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高齢妊娠で知っておきたいリスクは何ですか?

コラム 不妊治療

高齢妊娠で知っておきたいリスクは何ですか?

40代の妊娠には、加齢に伴うさまざまなリスクがあるといわれます。そこで妊娠後に気をつけるべきさまざまなリスクについて、久保みずきレディースクリニックの石原尚徳先生にくわしく教えていただきました。

2017.5.29

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高齢妊娠で知っておきたいリスクは何ですか?


石原 尚徳 先生(久保みずきレディースクリニック)




 



40代の妊娠は増えてもリスクの高さは同じ


当院でも40代で妊娠・出産される方の割合は年々増加しています。治療技術の進歩などで40代の妊娠・出産が可能になりつつある一方、そのリスクに直面するケースも増えています。

なかでも気をつけたいのは、「流産」「染色体異常」「妊娠高血圧症候群」「妊娠糖尿病」「前置胎盤」「先天性奇形」「低出生体重児」「帝王切開」です。ある統計データでは35歳未満の人と比べると流産は3倍、染色体異常は9.9倍、妊娠高血圧症候群は1.1倍、妊娠糖尿病は2.4倍、前置胎盤は2.8倍、先天性奇形は1.7倍、低出生体重児は1.6倍、帝王切開2.0倍という報告もあります。年齢を重ねるにつれ、リスクが高くなることがわかります。。


代表的なリスクとその特徴について


【流産】
流産とは、妊娠22週以内にお腹の赤ちゃんの成長が止まることをいいます。おもな原因は加齢による染色体異常ですが、ほかにも凝固異常、ホルモン異常、免疫異常、子宮形態異常などがあります。流産率は、20代が10〜15%なのに対し、40歳〜42歳は50%、43歳以上になると、まれに出産される方もいますが、100%に近い統計データもあります。

流産には切迫流産、繋留流産などがあり、おもな兆候として不正出血、基礎体温の低下、お腹の痛みを感じることなどがあります。流産をできるだけ回避するためには、とくに妊娠初期の過度な運動を控え、母体や赤ちゃんの成長を促すバランスの良い食事を心がけることが大切です。

【染色体異常】
40代の染色体異常の確率は約80%といわれています。加齢による卵子の老化が原因とされ、流産にも大きくかかわっています。さらにダウン症の確率も高くなります。30歳では600人に1人なのに対して、42歳では35人に1人です。ダウン症は遺伝子情報がもっとも少なく、染色体としてはもっとも小さい21番目の染色体の異常によって起こります。すべて流産につながるような他の染色体異常とは違い、症状が軽いために生まれることができます。

残念ながら染色体異常の治療法はありませんが、羊水検査やNIPT(母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査)などで妊娠中の赤ちゃんの染色体異常を確認することはできます。

【妊娠高血圧症候群】
妊娠20週から分娩後12週まで高血圧が見られる場合、また高血圧にタンパク尿を伴うものです。もともと血圧の高い方や腎機能の悪い方はさらに悪化することがあります。また、BMIの値が25以上の方も注意が必要で、40歳以上ではその確率はさらに高くなります。

発症すると子宮や胎盤の血流が悪くなり、母体と赤ちゃんに大きな負担がかかります。例えば、母体が痙攣を起こす子癇発作、分娩前に胎盤が剥がれる常位胎盤早期剥離などがあり、場合によって帝王切開が必要になることもあります。さらに、肺水腫、脳出血などの合併症を引き起こす可能性もあります。根本的な治療法はなく、軽症であれば安静と食事療法、重症の場合は降圧剤を使用し、早期に出産してもらう場合もあります。

【妊娠糖尿病】
一般的な糖尿病とは異なり、妊娠中に発症する糖代謝異常の一種です。妊娠することで血糖値が上がり、お腹の赤ちゃんも平均より大きくなることが多いです。また赤ちゃんは出産後に呼吸障害や黄疸、低血糖発作などさまざまな合併症を引き起こす可能性があります。軽症であれば母体は出産後に元通りになりますが、家族や親族に糖尿病がある方や、妊娠前から肥満の方は、体重のコントロールはじめ、食事の調整、適度な運動を心がけるようにしましょう。

【前置胎盤・帝王切開】
40代の妊娠では前置胎盤の頻度も増加しています。前置胎盤は胎盤が正常よりも低い位置にあり、胎盤が子宮の出口をふさいでいる状態をいいます。胎盤が赤ちゃんの出口になる子宮口付近にあり、赤ちゃんが出られなくなるため、ほぼ100%帝王切開での分娩になります。

また胎盤に問題がなくても年齢を重ねるにつれ体の柔軟性が低下し、産道の筋肉が硬くなるために難産で帝王切開になることもあります。日頃から柔軟体操などを取り入れて、体を柔らかく保つことも重要です。


出産・育児と同時に高齢の親の心配も


40代の妊娠では良い面もあります。例えば、年齢や体力面で過信している若い方に比べ、40代で妊娠される方のほとんどは妊娠に対する意識が高く、こちらのアドバイスを素直に聞いてくれます。適切な情報を進んで得ようとする努力や勉強をされています。また、心身をきちんとコントロールされている印象もあります。さらに、育児や教育にも積極的ですから、赤ちゃんの発育状態や情緒面においては、40代で妊娠するメリットは大きいかもしれません。

とはいえ、年齢が高くなれば、総合的にリスクを伴うことは否定できません。出産後は親のサポートが必要になる時もあります。しかし、40代では親も高齢になり、サポートを受けることが難しくなります。そのうえ、育児と親の介護が同時進行になることも考えられます。もちろん40代で妊娠・出産し、ご夫婦でゆとりをもって子育てされている方もいらっしゃいます。それでもできれば親のサポートを十分に受けられ、物理的、時間的にもゆとりのある環境で妊娠されることが望ましいと思っています。




石原先生より まとめ


40代の妊娠は増えてもリスクは高くなる一方。少しでも若いうちに妊娠をめざしてください。



 



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お話を伺った先生のご紹介





石原 尚徳 先生(久保みずきレディースクリニック)


高知大学医学部卒業。神戸大学医学部大学院修了。医学博士。兵庫県立成人病センター、兵庫県立こども病院の勤務を経て、2008年より久保みずきレディースクリニック菅原記念診療所。不妊治療から周産期、小児医療まで、地域に根ざした総合的なサポート体制が整う同クリニックで、不妊治療/産婦人科、産科の外来を担当する。緊急手術直後でお疲れの中、取材にご対応くださった先生。取材後に近況をたずねると「最近、目にきてねぇ…」としみじみ。聞けば老眼鏡を2本もつくったとのこと。そこで今回はメガネ姿でのご登場となりました。


≫ 久保みずきレディースクリニック



出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.33 2017 Spring
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