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【特集3】体外受精3回目以降は妊娠率が下がる? いつまで続けるべきか思い悩んでいます

コラム 不妊治療

【特集3】体外受精3回目以降は妊娠率が下がる? いつまで続けるべきか思い悩んでいます

不妊治療を始めたら、いつかは終わりがくるもの。それが「妊娠・出産」であったなら、 とても喜ばしく幸せなこと。しかし、そうならない厳しい現実もあり、いつか決めなければならない治療のやめ時。ジネコユーザーの悩みに応援ドクターが答えてくれました。

2019.3.29

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※2019年2月25日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.41 2019 Spring」の記事です。


きのこさん(37歳)からの相談
引き際はいつ?
先日3回目の移植でグレード1の新鮮胚移植を行いました。1回目はグレード3の新鮮胚移植で陽性でしたが胎嚢が確認できず化学流産、2回目は凍結胚盤胞移植で陰性、現在16日の判定待ちです。体外受精で結果が出る方は3〜4回までがほとんどで、それ以降は妊娠率が下がると聞きました。不妊治療の本にも同じように3回くらいが目安と書いていました。来月38歳になりますが、春頃から子宮内膜症と思われる子宮の腫れがあり、1回目の陽性反応以降、以前からあった子宮筋腫も大きくなり、徐々に体も疲れてきている印象です。凍結胚はないので、もし今回だめだった場合はまた採卵からになりますが、いったいいつまで続けるべきなんだろうと自問自答しています。もしかしたら次こそは……と諦めきれず、ズルズルいってしまいそうなのですが、果たしてそれでいいのでしょうか? 自分が納得できるところまではと思っていますが、納得ってどういうことか、いろいろ思い悩んでいます。

お話を伺った先生のご紹介

田中 温 先生(セントマザー産婦人科医院)


順天堂大学医学部卒業。越谷市立病院産科医長時代、診療後ならという条件付きで不妊治療の研究を許される。度重なる研究と実験は毎日深夜にまで及び、1985年、ついに日本初のギフト法による男児が誕生。1990年、セントマザー産婦人科医院開院。日本受精着床学会副理事長。順天堂大学医学部客員教授。

≫ セントマザー産婦人科医院

不妊の原因を絞り込み、適した治療や検査を選択する


採卵で成熟卵が何個採れたのか、排卵誘発法は何だったのか、その情報が記載されていないので、具体的に答えるのは難しいですが、凍結ができて化学流産したとはいえ妊娠反応があったという事実だけをみると、状況としてはそこまで悪くはないと言えそうです。
このようなテーマについては、成熟卵胞の数とグレード、排卵誘発法、体外受精か顕微授精か、またそれぞれの受精率や分割率などできるだけ詳細な情報があるとよいですね。たとえば、非常にグレードのよい胚盤胞を移植したのなら流産の原因の一つとして慢性子宮内膜炎を疑い、子宮内フローラやTh1、Th2細胞などの免疫機能を調べる検査を選択できます。また、そもそも採卵した卵子の状態がよくないのであれば排卵誘発法が合っていないのかもしれないと疑い、ほかの方法に変えてみるなど、要素を絞り込むことができるからです。


失敗の回数をむやみに増やさず、キャンセルする勇気も大切


日本産科婦人科学会が出しているART(高度生殖医療)の回数別妊娠率でいえば、3回目以降に下がるのは確かです。これは不妊治療だけに限らず、どんな治療であっても3回目以降は結果が悪くなるのですが、きのこさんの場合は妊娠できて凍結もできている。それなのに、4回目だから諦めますか、と私は言いたい。
体外受精1回、2回と回数を重ね、3回目の卵子のグレードが悪ければ、キャンセルしてタイミング法や人工授精に変更するという方法もあります。そうすれば、費用はかからず、「失敗した」と傷つく回数は1回減ります。採卵して卵子の質をよく見て、一番よい状態の時だけ進める。助成金も一番よい時だけ使うようにすれば、無意味に回数だけ重ねて傷つき、使いたい時にはすでに助成金が使えないという状況を回避できるかもしれません。失敗が3回も続けば「私、妊娠できないのかも」と誰もが不安になります。もちろん、キャンセルするのも勇気がいるかもしれませんが、やってしまうから妊娠できない回数ばかりが増えてしまう。妊娠とはいろいろな要素が絡み合ってようやく成立するものであり、年齢的に30代後半に差し掛かれば卵子の老化など条件的にも厳しくなるものです。だからこそ、最も可能性がある時だけ挑戦してみるというふうに気持ちを切り替えてみませんか。
回数の目安については、きのこさんには5回目までは悩まずに頑張っていただきたい。なぜならどの排卵誘発法が合っているのかを見つけるためには5回は必要だからです。最適な誘発法を選択できて着床できたとしても、流産する可能性もあります。その場合はさらに原因を絞り込むことができ、次の治療や検査を決めることもできます。
 子宮内膜症と思われる腫れは要注意で、再発して進行する確率が高いので、医師にきちんと経過観察をしてもらいましょう。子宮筋腫については心配ありません。
 いずれにしても、妊娠でき、凍結できるという事実が、卵子のグレードが高いということを証明していて、ご本人が思っているよりも希望があります。実年齢よりも卵巣機能はよいと思われますから、どうぞ諦めないでください。


夫婦の今後の人生のために二人の最良を一緒に考える


私が不妊治療中の患者さんに常にお伝えしているのは、35歳を過ぎて女性の生殖能力が下がるのは「閉経」という現象をもつ人間として当然だということ。決して何かが劣っているのではなく、閉経後に続く40年、50年という長い人生を健康で生きるために女性が授かった贈り物であり、卵子がゼロに向かって減っていくのは卵巣の正しい状態なのです。晩婚化が進み、不妊治療の初診年齢も上がっている現代において、妊娠がすべてという考え方はそろそろ変える時がきているといえるでしょう。
不妊治療をやめるタイミングは、必ず夫婦二人で決めること。◯歳の誕生日までとか、夫婦の人生設計におけるお金の内訳をあらかじめ決めて治療に充てた費用に達したらやめるなど、最初から二人で決めておく。「同じ方向を向いて進むことが、その後に続く夫婦二人の人生にとって大切だ」と私はすべての患者さんにお伝えしたいですね。


TOPICS
流産が2回続くことを「反復流産」、3回以上を「習慣流産」といいます。流産で最も多い原因は「胎児の染色体数の異常」で、両親の染色体が正常だとしても起こりうるため、健常な夫婦でも1回の妊娠に対する流産率は10%以上。両親のいずれかに染色体異常や遺伝子疾患がある場合には着床前遺伝子診断(PGD)を受けることができます。卵子の老化に伴って「染色体の不分離」という現象の発生率が高くなるため、女性の年齢が高くなるにつれ流産率は上昇します。



出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.41 2019 Spring
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