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着床前診断について。

専門医Q&A 女性の健康

着床前診断について。

2017.4.19

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ピナさん(32歳)

死産2回流産1回を経験しています。
夫の方に転座があるのがわかっているのですが、この状況で着床前診断を受診出来るのでしょうか?
大学病院からの紹介状は持っていますが未だに相談の予約も取れない状況です。

『流産2回で転座がある場合に受けれる』となっていますが、死産の場合はダメって事でしょうか?流産した方が良かったのかと不安な毎日です…
ちなみに死産した2人も染色体異常が見つかっています。


お話を伺った先生のご紹介

岡 親弘 先生 (東京HARTクリニック)


慶應義塾大学医学部卒(昭和59年)
産婦人科に入局、不妊症・不育症の研究治療を行い
ローズレディースクリニック等々力院長を経て
2000年12月不妊症専門クリニックである東京HARTクリニックを開業。

2005年10月ASRM(アメリカ生殖医学会)にてヒト胚盤胞のガラス化保存法とAS(artificial shrinkage)の有効性についてHARTグループとして発表し、日本人で初めて表彰される。

産婦人科専門医。日本生殖医学会生殖医療専門医。
ASRM(アメリカ生殖医学会)会員
ESHRE(ヨーロッパ生殖医学会)会員
日本IVF学会 評議員
日本受精着床学会 評議員
日本産婦人科学会 専門医



≫ 東京HARTクリニック

 まず、ご存じない方のために「転座(てんざ)」についてご説明しましょう。

転座とは、染色体異常のひとつで、染色体の数や構成は通常どおりながら、配置の順番が入れ替わっていたり、一部が切断されていたりするものです。遺伝子として足りない情報はなく、厳密に言えば“異常”ではありませんが、パートナーとの染色体の組み合わせによっては、遺伝子の不足が生じ、流産や死産の原因になり得ます。

 今のところ日本では、胚(受精卵)の選別は命の選別につながることから、倫理上に問題があるとされ、重篤な遺伝病などが疑われる場合以外には、着床前診断は原則として行われていません。質問者さんは、大学病院への紹介状をお持ちとのこと。死産で原因が染色体異常であることが分かっていれば、着床前診断の適応とはなるでしょう。しかし、現時点では診断できる施設や技術者は極めて少なく、待たされることが多いのが現状です。

 流産の多くは染色体異常が原因であり、着床前診断で流産率を減少させることは可能かと思います。アメリカなどでは一般的に行われていますが、受精卵に傷をつけるため、一般的な体外受精より妊娠率はかえって低くなります。

 しかし、そもそも染色体や遺伝子を操作したり、染色体そのものを正常化する治療が確立していないのですから、染色体異常を見つけてもどうすることもできません。現に、アメリカでも、ヨーロッパでも、着床前診断を行ったからといって、臨床データとして妊娠率は上がってはいないのです。

 日本でもいずれは着床前診断が普及する時代が来るかもしれませんが、メリット・デメリットを踏まえた上で、賢く利用して欲しいと思います。


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