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顕微授精で結果が出ないのは染色体異常が原因?

コラム 不妊治療

顕微授精で結果が出ないのは染色体異常が原因?

今後も同じ方法で移植を繰り返すだけでいいのでしょうか。前向きに治療していきたいと思っているのでアドバイスをお願いします。

2017.5.21

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顕微授精で結果が出ないのは染色体異常が原因?


宇津宮 隆史 先生(セント・ルカ産婦人科)







相談者:ミンミさん(35歳)


移植回数と今後の治療について


 
治療歴2年、顕微授精で移植を10回しています。不妊原因は片側卵管閉塞、卵管狭窄。腹腔鏡検査では子宮・卵管に異常はなく、卵管鏡下FTカテーテルは通水しませんでした。3回の採卵で毎回5〜7個はグレードの良い胚盤胞まで育ちます。移植時の子宮内膜の厚さは平均8〜9㎜。陽性判定4回、流産手術3回(1回は染色体異常ではない)で胚盤胞は残り3個です。2年間休まず治療を続け、回数ばかり重ねても思うような結果が出ません。染色体異常が原因といわれるのですが、私の年齢でも採卵した卵子のほとんどが異常ということはありえますか。今後も同じ方法で移植を繰り返すだけでいいのでしょうか。前向きに治療していきたいと思っているのでアドバイスをお願いします。



 



3回の流産のうち、2回は染色体異常が原因と指摘されているようです。35歳という年齢はどうかかわっていますか?


海外のデータになりますが、女性が35歳の場合、D3分割期胚まで育ったものの50%に染色体異常が認められます。ミンミさんはまだ年齢的に若いですし、夫婦の染色体検査は異常なさそうなので、染色体転座も考えられます。今はまだ若くても、年齢が上がればさらに確率は高くなりますし、移植するのに適当な受精卵、胚でも染色体異常は40歳で70%、41歳からは80%にまで増えます。胚盤胞まで育っていて、グレードの良いものを戻しているとはいえ、それは見た目が良いというだけであり、染色体異常とはまったく関係ありません。妊娠できそうな外見で子宮内膜の厚さも十分なのに結果が出なければ、PGS(着床前スクリーニング)をすすめたいところですが、日本ではPGS自体が難しいのが現状です。胚盤胞はまだ3個残っていますから、これをなるべく早く戻すとともに、年齢的な要因も視野に入れて、あと2年をめどにできる限り早く、回数を重ねてみてはいかがでしょうか。


これからの2年の治療では、ほかにどのような方法が考えられますか?


 卵管鏡下FTカテーテルで通水しないので卵管閉塞であることは明らかですが、卵管水腫ができている可能性もあります。卵管水腫とは、卵管の開口部が完全に塞がっている(閉塞)ため、卵管内で分泌される卵管液が溜まって水腫状になったものです。溜まって清潔ではない液体が子宮内に逆流してしまうと、いくら体外受精で受精卵を戻しても死滅してしまいます。最初の検査から2年経っているわけですし、最初はなくてもこの2年の間に変化が起こっていても不思議ではありません。結果は流産だとしても4回も妊娠できているのですから、水腫の有無を確かめるという意味でもそろそろ卵管造影検査をするタイミングだと考えられるでしょう。また、流産した時の胎児・胎盤の染色体検査も必ずしたほうがよいでしょう。


精子に問題はないようですが、顕微授精をしています。先生の考えをお聞かせください。


 なぜでしょう。これは担当の先生に聞いてみないとわからないですね。精子が良好であれば顕微授精をする必要はありません。ミンミさんは卵管閉塞と卵管狭窄があるため自然妊娠はとても難しいと考えられますが、本来ならより自然に近いほうがいいはずなので、もし最初から顕微授精しかしていないのであれば、体外受精を試しましょう。35歳を超えてくると、とにかく時間との勝負になります。卵子がたくさん採れているのですから、たまたま小さな遺伝子の異常が重なっているだけという可能性もあり、ミンミさんはそろそろ結果が出そうな印象を受けます。今が踏ん張り時だと思って、ぜひ前向きに治療に取り組んでいただきたいですね。




宇津宮先生より まとめ


●年齢が若く、卵子の見た目が良くても染色体異常の可能性はある。
●精子に問題なければ、顕微授精ではなく体外受精にトライして。



 



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お話を伺った先生のご紹介





宇津宮 隆史 先生(セント・ルカ産婦人科)


熊本大学医学部卒業。1988年九州大学生体防御医学研究所講師、1989年大分県立病院がんセンター第二婦人科部長を経て、1992年セント・ルカ産婦人科開院。国内でいち早く不妊治療に取り組んだパイオニアの一人。開院以来、妊娠数は7,000件を超える。O型・おひつじ座。ヨーロッパでは“腹腔鏡検査をしなければ不妊症の検査は終わったとはいえない”とまで言われている腹腔鏡検査を推奨。「お腹の中を直接診て、不妊の明確な原因を探ります。傷は小さく、術後すぐ通常の生活に戻れるのも大きなメリットです」。


≫ セント・ルカ産婦人科


出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.34 2017 Summer
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