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なかむらレディースクリニック こころとからだに優しい中村嘉宏先生の不妊治療はじめて講座

コラム 妊活

なかむらレディースクリニック こころとからだに優しい中村嘉宏先生の不妊治療はじめて講座

一般検査で原因がわかったら、次はどんな治療に進むのでしょうか? 第2回目は原因別の治療法、タイミング療法、人工授精について、なかむらレディースクリニックの中村嘉宏先生に教えていただきました。

2019.6.14

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※2019年5月24日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.42 2019 Summer」の記事です。


テーマ
不妊治療の流れ
一般検査で原因がわかったら、次はどんな治療に進むのでしょうか? 第2回目は原因別の治療法、タイミング療法、人工授精についてどのように治療が進んでいくのか確認します。

「不妊治療の流れ」まとめ
●タイミング療法や人工授精は超音波検査と血液検査で時期を正確に
●ヒューナーテストに問題があれば人工授精が有効
●年齢とAMH値によっては早めに体外受精も検討

お話を伺った先生のご紹介

中村 嘉宏先生(なかむらレディースクリニック)


大阪市立大学医学部卒業。同大学院で山中伸弥教授(現CiRA所長)の指導で学位取得。大阪市立大学附属病院、住友病院、北摂総合病院産婦人科部長を経て、2013 年より藤野婦人科クリニック勤務。2015年4月なかむらレディースクリニック開院。

≫ なかむらレディースクリニック

検査で原因がわかったら、次はどんな治療に進んでいくのでしょうか?


①排卵に問題があった場合
排卵障害には、多囊胞性卵巣症候群(PCOS)、下垂体機能低下症などいろんな原因があり、それぞれの原因に適した排卵誘発剤で治療していきます。たとえば、PCOSの方はクロミッドⓇという飲み薬を使用します。これで効果がみられない場合は、プレドニンⓇを併用したり、卵胞を直接刺激するHMG・FSH注射の使用を検討します。

②卵管に問題があった場合
卵管閉塞や狭窄(狭いこと)には、「FT(卵管鏡下卵管形成術)」が有効です。自然妊娠率の向上が期待できます。FTを受けられた方は、術後半年で約30〜40%の方が自然妊娠されます。当院では卵管鏡と子宮鏡を組み合わせたダブルスコープ法を行っています。この方法で、卵管鏡だけでは見つけにくい子宮口を子宮鏡で素早く探り、安全性と確実性の高い卵管形成術を行っています。手術は20分程度で終了し、日帰りで受けることができます。
FT手術後、4回程度タイミング療法か人工授精(AIH)を試みて妊娠しない場合は、卵管に卵子がピックアップされていない可能性や体内で受精していない可能性を考えて体外受精を検討します。

③子宮に問題があった場合
子宮の問題で最も多いのは子宮筋腫です。女性の40%は何らかの形で筋腫をもっています。子宮の内腔に変形をきたさない場合も多く、その時は経過観察します。しかし、子宮筋腫や子宮腺筋症によって子宮内腔が変形している場合は、腹腔鏡下手術を検討します。
子宮の形態異常も不妊症や不育症の原因になりますが、その中でも中隔子宮(子宮の中に中隔(壁状の突出)がある状態)は、レゼクトスコープ(子宮鏡下で病巣切除する機器)による手術が有効です。

④子宮頸管に問題があった場合
子宮頸管因子は、性交後に運動精子が子宮頸管内の粘液に侵入しているかどうかを調べるヒューナーテストにより評価します。
抗精子抗体のため、精子が子宮に侵入しない場合は、まず人工授精を選択します。抗精子抗体値が高い場合は体外受精を検討します。高度異形成や子宮頸がんの初期などで子宮頸部の円錐切除手術をされている場合、頸管粘液の分泌が低下し、子宮に侵入する精子数が減少することがあります。このような方にも人工授精が適しています。人工授精を4回程度行い妊娠しない場合は、卵子が卵管にピックアップされていない可能性を考え体外受精を検討します。

⑤精子に問題があった場合(男性因子)
男性の不妊原因の多くは、原因不明の特発性造精機能障害(精子の数や運動率が低下した状態)といわれています。少し所見が悪い程度では、人工授精での妊娠が可能ですが限界があります。かなり精子が少ない場合でも、顕微授精で解決できる場合も多いので、男性も積極的に精液検査を受けるようにしてください。



人工授精とはどのような治療法ですか?


あらかじめ採取した精子を、遠心分離処理をして元気な精子をより分けて濃縮します。
 そして、その濃縮した精子を専用のカテーテルで子宮内部に注入し、人工的に授精をうながす治療法です。男性は自宅または病院で精液を採取していただく必要があります。
 この治療法は、ヒューナーテストが陰性の方、軽度の男性因子の方に有効です。
 その他、性交障害や腟内射精ができない時にも有効です。


人工授精で妊娠率を上げるポイントはありますか?


人工授精はタイミング療法と同様に排卵日前後に行います。そのため超音波検査で卵胞と内膜の状態を把握し、血液検査でエストラジオールやLHなどのホルモン値を測定して正確にタイミングを合わせるのがポイントです。
 さらに当院では、採取後2時間以内に持ち込まれた精液を、培養士が密度勾配法で丁寧に洗浄・濃縮します。不動精子や奇形精子をある程度除去し、元気な精子だけを集めて子宮の奥深くに確実に届けることで授精率を高めています。
 人工授精を行う目安は4回程度です。なぜなら、人工授精で妊娠された方のうち9割近くは4回目までに妊娠されているからです。人工授精を4回程度行って妊娠しない場合は、卵子が卵管にピックアップされていない可能性を考えて体外受精を検討します。


前回、30代後半の人は早めに体外受精にステップアップをしてもいいとのお話でした。そのほかにステップアップの目安はありますか?


妊娠しにくい大きな要因は女性の年齢で、35歳頃から卵巣の中の卵子の老化が急速に進行します。また、卵子数も年齢とともに低下します。卵子の残り数は個人差が大きく、若い方でも卵子の残り数が少ない方もいます。卵子の残り数の目安になるのが、卵巣の予備能を表すAMH(抗ミュラー管ホルモン)です。AMHが1 ng / mlに近づいたら、卵子の残り数が減っていることを意味しますので、その場合は年齢にかかわらず早めにステップアップしたほうがいいでしょう。
検査に問題なく原因不明の方は、超音波検査と血液検査で正確にタイミングを合わせたうえで、タイミング療法を4回程度行います。タイミング療法で結果が出なければ体外受精を検討します。タイミングが合っていても妊娠しない原因として、卵子が卵管内にピックアップされていないことなどが考えられます。つまり、体内で受精が起こっていないのではと考えると体外受精を選択する理由がわかりやすいと思います。


出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.42 2019 Summer
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