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シート法と採卵を同周期で行うのは可能でしょうか?

コラム 不妊治療

シート法と採卵を同周期で行うのは可能でしょうか?

限られた診察時間の中では、慌ただしくて治療についての疑問を解消できず診察を終えてしまうということはありませんか。採卵と移植をいつ行うか、疑問を感じながらも聞きそびれてしまったみーさんの質問を、田村秀子婦人科医院の田中紀子先生に伺いました。

2018.12.19

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※2018年11月22日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.40 2018 Winter」の記事です。


相談者:みーさん(36歳)
● シート法と採卵を同周期で行うことは可能?
凍結胚を①おそらくシート法?(先に培養液を移植して、あとで凍結融解胚を移植すると言われたのでおそらくシート法)で移植すると簡単な説明は受けたのですが、今周期は、採卵はなしとのことでした。年齢も差し迫っていますし②採卵できるものならしておいたほうがよいのではないか、と考えていたら診察時間が終わって聞きそびれてしまいました。
今度診察時に念のため③移植と同じ周期で採卵はできるのか、逆にしないほうがよいのか、聞いてみようとは思っているのですが、経験のある方がいらっしゃいましたら教えていただけないでしょうか。
④人気のある不妊治療の病院なので、診察時間が短くていつもよくわかりません。よろしくお願いいたします。

ドクターにはこう聞いてみよう!
治療を中途半端にしないためにも
疑問に思うことは聞いて解決を
治療の途中でも疑問に思うことがあったら、「こういうことは無理でしょうか、質問があります」と手紙を書いては? 何点か要点をまとめて医師にわかるようにしておくと、医師もあらかじめ状況を整理して疑問に答えることができます。

お話を伺った先生のご紹介

田中 紀子 先生(田村秀子婦人科医院)


京都府立医科大学医学部大学院修了。医学博士。アメリカ留学、扇町ARTレディースクリニック勤務を経て、2008 年3月より「田村秀子婦人科医院」勤務。

≫ 田村秀子婦人科医院

シート法が採用されたのは、着床環境を整えるという目的が


①おそらくシート法?

アンタゴニスト法は、ホルモン剤を注射して卵胞を育て、一方で排卵抑制の注射をしながら採卵に適した卵胞の大きさになるのを待つ方法です。薬剤を使う期間が短いことや採卵日のコントロールがしやすいこと、また多くの卵子を採卵できることがメリットとして挙げられています。16個も採卵できたのは、アンタゴニスト法ならではの結果かと思います。
刺激法は、ドクターがその方のAMHや年齢はじめさまざまなデータをみながら選択しているはずなので、それがベストと判断したうえでの結果ではないかと思います。実際に実施してみないとわからないため、アンタゴニスト法で結果が出なかった場合、次回はショート法、あるいはその他の刺激法に変えながら、採卵していく場合が多いです。


自分の卵巣予備能や採卵の状況をふまえて、率直に医師に相談を


②採卵できるものならしておいたほうがよい

胚移植より採卵を先にした方がよいかは、卵巣予備能検査や凍結胚の数によると思います。十分に凍結胚が残っているなら、その凍結胚を戻せばよいでしょう。しかし卵巣機能がやや低い場合などは医師の側から「先に採卵しましょう」という話をすることもあります。
また、受精卵を作るにも、戻すにも相応の時間がかかり、結果がわかって再び採卵となると何カ月も先になってしまいます。時間的に焦る気持ちがあるようなら、採卵を優先した方がよいかを率直に先生に聞いてみてはどうでしょうか。例えばそこで先生が「十分に凍結胚がありますから、先に胚移植をしましょう」と言われたら、胚移植に進んでもよいと思います。医師に言いづらければ、看護師やコーディネーターなどのスタッフとお話ししてみても。今の状況を整理することはとても大事ですよ。


採卵後の子宮の環境は、着床に適さない場合も


③移植と同じ周期で採卵はできるのか、逆にしないほうがよい

最近では凍結融解胚の移植が多くなっています。全胚凍結といって、良好胚をすべて凍結し、その周期では移植せず、別の周期に環境を整えて胚を戻すという考え方です。採卵をした周期は、ホルモンの環境としては通常より過剰になっている場合や、採卵の準備に使用した薬剤の影響でホルモンの環境が着床に適さない可能性もあります。実際に着床率もよくないことから、最近では全胚凍結の考え方が主流になってきています。
このように採卵後は子宮内膜の条件がベストとはいえないので、そこは無理に胚移植を急がず、もし採卵を優先したい場合には、別の周期にゆっくり環境を整えて凍結胚を戻すのがよいと思います。特にシート法を採用するということは、先生に移植の環境を整えようというお考えがあってのことではないでしょうか。シート法に使う凍結した培養液も、採卵周期の胚培養の時から大切に保存してきたものなので、条件があまりよくない時に胚移植するのはおすすめできません。


治療の進め方に疑問があれば必ず聞いてみて


④人気のある不妊治療の病院なので、診察時間が短くていつもよくわかりません。

きっと病院ではひと通りの説明をされているけど、話がサーッと流れていくので、みーさんには内容があまり残っていなかったのではないでしょうか。これまでの治療の経過や体外受精の適応なども、おそらく途中で説明を受けていると思いますよ。
やっぱり卵巣機能のことなど、ご自分の体の状態をある程度知っておいた方がいいです。今一度ご自分の治療を振り返り、どこに問題があるのか、なぜ体外受精に至ったのか、体外受精をして現段階で何がわかったのかを、把握できればいいですね。
治療の節目などに、先生が今後の方針を話されるときがあると思います。みーさんのように胚移植の方向で先生が話をされているのに、「採卵をやったらダメなのかな…」とモヤモヤしていれば、治療は中途半端になってしまいます。そこはあえて話を止めてでも、先生に質問して、そのモヤモヤを払拭することが大切です。


モヤモヤやストレスを解消し、気持ちを楽に
「患者さんの表情や気持ちの変化など、普段の診察からコミュニケーションをとり、その方の状況を把握することはとても大事」と語る田中先生。診察はほぼ決まった医師で、信頼関係が築けている病院ならそれは可能ですが、複数の医師にみてもらう病院ではなかなか気持ちが伝わりにくいことも。
「それでも治療の節目に、『今はどういう状況ですか』と聞いて、疑問は解決したほうがよいし、話しづらければメモにして先生に渡してもよいですね」(田中先生)
医師のほかにも患者さんをサポートするスタッフが充実している病院も多く「これまでの経過について相談したいなら、看護師やコーディネーターにお話ししてみては。胚培養士との時間を設けているところもあります。自分の疑問や不安なども相談できますよ」(田中先生)。何よりも患者自身が納得し、理解して治療を進めることが大事です。
「ちょっと治療がつらいなあ、という時も、その気持ちを伝えてほしいですね。そんな患者さんの気持ちに寄り添いながら、ストレスをため込まないで治療に参加してもらえるよう応援していきたいと思っています」(田中先生)

出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.40 2018 Winter
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