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【対談●小田原先生×宗田先生】日本が抱える妊娠・出産の問題

コラム 女性の健康

【対談●小田原先生×宗田先生】日本が抱える妊娠・出産の問題

ジネコでは、常に不妊に関する情報を発信しています。妊娠・出産に悩む女性の数は後を絶ちません。その根本的問題は? 解決策は? 同じ東京・恵比寿に拠点を置き不妊治療、婦人科と別々の分野でご活躍中の小田原先生と宗田先生にご意見を伺います。

2019.9.5

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※2019年8月24日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.43 2019 Autumn」の記事です。


お話を伺った先生のご紹介

小田原 靖 先生(ファティリティクリニック東京)


東京慈恵会医科大学卒業、同大学院修了。1987年、オーストラリア・ロイヤルウィメンズホスピタルに留学し、チーム医療などを学ぶ。東京慈恵会医科大学産婦人科助手、スズキ病院科長を経て、1996年、恵比寿に開院。久しぶりに観た映画『ボヘミアン・ラプソディ』は、若いころクイーンのコンサートを実際に観たこともあり、迫力と音に感動しました。その後、DVDを買いましたがやはり映画館で観た感動とは違いますね。ご夫婦でも映画など何かを共有して、そこから会話が弾むのはとてもいいことですよね。


≫ ファティリティクリニック東京

お話を伺った先生のご紹介

宗田 聡 先生(広尾レディース)


筑波大学卒業、その後同大産婦人科にて研修。Tufts大学(ボストン)遺伝医学特別研究員、水戸済生会総合病院産婦人科部長・茨城県周産期センター長、パークサイド広尾レディースクリニックを経て、広尾レディースクリニック院長に。映画は、もっぱら旅行中の飛行機の中や、家で観ることが多いです。強いていえばミュージカル系の『マンマ・ミーア!』『ラ・ラ・ランド』などが好きですね。『グレイテスト・ショーマン』はさまざまな障害をもった人がスポットライトを浴びていた点でも非常に興味深い映画でした。


≫ 広尾レディース

1人の医師が1人の女性を長きにわたり診察できない日本のシステム


──同じ恵比寿という場所柄、先生方同士で、患者さんをご紹介するなどの連携はあるのですか?

小田原先生●はい、妊娠した方に何度か宗田先生をご紹介しています。ただ本来、女性の妊娠、出産というのは一元的に起こることなので、妊娠だけ、出産だけ、とこま切れで診察すべきことではないんですよね。もっと大きく言えば、妊娠前の栄養管理などから出産後までを1人の同じ医師が診るのが理想です。それが今の日本では、システムの問題でこま切れになっているのが実情なのです。
宗田先生●そうですね。アメリカでは“オープンシステム”が確立していて、かかりつけ医のクリニックでは出産できる施設がなくても、いざ出産になれば大病院の施設を借りて、かかりつけ医が赤ちゃんを取り上げることができます。そして医師の“技術”に対して報酬が支払われるのですが、日本ではそのシステムがなく、産む場所を借りたら“物と場所”にお金を支払わなければならないんです。そのため、結局のところ検診と出産は、別の病院の別の先生で…というのが一般的ですね。
小田原先生●患者さんがクリニックを卒業する時に、寂しいと言ってくれるのはありがたいことですが…今の日本の医療事情ではそれができない、それであればどの程度情報共有ができるかが私たちの課題です。たとえばベルギーやスカンジナビア諸国では、カルテが番号で管理されているので、どの医師でも患者さんの病歴がわかるシステムがあります。日本もそのようにできるのが理想ですよね。
宗田先生●日本には文化として“里帰り出産”があり、出産だけを地元でする方が多いですが、そこの連携はうまくいっていると思いますね。


35歳を過ぎたら、婦人科ではなく不妊治療専門クリニックへ


──不妊に悩むカップルが5.5組に1組と言われていますが、先生方から見た最近の患者さんの特徴はありますか?

宗田先生●私がよく思うのは、インターネットの情報に振り回されている方が多いということですね。たとえば40歳でも妊娠した方のブログを読んで、私もすぐに妊娠できる!と思っていたり…。または、若いころ生理不順や子宮内膜症があって、先生から「妊娠しにくい体です」と言われたことをずっと鵜呑みにしていたり…。正しい知識が伝わっていないなと常々感じています。
小田原先生●そうですね、これは日本の教育の現場で、女性のライフサイクルについて伝えらえる機会がないことも問題だと思っています。今、避妊や性感染症などの性教育に対する授業はあるけれど、女性の妊孕性のお話をする機会がまるでないために、40代でも妊娠できる! と楽観的にとらえられている方も多いのではないですかね。

──となると、男性の妊娠に対する知識はもっと低いですよね?

小田原先生●その通りです。男性が自分の精子が少ないのでは? と心配されて来院するケースはありますが、女性の妊孕性についての知識はない方が多く、生理があるからなんとかなる、と思っている方も多いです。そしてクリニックのセミナーで妊娠率の推移を見て初めて実情を知る方がほとんどです。
宗田先生●当クリニックで行っている検診で「プレママコース」があり、そこでAMHを測定することがあるのですが、「パートナーが数値で見せないとなかなか妊娠しにくいことを理解してくれないので…」という方もかなりいらっしゃいます。また、35歳を過ぎていてもまだ時間があると思っている方も多いです。私からすれば、すぐに不妊専門クリニックに行ってほしいのですが、ちょっと怖がっている方も多いように感じますね。
小田原先生●おっしゃる通りで、35歳を過ぎると妊娠率はぐっと下がりますから、迷っている間にすぐにでも不妊専門クリニックに相談していただきたいですね。いきなり採卵なんてことはありません。検査をして必要に応じてステップアップするなど方法を考えます。


高齢の妊娠もリスクあり!35歳で一度妊娠について考えて


──たとえ妊娠できたとしても、40歳前後になれば妊娠も出産も子育ても大変…とよくいわれますね。

宗田先生●日本では、周産期で死亡する母親は年間約30人といわれています。それはいかに日本の医療技術のレベルが高いかを表していますが、だからといって高齢の妊娠が安全というわけではありません。年齢が上がれば、リスクも伴い、安全に赤ちゃんを取り上げるのは大変なことなのです。
小田原先生●東京都心という土地柄、高齢での体外受精が多く、妊娠に至っても前置胎盤や早期胎盤剥離、高血圧症などのリスクも確実に上がることがわかっています。子どもが欲しい時に、キャリアアップの途中だったり、パートナーがその時いなかったり…事情は多くあると思いますが、“卵子凍結”をして、自分の卵子をあらかじめ凍結しておくというのも一つの方法だと思いますね。
宗田先生●その卵子凍結をするにも1年でも早くやったほうがよいに越したことはありません。あの人が妊娠できたから私も…という考え方はせず、35歳を過ぎたら、危機感をもっていただきたいです。
小田原先生●不妊治療をした方は、まずは妊娠がゴールだと思いがちですが、その先がもっと長いわけです。当院ではその先に起こるかもしれない母体のリスク、羊水検査のことなども含めてお話ししています。また、遺伝カウンセラーもいますし、その先には宗田先生のクリニックで行っている出生前診断などもあります。宗田先生とはこの先も情報共有をしながら皆さんのサポートができればと思っています。


アドバイス
35歳を過ぎたら、迷わず不妊専門クリニックに相談を

出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.43 2019 Autumn
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