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着床障害の原因にはどんなものがありますか?

コラム 不妊治療

着床障害の原因にはどんなものがありますか?

良好な胚を複数回移植したのに着床しないのは、どんな原因が考えられるのでしょうか。また、改善するにはどうしたらよいか、ファティリティクリニック東京の小田原靖先生にお話を伺いました。

2017.4.7

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小田原 靖 先生(ファティリティクリニック東京)




 



年齢が高い場合は卵側の要因であることも多い


形を見て良好だと評価された受精卵でも、染色体異常の割合はかなり高いといわれています。

海外のPGS(着床前診断)のデータで胚盤胞の異数性(染色体に数の異常をもっている)を見ると、35歳未満であれば30~40%未満にとどまっています。しかし、年齢が上がるにつれて異常率も上昇し、40歳ではおよそ7割の胚盤胞に異数性が認められているんですね。

形が良くて凍結にふさわしいという判断をされた受精卵でも、3分の1程度しか良いものがない。年齢が高い方の場合、良好な胚を戻しても着床しないというのは、卵側の要因であることも大きいと思います。

この問題に対しては、残念ながら今、日本では形態的な評価でしか判断することができないので、そのなかでできるだけ良い卵子をつくっていくように努力するしかありません。ケースに応じて卵巣刺激法や培養などを工夫していくなど、方法はいくつかあると思います。

また、移植の方法を変えてみるというやり方も。新鮮胚移植の場合、調節卵巣刺激下で採卵した周期に移植をするわけですが、その周期は刺激に使ったお薬の影響が若干ネガティブに作用してしまうケースもあります。これまでずっと新鮮胚移植で反復不成功ということであれば、凍結胚での移植を考えてもいいのではないかと思います。


原因不明の着床障害によく見られるマイクロポリープ


本当に良好な受精卵で、胚盤胞まで順調に進み、新鮮胚移植も凍結胚移植も試したけれど妊娠しないという場合、今度は受精卵を受け入れる側である子宮内膜の状況を考えることになります。

着床に適した内膜はどのような状態か。通常では、厚さや形を見て評価をしていくことが多いかと思います。7㎜〜8㎜くらいの厚さがあって、木の葉状の構造があれば良い内膜ということになるわけですが、実際には内膜の因子を探る方法はほかにもあるんですね。

何をみるかというと、子宮の中に炎症性の変化があるかどうかということ。炎症というのは着床に若干必要なプロセスであり、子宮内の小さな炎症や傷は着床の基点になるのではないかといわれています。しかし、その度合いが強くなると、受精卵を排除してしまう方向に働いてしまうこともあるのです。

炎症の有無や程度を調べる検査として一般的に使われているのが子宮鏡です。原因不明の着床障害の場合、よく見られるのがマイクロポリープ。これはごく小さなポリープが子宮の中全体に敷石状に認められる所見で、炎症などにかかわっているといわれています。実際にマイクロポリープがある症例は、正常な内膜の人に比べて妊娠しにくいことが報告されているんですね。


抗生剤やステロイドで炎症を改善すれば着床・妊娠に至ることも


このように形態的に認められるものでなくても、子宮の中に炎症が存在していることがあります。それをどう探っていくかは施設によって方法が異なると思いますが、当院では以前から、子宮内の炎症によって産生されるたんぱく質の量を調べる検査を取り入れています。

炎症があるとサイトカインという免疫物質が出てきます。この物質が最終的に産生するのがMMPというたんぱく質分解酵素。「MMPの値の上昇=子宮の中に炎症が存在している」と、間接的に評価することができます。

MMPの量は子宮内膜の組織を採取して調べるのですが、当院のデータでは着床障害の方の10%くらいに炎症が存在しており、それを改善することで多くの方に着床・妊娠の効果が認められています。

マイクロポリープの症例もそうですが、炎症が強い方には抗生剤やステロイドを使って治療。お薬の使用後に再び検査をすると、陽性が陰性化していることがほとんどです。


着床期の子宮内膜を遺伝子レベルで調べる「ERA」とは?


子宮内膜に関する検査では、最近、ERA(子宮内膜受容能検査)というものが開発されました。昔から、受精卵が着床する時には子宮内膜の受容性が増すといわれ、これを“着床の窓”と称してきました。ERAでは着床期に子宮内膜に発現する300弱の遺伝子を調べ、この結果をもとに、たとえば排卵日5日後で発現すべき遺伝子が遅れて出てくる場合には移植を後ろにずらす、早く出る場合には前にずらす、などの治療が行われます。

日本で行う場合には採取した内膜の検体を海外、おもにスペインに送って調べてもらいます。これまでになかった先進的な検査ですが、実際にどの程度信頼性があるかはまだ完全に評価されていません。

当院の経験では、原因不明の着床障害の患者さんをERAで調べると、3割以上の方に受容性の異常が見られますから、検査としてはある程度有用性があり、多くのデータが蓄積されていけば、今後日本でも広まっていくのではないかと思っています。




小田原先生より まとめ


・卵巣刺激法や培養法、移植の方法を変えてチャレンジしてみる
・原因が子宮内膜にあることも。まず子宮鏡検査で確認を
・今後は着床期の遺伝子を調べるERAに注目



 



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お話を伺った先生のご紹介





小田原 靖 先生(ファティリティクリニック東京)


東京慈恵会医科大学卒業、同大学院修了。1987年、オーストラリア・ロイヤルウイメンズホスピタルに留学し、チーム医療などを学ぶ。東京慈恵会医科大学産婦人科助手、スズキ病院科長を経て、1996年恵比寿に開院。治療以外でも患者さんのフォロー体制が整っている同クリニック。毎月開催されるセミナーのほか、疑問が残る場合は、専門のカウンセラーによる治療や遺伝、心の悩みの相談も随時受け付けています。海外留学時代のボスの影響でワイン好きになったという小田原先生。クリニックの前にワインスクールがあるので、いつかそこでインストラクターの資格を取得し、ワインの先生になるのが夢だとか。


≫ ファティリティクリニック東京



出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.33 2017 Spring
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