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移植できる受精卵がゼロ…… 刺激方法が原因ですか?

コラム 不妊治療

移植できる受精卵がゼロ…… 刺激方法が原因ですか?

「刺激方法を変えたほうがいいのか、今回同様で採卵数を重視したほうがいいのか。また、卵子の質を改善する有効なサプリはあるのか、教えてください。」

2017.11.20

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移植できる受精卵がゼロ…… 刺激方法が原因ですか?


宇津宮 隆史 先生(セント・ルカ産婦人科)







相談者:わわんさん(35歳)


受精障害と採卵方法について


治療歴2年、人工授精を4回行っても妊娠陽性反応はありません。先月初めて体外受精へステップアップしました。ナファレリール®、HMG注射テイゾー150、HCG注射を使用し、ロング法で採卵。術後中度のOHSSになりましたが成熟卵15個採卵できました。主人の精子も問題ないため体外受精をしましたが、翌日、すべてOPNの受精卵なしと言われました。翌々日は1個が単為発生し、もう1個は5分割グレード2で成長が止まり廃棄で、移植できる受精卵は得られませんでした。これは、透明帯の硬さか、卵子・精子の質のせいでしょうか。次回はすべて顕微授精を検討していますがとても不安です。刺激方法を変えたほうがいいのか、今回同様で採卵数を重視したほうがいいのか。また、卵子の質を改善する有効なサプリはあるのか、教えてください。



 



15個採卵できているのに受精卵が1つもできないのはなぜでしょうか?


相談内容から推測すると、採卵方法が間違っているようには思えません。ただし、このように現段階もしくは現在の技術で原因が見つかっていなくても受精卵ができないということはまれにあり、おそらく遺伝子の異常だと考えられます。PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)ではない、という診断ですが、排卵誘発でOHSS(卵巣過剰刺激症候群)になりかけて、15個も採卵できているということは実際にはその倍の30個は卵胞ができているはずなので、PCO(多嚢胞性卵巣)の可能性はあります。PCOであれば卵胞の質があまり良くないかもしれませんね。


現段階では排卵誘発法は間違っていなくても、妊娠に至っていません。そのため、次回は顕微授精をすすめられているとのことです。


2年間、治療していて、人工授精を4回、体外受精もしているので、顕微授精へのステップアップは自然な流れと言えます。通常、体外受精した翌日に受精の確認を行い、正常ならそのタイミングで精子と卵子各々に由来する2つの前核が確認できます。ただし、受精するタイミングは個体差があり、必ずしもすべて同じではありません。わわんさんの場合、体外受精の翌日に受精の確認をしたところ前核が見当たらず、受精していないという判断でしたが、翌々日には単為発生しているものが1つ、5分割までは成長した受精卵が1つ確認されているので、最初の確認と次の確認までの間に前核があった可能性も否定できません。本当に受精さえできなかったのか、それとも受精はできていたのかではまったく異なりますから、その見極めをする意味も含めて顕微授精をするのはとても有効であると考えられます。また、PCOタイプでは卵子が未成熟な場合も考えられ、採卵した卵子が本当に成熟した卵子かどうかは顕微授精でようやく明確になります。ですから、その結果も含め、顕微授精はご夫婦にとって大きな転換になるのではないでしょうか。


ほかにアドバイスがあればお願いします。


第一は、なるべく早く顕微授精にステップアップすること。カルシウムイオノフォアなどで卵子活性化をうながしたり、IVM(卵子の体外培養)で未成熟卵子を成熟させる方法を試してみる、タイムラプスでPNから分割まで観察するのもよいでしょう。また、精子に関しては簡易法で検査しているのでWHOが推奨する検査法で再度評価し直す必要があるかもしれません。サプリに関しては特におすすめするものはありません。

わわんさんは、子宮内膜の厚さが十分で卵胞数もたくさんあるなど、良さそうな要素はたくさんありますが、ステップアップする時間が若干のんびりしている印象も受けます。今はまだ35歳ですが、今後の2年、3年はあっという間に経ちます。それをきちんと理解して、有効な治療の見極めと早め早めのステップアップを心がけていただきたいですね。




宇津宮先生 まとめ


●受精には個体差があるから検査するタイミングの見極めが大切。
●顕微授精や卵子の活性化&体外培養など早め早めの選択を。



 



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お話を伺った先生のご紹介





宇津宮 隆史 先生(セント・ルカ産婦人科)


熊本大学医学部卒業。1988年九州大学生体防御医学研究所講師、1989年大分県立病院がんセンター第二婦人科部長を経て、1992年セント・ルカ産婦人科開院。国内でいち早く不妊治療に取り組んだパイオニアの一人。開院以来、妊娠数は8,000件を超える。O型・おひつじ座。宇津宮先生が委員長を務める培地開発委員会(日本卵子学会内)が11年かけて開発した培養液が誕生。「ヒト卵管内液組成に基づいた世界初、100%国産の培養液は、不妊カップルの大きな一助になるでしょう」と力強く語ってくださいました。


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出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.36 2017 Winter
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