正常胚がたった1つ妊娠の可能性が高い移植方法を知りたい!

コラム 不妊治療
正常胚がたった1つ妊娠の可能性が高い移植方法を知りたい!
SEET法、二段階胚移植、スクラッチング法、エンブリオグルーなど、いくつかの選択肢が。自分に合った、妊娠率が高い移植方法とは? また、そのメリット・デメリットは?
正常胚がたった1つ妊娠の可能性が高い移植方法を知りたい!
臼井 彰 先生(臼井医院不妊治療センター)
相談者:0121こぐまさん(44歳)
おすすめの移植法を教えてください

これまでの治療データ
●検査・治療歴:
採卵9回(刺激7回、自然・低刺激2回)。移植9回。
●不妊の原因となる病名:
特になし
●現在の治療方針:
黄体ホルモン、エストロゲン投与
●精子データ:
奇形率が高い(98%?)
質問者は現在44歳。第2子を希望していますが、おすすめの治療は?

SEET法、二段階胚移植、エンブリオグルー、スクラッチング法について、それぞれ簡単な解説をお願いします。

二段階胚移植は、初期胚を移植した後、胚盤胞を時間差をおいて移植するというものですが、多胎妊娠の危険性が高いことから、現在ではあまり一般的には行われなくなりました。妊娠の可能性は高くなるかもしれませんが、戻す胚は原則として1つ、というのが現在のスタンダードです。2つの胚を戻すのですから、もちろん現時点で複数個の胚がなくてはなりません。それに代わるのがSEET法ですが、あらかじめSEET法用の培養液をキープしておく必要があります。スクラッチ法は、子宮内に軽い“引っ搔き傷”をつけるというやり方で子宮内に刺激を与えます。
エンブリオグルーは、ヒアルロン酸などの粘着性のある成分を“グルー(のり)”として、着床効果を高めようと考えられたものです。
0121こぐまさんには培養液の用意がなく、胚も複数個はないので、SEET法も二段階移植も選択不可能ということですか。

しかし、まずは現在通院されているクリニックと、よく話し合うことが必要だと思います。それぞれのクリニックには治療方針があり、取り入れている施術、得意とする方法も違います。「どうしてもこの方法で移植してほしい」と希望されても、治療方針にそぐわない場合は、申し訳ありませんがお断りせざるを得ないこともあります。当クリニックでも、多胎妊娠の危険性の高い二段階胚移植、痛みや炎症をともなうこともあるスクラッチング法、エンブリオグルーも採用していません。クリニックとしても、多くの治療経験を積み重ねたうえで判断し、それぞれ治療方針を決めているのです。そのうえで、担当医も質問者さんにとってベストな治療法を探っていることと思います。
もちろん、「こんな方法もあるが、私にはどうですか」といったご提案やご質問は遠慮なくなさってください。それでも納得がいかなかったとしたら、希望の治療法を求めて転院されるのも選択の一つだと思います。しかし、培養液や培養方法、保管方法などもそれぞれなので、ほかのクリニックで管理されていた培養胚を持って来られたとしても、転院先のクリニックもお困りになるかもしれません。胚の所有者は0121こぐまさんなので、当然のことながらご希望があれば譲渡も可能ですが、クリニック同士の連携がかなり密でないと、難しいことが多いのです。ですので、このようなケースは、当クリニックではお受けしていないのが実情です。
「二段階胚移植に踏み切った場合、初期胚が胚盤胞の邪魔をしたり、初期胚によって流産になる危険性は?」とのご質問も。

臼井先生より まとめ
クリニックによってできる治療が異なるので、確認・相談を。それぞれの治療法には下準備が必要。方針は、治療前に!
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.33 2017 Spring
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