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男性不妊の検査

コラム 不妊治療

男性不妊の検査

不妊の原因は女性側・男性側、半々にあるといわれています。ということは、男性も不妊治療を始める前に検査を受けることが必要。男性の基本的な検査である「精液検査」について、ファティリティクリニック東京の小田原靖先生に詳しいお話を伺いました。

2018.2.20

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男性の不妊検査とは? 精液検査はどのように行うのですか?


不妊専門クリニックを受診した場合、男性の不妊検査は基本的には女性側の検査と一緒に行うことが多いと思います。まず行われるのが精液検査。精液を採って、精液の量や精子の数、運動率、形などをみて評価します。
採精は男性ご自身で行っていただくのですが、クリニックで行うほか、来院する時間が取れない方はご自宅で採ったものを奥さまがお持ちいただいても構いません。
精液検査は採ってからあまり時間が経過すると条件が変わってしまうので、ある程度の時間内に検査をする必要があります。採精直後だと、精子以外の成分が混在しているので、液化処理の時間が必要になります。
そういった時間を考えれば、持ち込みの場合でも1~2時間程度の経過であれば、クリニックで採精した場合と検査の結果に大きな差は出ないと思います。冷やしすぎず、室温程度の状態で持参することだけ注意していただければ問題はないでしょう。


精液検査ではどんなことがわかりますか?


精液検査では数、運動率、形といった精子のクオリティを知ることができます。ほとんどの施設ではWHOの基準値をもとに評価していると思います。基準値は平均をとって出した値ではないので、これだけで異常か正常かを確定するのは早計な気がします。
WHOの基準値のほか、施設によって独自の評価法をプラスしているところもあるでしょう。たとえば精子の動きに関しては、同じように運動していても、動きが活発なもの・鈍いもの、直進性がいいもの・左右に蛇行しているものなど状況の違いが見られることがあります。よって当院では動きの評価を「良好」「やや不良」「不良」「不動」など細かく分類し、良好な運動精子がどれくらいあるのか調べています。
乏精子症や無精子症はこの精液検査の段階で一応診断されますが、それをどう評価するかは施設によって異なる場合があります。
 男性不妊というとまず精子の数に着目して、「精子が少ないからダメなんだ」と考える方もいるかもしれません。しかし実際には数以外にも運動率や奇形率など総体的にみて、どのような状況なのかを評価し、治療法や妊娠の可能性を探っていきます。
たとえば数が少なくても運動率がいい、逆に数は多くても運動率が悪かったり、奇形率が非常に多いというケースもあります。それに加え、年齢や卵管因子がないかどうかなど、女性側の背景も含めて考えていくことになります。


精子に問題があった場合、治療をどう進める?


精子に問題がある場合の治療は、「今ある正常な精子をいかに有効利用するか」「悪い精子を良くすることかできるか」の2つになるかと思います。
精液検査を何度か行っても結果が不良だった場合は、一度、泌尿器科で精密検査を受けていただき、それに対して治療が可能かどうか探るプロセスは大事だと思います。
たとえば、精索静脈瘤など血液の流れが滞って精子の状態が悪くなっている場合は手術で改善できるケースが多いですし、下垂体機能不全など精子をつくるホルモンが低下している場合はホルモンを補充することで精子が産生されることもあります。
このように治療が可能な男性不妊症もあるのですが、それを受けるかどうかは女性側の状況や不妊要因も考えなければいけないと思います。
精子は成熟するまで約3カ月かかりますから、治療効果が出るのも数カ月先になります。たとえば女性の年齢が40歳だった場合、精子の改善をゆっくり待つ時間はないかもしれません。このようなことも含め、精子の治療をするのか、それよりも少ないけれど今ある良好な精子を有効利用して、人工授精や体外受精、顕微授精に臨むのかを判断していく必要があるでしょう。



 



精子にとって悪いこと、良いこととは?


精子にとって悪いことは俗説だけでなく、学会や論文で報告されることもあります。たとえば、ラップトップコンピュータを使うと精子のDNAフラグメンテーションが上がって妊よう性を低下させるとか、抗酸化作用のある栄養素の摂取が低い人は精液所見が悪いなど……。一応報告はありますが、データが少ないので、それが本当なのかどうか何ともいえません。
「これをしてはいけない」と一つずつ深く考えるのではなく、食事のバランスを良くする、適度な運動をする、ストレスの軽減など、健康にいいことが精子にとってもいいような気がしますね。ある程度気遣いながら、ご自身が心身ともに快適でいられる生活を送っていただくことが一番ではないでしょうか。





女性側の状況も含めて治療の選択を!


不妊治療はご夫婦二人で進めていく治療です。男性不妊だった場合でも、ご主人側の条件だけを考えるのではなく、女性側の年齢や不妊要因なども考慮して、どのように治療方針を立てていくのか考えることが大切です。



 





先生から


精液検査では数だけでなく、運動率や奇形率など
総体的にみて評価をします



 


 


 


お話を伺った先生のご紹介

小田原 靖 先生(ファティリティクリニック東京)


東京慈恵会医科大学卒業、同大学院修了。1987 年、オーストラリア・ロイヤルウイメンズホスピタルに留学し、チーム医療などを学ぶ。東京慈恵会医科大学産婦人科助手、スズキ病院科長を経て、1996 年恵比寿に開院。治療以外でも患者さんのフォロー体制が整っている同クリニック。毎月開催されるセミナーのほか、疑問が残る場合は、専門のカウンセラーによる治療や遺伝、心の悩みの相談も随時受け付けています。今年還暦を迎えるという小田原先生。サーフィンやジムトレーニングなどで活動的な生活を送られていますが、今後もこのまま体力を維持して、仕事もプライベートもさらに充実させていきたいそうです。

≫ ファティリティクリニック東京

出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.37 2018 Spring
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