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顕微授精しても 結果が出ません。 精子か卵子の質のせい?

コラム 不妊治療

顕微授精しても 結果が出ません。 精子か卵子の質のせい?

2016冬 p54

2016.11.1

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顕微授精しても 結果が出ません。 精子か卵子の質のせい?



相談者:さん(42歳)
受精卵の発達について
顕微授精を4回くらいしていますが、なかなか妊娠できません。1回の顕微授精につき1個くらいは胚盤胞になりますが、移植しても妊娠に至りません。卵子残存値は2.25と年齢の割には高いほうらしく、毎回、卵子は15 〜16個採れて8割は受精しますが、胚盤胞に至らないものは3日目以降に発達が遅れてくるようです。夫は54歳で自然妊娠には精子の量が少なく、顕微授精には十分な量で、産婦人科からの資料には不妊要因は男性不妊と書かれていました。卵子か精子の質が悪いのでしょうか? だとしたら、どうしたら質は良くなるのでしょうか? また「よもぎゅっと」というホットナプキンをつけています。温めすぎだったのでしょうか? さらに、毎週高速バスで長野〜新潟間を3時間半かけて週末婚しています。バスの振動や体への負担が原因でしょうか?



 相談者のご主人は54歳で、男性不妊の疑いがあるそうです。これが要因なのでしょうか。


山口先生:加齢に伴う卵子の質の低下はよく知られていますが、近年、精子の質も加齢に伴い低下するのではないかといわれています。男性、女性ともに低下していくのは仕方がありません。
卵子を活性化する精子の能力について、このような報告があります。独協医科大学の岡田弘教授の研究によると、精子の能力は30〜40歳を境に低下するというのです。マウステスト(検体精子をマウスに顕微授精して卵子の活性化を調べる)では、不妊症の男性(=精子が老化する男性)は、精子の受精能力が年齢とともに低下するのに対して、子どもがいる男性の精子は、年齢に関係なく高い受精能力を示すそうです。精子が老化しないタイプの男性もいるという見地もあります。
相談者のご主人の場合、精液の所見をWHOの2010年の基準値で比較すると、精液量は1.5ml、精子濃度は1500万 /ml、運動率40%、正常精子形態率4%でクリアしています。また、顕微授精で受精を確認できていますから、男性因子については加齢の影響を否定できないにせよ、克服できているように思います。しかし、本当に加齢が精子に影響し、胚盤胞に至らない一因として示すには、今後の検証を待たなくてはなりません。


 それでは、卵子の質が影響しているのでしょうか。


山口先生:40代前半の女性であれば、胚盤胞の到達率が低下するのは仕方がないと思います。また移植しても妊娠に至らないとのことですが、当院のデータでは、見かけが良好な胚盤胞を移植した場合、妊娠成立するのは半数程度です。また、文献報告からは染色体が正常な胚盤胞は35歳未満で56%、35~37歳で46%、38~40歳で33%、41~42歳で19%、43歳になると13%といわれています。見かけが良好な胚盤胞でも着床前診断してみると、染色体が正常である割合は年齢とともに低下していきます。


 卵子の質を上げる方法はあるのでしょうか。また、今後の治療についてアドバイスをお願いします。


山口先生:卵子の質を良くする方法は、サプリメントや食生活、生活習慣の改善を試みる程度としか申し上げられません。また、ご心配されているホットナプキンは継続いただいてかまいませんし、高速バスの移動も体への問題はありません。
これからの治療について、考慮できることは、卵子残存値(AMH)が2・25ng/mlと高いことです。先述のように、卵子の質について加齢の影響は否めませんが、卵巣を刺激するたびにある程度の卵子は採れると思います。現在のロング法とは違う卵巣刺激法に変えてみたり、移植方法を二段階移植にしてみる。また、凍結胚と新鮮胚を同時に移植する複数個移植を試みるのはどうでしょうか? まだ可能性はあると思います。



醍醐渡辺クリニック 山口 剛史先生


醍醐渡辺クリニック 山口 剛史先生

奈良県立医科大学卒業。2007年京都府立医科大学大学院医学研究科統合医科学専攻、同博士課程修了。公立南丹病院、京都府立与謝の海病院産婦人科医長勤務などを経て、2010年より醍醐渡辺クリニック勤務。O型・天秤座。大学時代から続けているラグビーをこよなく愛する先生。相当厳しかったという練習も、今では懐かしい思い出に。数年ごとに行われる次回のOB戦では、先生はちょうど48歳。「体力的にはキツイですが、頑張りま!」。

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出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.32 2016 Winter
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