HOME > 不妊治療 > 顕微授精 > 成長が遅い受精卵は妊娠してもリスクがある? 
HOME > 不妊治療 > 顕微授精 > 成長が遅い受精卵は妊娠してもリスクがある? 

成長が遅い受精卵は妊娠してもリスクがある? 

コラム 不妊治療

成長が遅い受精卵は妊娠してもリスクがある? 

「このまま黒色にまで培養をお願いしているのですが、成長が遅い受精卵は移植できたとしても着床しなかったり、染色体異常などが起こる可能性は高いのでしょうか?」

0217.5.5

あとで読む




成長が遅い受精卵は妊娠してもリスクがある?


苔口 昭次 先生(英ウィメンズクリニック)







相談者:サキコさん(34歳)


顕微授精卵2日目の成長について


 現在44歳、6年ほど不妊治療をしています。先日、あるクリニックで採卵いたしました。顕微授精2日目になるのですが、2分割という成長だと病院から連絡がありました。調べてみると通常2日目では4分割になるとありました。このまま黒色にまで培養をお願いしているのですが、成長が遅い受精卵は移植できたとしても着床しなかったり、染色体異常などが起こる可能性は高いのでしょうか? 長い治療の間、今年4月に一度だけ妊娠反応が出ましたが、心拍が確認できず7週目に掻爬手術を受けました。遺伝子異常(trisomy13)でした。その際も受精卵の成長が遅く卵子孵化補助をしてもらったものでしたので、すごく心配になり質問させていただきました。



 



受精卵の成長が遅い場合、どんなことが考えられますか?


受精卵は2日目で4分割になることが多く、この方の成長は若干遅めです。受精卵の成長が遅れる主な理由は年齢的な要因です。

一般的には、2分割の受精卵が胚盤胞になる確率は17〜18%。このまま胚盤胞になり、着床から発育まで順調に進めば問題ありませんが、成長が遅い胚盤胞を移植できたとしても着床しなかったり、染色体異常の確率が高くなります。たとえば、正常な胚盤胞ができる確率は30代が70%なのに対し、40代では13%です。つまり、80%以上の胚盤胞に染色体異常、形態異常、フラグメンテーション(受精卵の分割時の断片化)の可能性があります。まずは、13%の可能性にかけて治療を続けていくことが大切です。

また今後、妊娠された場合も、44歳ではダウン症の確率が1/38人と高くなりますので、NIPT(新型出生前診断)や羊水検査を受けられる選択肢も出てくるでしょう。


先生ならどのような治療をされますか?


治療について2つ提案があります。1つ目は、胚盤胞移植を根気よく継続する方法です。この方は一度妊娠されていますので、これが胚盤胞によるものであれば、今後も可能性があります。ただし、成長が遅い受精卵の場合は、5〜6日目に胚盤胞になったものを一度凍結し、黄体期の1日前に移植する方法もあります。本来は5〜6日目の胚盤胞を黄体期の5日目に移植しますが、黄体期の1日前に移植することで、子宮内で胚盤胞の成長を促して着床しやすくするメリットがあります。

2つ目は、これまでに自然周期の初期胚移植(複数個移植)を試されたことがなければ、一度おすすめします。この方はAMHが0・13 ng/mlと低く、HCGのような注射でたくさん採卵することは難しいので、マイルド法や自然周期で採卵します。ちなみに、35歳以上でAMHが1ng/ml以下の場合、胚盤胞になる確率は16%。44歳では確率がもっと低くなる可能性はあります。


これから卵子の質を上げるためにできることはありますか?


当院では「運動(血流を促す)」、「睡眠(抗酸化作用を高める)」、「食事(血液をサラサラにする)」の3つをお伝えしています。

「運動」では、1週間に1〜2回、汗ばむ運動を心がけてください。運動が苦手な方は、1日1万歩をめざして歩きましょう。

「睡眠」では、夜10時の就寝をおすすめしています。10時に眠ると体をリセットする働きがあるメラトニンの分泌を促すことが知られています。10時の就寝が難しい方や、不眠症の傾向がある方は、サプリメントでメラトニンを摂取することもできます。

「食事」では、オリーブオイルや青魚に豊富に含まれるDHAやEPAが多く摂れる地中海食をおすすめします。ストレスを溜めないようにすることも重要です。ご自身でできる体質改善を取り入れながら、良い卵子に巡り会えるよう、根気よく治療を続けてください。




苔口先生より まとめ


●胚盤胞での妊娠実績があれば、胚盤胞移植を継続してみては
●自然周期による初期胚の複数個移植を試されるのもありです



 



[無料]気軽にご相談ください

 



お話を伺った先生のご紹介





苔口 昭次 先生(英ウィメンズクリニック)


1984 年、宮崎医科大学を卒業。卒業と同時に岡山大学医学部産婦人科学教室に入局。高知県立中央病院産婦人科勤務、神戸掖済会病院産婦人科部長を経て、2004 年9 月より英ウィメンズクリニック勤務、2013 年3 月に院長就任。同クリニックでは、患者様向けの体質改善プログラムとして「フェルデンクライス・メソッド」を月1回開催。ゆったりとした動きを通して、自分の体の声に静かに耳を傾けるので「動く瞑想ともいわれ、運動が苦手な方にもおすすめですよ」

≫ 英ウィメンズクリニック


出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.33 2017 Spring
≫ 掲載記事一覧はこちら



 


あとで読む

この記事に関連する記事

この記事に関連する投稿

女性のためのジネコ推薦商品

最新記事一覧

Page
top