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更年期の関節痛に効く、ホルモン補充療法って何?

インタビュー 女性の健康

更年期の関節痛に効く、ホルモン補充療法って何?

更年期の関節痛にも使われるホルモン補充療法はどんな治療なのか、ひまわりレディースクリニック院長の植田啓先生に伺いました。

2019.1.16

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更年期症状の関節痛にも使われるホルモン補充療法とはどんな治療なのでしょうか? 更年期医療に詳しい、ひまわりレディースクリニック院長の植田啓先生にお聞きしました。




更年期に関節痛!?


45歳から55歳くらいの閉経前後の女性で関節痛に悩む方はいらっしゃいます。特に手指の痛みを訴える方が多く、朝起きると、むくんだりこわばったりしていると言われます。リウマチを疑って専門外来で検査をしても異常なし。整形外科でもやはり異常なしと診断され、複数の病院をまわったすえに婦人科を受診し、ホルモン補充療法(HRT)で痛みが治ったという方は少なくありません。ですから、あきらめてしまう前に婦人科で試しにHRTを受けてみてください。更年期症状の関節痛ならば良くなります。早くて1週間、長くても1カ月で痛みが改善します。


 


更年期に関節痛が起きるのは、関節や腱にはエストロゲン受容体があり、エストロゲンの減少によって受容体が満たされなくなることで関節や腱が腫れて痛みが生じるためと言われています。そこで減少したエストロゲンをHRTで補うと、それが受容体にくっついて痛みが治まるというわけです。肩や膝などの痛みも、更年期症状による関節痛であれば効きます。


 


漢方薬でも関節痛に効く薬はあります。ですが痛みが治まっても、それが更年期症状によるものかどうかはわからないままです。漢方は減少したエストロゲンを補うのとは違い、血流を良くしたり、温めたり、水を調節したり、気を巡らすことで痛みにアプローチするからです。HRTに比べて効き目はゆるやかです。漢方を希望する患者さんには、手指には桂枝加朮附湯や桂枝茯苓丸、肩の痛みには二朮湯、膝には防已黄耆湯などを処方することがあります。


 


閉経後のエイジングケアにHRT?


HRTはエストロゲン減少や欠乏の症状を改善するための薬なので、関節痛だけでなく、ほてりやのぼせ、動悸、不眠など更年期症状(障害)の治療に用いますが、私がHRTに最も注目している点は、薬でありながら予防効果もあることです。


 


女性は閉経を迎える頃にはエストロゲンが欠乏します。それに伴って動脈硬化や骨粗鬆症のリスクが増えます。そこで、HRTでエストロゲンを補充することで動脈硬化や骨粗鬆症を予防するわけです。エストロゲンには血管をしなやかにし、脂質代謝への良い影響があります。また、骨吸収(骨が壊れること)を抑える作用もあります。


 


HRTのベストな開始時期は閉経前後です。早めに始めることで動脈硬化を予防できます。そして、年齢とともにエストロゲンの量を減らしていきます。当院では90歳の女性がごく少量のエストロゲンを今も続けています。ホルモン剤というとがんを心配する方がいますが、子宮体がんは黄体ホルモンの併用で予防できます。乳がんについては、HRT5年以上で少し増えるといわれていますが、そのリスクは小さく、生活習慣による影響と同程度か低くなります。また、乳がんはHRTの有無にかかわらず、11人に1人がかかる病気です。HRTをする場合は1年に1度は必ず検診を行います。それによってがんの早期発見につながるケースも多いのです。それから、子宮のない方はエストロゲン単独の治療になります。この場合は、乳がんリスクは増えません。HRTができる条件の女性(※)はぜひ試してほしいと考えます。


 
※HRTは現在乳がんや子宮体がんにかかっている方、血栓症などの既往がある女性は使用することはできません。


 


ただしHRTを受けるか受けないかという最終的な判断は、ご自身で決定されるのが1番良いでしょう。がん治療などと違って、必ずやるべき治療ではないからです。更年期を迎え、その先の老年期をどう過ごしたいのかを自分に問い、自分で決める。そうすることでエイジングケアを主体的に実行できるからです。


 


現在、HRTに精通するのは日本女性医学学会が認定する専門医で、私もその一人です。HRTや更年期医療が不得意な先生もいらっしゃいますので、学会のホームページに掲載されているクリニックや専門医の一覧を参考にされると良いでしょう。


http://www.jmwh.jp/n-ninteiseido.html


一方、HRTができない方やHRT以外を希望する方には、漢方薬やサプリメントなどがあります。やはり、更年期医療に詳しい先生に相談してみてください。エイジングケアは、一人一人個人差があって良いと思います。


 


更年期は病気じゃない。年齢相応の生活へシフトチェンジ!


更年期は病気ではありません。閉経前後のエスロトゲン減少や欠乏によって体に不調が現れるもので、時間とともに徐々に軽くなり治まっていきます。もちろん日常生活にさしつかえるようであれば、我慢しないで婦人科で治療をしてください。


 


受診するほどでなければ、年相応の生活にシフトチェンジするだけでも、更年期の不調はかなり緩和されるはずです。まず若いころと同じような生活は絶対にダメ。徹夜なんかしようものなら体はもちません。体も年相応になっているので、睡眠不足は避けて体を労わってあげましょう。食事も暴飲暴食するとツケがまわってきます。50歳頃からは代謝も落ちるので気をつけましょう。また運動は体力の維持やストレス発散に効果があるので、積極的に行ってほしいですね。


 


そしてストレスへの向き合い方ですが、ストレスが過剰にかかると更年期の不調をひどくすることがあります。これは私の経験談ですが、30代に子宮内膜症で偽閉経療法をした時には、更年期症状のオンパレードでした。だから更年期を迎えることがとても不安だったのですが、実際に更年期に入ってみると、意外と大丈夫な程度の症状でした。おそらく、30代の時には当時の生活環境が症状を悪化させたのだと思います。卵巣がんの不安や育児、母親の介護、産婦人科医としての重圧など、自らの治療中にいくつものストレスが重なり体も心も破裂寸前でした。しかし、人生の経験を積み重ねてきた更年期には、心に余裕ができたのでしょう。年相応の責任やストレスがあってもやりすごせました。


 


人生の先輩として、婦人科医として、今更年期のさなかにいる女性に、メッセージを送りたいと思います。一度きりの更年期を楽しんじゃってください。家庭や職場の世界とは別に、トキメクものやワクワクする世界を持つのです。音楽のライブや映画、習い事など、なんでもアリです。それを思いっきり楽しみましょう。そうすれば多少の不調はやりすごせ、閉経後の豊かな人生へと必ずつながるはずです!


 


お話を伺った先生のご紹介

植田 啓 先生(ひまわりレディースクリニック 院長)



長野県出身。信州大学医学部卒業。松本協立病院で内科研修後、甲府共立病院産婦人科などに勤務。平成9年夫の留学に伴い渡米。平成10年、相模原協同病院などに勤務後、平成15年ひまわりレディースクリニックを開院。一般婦人科診療のほか、子宮内膜症、更年期障害、漢方、サプリメント、骨粗鬆症の治療や性教育にも力を入れる。月曜日は松本歯科大学(松本市)、新町病院(長野市)で診療。プライベートでは、更年期を迎えた頃にサックスを始める。松本で不定期にレッスンを受けながら、横浜市の産婦人科医4人でサックスアンサンブルを結成するというアクティブな一面をもつ。

日本産科婦人科学会専門医、日本臨床細胞学会専門医、日本東洋医学会認定医、日本女性医学学会認定医。


≫ ひまわりレディースクリニック

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