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妊活と美容は表裏一体!生活習慣を見直して妊娠力アップ

コラム 不妊治療

妊活と美容は表裏一体!生活習慣を見直して妊娠力アップ

セミナーレポート

2016.10.25

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2016年7月10日に行われたジネコ 妊活セミナーより


妊活と美容は表裏一体!生活習慣を見直して妊娠力アップ


 不健康だと体が子づくりをやめてしまう!?


私は新人医師の頃を含めて、36年近く不妊治療に携わってきました。始めた当初、不妊カップルの割合は全体の10%程度といわれていましたが、今は20%と倍近くの割合に。なぜ増えたかというと一つは晩婚化で、女性が高齢になるほど卵子の老化が深刻となるからです。もう一つ、これは15年ほど前に気づいたのですが、不妊の大元の原因は不健康から来ているということ。男女ともに、年齢がまだ若くても生活習慣が悪くて健康を害している人が増えてます。

実は、不妊も不健康も老化も肌の不調も根底の原因は同じもので、我々のエネルギー源のもっとも中心の代謝が関係しています。逆にいえば、その部分を改善して健康になれば、妊娠もアンチエイジングも美肌も叶えられるということです。

生き物には2つの命令があります。1つは「生きながらえろ」という個体保存本能。もう1つは「子どもをつくれ」という生殖本能です。どちらも大切なことですが、これには優先順位があり、最初に選択されるのは生命を保持することです。まず生き残って、それから子どもをつくれということです。従って、体調が悪くなった時に体は何をするかというと、生きるのに関係しない生殖を切り捨て、なるべく省エネして生きることに全エネルギーを使おうとします。つまり、不妊がおきます。

おそらく全体の85%くらいの人は健康で子どもが自然にできる。しかし、健康のレベルをある程度割ってしまうと不妊が始まり、その状態がさらに進むと病気が始まるのです。すべての不妊が不健康から来るとはいいませんが、不妊の7~8割の人には不健康というバックグラウンドがあるのではないでしょうか。
そこを修復しない限り、不妊症の様々な治療薬も十分な効果を発揮できません。他の施設でクロミッドという排卵誘発薬を数年使って妊娠しなかった患者さんが当院に転院されてくることがありますが、しばしば3ヵ月以内に同じ薬を使って妊娠に至ります。なぜかというと、生活習慣を正して健康になるよう指導したため、前に効かなかった薬が効くようになったからです。
不妊治療の主役は高度な技術ではなく、患者さん自身です。船に例えたら、医師は船頭で重要ですが、エンジンであるみなさんが不調では、船はよく動きません。


 不妊をはじめ、糖代謝は健康に深く関わっている


では、不健康な状態はなぜ起こるのでしょうか。科学的にもう少し詳しくお話しします。不健康になる原因には、大きく分けて「遺伝的素因」「加齢」「悪い生活習慣」の3つの要素が影響しています。これらがあると体の中で何が起こるかというと、インスリンという大切なホルモンが効かなくなってしまいます。それをインスリン抵抗性といいます。

体のあらゆる細胞はインスリンの命令で糖を取り込んでミトコンドリアで燃やし、そのエネルギーを使って生命活動をしています。インスリンが効かなくなると様々な臓器がうまく働かなくなり、健康に支障をきたします。糖尿病、高血圧、脂肪肝、高脂血症など、いわゆる成人病と呼ばれる病気やがんなどのほか、脳で効かなくなると脳神経の機能が低下してうつになったり、キレやすくなったり……。不妊に関連したものでは、卵巣の細胞でインスリンが効かないと正常に卵を発育できなかったり、子宮内膜で起これば着床の準備がうまくいかなくなります。最もよくある不妊原因のひとつであるPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)は、インスリン抵抗性との因果関係がよく証明されています。

インスリンと健康の関係について、糖尿病を例にして説明します。今、40代の3人に1人が糖尿病、もしくはその予備群といわれています。この病気はインスリンが効かないことから始まりますが、効かないと筋肉でエネルギーを出せず、体温保持に問題をきたすため、膵臓が無理をしてインスリンをたくさん分泌するようになります。出せるうちはいいのですが、そのうち膵臓もくたびれて分泌できなくなります。そうすると、まず食後の血糖値が上がり、その後、空腹時も上がるようになります。

高血糖が起こると、体の中に「AGE」という物質が形成されます。これはたんぱく質と糖が結合してできる終末糖化産物というもので、非常に危険な物質です。体内のさまざまな所に沈着し、活性酸素を増やし、これがさらにAGEを生み出し悪循環の末、組織障害が進みます。AGEは老化の原因物質で、AGEが貯まって細胞の機能が悪くなることが老化現象です。
やっかいなことに、このAGEは一度できるとなかなか体から消えていきません。AGEの形成→活性酸素の増加→インスリンの感受性と産生の低下→血糖上昇→AGEの形成と、悪循環に陥ります。

多くのAGEには茶色いという特徴があり、豚の皮膚にAGEを貯める実験を行うと、茶色くくすんできます。ヒトの肌にも同じことが起こると考えられ、シミやそばかす、くすみはAGEが原因の1つといわれています。
このように不健康や老化、不妊、加えて肌の不調にも糖代謝が深く関わっており、これを調整することで、どの場合にも良いことが得られるのです。


 AGE対策として期待される「ヒシ抽出エキス」


糖代謝を改善して、不妊を解消する方法ですが、インスリン抵抗性については25年ほど前にPCOSに対する特効薬としてメトフォルミンが有効と分かり、これを投与すると妊娠率も着床率も上昇しました。当院の体外受精でも、反復不成功者の20%に対して有効です。

次に、食後血糖値を改善したら体外受精治療成績が良くなるのではないかと考え、数年前に出た糖尿病の新薬「シタグリプチン」を使用しました。これは食後の高血糖だけを下げる薬で、ある種の人には妊娠率の向上が見られました。

また、AGEを貯めると重度の不妊症になるため、AGE形成そのものにも着目しました。強いAGEの形成抑制と分解作用を併せ持つヒシ抽出エキスを、ART反復不成功の高齢不妊の患者さんに説明と同意のもと投与しました。
投与した32例(平均42.2歳/84%が40歳以上)のうち、24例(75%)で卵の形態が改善、5例(16%)が不変、3例(9%)が不良でした。臨床妊娠が7例(22%)、継続妊娠・出産が6例(19%)でした。国内の42歳のARTによる平均出生率は3.6%ですから、非常に高い効果が出たといえます。ただし、良くない結果の人もいましたので現在、ヒシ抽出エキスの有効性確認と有効な人の判別に関して、本研究を進めております。


 夫婦で生活習慣を見直して妊娠力アップ!


科学技術や医学が格段に進歩したとはいえ、加齢を止めたり、DNAを変えることはまだできません。今、私たちがコントロールできるのは生活習慣だけ。運動・睡眠や体重、飲酒や喫煙、心の持ち方、食事など、以下のポイントを参考に、少しでも改善していくように心がけ、妊娠に近づく努力をしましょう。



生活習慣の重要ポイント


1. 歩く:毎日、連続45~60分、昼間に
2. 体重の適正化:BMI=体重(kg)/身長(m)×身長(m) 19~25に
3. 楽しく:ストレス対策、仕事量、人間関係
4. 良く寝る:11時前就寝、7~8時間
5. 飲酒の間隔をあける:3日以上
6. 禁煙:0でないとだめ
7. よい食事:新鮮, 偏らず,3回/日,ちゃんと作る



ポイントを7つ上げましたが、なかでももっとも重要なのは3つめの「楽しく過ごす」ということ。健康でいるために精神面は極めて重要です。
精神科の医師が行った有名な実験があります。あるグループには怖いフィルムを、もう一つのグループには楽しいフィルムを15分間見せました。見た後に採血してインスリン抵抗性を調べると、前者は悪くなり、楽しいフィルムを見たグループの人たちはインスリンの感受性が良くなっていました。たった15分間でも違いが出るのです。毎日楽しく幸せに過ごすことが健康に必須であることは容易に納得できます。

不妊に悩むとますます不妊になります。人生を楽しく生きましょう。子供は、健康で幸せなカップルにできるのです。





ウィメンズクリニック神野 神野 正雄先生

慶應義塾大学医学部卒業、慶應義塾大学病院、杏林大学医学部産婦人科助教授等を経て、平成16年、ウィメンズクリニック神野院長就任。平成23年、世界体外受精会議記念賞受賞(卵巣機能障害に対する新しい治療戦略 〜終末糖化産物 の重要性〜)難治性不妊症に対して独自の考え方と方法で、高い実績を挙げている。




 






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