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閉塞性の無精子症。顕微でも受精しません

閉塞性の無精子症。顕微でも受精しません

2017autumn P34-35

2017.8.16

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閉塞性の無精子症。顕微でも受精しません


浅田 義正 先生(浅田レディースクリニック)




 





Mikaさん(会社員/33歳)からの相談


●男性不妊、顕微でも受精しません


夫は閉塞性の無精子症で、TESEで精巣精子を採り5本凍結しました。術後、医師には精巣精子にしては良好で妊娠できる可能性は高いと言われましたが、受精がうまくいきません。私はAMH値が異常に高く、刺激をすると卵胞が育ちすぎる以外は特に不妊原因を指摘されていません。1回目は低刺激にて9個採卵のうち成熟卵子6個。顕微授精で受精卵は7分割グレード3が1個しかできなかったため、新鮮胚を移植するも陰性。2回目はアンタゴ(中刺激)にて25個採卵。カルシウムイオノフォアで活性化。成熟卵子12個で6個受精。卵巣が腫れたため、胚盤胞まで培養し、結果グレードBCの胚盤胞が1つでき、翌月アシストハッチングした5BCの胚盤胞を移植するも陰性。3回目はHMG+アンタゴ(中刺激)にて28個採卵。カルシウムイオノフォアで活性化。成熟卵子13個で4個受精。培養5日目に胚盤胞に到達しそうな胚はないとのことで移植はキャンセルに。また、これまでにも卵胞が育ちすぎて急にLHサージとなり、採卵キャンセルになったことがありました。凍結した精子は残り2本。これがダメだった場合は、また精巣を切る手術をしないといけません。重度の男性不妊の場合、こちらのクリニックでは限界があるのかなとも思い、培養技術に力を入れているクリニックに転院するべきか迷っています。



 



精巣上体精子を回収するMESAのほうが負担が少ない


閉塞性無精子症というのは、精巣内で精子はつくられているけれども精管が閉塞しているために精液中に精子が出てこない状態。この場合、手術によって精子を回収するのですが、ご主人がTESEを行ったというのがまず気になります。

閉塞性無精子症の場合、当院ではMESAという精巣上体から精子を回収する方法を採用しています。TESEのように睾丸を切る必要がないため手術による負担が少なく、精子の数や質も高いといわれています。ただ、技術的にはTESEのほうが簡単なため、MESAを行う医師自体が少ないのは事実です。また、精巣精子でも精巣上体精子でも運動精子でさえあれば、数の多少にかかわらず、顕微授精での受精率に変わりはありません。


良い成熟卵子があってこそ受精率も妊娠率も上がる


Mikaさん自身においては、AMHが高く多嚢胞性卵巣症候群だと思われますが、大切なのは、きちんとした成熟卵子を採ることです。
 成熟卵子は極体の放出という見た目で定義されていますが、同じ赤いリンゴでも甘いものや酸っぱいものがあるように、同じ見た目の成熟卵子にも中身の遺伝子の発現には差があります。

きちんとした成熟卵子というのは、遺伝子の発現が良い卵子であり、そういった成熟卵子に精子を入れて初めて受精率も妊娠率も上がります。つまり、まずは良い材料としての成熟卵子が必要なのです。


AMHが高い人ほど最後の成熟段階の刺激に工夫を


人の卵子は本来、半年くらいかかって育ち、最終的に大きい卵胞が残って、ほかはしぼんでいって単一排卵になるという仕組みです。ところが、多嚢胞性卵巣症候群は、その最後の成熟段階がうまくいかず、全部の卵胞の成長が途中で止まってしまいます。そして、そこに刺激を加えるとすべての卵胞が一斉に育ってきてしまうため、多くの医師は、卵巣過剰刺激症候群などの副作用を懸念して早めに採卵しがちに。それが失敗の原因ともなります。

また、AMHは卵子の成熟の最終段階のホルモンにも関与しているといわれ、AMHが高い人は卵胞が成熟しにくいとも考えられます。ですから、特にAMH値が10 ng/ml以上あるような場合は、熟すのを少し待つような、最後の仕上げ的な刺激を工夫するのが秘訣です。

さらに、LHサージを抑えるためのアンタゴニスト法でもあるわけですから、それで採卵キャンセルというのも残念な話ですね。たとえば、アンタゴニスト法で最後にHCGを使わず、GnRHアゴニストをトリガーにすれば、まず副作用なしで数多くの成熟卵子が採れると思います。


受精卵ができれば女性の年齢相応の妊娠率が出る


ほかにも受精障害にはカルシウムイオノフォアよりもエレクトロポレーションという電気刺激のほうがいいなど、Mikaさんのケースにはいろいろな要素が満載ですが、勘違いしてほしくないのはMikaさんの卵子が悪いわけではないということです。

良い成熟卵子を採るためには、卵胞が何㎜になったからHCGをというような単純なことではなく、AMH値と年齢も加味した刺激やタイミングを測ることが大切ですし、良い成熟卵子が採れて運動精子があれば、その後の受精率は顕微授精の技術の差で決まります。むしろ卵子の数が採れる分、1回目の妊娠はもちろん、2人目、3人目のための受精卵をつくって凍結しておくことだって可能です。

男性不妊の場合、男性側に精子が少ないから自然妊娠できないだけであって、受精卵ができれば女性側の年齢に相応の妊娠率はきちんと出るのです。

あと2本の凍結精子があるということですが、少なくとも技術に心配があるならば転院してはいかがでしょうか。その際にはやはり、体外受精や顕微授精の経験が豊富な専門クリニックを選ぶことが大切だと思います。

 



 






TOPIC


顕微授精の時、精子はどうやって選ぶの?
基本的には運動精子であることが一番大事。精子の頭形やフラグメンテーション、奇形などで判断する説もありますが、それらは精子内のDNAには無関係です。なぜかといえば、DNAというのは通常、傷ついても常に修復されて正常を保つのですが、精子内のDNAはコンパクトにまとまる分、壊れても修復する余地がなく、DNAが壊れている=精子は動かないという判断ができるから。実際に見た目の悪い精子でも顕微授精で妊娠します。つまり精子は生きて、動いていれば、現在の高度生殖医療において受精卵ができるのは当たり前なのです。





 





浅田先生より まとめ


運動精子と良い成熟卵子があれば受精するか否かは技術の問題です



 



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お話を伺った先生のご紹介





浅田 義正 先生(浅田レディースクリニック)


名古屋大学医学部卒業。1993年、米国初の体外受精専門施設に留学し、主に顕微授精を研究。帰国後、日本初の精巣精子を用いた顕微授精による妊娠例を報告。2004年、浅田レディースクリニック開院。2006年、生殖医療専門医認定。2010年、浅田レディース名古屋駅前クリニック開院。2017年6月には『よくわかるAMHハンドブック ~女性を診るすべての医師へ~』(協和企画・税別1000円)を上梓した先生。今回のような男性不妊のケースにも役立つ医療者向けの内容です。

≫ 浅田レディースクリニック


 



出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.35 2017 Autumn
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