AMHの検査

コラム 不妊治療

AMHの検査

2018.2.20

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保険適用外でありながらも、不妊治療の際には欠かせないといわれるAMHの検査。


いったい、どんな重要性があるのでしょうか?


国内でのAMH検査の先駆者である浅田レディースクリニックの浅田義正先生にお話を伺いました。


そもそもAMHとは何? 何を調べる検査なのですか?


AMHとはアンチミューラリアンホルモンの略。日本語では抗ミュラー管ホルモンともいわれ、もともとは生殖器にかかわるホルモンの一種です。なぜ、抗(アンチ)と呼ばれるかというと、ミュラー管というものが胎生期の女性生殖器の原型であり、AMHは、そのミュラー管の発達を抑制するホルモンとして、検出されるものだからです。
女性の場合、重要になるのは主に思春期以降です。卵巣の中にあった原始卵胞が少しずつ成熟するにつれ、卵子の周りの顆粒膜細胞からAMHを分泌し始めます。それが血液中に漏れて出てくるため、血中AMH値は発育段階の卵胞の数と比例すると考えられています。
つまり、AMHは血液検査で測れるものであり、その値は、卵巣内にどれぐらいの数の卵子が残っているか、卵巣の予備能がどれほどかを予測する目安となります。


AMHの値には正常値や平均値はありますか?


AMHの値には平均値はありますが、正常値というものはありません。さらに同じ年齢でもAMH値が高い人もいれば低い人もいます(※図参照)。
また、なかには、20代後半や30代前半でも早発閉経、早発卵巣不全で、不妊治療をしたくてもできない人もいます。そういった人は、AMHの検査が出てくるまでは、本当に閉経になるまで気づくことができませんでした。閉経前にはFSHが上がって、卵胞ホルモンのエストラジオールが低くなるのですが、それでようやく卵巣予備能がないことに気づき、卵胞が少しずつ減っているというのは、メカニズム的にまったくわかりませんでした。そういった意味で、AMHの果たす役割は大きいのです。



 



斜線はおおよその平均値を表しますが、同じ年齢でもAMH値にはかなりのバラつきがあるのがわかります。
※出典:浅田レディースクリニック(2015年1月~2016年4月)


AMHと卵子の質に相関関係はありますか?


まったくないと考えたほうがいいです。卵子の質はあくまでも年齢が一番大きな要因です。
患者さん自体で見ると、AMHが高いほうが閉経も遅いし、注射を打ってたくさん採卵できれば不妊治療の効果も出やすいので、その分、有利とはいえます。ただ、受精卵1個1個が良いか悪いかということには関与していません。
極端に言えば、非常に卵巣予備能が悪い20歳の人で受精卵が1個できた人と、40歳で卵巣予備能が良くて1回で受精卵が20個できた人では、どちらが妊娠に近いかといったら、20歳で1個の人のほうがずっと妊娠に近いのです。
同年齢内でのバラつきがあるという点でいえば、同じ40歳で20個採れた人と1個採れた人では、20個採れた人のほうがいい卵子に巡り会える確率が高い分、有利。でも20歳の人ほどではありません。


AMHが低い場合の治療方法は?改善することはありますか?


AMH値は、治療して良くなるものではありません。また、低くなってしまった卵巣予備能が改善することもできません。
 ただ、最近は、AMHの検査方法が進化して精度も良くなりました。
それによって、実は、同じ人を同じように測定しても、AMHはかなり変動するものだということがわかってきました。当院のスタッフでも調べた結果、その変動には、妊娠、出産後、授乳中、長期的にピルを飲んでいるなど、その時のホルモンの状態が影響するのではないかと考えられます。
ですから、AMHを1回測っただけで完全に良いとか悪いとかは判断しないほうがいいと思います。その値も多少減ったり増えたりはしますから、そこで一喜一憂する必要もありません。もちろん、AMH値が低いから体外受精をやらなければいけないというわけでもありません。低くても自然排卵して自然妊娠している人はいくらでもいます。
ただ、年齢が高くなって、AMH値も低くなってきたらタイムリミットが近づいているということは確かです。どのような治療というよりも、いつまでにどういう結果を出したいかという目的をはっきりさせ、判断を迫られるところはあるでしょう。


AMHの検査を受けていない人や検査結果が良くない人へひと言


AMHは妊娠の予想に使えないから、AMHを測ることは無駄に女性を不安にさせるだけだという意見もあります。
確かに30歳くらいまでに赤ちゃんを産むのがあたりまえだった時代には、それまでの年齢で早発閉経になる人も稀ですから、その意見もうなずけます。しかし、今は35歳、40歳過ぎでも赤ちゃんを欲しいと思う人が多い時代です。
それであれば、妊娠の限界が年齢だけではなく、卵巣予備能との二次元で考えるべきだということを知ってほしいと思います。
また、AMHが医学的に重要なのは、体外受精で注射をした時に採れる卵子の数と、AMH値は非常によく相関することです。ヒトの場合、自然でいけば卵子は一定の割合で育っていって、最終的にはほかの卵子を捨てて1個だけが排卵します。ところが、卵巣刺激で注射を打つと捨てられるはずの良い卵子も一緒に育ち、もともとの卵子の数と比例して採卵ができます。不妊治療の現場においては、ステップアップの早さ、体外受精の時に期待できる受精卵の数など、治療計画の指針として大きな意味合いがあります。
AMHの値が良いとか悪いというのは、妊娠できるできないということではありません。不妊治療がいつまでできるかという目安の材料として使ってください。妊娠率とAMHを直接結び付けると理解が歪んでしまいます。





AMH値が示すのはあくまでも卵子の在庫の目安


卵子の質や卵子が順調に育つかは年齢に一番よく相関します。同じAMH値でも、年齢が高くなればなるほど反応は悪くなります。AMH値は、今後の治療方針や家族計画に生かすのが本来の意義。妊娠率を判断するものではありません。



 





先生から


発育過程の卵胞から分必されるAMHを測ることで
その人の卵巣予備能を予測します



 


 


 


お話を伺った先生のご紹介

浅田 義正 先生 (浅田レディースクリニック)


名古屋大学医学部卒業。1993年、米国初の体外受精専門施設に留学し、主に顕微授精を研究。帰国後、日本初の精巣精子を用いた顕微授精による妊娠例を報告。2004 年、浅田レディースクリニック開院。2006年、生殖医療専門医認定。2010年、浅田レディース名古屋駅前クリニック開院。「アメリカ・サンアントニオのASRM2017(米国生殖医学会議)にて、ビデオセッションのFirst Prizeを受賞しました。内容は、ライブセルイメージングによるヒト受精卵の染色体異常発生のメカニズム。大変光栄です」と先生。

≫ 浅田レディースクリニック

出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.37 2018 Spring
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