HOME > 妊娠・出産 > その他 > 妊娠中のママの体重管理は、赤ちゃんの未来の成人病予防になる!
HOME > 妊娠・出産 > その他 > 妊娠中のママの体重管理は、赤ちゃんの未来の成人病予防になる!

妊娠中のママの体重管理は、赤ちゃんの未来の成人病予防になる!

コラム 妊娠・出産

妊娠中のママの体重管理は、赤ちゃんの未来の成人病予防になる!

妊娠中の体重をコントロールする目的や重要性にはどんな根拠があるのでしょうか。お腹の赤ちゃんとともに心身を快適に過ごす工夫を、ごきそレディスクリニックの小川麻子先生にお話を伺いました。

2018.5.10

あとで読む

"小さく産んで大きく育てる"は、ひと昔前の考え方


妊娠中の体重管理は安産のために最も大切なポイントのひとつです。 しかし、妊娠中のつわりが終わった反動で食べ過ぎたり、体が重くなるにつれ運動しなくなったり、体重のことを考えすぎてストレスになったりなど、妊娠中の体重管理にはさまざまな悩みが尽きません。


  母体の体重が増えすぎると、赤ちゃんも大きくなりすぎて、難産や、それによる赤ちゃんの仮死、帝王切開の可能性が高まるというリスクがあります。また、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病の要因のひとつに母体の体重増加があるので、妊娠中の体重はあまり増やしてはいけないとも言われています。


  そのため、ひと昔前までは"小さく産んで大きく育てる"のが正しいとされていました。


  ところが、ここ数年、妊娠中の体重管理や食事制限について、あまり厳しく指導してはいけないのではないかという流れが出てきました。 これは、英国・サウザンプトン大学医学部教授のデビッド・バーカー氏が1980年代に発表した「成人病胎児期発祥説」にも由来します。


 


妊娠中の低体重は、子供の生活習慣病のもとになる!?


「成人病胎児期発祥説」とは、成人病や生活習慣病の起源は胎児期の低酸素・低栄養状態にあると考えられる説で、"バーカー説"とも呼ばれています。


  これは、母子の健康状態や栄養状況が現代と比べて劣っていた1920~30年代に産まれたヨーロッパ人の出生体重と疾病リスクの関係について行った調査で、特に非常な飢餓状態にあった地域で産まれた子供のほぼ全員が、大人になって生活習慣病を発症しているという疫学的データを発表したものです。


  つまり、妊娠時に母親が十分な栄養や食事を摂取できず、子宮内胎児発育遅延(IUGR)の状態、あるいは低出生体重で産まれた子供は、成長後の高血圧や動脈硬化、糖尿病などの成人病あるいは生活習慣病のリスクが高いという結果で、このデータはその後の多くの大規模研究によっても立証されました。


  日本でいえば、ちょうど敗戦直後に産まれた人たちが成人した後の、高度経済成長時代から成人病率が高まったことからもバーカー説の正しさがうかがえます。


 


現代は、妊娠中に食べないことの方が大きな問題


なぜ、今、"バーカー説"が注目されているのでしょうか。それは、現代のダイエット志向がひとつの原因とされています。


  要するに、現在の日本ではやせ型の女性が20%と多く、20代女性のエネルギー摂取量は年々減ってきているというデータもあり、実際に低出生体重児の割合は増加しています。


  過度の体重増加は、前述のように妊娠高血圧や難産などのリスクがもちろんありますが、今はむしろ、妊娠中に食べないことの方が大きな問題とされているのです。


  やせ型の女性には低出生体重児分娩のほか、早産のリスクも高いといわれています。


 


妊娠前のBMIを基準にした体重コントロールを


 日本産婦人科学会では2017年度のガイドラインにおいて、妊娠中の体重増加については、妊娠前の体格「BMI値」に応じて、個人差を考慮したゆるやかな管理をするようにと指導しています。


 BMI(ボディマス指数)とは、1994年にWHOが定めた肥満判定の国際基準で、体重と身長の関係から算出される肥満度を表す体格指数です。


 


●BMIの計算式


                       体重(kg)                


               身長(m)×身長(m)


 


 BMIでは18.5未満を低体重、18.5以上25.0未満を標準、25.0以上を肥満と定義しています。


 そして、非妊娠時BMI値が標準範囲の妊婦が、妊娠40週の時点で約3kgの単胎児を出産するのに必要な体重増加量は11kgとされています。


 まずはBMI値による分娩時のベスト体重の到達点を決め、BMI上でやせ過ぎの人は9 ~12kgまで増えるようにコントロールし、BMIが25以上の人は5kg未満に、BMI28以上の人は、分娩時には28未満に近づけることが大切になります。


 ただ、もともとやせ型の妊婦さんはなかなか体重が増えにくく、高齢出産の人が太り過ぎた場合には体重が戻りにくいという問題もあり、そこは個人差に応じたサポートやコントロールが必要になってくるところです。


 


好きなものを食べ過ぎないようバランスよく、が大事


妊娠中に体重管理をする上で、絶対にこれを食べるべきだとか、何を食べてはいけないということはありません。嫌いなものを無理して食べる必要もありません。


  大切なのは、好きなものを食べ過ぎないように、バランスよく食べることです。


  ただ少しだけ注意したいのは、塩分や、ヘルシーと思われがちな果物のとり過ぎです。特に、果物の果糖は摂取し過ぎると中性脂肪を増やす原因にもなり、肥満傾向や高齢出産の人は、食後のフルーツもカロリー計算に入れることをおすすめします。


  また、妊娠中の体重管理は、時にストイックになってしまいがちですが、その目的が"赤ちゃんのため"であることは忘れないようにしたいものです。


  体重の増減に神経質になるあまり、イライラしたり、何を食べていいのかわからなくなってしまったら、「これ食べていいかな? 今、食べても大丈夫かな? 」とお腹の赤ちゃんにそっとたずねてみてもいいかもしれません。きっと気持ちが落ち着いて、過剰な我慢意識も食欲もセーブできると思います。


 





小川先生より まとめ


妊娠中の体重管理は、妊娠前のBMI値に基づく個人差に応じたコントロールが大切。特にやせ型の人は、子宮内胎児発育遅延(IUGR)や低出生体重による「成人病胎児期発祥説」も懸念し、必要な栄養やカロリーをきちんと摂取することが重要です。妊娠中の体重管理の目的が"赤ちゃんのため"であることを忘れず、好きなものだけを食べ過ぎないようにしつつバランスよく食べることで、過剰な我慢も食欲もセーブできるのではないでしょうか。



お話を伺った先生のご紹介

小川 麻子 先生(ごきそレディスクリニック 院長)


愛知医科大学卒業後、臨床研修医を経て医学博士取得。3児の母であり、次女を出産して5年後の1994年に開業。「女性のための女性によるクリニック」をモットーに、自らの子育て経験も生かした親しみのある産婦人科診療に評判が高い。婦人科の思春期・更年期に応じた漢方薬の処方にも定評がある。

≫ ごきそレディスクリニック

image


あとで読む

この記事に関連する記事

この記事に関連する投稿

女性のためのジネコ推薦商品

最新記事一覧

Page
top