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無痛分娩にしたいのに、家族が反対しているのですが…

インタビュー 妊娠・出産

無痛分娩にしたいのに、家族が反対しているのですが…

欧米ではすでにお産の主流となっている無痛分娩。しかし、全国的にはまだ取り扱う産科医院が限られています。無痛分娩はどのようなお産なのでしょう。
なかには家族の反対で断念してしまうケースも…。中林病院副院長の中林靖先生にお話を伺いました。

2018.3.1

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完全な無痛ではなく、麻酔の効き目を調節しながら痛みをコントロール




無痛分娩は、背骨の下あたりの「硬膜外腔」というところに細い管(カテーテル)を入れ、そこから局所麻酔薬を投与しつつ、出産の痛みを最小限に抑えます。


日本では一般的に無痛分娩と呼ばれていますが、お産の様子を見ながら麻酔の調節を行いますから、完全に痛みがなくなるわけではありません。


そのため「硬膜外麻酔分娩」というのが正確で、海外でもそのように呼ばれていますので、当院ではあえて「麻酔分娩」と呼んでいます。


 


手順としては、最初に陣痛誘発剤で陣痛を起こし、産婦さんが痛みを感じて麻酔を希望された段階で投与を開始します。


また、これも病院によって違うかもしれませんが、最後はなるべく産婦さんにいきんで出産をしてもらう方針で、希望を聞いて麻酔の量を調節します。


ある程度痛みがないといきむタイミングがつかみにくいため、ちゃんといきめるように痛みをコントロールすることが、無痛分娩に多い鉗子分娩や吸引分娩を減らすことにつながるからです。


正しい知識を持ち、リスクと医療体制を確認した上で、家族と相談を


無痛分娩は、「痛みが少なくて楽」というイメージがありますが、一方では医療行為なので合併症等のリスクもあります。


また、無痛分娩にからむ不幸な事故が報告されたり、「出産は自然のもの」と考える日本人の精神性などから、妊婦さんが希望してもご家族、特にお母様から反対されることもあるようです。


そのような場合には、まず妊婦さん本人が無痛分娩に関するしっかりとした知識を持ち、担当の医師からリスク等の説明を十分に受け、理解することが大切です。


 


無痛分娩の代表的なリスクとしては、カテーテルを入れる際の神経損傷、麻酔濃度を強くし過ぎることで起こる局所麻酔中毒、促進剤で陣痛を強くし過ぎると起こる子宮破裂などがあります。


医療スタッフはこのような事態を起こさないよう慎重に予防対策をしますが、万一こうしたアクシデントがあった際にも、医師だけでなく助産師や看護師など、分娩に関わるスタッフ全員がリスクを把握し、プロトコール(治療手順)を共有していれば、十分な治療、対応が可能です。


また、希望をすべて聞くわけではなく、病院側は安全性を確保しつつ、産婦さんと相談しながらお産を進められる体制であることも重要です。


 


当院では麻酔学級を週に1度開催し、無痛分娩を受ける方には必ず出席していただいています。


理解してほしいご家族がいたら、こうした講習会を一緒に受けたり、医師から受けた説明を伝えることで、納得していただけるよう努めてみてはいかかでしょうか。


後悔のないお産のために、メリットとリスクをよく知ったうえで無痛分娩を検討することをおすすめします。


痛みに弱い、恐怖心が強い、産後忙しい人が無痛分娩を選んでいる


当院は、最初は経産婦さんにのみに行う予定で麻酔分娩をスタートしました。


「1人目のお産の時に30~40時間かかってしまった」とか、「もうあの痛みは経験したくない」など、前回のお産による不安から2人目3人目を作れないという人を対象に考えていたのです。


痛みを和らげてあげることでお産に対して恐怖心をなくし、次の子作りに前向きになるのではないかという思いがありました。


しかし、いざ始めてみると、実際には初産婦さんの方がお産に対する不安は大きいことが分かりました。


経産婦さんはお産の経過を知っていますので、痛みについてもある程度は予測がつきます。


しかし、初産婦さんはまったく未知なため、より不安が大きいのです。


 


そこで現在では、初産、経産を問わず、恐怖心が強い、痛みに弱い人には希望があれば無痛分娩を行うようにしています。


また、無痛分娩は痛みが少ないため、体力の消耗も最低限で済みます。
中には、2人目を無痛分娩で出産され、退院後すぐに、ご主人がうっかり忘れていたベビーベッドの組み立てを自分でやった、という、たくましい産婦さんもいたほどです。


 


さらに無痛分娩は、出産する日をあらかじめ決められる計画出産なので、心の準備や生活の段取りができることも大きなメリットでしょう。
痛みに弱いだけでなく、早めに仕事の復帰を考えている妊婦さんや、上のお子さんの世話が気になる経産婦さんにも、大変適した出産方法なのではないかと思います。


お話を伺った先生のご紹介

中林 靖 先生(中林病院 副院長)


埼玉医科大学医学部卒業 医学博士。平成22年 日本産婦人科・新生児血液学会 優秀演題賞、24年 腎と妊娠研究会 学術奨励賞、25年 日本産科婦人科栄養・代謝研究会 学術奨励賞、26年 International Society for the Study of  Hypertension in Pregnancy Travel Award 受賞。総合母子保健センター愛育病院、富山大学大学院を経て現職。多忙な毎日を送りつつ「仕事をしている時が一番落ち着きます」と笑顔で語る中林先生。休日が取れると、同じ産科医である奥様、小学生の娘さんと旅行を楽しむ、家族思いのお父さんでもある。

≫ 中林病院

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