HOME > 不妊治療 > 顕微授精 > 先生からの転院のすすめは もう見放されたということ?
HOME > 不妊治療 > 顕微授精 > 先生からの転院のすすめは もう見放されたということ?

先生からの転院のすすめは もう見放されたということ?

コラム 不妊治療

先生からの転院のすすめは もう見放されたということ?

自分からではなく、治療を担当している先生から転院をすすめられると「もう見放されたのかも……」と思う人もいるようです。その真意はどこにあるのでしょうか。秋山レディースクリニックの秋山芳晃先生にお話を伺いました。

2019.3.1

あとで読む

※2019年2月25日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.41 2019 Spring」の記事です。


山子さん(41歳)からの相談
顕微授精のため、初めて採卵しました。クロミフェンとHMG併用で1個採れましたが、変性卵子といわれて顕微授精できませんでした。移植のため来院してその結果にショックで脱力しているところに、医師は「転院を考えてみてはどうか」と具体的に都内のある病院名をあげました。しかも「気分転換に」と。医師側から転院をすすめられる理由って何でしょう? その病院の通院期間は半年くらいです。同じ市内にもう1つ不妊専門病院がありますが、方針が違うと転院するメリットってあるのでしょうか。

Doctor’s advice
自院で実施していない異なる治療法のほうが
いいと思った時は転院をおすすめすることも

Message
さまざまな検査や治療を繰り返し試しても「卵子をつくれない」「いい受精卵にならない」という場合は一度環境を変えたほうがよいと考え、まだ若い方でも転院をおすすめすることがあります。それは患者さんに早く妊娠していただきたいという気持ちであって、さじを投げたということではありません。とはいえ、医師からすすめられたらショックに思う方もいるかもしれないので、「選択肢の1つとして転院をすすめられることもある」と頭の隅に置いておかれたらどうでしょうか。

お話を伺った先生のご紹介

秋山 芳晃 先生(秋山レディースクリニック)


東京慈恵会医科大学卒業。東京慈恵会医科大学附属病院、国立大蔵病院に勤務後、父親が営んでいた産科医院を継ぎ、不妊症・不育症診療に特に力を入れたクリニックとして新たに開業。

≫ 秋山レディースクリニック

患者さんに転院をすすめるのはどんな時ですか?


当院でも患者さんに転院をすすめることがありますが、それにはいくつかのケースがあります。
1つは、治療や検査中に対処が困難と思われるトラブルが予測される合併症や既往症をおもちの場合。たとえば高血圧症や不整脈、精神疾患などです。てんかんをもっている方の場合、子宮卵管造影検査などの際、痛みの刺激で発作が起こることもゼロではありませんから、このような方は「内科や神経科もある総合病院で不妊治療を受けたほうがいいのでは」とお話ししています。
婦人科疾患においても同様で、5cm以上の大きな子宮筋腫がある方は早産など妊娠した後にトラブルを起こしやすいので、手術ができる施設、もしくは産科の先生がいて出産までフォローできる施設をご紹介しています。もちろん、手術だけほかの施設で行って疾患が改善すれば、その後、不妊治療は当院で受けるというケースもあります。
それから、ご主人が無精子症で、精巣内精子採取術(TESE)をした後に顕微授精という流れの治療が必要と思われる場合や、通常のやり方ではまったく卵子が採れない早発卵巣機能不全などの場合、専門的な技術や方法をもっている施設への転院をご提案することがあります。
以上のことはどれも、当院よりも専門的な施設で治療を受けたほうが安心かつ安全、スムーズに不妊治療を受けていただけるから、という理由になります。


特殊なケース以外でも提案することはあるのでしょうか


当院と異なる治療方針が患者さんにとってよいと思われる場合も、転院をおすすめすることがあります。たとえば、山子さんのように高齢の方だと、繰り返し刺激してもなかなか卵胞が育たないことがあるんですね。そのような時は「刺激をせず、自然周期で卵子を採るような施設で治療をしてみたらどうでしょうか」とお話しすることもあります。卵巣を刺激すると卵胞が育たないけれど、自然だと排卵するという方もいらっしゃいますから。
患者さんに合うと思われる治療を行っていて、実績があり信頼できる施設名を具体的に推薦することもあります。
また、原因不明の不妊で治療期間が長く、精神的に行き詰まっている場合、年齢が若い方なら治療のお休みを提案します。年齢が高い方だと時間がありませんから、気持ちを切り替えるという意味で「どうしましょうか」と、転院も一つの選択肢としてお話をすることがあります。


投げ出されてしまったように感じる方もいるのでは?


山子さんは先生から「転院を考えてみてはどうか」といわれ、ショックを受けられたようですね。確かに、医師側は好意でお話ししても「見捨てられたみたいで悲しい」と思う患者さんもいるかもしれません。
環境や心境の変化、同じ治療でも薬の使い方などが微妙に違ったりするのか、転院してすぐに妊娠される方もいらっしゃいます。ですから、転院をすすめるのは「もうどこかへ行って」というネガティブなものではなく、「こうしたほうが妊娠できるかもしれない」という気持ちからだと思います。あらゆる可能性を考えて患者さんの妊娠を願うのは、どんな先生も同じだと思いますよ。
もちろん最後に決めるのは患者さん自身ですから、そのまま治療を続けるなら残ってもいいですし、転院してもうまくいかなかったという場合は、また元の施設に戻って来られてもかまわないと思います。


転院したいけれど先生には話しづらいという人も


担当の先生に直接言いづらい時は、看護師や電話で受付事務に伝えてもらってもかまいません。紹介状やこれまでの検査・治療データも、申し出ていただければお渡しできます。
転院先にもっていく内容として、ホルモン検査のデータ、一般不妊治療を受けていたのであれば子宮卵管造影の結果、体外受精であればこれまで行ってきた刺激方法や採卵数などがわかるといいですね。それに加え、麻酔に伴うトラブルやOHSS(卵巣過剰刺激症候群)の有無などの記載もあれば参考になると思います。


出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.41 2019 Spring
≫ 掲載記事一覧はこちら


あとで読む

この記事に関連する記事

この記事に関連する投稿

女性のためのジネコ推薦商品

最新記事一覧

Page
top