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甲状腺は治ったはずなのに、生理や排卵がないのはなぜ?【特集:排卵障害の不妊治療】

コラム 不妊治療

甲状腺は治ったはずなのに、生理や排卵がないのはなぜ?【特集:排卵障害の不妊治療】

20〜30代の女性に多いといわれる甲状腺機能の異常の原因や症状とは?妊娠・出産とのかかわりは?山下先生に聞きました。

2018.5.20

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20〜30代の女性に多いといわれる甲状腺機能の異常には、どんな原因や症状があるのでしょうか。
また、妊娠・出産とのかかわりや治療法について、
うめだファティリティークリニックの山下能毅先生にくわしく教えていただきました。


※2018年5月25日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.38 2018 summer」の記事です。





相談者:みこさん(30歳)からの相談


▶ 甲状腺異常で生理がきません。…不安です。


今年になり甲状腺機能亢進症になりました。すでに数値は正常ですが、排卵と生理が止まりました。薬で生理を起こしても、茶色でほんの少しの量。こんな状態では、次の排卵はこないだろうし、生理も止まりそうです。婦人科の主治医は「1〜2週間様子を見て…」と、のんびりした感じですが、待っても症状が改善されるわけもなく、結局は薬を飲むことになるので、待つ時間が無駄に感じられます。甲状腺は治っています。生理が正常になったら、妊娠は可能でしょうか?






Doctor’s advice


〜甲状腺ホルモンのコントロールができていれば妊娠・出産は可能〜

甲状腺の異常は亢進症と低下症どちらも、月経障害や排卵障害があり、妊娠後の赤ちゃんにも影響を与えます。特に亢進症が疑われる場合は、甲状腺の専門医のもとできちんと症状をコントロールしながら、妊娠をめざしてください。




お話を伺った先生のご紹介

山下 能毅 先生(うめだファティリティークリニック)


大阪医科大学医学部を卒業後、北摂総合病院産婦人科部長・大阪医科大学産婦人科病棟医長、医局長、講師として、不妊治療や腹腔鏡手術に積極的に取り組む。2014 年、宮崎レディースクリニックの副院長に就任し、2017年4月、同院の院長に。

≫ うめだファティリティークリニック

甲状腺機能の異常は生命の維持にかかせない重要なホルモンが関係


甲状腺は、首の前面にある蝶々の形をした小さな臓器です。下垂体から出るTSH(甲状腺刺激ホルモン)が甲状腺を刺激して分泌される甲状腺ホルモンは、全身の代謝をつかさどる生命維持に欠かせない必須のホルモンです。
甲状腺の機能が高まり、甲状腺ホルモンの分泌が過剰になることを甲状腺機能亢進症といいます。新陳代謝が過剰になり、体がつねに活動している状態になるので、脈拍数が増えたり動悸がしたり、暑がりになって汗をかきやすくなります。バセドウ病(グレーブス病)が代表的で、先の症状のほか、20~30%の人に眼球が突出するなどの特徴的な症状が現れます。
一方、甲状腺の機能が弱まり、甲状腺ホルモンの分泌が低下した状態を甲状腺機能低下症といいます。新陳代謝がうまくいかなくなることで、脈拍数の減少、無気力、冷え、肌の乾燥などの症状が現れます。代表的なものには、橋本病(慢性甲状腺炎)やクレチン病(先天性甲状腺機能低下症)があります。



 



20~30代の女性に多く月経・排卵障害や妊娠後の胎児に影響も


甲状腺の異常は男性よりも女性に多くみられ、発症のピークは20~30代といわれています。甲状腺機能亢進症と低下症どちらにも共通する不妊の原因には、月経障害と排卵障害があります。
さらに、亢進症の人は妊娠初期に一時的に症状が重くなることから、早流産や死産、低体重児、妊娠高血圧症候群などのリスクが高くなります。低下症の人も早流産や死産、低体重児、胎盤早期剝離などに注意が必要です。また、低下症のお母さんから生まれたお子さんは低下症になりやすいといわれています。甲状腺に異常がある場合は、妊娠前のホルモンコントロールがとても大切になります。


血液検査で判断亢進症と低下症では治療方針が異なる


甲状腺の異常は血液検査ですぐにわかります。婦人科を受診される人のなかには自覚症状がなく、不妊症で検査をしてみたら異常が見つかったという潜在性のことも多くあります。
本来、甲状腺機能の検査は10項目以上あるのですが、婦人科で調べられるのは、甲状腺ホルモン値(血中tーT4濃度、血中tーT3濃度)と、甲状腺刺激ホルモン(血中TSH)のみです。正常値の目安は、tーT4は4〜12 μg /dl、T3は80〜180ng/dlとされ、tーT4が15 μg /dl以上、tーT3が200ng/ dl以上になると甲状腺機能亢進症、また、tーT4が4 μg /dl以下 、tーT3が80 ng/dl以下になると甲状腺機能低下症が疑われます。TSHについては、アメリカ内分泌学会の基準を参考に、2.5 μlu/ml以下が望ましいとされています。
低下症の場合は、婦人科でチラーヂン®やチロナミン®などのT3製剤を用いて、不足した甲状腺ホルモンを補う治療を行います。一方、亢進症の場合は、婦人科での治療に限界がありますので、当院では甲状腺の専門医をご紹介し、きちんと診断・治療してもらうことをおすすめしています。治療については、チアマゾールやプロピルチオウラシルなどの抗甲状腺薬を用いた薬物療法、さらに症状が重くなると放射性ヨードを用いた治療が行われます。後者の場合は、治療から妊娠まで1年以上あければ、妊娠・出産に問題はないと考えられています。そのため、妊娠・出産を希望される場合は、あらかじめ専門医の許可が必要になります。


血液検査で判断亢進症と低下症では治療方針が異なる


みこさんは、婦人科の先生ではなく、甲状腺の専門医に相談されたほうがいいと思います。「甲状腺は治った」とありますが、生理がきちんときていないのには何か理由があると思います。もしかすると、亢進症は改善されたけれども、今度は低下症になっているのかもしれません。先ほどお話ししたように、亢進症と低下症どちらにも月経障害と排卵障害がありますから、甲状腺ホルモンがきちんとコントロールできているのかをみていく必要があります。
まずは専門医と相談しながら、妊娠をめざしていきましょう。そのうえで、まだ年齢が30歳とお若いですから、積極的に排卵誘発剤を用いて月経を起こしていくといいと思います。


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