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治療が先? 妊娠が先? 子宮の病気と不妊治療

コラム 不妊治療

治療が先? 妊娠が先? 子宮の病気と不妊治療

不妊原因の一つでもあるとされている、子宮内膜症や子宮筋腫など子宮の病気。妊娠、それとも病気の治療が優先か、その適切な進め方について、ファティリティクリニック東京の小田原靖先生に詳しくお話を聞きました!

2017.5.21

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小田原 靖 先生(ファティリティクリニック東京ー)




 



 



子宮内膜症は手術ではなく、不妊治療を優先する場合も


子宮内膜症は、本来は子宮の内腔にしか存在しないはずの子宮内膜や類似した組織が、卵巣など子宮以外の場所にもできてしまう病気です。初診でいらっしゃる患者さんを診ていると、軽度を含め全体の2割くらいの方に確認されるので、少なからず不妊に影響しているのではないかと考えられます。

子宮内膜症がどのように不妊にかかわるかはさまざまな考え方があります。たとえば直接的な原因であれば、卵管の癒着によってピックアップ障害を起こしてしまいます。また、卵巣自体にできた子宮内膜症が卵巣内の血流を悪くすることで卵子の質の低下を招いたり、子宮内膜症により生じた腹水などが、受精や着床障害を引き起こすこともあります。

このように妊娠にとっていろいろな影響が考えられますが、明らかな卵管閉塞がないかぎり、絶対的な不妊要因にはなりにくいというのがこの病気の難しいところです。

6〜7㎝を超える子宮内膜症性の卵巣嚢腫があれば、悪性かどうかのチェックも含めて不妊治療より手術を優先せざるを得ませんが、問題はその前の段階です。たとえば2~3㎝のチョコレート嚢腫があって不妊の場合は、どう評価して、どのように取り扱っていくかは年齢などの条件によっても異なってくるかと思います。

では、子宮内膜症をもっている方はどのように不妊治療を進めていったらいいか。極端に進行した病変ではなく、体外受精の適応でもないということであれば、まずはタイミング療法や人工授精など、一般不妊治療でトライしていくことになると思います。ただし、卵管のピックアップや受精など、目に見えないエリアでの障害も起こりうるわけですから、そのような治療はある程度限定的な期間で行って、うまくいかなければ体外受精にステップアップすることになるかと思います。

子宮内膜症の治療の一つとして手術も考えられますが、術後、卵巣の反応が低下するケースもあるので、妊娠を考えた場合、必ずしも手術が第一選択になるとは思いません。

年齢が35歳以下で卵巣の予備能が十分であれば、手術をして自然妊娠を期待するということもあると思います。しかし、年齢が高く、AMH(抗ミュラー管ホルモン)の値も低下している方は、卵巣機能へのデメリットを考慮すると、手術を優先するのは厳しいところもあります。
 そのような場合は子宮内膜症を温存し、体外受精を先に行う。ある程度卵子を採って受精卵を得ておく、という選択肢もあるかと思います。凍結保存しておけば胚移植まで時間を取れますから、着床に影響が出そうであればその間に手術をして子宮環境を整えることもできます。

子宮内膜症の進行度や年齢、卵巣機能など、条件や背景によっていくつかの選択肢があると思うので、担当医の先生とよく相談して治療を進めていっていただきたいですね。


子宮腺筋症は完治が難しく、経過の中で治療法を決めていく


子宮腺筋症は子宮内膜症組織が子宮の中に入り込んだもの。子宮が野球のボールのように全体的に膨れて硬くなってくるので、妊娠しづらく、流産率も高くなります。

ただ、どれくらいの腺筋症であれば妊娠しにくいか、というはっきりした物差しがないのが現状です。子宮腺筋症の治療自体も困難で、完治させる方法はなかなかありません。 排卵を抑制して病気の進行を抑えたり、月経痛を和らげるために生理を止める薬剤を使うことがありますが、その間は妊娠の成立は難しいので、年齢が高い方などには難しいといえます。最近は子宮腺筋症の先進治療ということで、病巣を削り取る手術も特定の医療機関で行われています。しかし、これは加減が難しい治療で、あまり削りすぎると子宮壁が薄くなってしまい、妊娠した時の子宮破裂のリスクが高まってしまうことも。

確実な治療法がないのが悩ましいところですが、不妊治療の流れとしては、通常と同じように一般不妊治療、体外受精というステップで進んで受精卵を凍結。その間に薬物治療を2~3カ月行って、ある程度腺筋症の縮小をみたところで、胚移植をするというケースもあるかと思います。なかなか着床しなければ、手術を考える場合もあるでしょう。この病気も子宮内膜症と同様に、経過のなかで治療方針を決めていくことになるかと思います。


高齢で生理回数が多いほど発症頻度が高まる子宮筋腫


子宮筋腫は、生理で子宮が収縮した時、その刺激でできてくるのではないかといわれているので、月経回数が多くなればなるほど発症頻度が高まります。我々が治療している40歳前後の方のほとんどは、筋腫をもっていらっしゃる印象を受けますね。

子宮筋腫はこぶのようなもので、子宮腺筋症のように内膜が内側まで入り込んだ複雑なものではありませんが、妊娠への影響はゼロではなく、子宮筋腫があると着床障害を起こすという研究も多く報告されています。

治療は大きさやできた場所によって異なり、子宮の内膜を圧迫しているようなケースは当然手術の適応になりますし、子宮内にあってもあまり内膜に影響していなかったり、子宮の外側に発育しているものは経過観察ということになります。

手術は腹腔鏡や子宮鏡による比較的体に負担のない方法でできますが、年齢が高い方はやはり採卵、受精卵の確保が優先となってくるでしょう。採卵後の手術については、術後、内膜が薄くなるような方もいらっしゃるので、出産時のリスクも含め、本当に必要かどうか検討していくことが大事かと思います。

 





小田原先生より まとめ


・子宮疾患は不妊要因の一つになることも
・手術にはメリット・デメリットがある
・年齢が高い人はまず受精卵の確保を優先




 


 


 



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お話を伺った先生のご紹介





小田原 靖 先生(ファティリティクリニック東京)


東京慈恵会医科大学卒業、同大学院修了。1987年、オーストラリア・ロイヤルウイメンズホスピタルに留学し、チーム医療などを学ぶ。東京慈恵会医科大学産婦人科助手、スズキ病院科長を経て、1996年恵比寿に開院。治療以外でも患者さんのフォロー体制が整っている同クリニック。毎月開催されるセミナーのほか、疑問が残る場合は、専門のカウンセラーによる治療や遺伝、心の悩みの相談も随時受け付けています。休暇と波の状態が合わず、最近は趣味のサーフィンがなかなかできていないとか。その分、週2回のジムでのトレーニングは欠かさず、最近は大胸筋がバランスよくついてきたそうです。

≫ ファティリティクリニック東京


 


出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.34 2017 Summer
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