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チョコレート嚢胞に筋腫、内膜症、無精子症と問題多く……妊娠にたどり着く可能性は?【田中 温 先生】

コラム 不妊治療

チョコレート嚢胞に筋腫、内膜症、無精子症と問題多く……妊娠にたどり着く可能性は?【田中 温 先生】

「今後どのような方法で排卵誘発するか、または内膜症の治療をすべきか悩んでいます。また、生理を止めると卵巣機能が低下すると聞きましたが……。このような状況で妊娠は可能ですか?」

2012.6.4

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厳しい状況の場合の今後の治療、妊娠の可能性についてセントマザー産婦人科医院の田中温先生に伺いました。




相談者
どんぐりさん(38歳)
■ チョコレート嚢胞と子宮筋腫について
私は右卵巣に5cmのチョコレート嚢胞と、子宮外側に筋腫が2個(大きいほうは6cm)があり、主人は無精子症です。1回目はセロフェンⓇと注射4回で、2個採卵できましたが4分割で受精止まり。2回目はブセレキュアⓇ点鼻とゴナールエフⓇ11日間注射で卵胞は10個ありましたが、いずれも空。3回目はセロフェンⓇのみで卵胞2個、採れたのは未熟卵1個で成熟せず。先生は「卵子の質の問題で、内膜症が悪いのでは」とのこと。今後どのような方法で排卵誘発するか、または内膜症の治療をすべきか悩んでいます。また、生理を止めると卵巣機能が低下すると聞きましたが……。このような状況で妊娠は可能ですか?

どんぐりさんのデータ
■検査・治療歴
1年前から不妊治療を開始。不妊の原因となる病名は、チョコレート嚢胞、子宮筋腫、子宮内膜症。採卵3回、顕微授精1回。血液検査等は問題なし。要因は、卵子の質にあり、内膜症では、との診断。子宮内膜症の治療を検討中。
■現在の治療方針
排卵誘発にて、多くの卵子を採る方針。サプリメントはカルニチンを1日2回。
■精子データ
無精子症。その他のデータは不明。




子宮内膜症の腹腔鏡手術か体外受精がどんぐりさんへのベストアンサー。転院も視野に入れてみては



ジネコ:どんぐりさんの相談内容について、先生のお考えはいかがですか。


田中先生:ひと通り目を通して、疑問点が2つありました。
まず、ご主人の無精子症という診断。不妊治療は、精子が確保できなければスタートできませんが、どんぐりさんはこれまで3回治療されています。本当に無精子症であれば、専門的な治療が必要になってきますが、精子の数が少なくても、形がよくて、多少でも動いていて、顕微授精の技術があれば、男性側の不妊原因としては心配する必要はありません。詳しいことが書かれていないのではっきりとは言えませんが、ここでは閉塞性無精子症という前提で話を進めることにしましょう。
もう1つの疑問は、排卵誘発の方法は適当だったのか、ということです。通常採卵する場合、1~2個程度ですが、10個も採れています。しかし、すべてが空だったという結果をどう解釈するか。卵胞と子宮内膜症はとても似ているため、針を刺してみたが実はそれは子宮内膜症だったために空っぽだった、ということもありますが、子宮内膜症であれば真っ黒な血が引けてきてすぐにわかるので、この場合は違うでしょう。
採卵した10個が本当に卵胞であり、それが空だったのなら、排卵誘発法が合わなかったとしかいいようがありません。ゴナールエフⓇはFSH製剤ですからLHは含まれていません。治療はブセレキュアⓇ点鼻を用いたロング法で、LHのホルモンを下げていると推測されますが、LH値が低い状態だと大抵、卵胞は空っぽになるんです。どんぐりさんはLH値が下がりすぎていた可能性がありますね。


ジネコ:チョコレート嚢胞、子宮筋腫、子宮内膜症があり、厳しい状況のようですが……。


田中先生:子宮筋腫は妊娠に直接的には関係ありませんが、採卵しにくかったり、移植しにくいという、子宮の変形の原因になります。筋腫は薬では治りませんから、完治させるなら取るしか方法はありません。
それよりも問題なのは、子宮内膜症です。子宮内膜は1カ月間で増殖して剥奪するもので、1~2mmの内膜が10倍近くになって、またゼロになる。人間の体内でそれだけのスピードで増減する組織というのは、ほかにありません。それだけ子宮内膜の組織というのは増殖力が強いのです。子宮内膜症は、それがあまりにも強いがために、通常は子宮の中だけにあるべき内膜の組織が、状況次第でいろんな箇所に飛び火してしまうものです。卵巣にできれば卵巣子宮内膜症になり、それが蓄積して古い血液がたまるとチョコレート嚢胞になります。どんぐりさんの場合は右卵巣に5cmのチョコレート嚢胞がありますね。これは、治療方法を変える決断をするべき大きさです。


ジネコ:その理由と、治療方法は?


田中先生:チョコレート嚢胞は良性腫瘍ですが、5cm以上の大きさのまま放置すると「淡明細胞がん」に変性し、がんになるリスクが高くなります。38歳という年齢を考えると、薬による治療は時間がかかるのでおすすめできません。腹腔鏡手術で摘出するか、体外受精に進むかです。
子宮内膜症は取らない限り完治することはありませんし、必ず転移するやっかいな病気です。内膜症がある右側の卵巣から採卵できていないのであれば、なるべく早い時期に右側を全部摘出して、正常な左側の卵巣だけで妊娠しやすい環境をつくることに専念するか、もしくは右の卵巣からも採卵できているのであれば、両方を残しつつ短期間で結果が出る体外受精をするか、選択肢はこの2つのどちらかに絞られます。
状況が厳しいことは確かですが、どんぐりさんの症状に合った治療を行うことができれば、妊娠の可能性は十分にあります。


ジネコ:アドバイスをお願いします。


田中先生:これまでに3回治療して、10個採卵できてもすべて空だったということは、決定的に何かが間違っていると断言できますし、医師の技量にも問題があると思われます。ARTは5回が治療の目安になりますから、同じ病院で残りの2回分を続けるのであれば、ホルモン値を測るという基本的なことを確実に行うことと、排卵誘発法の選択についてしっかりと検討してもらい、説明を受けるべきです。
時間が経てば経つほど加齢が原因となる要素も増えてきます。主治医の先生と相談したうえで、どんぐりさんが納得のいく答えが出ないようであれば、転院も1つの手段として考えてみてはいかがでしょうか。



田中 温 先生
順天堂大学医学部卒業。越谷市立病院産科医長時代、診療後ならという条件付きで不妊治療の研究を許される。度重なる研究と実験は毎日深夜にまで及び、1985年、ついに日本初のギフト法による男児が誕生。1990年、セントマザー産婦人科医院開院。日本受精着床学会副理事長。2009年~2011年までJISARTの理事長に就任。「ラガーマンはユニフォームを着ると気持ちが引き締まる。今も当時のジャージを持っているし、試合観戦も楽しんでいますよ」と先生。ラグビーの話題になると笑顔がいっそう素敵です。





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