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採卵しても未成熟卵ばかり。排卵誘発法が合っていない?

コラム 不妊治療

採卵しても未成熟卵ばかり。排卵誘発法が合っていない?

皆さんの治療に関する相談を全国のドクターにお聞きして、誌面でアドバイスをお届けする人気企画「ジネコ セカンドオピニオン」。ジネコの応援ドクターが丁寧にお答えいたします

2019.6.24

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※2019年5月24日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.42 2019 Summer」の記事です。


papicoさん(36歳)からの相談
排卵誘発法と血液検査の関係について
2回目のIVFに向け、転院するべきか悩んでいます。1年前にいまの病院でIVFを行いました。D3から1日おきにフェリングⓇ、D3から5日間クロミフェン、D14に採卵し、未成熟卵9個。そのうち2つが胚盤胞に成長し、1つは新鮮胚、1つは凍結胚移植しましたが、どちらも陰性でした。採れた卵子すべてが未成熟卵だったことに不安を感じています。いまの病院は血液検査をせずに先生の経験によって薬を決めているように感じます。そのため薬の選定が合っておらず、成熟卵が採れなかったのでは?と考えてしまいます。血液検査の結果をみて排卵誘発剤を選定しないのでしょうか? 未成熟でも胚盤胞になっているので、気にせず治療に臨んでも大丈夫でしょうか?

まとめ
●排卵誘発法はAMHの数値と年齢を目安に選定するのが一般的です。
●成熟卵に育てるため、ゆるやかな刺激のHMGアンタゴニスト法を試しては。

お話を伺った先生のご紹介

山下 能毅 先生(うめだファティリティークリニック)


大阪医科大学医学部を卒業後、北摂総合病院産婦人科部長・大阪医科大学産婦人科病棟医長、医局長、講師として、不妊治療や腹腔鏡手術に積極的に取り組む。2014 年、宮崎レディースクリニックの副院長に就任し、2017年4月、同院の院長に。

≫ うめだファティリティークリニック

排卵誘発法はどのようにして選択されるのでしょうか?


排卵誘発法は「調節卵巣刺激法(ロング法、ショート法、アンタゴニスト法)」と「低卵巣刺激法(クロミフェン+注射)」の大きく2つに分かれます。
一般的に排卵誘発法の選択は、AMH(抗ミュラー管ホルモン)の数値と年齢によって判断し、具体的には「正常(AMH2〜4 ng / ml)」「高い(AMH4 ng / ml以上)」「低い(AMH2 ng / ml以下)」の中で検討していきます。たとえば、AMHが高い人は卵子が育ちやすいため、調節卵巣刺激法で複数個の採卵をめざします。一方、AMHが低い人は卵子が育ちにくいため、クロミフェンを内服する低卵巣刺激法で卵胞発育をうながします。


papicoさんは採れた卵子すべてが未成熟卵だったそうです。これについてどう思われますか?


ご相談者は多囊胞性卵巣症候群(PCOS)と診断されていますね。PCOSは一般女性の5%にみられ、多くの人は月経不順を訴えられます。一般的にこのような方では、卵巣刺激が強い注射剤の量を増やすほど卵子はたくさん育ちますが、未成熟卵が増えやすく、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)になりやすい傾向があります。排卵誘発剤のさじ加減がむずかしい病態ですので、おそらく担当の先生はOHSSを予防するために、低卵巣刺激法を選択されたのでしょう。
しかし、この方は36歳と若く、AMHは5.8 ng / mlと高めですので、卵子がたくさん採れる可能性は十分あります。当院であれば、卵子の成熟度をさらに上げるために、ゆるやかな刺激のHMGアンタゴニスト法をご提案します。AMHの数値をみながら1日の注射量を微調整するなど、慎重にコントロールしてOHSSを回避しつつ、成熟卵に育てていきます。近年、OHSSはカバサール®という薬でも予防でき、体外受精での安全性は高くなっていますので、担当の先生とご相談されてはいかがでしょう。


今後の治療法についてアドバイスをお願いします。


そのほかに、インスリン抵抗性、甲状腺ホルモン異常など、合併症を引き起こしやすいホルモンについても検査し、原因も調べておかれるといいと思います。それで異常が見つかれば、原因に応じた治療と並行しつつ、体外受精を続けていかれるといいでしょう。 
 また、未成熟卵から胚盤胞になっていますが、あくまでも形態的な判断なので、その胚盤胞が必ずしも着床するとはかぎりません。着床率の高い胚(受精卵)の条件は、初期胚から胚盤胞に至る速度や分割といった成長過程にあります。胚の成長を観察・記録して良好胚を優先的に選別する「タイムラプス」などで、総合的に判断されるといいですね。


出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.42 2019 Summer
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