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不妊治療の現場と周辺 日本生殖補助医療標準化機関JISARTとは?その取り組みに迫る!1

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不妊治療の現場と周辺 日本生殖補助医療標準化機関JISARTとは?その取り組みに迫る!1

2010.9.7

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不妊治療の現場と周辺1 ┃ 不妊治療の現場と周辺2


日本の生殖医療の質の向上と、安心して満足できる生殖補助医療の提供を目的とする団体として、日本生殖補助医療標準化機関(JISART)があります。
今回は、その理念や活動内容について、所属されている先生方にお話をお聞きし、普段は公開されることのない、施設認定審査の現場をレポートします。





■ JISARTについて~理事の視点から
施設同士が切磋琢磨し合うことで、不妊治療のレベルが上がっていくのです 田中 先生

JISARTの取り組みにおいて最もよいと思われる部分は、まず一つに、同業者がお互いの施設を審査し合えるということです。
医師同士がチェックし合うということは、要するにライバルにすべてを見られるということ。よくないところはきちんと指摘し、それぞれの意見を述べて、チェックする。その結果、モチベーションが高まり、医療全体のレベルの向上に繋がっていくのだと思います。

もともとJISARTは、オーストラリアの制度をモデルに構築されています。オーストラリアの制度が日本と異なるところは、全額政府が負担している組織だということ。だからこそ厳しい部分もあります。お金がかからないかわりに、全データの提出を求められたり、規定を守らないような場合はライセンスを取り上げられたり。組織の背景は異なりますが、そういう部分を手本に組み立てているため、日本でもその厳しい面が生かされています。

もう一つの利点は、JISARTのなかに倫理委員会を設けていることです。医療の現場では、本当にさまざまな問題が起こりますよね。なぜ問題が起こるのかというと、医師と患者の一対一で契約が交わされ、第三者が入ってないからです。患者は医師の意見が絶対だと思い込みがちですし、かといって医師も人間ですから、常に絶対正しいかといえば、そうではない。そこで同業者、たとえば別の医師やカウンセラーが入って、第三者からの意見が加わることによって、新たな局面が見えるかもしれません。この2つの点が、JISARTにおける最も意義あるものだと思います。

ただ、JISARTに所属しているところだけが優れた施設であるということではありません。これからも、我々の目指す不妊治療の方針や活動に賛同してくれ、JISARTに参加してくれるクリニックが増えていくのではないかと考えています。理想のあり方は、不妊治療のための技術や設備が十分かどうか、厳しい検査をクリアし、前述の2点のような基準を生かして、それぞれが切磋琢磨していること。

JISARTとしては、この組織が持っている特殊性を生かして、今後の日本の生殖医療の向上に少しでも繋がればと望むばかりです。


■ JISARTについて~培養環境とカウンセリングの面から
徹底された厳格な審査が世界レベルの施設をつくりあげます 宇津宮 先生

JISARTには第三者による審査システムがあります。これはJISARTに属する施設のなかで、審査される施設以外からランダムに選ばれた医師や看護
師、事務などがチームを組み、300以上もの審査項目を一つひとつ徹底的にチェックするというものです。

たとえば、培養環境の場合は、培養室の空気清浄度、培養液のpH値、凍結環境などの項目があり、すべての条件が基準に達していなければなりません。もし是正処置が必要な項目があれば、その施設は3ヶ月以内に指摘された箇所を改善しなければならず、それ以上かかる場合は一からやり直しになります。

また、心理カウンセリング業務についても厳しい審査項目が設けられていますが、実際にはまだ、その必要性やあり方についての認識に、各施設によって温度差があるというのが現状です。
本来、医師はデータに基づいた不妊治療を行い、心理カウンセラーは患者さんの心を支援するものです。医療とカウンセリングはまったく違う分野になるのですが、そういった認識を持っている施設がまだとても少ない。日本の生殖医療の技術は世界レベルの発展を遂げていますが、心理面のケアはまだまだ十分とはいえません。ですが、治療を行うなかで、カウンセリングを必要とする患者さんはたくさんいます。ただ「赤ちゃんが授かればいい」ではなく、そこに至るまでの心理状態もおろそかにはできません。

そのようなことを踏まえ、JISARTのなかで心理カウンセリング業務を機能させていくためにも、現在、しっかりとした基準をつくり始めています。


■ JISARTについて~倫理委員会の面から
非配偶者間の生殖医療を正しいかたちで根付かせる努力をしています 辰巳 先生

JISARTでは、独自の倫理委員会を設けており、不妊治療における倫理的な問題をきちんと管理しています。

JISARTに所属する施設は国内のみならず、世界的に見てもレベルの高い施設です。そこで行われている最先端の医学研究や臨床応用について、生命倫理および医療倫理に基づき、さまざまな問題を、臨床医学系、生命科学系、倫理・法律系、一般市民代表ら、それぞれの分野の日本のエキスパートであるJISART倫理委員が審査しています。

そしてもう一つ、倫理委員会が力を入れて取り組んでいるのが、非配偶者間の生殖医療です。
この問題は10年以上前から厚生労働省で断続的に検討を続けているのですが、いまだに法律も整備されていません。早発卵巣不全などで、この方法しか妊娠の可能性のない方々が多くいます。このような方々は年齢的なこともあり、もう待ってはいられないのです。

そこで、JISARTでは、これまでの厚生労働省の委員会の答申にできるだけ沿ったガイドラインを作り、倫理委員会の厳しいチェックの下で非配偶者間生殖医療を始めているのです。
この問題は、人間の生命や人生を左右する大切な問題ですから、取り組むからにはそれに関わるすべての方が納得する最良の結果を出さなければいけません。そこで倫理委員会では、卵子の提供をする夫婦、提供を受ける夫婦から詳細なヒアリングを行い、この医療を行う施設の医師やカウンセラーに指示やアドバイスを行い、最終的に大丈夫と判断したケースのみを承認するのです。

実は、私個人としては、基本的には非配偶者間の生殖医療に反対の立場をとっているのですが、これだけのことをしたうえで行うのなら、よい結果が出るだろうと思っています。「当事者がやりたいと思っているのだからよいのでは」と安易に進めればいつか必ず問題が起こってしまいます。一組一組、しっかりとカウンセリングを行い、出生後も告知を含めた継続的なサポートを行っていく。

そのように丁寧に仕事をしていくことが、最終的に非配偶者間の生殖医療が正しいかたちで日本に根付いていくことに繋がるのではないかと考えています。


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