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超音波では数多く見えた卵胞が、採卵するとわずか2つでした

コラム 不妊治療

超音波では数多く見えた卵胞が、採卵するとわずか2つでした

「採卵2日前にオビドレル®を自己注射しました。ほかに通院時に何度か注射しています。これが何法になるのかわかりませんが、比較的多く採卵できると聞いていました。」

2017.11.20

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超音波では数多く見えた卵胞が、採卵するとわずか2つでした


苔口 昭次 先生(英ウィメンズクリニック)







相談者:こーたんさん(34歳)


卵胞数と実際の採卵数について


本日、初めて採卵しました。ゴナールエフ®を3日間、ガニレスト®を2日間、採卵2日前にオビドレル®を自己注射しました。ほかに通院時に何度か注射しています。これが何法になるのかわかりませんが、比較的多く採卵できると聞いていました。事前の超音波検査でも14個の卵胞があるとのことでした。しかし、実際に採卵できたのは2つ。ショックで言葉も出ませんでした。そんなこと、あるものなのでしょうか。次回は違う方法をとったほうがいいのでしょうか。先生との意思疎通が図れず、質問することができません。また、多嚢胞性卵巣症候群の診断も。それも原因ですか。



 



超音波検査で多くの卵胞が見えても、実際に採卵数が少ないことはありますか。


ご質問の「ゴナールエフ®を3日間」というのは思い違いではありませんか。通常の体外受精では、ゴナールエフ®は7日間、後半2日間にガニレスト®を投与します。

今回の原因を2つの観点で考えます。まず一つは、多嚢胞性卵巣症候群でクロミッド®などの治療を繰り返すことにより、本来は消失するはずの閉鎖卵胞が残っていて、それが今回の注射によってあたかも育っているように見えた。あるいは閉鎖卵胞が近くの卵胞の発育のじゃまをしたという可能性です。さらに多嚢胞性卵巣症候群で考えられるもう一つの可能性は、多嚢胞性卵巣にともなってアンタゴニスト法で排卵誘発をしていく時に、大きい卵胞、小さい卵胞…と卵胞の特徴を見ながらやっていくので不揃いになることが多いということです。強いて言えば大きい卵胞が何個かあって14個見えていても、小さくて未成熟な段階のものはオビドレル®の注射などがあまり反応せず、大きさが不揃いのなかで採卵をして2個しか採れなかった。このような可能性が、多嚢胞性卵巣症候群ならあり得ます。


もう一つの観点は何でしょうか。


体外受精にともなって約0.4~0.8%の確率で起こるエンプティフォリクル症候群の可能性です。これには「偽り」と「真」のエンプティフォリクル症候群があります。「偽り」とは、操作の間違いで起こるもので、最後の成熟を促す点鼻薬や注射の操作を誤るとLHやHCGが入らず未成熟のままなので、卵子が卵胞の内壁にへばりついたまま採卵が不調に終わることがあります。こーたんさんは、オビドレル®の自己注射をきちんとしておられるのでこれには当てはまりません。

一方、真のエンプティフォリクル症候群となると明確な原因は不明です。基本的には卵胞を成熟させるため、最後に注射するHCGやLHレセプターがあまり反応せず、普通は約36時間で成熟するところが40~48時間と長くなってしまいます。この場合は、2~3カ月排卵を抑制して休ませるとよいようです。文献では86%とありますが、私の経験上、ほぼ100%の確率で次の時にはうまく採卵できると思います。


今後の治療方針はどうなりますか。


次回の採卵までに2~3カ月休み、AMHの値によって再度アンタゴニストをするか、ロング法かを判断します。また多嚢胞性卵巣症候群の場合、この間に糖代謝異常がないかを検査します。これは多嚢胞性卵巣症候群の2割ぐらいの方に、糖代謝異常が見られるからです。メトグルコ®など糖尿病の薬を飲むと改善すると言われています。

最後に、こーたんさん自身の治療なので、主治医に納得のいくように説明を聞いて、治療を進めたいですね。もし先生と話すのが難しければ看護師さんなど周りのスタッフに相談してもいいでしょう。




苔口先生 まとめ


●多嚢胞性卵巣症候群の場合、閉鎖卵胞や反応の悪い未熟な卵胞が混在していた可能性が。
●次回の採卵まで2~3カ月卵巣を休ませて、改めて排卵誘発の方法を検討しては。



 



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お話を伺った先生のご紹介





苔口 昭次 先生(英ウィメンズクリニック)


1984年宮崎医科大学卒業とともに岡山大学医学部産婦人科学教室に入局。1992年医学博士(岡山大学)。高知県立中央病院産婦人科を経て神戸掖済会病院産婦人科部長として勤務。2004年より英ウィメンズクリニック勤務。2013年同院院長に就任。先生に近況を伺うと「クリニック近くで開かれた猫の譲渡会に行き、アビシニアン(メス・3カ月)がわが家に来ました。里親になるための面談を受けて、2週間の慣らし保育を経て、ようやくうちの子に」と笑顔で話してくださいました。


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出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.36 2017 Winter
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