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〈最終回〉俵史子先生の生殖周産期講座 〜妊活中から始める母体管理〜

コラム 妊活

〈最終回〉俵史子先生の生殖周産期講座 〜妊活中から始める母体管理〜

妊娠がゴールではなく母子ともに元気で出産することが最終目標。俵IVFクリニックでは産科に移る妊娠12週まで診察する「生殖周産期外来」を新設。切迫早産や早産など分娩のリスクについて、俵史子先生と周産期専門医の村林奈緒先生に話を伺いました。

2018.12.19

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※2018年11月22日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.40 2018 Winter」の記事です。


Pick up
切迫早産、早産とは?
切迫早産は妊娠22週から36週の間に規則的な子宮収縮があり、子宮の入り口も開いてきてしまい、早産になりかけている状態。早産は満期にならずに実際に生まれてしまうことで、22週0日から36週6日までの間に分娩になる場合のことをいいます。

POINT
事前に自分のリスク因子を理解し
妊婦健診でチェックしながら対処法を決めていきます

お話を伺った先生のご紹介

俵 史子 先生(俵IVFクリニック)


浜松医科大学医学部卒業。浜松医科大学 非常勤講師、臨床准教授。2004年愛知県の竹内病院トヨタ不妊センター所長に就任。2007年、俵IVFクリニックを開業。2015年静岡駅前に移転、リニューアルオープン。

≫ 俵IVFクリニック

お話を伺った先生のご紹介

村林 奈緒 先生(俵IVFクリニック)


浜松医科大学卒業、三重大学大学院医学系研究科(博士課程)修了。浜松医科大学に俵IVFクリニック寄付講座として開講した「生殖周産期医学講座」の准教授に就任。俵IVFクリニックでは生殖周産期外来(妊娠初期の健康管理)を担当。

≫ 俵IVFクリニック

切迫早産、早産の定義や原因について教えてください


切迫早産は妊娠22週から36週の間に規則的な子宮収縮があり、しかも子宮の頸管(入り口)が開いてきてしまっているような状態、もしくは子宮収縮がなくても子宮の入り口が2cm以上開いてしまっている状態のことをいいます。早産になりかけているということですね。
また、早産は実際に満期にならずに生まれてしまうことで、22週0日から36週6日までの間に分娩になる場合と定義づけられています。ちなみに、22週未満だと赤ちゃんは生きて生まれることはできないので流産ということに。日本では全体の分娩の約5%くらいは早産だといわれています。
早産になってしまう原因は大きく分けて、感染がある場合、ない場合の2つです。感染がある場合というのは子宮の入り口が細菌などに感染して炎症が発生(細菌性腟炎)するものです。それが子宮のほうまで及ぶと収縮が起こりやすくなって切迫早産の原因になることがあります。
感染が原因ではないケースは、もともと子宮の入り口が開きやすい体質(頸管無力症)であったり、子宮頸部の初期がんや前がん病変で子宮の入り口の手術(子宮円錐切除術)を行った場合など。双子や三つ子など多胎妊娠の場合も、容量的に重くなるので子宮が耐えきれずに赤ちゃんが早く出てきてしまうことがあります。


切迫早産の予兆やサイン、なった場合の対処法は?


妊娠初期の段階でお腹が張りやすい人、出血しているような人は早産のリスクが高まってくるといわれています。お腹の張りが強いと生理痛のような痛みを伴う場合も。
対処法としてはその方の所見によって異なります。少し張る感じでも安静にすれば収まるような状態で、子宮頸管の長さがある程度保たれていれば、通常は自宅で安静にしながら、外来通院で経過を見ていくことが多いかと思います。安静にしていても子宮の収縮が収まらなかったり、子宮の入り口が短くなって開いてきている傾向がある時には、入院をして点滴治療などを行います。
赤ちゃんの状態が悪くなったり、感染がひどい場合には早めに産ませる方向になることもあります。できればちゃんと大きくなるまでお母さんのお腹の中にいられるように対応します。赤ちゃんが自発呼吸をできるようになるのはだいたい34週以降なので、まずはそこをクリアし、できれば37週以降の正常な出産を目指します。そのために安静にしたり、入院などの対処をしていくんですね。


早産を避けるための予防法はありますか?


予防については難しく、手術などリスクが明らかになっている場合を除き、子宮の入り口が短くなってしまうかどうかは妊娠してみないとわかりません。自分のリスク因子を事前に理解し、妊婦健診をきちんと受けて、その時の指示に従っていただくというのが一番の予防になるでしょう。
最近、感染による早産リスクがある方には、ラクトフェリン(感染防御機能をもったタンパク質)の投与が有効となる可能性があることが報告されています。副作用も少ないことから注目していきたい治療法です。
また、麻疹(はしか)にかかると高熱が出て子宮も収縮してしまうので、早産につながるリスクが。まだ予防接種を受けていない方は、妊娠前にきちんと受けておいたほうがいいでしょう(村林先生)。


不妊治療と早産、因果関係はあるのでしょうか?


ART妊娠後は早産の頻度が高いという報告もありますが、それを否定する報告も数多くあります。不妊治療を受ける多くは比較的高齢の方で、異常分娩を起こしやすい子宮筋腫や子宮腺筋症をもっていたりします。また妊娠経過によっては、早く赤ちゃんを出さなければならないこともある妊娠高血圧症候群など、合併症が起こるリスクが高まるため間接的に影響する場合があるかもしれません。
2015年の日本産科婦人科学会の周産期統計では早産率は14%、当院の2015~2016年の統計では7.3%でした。この数値からみると、当院のデータですが、ART患者さんの早産率は高くないことがわかります。何の治療をしたから早産になるということではなく、妊娠前や妊娠後、どのような適切な対応をしたかで早産率は変わってくるのではないでしょうか(俵先生)。


先生から
・不妊治療を受ける人は年齢が高め。そのため間接的に早産リスクが高まることも
・細菌感染が因子の場合、事前の治療で早産のリスクを低減できることもあります

出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.40 2018 Winter
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