016 spring
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