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胚の成長を観察したり、記録したりできるって本当? タイムラプスのこと、教えて!

コラム 不妊治療

胚の成長を観察したり、記録したりできるって本当? タイムラプスのこと、教えて!

2017Autumn P363-37

2017.8.21

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体外受精したあと受精卵はどうなっている?


採取された卵子は培養液に移され、精子と合わせられて受精します。受精した卵子は受精卵、または胚と呼ばれています。胚を培養する時にも培養液を使います。培養液に浸された受精卵は、お母さんのお腹の中の環境をできるだけ再現したインキュベーターという機器に入れられます。インキュベーターの中は温度や湿度、二酸化炭素、酸素の濃度が一定の状態にコントロールされています。この中で受精卵は細胞分裂を繰り返しながら成長していきます。

正常な胚は2細胞、4細胞、8細胞…と分割していきますが、なかには異常な分割をする胚があります。たとえば1つの細胞から3つに分割したり、一度分割した胚が再び融合したりすることがあります。良好胚は見た目で判断しますが、同じように見える胚でもこのような過程で成長したものを移植すると、妊娠率が下がるといわれています。

 




動画のように胚の成長を記録できるタイムラプス


タイムラプスは5分ごとや10分ごとなどの一定間隔で写真を撮影して、その写真を連続で映すことにより動画のように見る技術です。この技術は植物の成長や天体観測など、撮影に長時間かかるものを短時間で見るために使われていました。

最近、このタイムラプスの技術が不妊治療の世界で活用され、注目を集めています。観察するためにインキュベーターから出された胚は、温度も空気もまったく違う環境で、生命活動の危機にさらされます。宇宙空間に出された人間と同じ状況です。タイムラプスインキュベーターの中で胚を撮影することで、外に取り出すことなく観察することができます。胚にストレスがかからず、扉の開閉によるインキュベーター内の環境の変化も起こりません。また、今まで見ることができなかった胚の成長の動きをすべて確認できるようになり、不妊治療における培養技術の向上に大きな効果が期待されています。

 





タイムラプスのメリット



①胚にやさしい
胚が順調に成長しているかを顕微鏡で確認するために扉を開けて取り出すと、インキュベーター内の温度や酸素濃度などが変化してしまいます。タイムラプスを使えばインキュベーターから出さずに胚を観察できるので、培養環境を向上させることができます。


 


②妊娠に至るまでの時間を短縮
胚の成長をタイムラプスで調べると、正常に発育する胚とそうでない胚との違いがわかります。より多くの観察情報をもとに、従来の観察方法ではわからない異常な分割や成長速度の胚を見つけることができます。正常に発育する胚を優先して移植することや、常に監視されている胚に何か問題があった場合の早期の発見と対応は、安心な管理の実現と妊娠に至るまでの時間を短縮することができると言われています。



 


③タブレットで胚の成長を確認できる
タイムラプス技術により、移植する胚の説明を受ける時にPCやタブレットで動画を見ることができます。凍結保存した胚を融解して移植する時も過去の動画にアクセスして見ることができ、胚の選択に利用することができます。



 



ドクターに聞きました! 「タイムラプスの魅力とは」


 



 


胚の培養には低酸素環境を維持することが大切です。当院では、そのために早くから培養環境の改善に取り組んできました。

2006年の段階で通常の加湿型インキュベーターでは多人数の胚を入れて、頻回に扉の開閉を行うため、庫内の低酸素環境を維持することに限界を感じていました。個別スペースで培養できるインキュベーターを探し2008年から新型の個別スペースの無加湿型インキュベーターの導入を始め、2010年にはすべて入れ替えて、当院の全受精卵に低酸素環境を維持した培養を実施できました。

しかし、それでも培養途中の培養液交換や胚観察のため、低酸素環境を完全には維持できていませんでした。そこで、2012年にいち早く初期型のタイムラプスを導入しました。タイムラプスのメリットは連続撮影機能により通常培養士が行っていた顕微鏡での直接観察が不要になったことです。さらに正確な受精判定にタイムラプスを利用し、絶大な効果を発揮しました。

2016年に新型タイムラプスが日本に導入され、当院も利用を開始しました。新型ではこれまで6症例だった培養症例数が15症例まで増加しています。今後は受精確認から胚の発生、そして移植まで、全症例がタイムラプス化することが必須です。体内環境を再現するうえで、必要な機器となることは間違いありません。




タイムラプス利用者の声



Aさん


不妊治療を始めたばかりで不安でいっぱいでしたが、先生から胚の動きを見ながらわかりやすく説明していただいて、今後の治療を続けるうえでとても勉強になりました。また、妊娠前に出会えた我が子に感動しました! 赤ちゃんに会えるのが楽しみです。

 



Bさん


頑張る妻の糧になってほしいと思い、タイムラプスシステムを使用しましたが、映像に食いつく妻の姿を見て、使用して良かったと思っています。不妊治療の進捗がとてもよくわかるので、素晴らしい技術だと思いました。



 


 



 


 





確実な観察で妊娠をサポート


浅田レディースクリニック 培養室長 福永憲隆氏
タイムラプスによる連続撮影は受精卵を空気にさらす顕微鏡観察を省けるので、胚の質を落とさずに胚移植まで培養することを可能にしてくれます。また、一番効果を発揮する利用法は、タイムラプス撮影することにより受精のタイミングの見逃しを避け、確実な受精判定をすることです。タイムラプス観察はこれまで見ることのできなかった胚の成長を逃すことなくとらえ、患者さんの妊娠により近づける画期的なシステムです。





 



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お話を伺った先生のご紹介





浅田 義正 先生(浅田レディースクリニック)


名古屋大学医学部卒業。1993年、米国初の体外受精専門施設に留学し、主に顕微授精を研究。帰国後、日本初の精巣精子を用いた顕微授精による妊娠例を報告。2004年、浅田レディースクリニック開院。2006年、生殖医療専門医認定。2010年、浅田レディース名古屋駅前クリニック開院。。

≫ 浅田レディースクリニック


 


 


出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.35 2017 Autumn
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