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多嚢胞の体外受精。 採卵数と卵胞の質どちらが大事?

コラム 不妊治療

多嚢胞の体外受精。 採卵数と卵胞の質どちらが大事?

2018.2.24

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相談者:レオさん(28歳)からの相談


▶多嚢胞で初めての体外受精です


AMH6.02ng/ml、治療歴2年の間に人工授精を10回行いましたがそのうち1回化学流産をしました。多嚢胞性卵巣症候群で、刺激をすると卵胞が4個も育ってしまいます。そこで今月からロング法で体外受精に踏み切りました。フォリスチムⓇ150単位を10日間注射し、採卵する予定ですが、内診では20個ほどある卵胞の10個程度しか大きくなっておらず、エストラジオールが662pg/mlしかありません。10個採るなら2000~3000pg/mlなければ空胞ばかりになるのではと思いますし、一番大きい卵胞で18㎜しかありません。このまま採卵をしても凍結できないかもしれないと思うと、今から採卵を中止して排卵誘発から始めたほうがいいのではないでしょうか。



エストラジオールが低めであることと、10個の卵胞のうち大きいものでも18㎜程度で採卵できるのでしょうか。


女性ホルモンのエストラジオールが662 pg/mlというのは確かに低いです。おそらく理由としては、ロング法で脳下垂体のホルモンを下げてFSH製剤フォリスチムⓇを使っているので、エストラジオールが低くなり、なかなか卵胞が育たないのだと思います。ですが、レオさんのように多嚢胞性卵巣症候群の場合はエストラジオールが高くなりすぎると、副作用で卵巣過剰刺激症候群(OHSS)が起きやすくなるので逆に注意しなければなりません。若い人は特になりやすい症状です。
また、10~20個の卵胞すべてが18㎜もあればエストラジオールが2000~3000pg/mlあってもおかしくないですが、おそらくメインの主席卵胞が18㎜程度で、それ以外は小さいのではないかと推測します。それと、そもそも10個も採卵しなくていいと思います。2~3個でも成熟していればそのほうが断然いいのです。採卵数が上がるにつれてエストラジオールが高くなると、卵巣過剰刺激症候群の危険性が高くなりますから。


ロング法の特徴を教えてください。


ロング法はたくさん採卵できるという特徴があります。ただ、HCG製剤を投与するのでエストラジオールが上がってしまい、副作用として卵巣過剰刺激症候群の危険性があります。おそらく、先生はそれに気を使ってわざとFSH製剤のフォリスチムⓇを使っているのかもしれませんね。ただ、FSH製剤は時間ばかりかかってなかなか卵胞が育たないといった面もあるので、一概にいいとも言えません。


中止するか、このまま採卵するか、福井先生からアドバイスをお願いします。


こればかりは採卵してみないとわかりませんから、今ここで中止する必要はないと思います。ただ、ロング法でうまくいかなければほかの方法を考えたほうがいいでしょう。別の方法を試すことで、次の対策を考えることもできますから。ホルモンの基礎値がわかればいいのですが、現状を見た限りでは、私ならわざわざたくさん採卵できるロング法を行わなくても人工授精で4個も採れていたのだから、その時のやり方で採卵していけばいいと思います。
最近では、「量より質」という考え方が主流です。必ずしもたくさん採卵できればいいというわけではなく、卵胞がちょうどいい大きさに育っているかどうかが大事です。ですから、多嚢胞性卵巣症候群の場合は、副作用を出さずに2~3個の成熟した卵子を採るほうが妊娠に近づけるのではないでしょうか。





Doctor’s advice


●妊娠には、採卵数の多さよりも卵子の質のほうが大事。
●多嚢胞卵巣症候群の場合は、卵巣過剰刺激症候群の副作用を考えた排卵誘発法を。



 


お話を伺った先生のご紹介

福井 敬介 先生(福井ウィメンズクリニック)


1989年、日本大学医学部卒業。卒業と同時に愛媛大学産科婦人科に入局、愛媛大学大学院医学専攻科修了。2000年愛媛大学産科婦人科学助教授。2001年、「高度な生殖医療をより身近な医療として不妊カップルに提供したい」と、福井ウィメンズクリニックを開設する。愛媛県内で行われた日本小児血液・がん学会に参加。「普段は異分野の医師と交流する機会があまりないので、とても新鮮で勉強になります」と福井先生。生殖医療を多角的に考えるきっかけとなりました

≫ 福井ウィメンズクリニック

出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.37 2018 Spring
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