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胚の成長を観察・記録する培養室の最新機器とは?【潜入!培養室レポート】

コラム 不妊治療

胚の成長を観察・記録する培養室の最新機器とは?【潜入!培養室レポート】

生殖医療において重要な役割を担っている培養士。普段接する機会が少ない培養士は、培養室でどんな仕事を行っているのでしょうか。また、高度生殖医療における最新機器に関するお話と併せて、うめだファティリティークリニックの山下能毅先生に伺いました。

2019.3.27

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※2019年2月25日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.41 2019 Spring」の記事です。


お話を伺った先生のご紹介

山下 能毅 先生(うめだファティリティークリニック)


大阪医科大学医学部を卒業後、北摂総合病院産婦人科部長・大阪医科大学産婦人科病棟医長、医局長、講師として、不妊治療や腹腔鏡手術に積極的に取り組む。2014 年、宮崎レディースクリニックの副院長に就任し、2017年4月、同院の院長に。

≫ うめだファティリティークリニック

Q胚培養士はどんな役割を担っていますか?


体外受精においては、患者さんからお預かりした大切な卵子と精子の受精のお手伝いと、成長過程の胚(受精卵)を観察・評価し、移植日までしっかり管理するのがおもな役目です。通常は、胚の成長や形態を培養士の目で確認して評価しますが、タイムラプスインキュベーターを導入してからは、さらに人の目で評価しきれない胚の細部の評価が可能になり、移植時に優先度の高い胚を選別しやすくなりました。
今後は新しいシステムを活用し、タイムラプスが解析する膨大なデータを、培養士がどう分析してより有効な評価につなげていくかがカギになります。培養士の知識の深さと技術の高さの両方が伴ってはじめてレベルの高い培養室が維持できます。よりよい培養環境を整えていくためには、国内外の論文や学術誌などから収集した情報を導入したり、さまざまなアイデアを出し合ってレベルを向上させていくことが、いっそう大事になってくると思います。




Qタイムラプスインキュベーターとはどのような機器でしょうか。


通常、胚(受精卵)を観察するためには、インキュベーター(培養器)から胚を取り出さなければなりませんが、インキュベーター自体にカメラがついていて、外に取り出さなくてもモニターで胚を観察できるのが「タイムラプスインキュベーター」です。なかでも当クリニックが採用しているインキュベーターは、1台につき6個ある培養スペースが完全に独立し、それぞれの個室に1つひとつカメラがついています。温度や湿度、二酸化炭素、酸素の濃度が一定の状態にコントロールされた子宮内に近い環境で、外気のストレスにさらされることなく、それぞれの胚が成長する過程を連続して観察することができます。また、10分、20分、30分など一定の間隔で写真を撮影することによって、動画として見ることもできます。
従来のタイムラプスでは、培養士が画像を解析して評価を行いますが、当院のタイムラプスは胚解析システムの「Eeva(イーバ)」に接続されており、人の目では評価しきれない胚の発育速度や細胞分裂のタイミングなど、74の項目に基づく解析によってスコア評価します。当院のデータでは、Eevaでハイスコアを示した胚は、着床率が高い傾向にあることが確認されています。これからのタイムラプスは「観測」だけでなく、客観的で一貫性のあるデータを蓄積し、優先度の高い胚を「予測」する時代になっていくでしょう。




胚の培養を行う最新のタイムラプス機器。


Qタイムラプスはどのような患者さんに有効でしょうか?


日本では不妊治療を受けられる患者さんの年齢が高いことや、不妊治療に関する知識・情報が広く普及したことで、体外受精のニーズが高まっています。そんななかで受精の結果だけでなく、成長過程も知りたいという患者さんからのご要望も多くあります。タイムラプスの動画は、診察室のモニターでリアルタイムに、または過去にさかのぼって確認することができます。ほとんどの患者さんは、ご自身の胚が成長していく様子を目の当たりにして感動されます。それによって母性が目覚める方もいますし、たとえ結果が悪くても、また前向きに治療に向き合えるという方もおられます。
また、当院ではタイムラプスを導入後、良好な胚を何度移植しても妊娠が成立しない反復不成功症において、従来の観察による胚のストレスの軽減により、胚盤胞の形成率が改善したことを確認しています。まだ導入したばかりですので、今後さらにデータを蓄積していく必要がありますが、Eevaの胚解析システムによって、移植の優先胚を決めやすくなり、よりよいART(高度生殖医療)の実現につながっていくことは間違いないでしょう。ただ、タイムラプスは胚の形態を客観的に評価できる点では非常に優れていますが、残念ながら染色体異常を調べることはできません。今後、日本でもPGD(着床前遺伝子診断)が実施できるようになれば、タイムラプスと併用することで、さらに早期の妊娠が期待できるのではないかと考えています。




出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.41 2019 Spring
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