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【Lesson1:不妊の原因と検査】奥裕嗣先生の不妊治療はじめて講座

コラム 不妊治療

【Lesson1:不妊の原因と検査】奥裕嗣先生の不妊治療はじめて講座

不妊症の原因はさまざまで、女性側や男性側、その両者に見つかることや基本の検査では見つからない因子が隠れていることも。不妊治療をはじめる前に知っておきたい不妊症の原因や検査について、レディースクリニック北浜の奥裕嗣先生に教えていただきました。

2020.3.9

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※2020年2月25日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.45 2020 Spring」の記事です。


Lesson1
不妊の原因と検査
●不妊症の原因は女性側、男性側、その両方に見つかる可能性が。

●赤ちゃんを早く授かるためには、必ずご夫婦で検査を受けましょう。

●究極の治療法である体外受精は、究極の検査法でもあります。

お話を伺った先生のご紹介

奥 裕嗣 先生(レディースクリニック北浜)


1992年愛知医科大学大学院修了。蒲郡市民病院勤務の後、アメリカに留学。Diamond Institute for Infertility and Menopauseにて体外受精、顕微授精等、最先端の生殖医療技術を学ぶ。帰国後、IVF大阪クリニック勤務、IVFなんばクリニック副院長を経て、2010 年レディースクリニック北浜を開院。医学博士、日本産科婦人科学会専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医。

≫ レディースクリニック北浜

不妊症のおもな原因と検査について教えてください。


女性の場合は、精子や卵子、受精卵が卵管を通過できなくなる卵管の因子(卵管炎、卵管留水腫など)、受精卵が着床しにくくなる子宮の因子(子宮筋腫、子宮奇形、子宮内膜症など)、精子の動きを止めてしまう子宮頸管の原因(抗精子抗体、頸管粘液不全)などがあげられます。
基本の検査は、卵胞刺激ホルモン(FSH)や黄体形成ホルモン(LH)といったホルモンの値を調べる血液検査やクラミジアなどの性感染症の検査をはじめ、子宮卵管造影検査、子宮鏡検査、頸管粘液検査、抗精子抗体検査、ヒューナー検査などがあります。まずは初診(問診、内診、超音波検査)で体の状態を調べてから、今後の検査スケジュールを相談して決めていきます。ひと通りの検査を月経周期に合わせて1〜2カ月かけて行います。
男性の場合は、精子の数や質に問題があることが多く、その原因として精巣のまわりに静脈のこぶができる精索静脈瘤、良好な精子を十分な数だけつくることができない造精機能障害、精子が精路を通過しない精路通過障害などがあります。また、性交や射精ができない性機能障害の方も少なくありません。男性の検査も婦人科の不妊外来で受けることができます。精液検査は、自宅または病院内で採精した精液の量や濃度、良好な精子がどのくらいいるかを調べます。


検査を受けるうえで気をつけることはありますか。


どの検査も大切ですが、なかでも子宮卵管造影検査と精液検査を必ず受けてから治療に進まれることをおすすめします。女性の不妊原因で一番多いのが卵管因子で、約40%の方に見つかります。一般的な子宮卵管造影検査は痛みを伴うことがあるため、検査を敬遠される方もおられます。当院では子ども用の小さめのバルーンを使い、痛みの少ない方法を採用しています。ですから痛みをあまり心配されずに受けていただけると思います。また、男性の不妊症は、WHO(世界保健機関)によると、男性のみの原因は24%、男性と女性の両方の原因は24%で、これを合わせると約50%になります。総精子数も減少している傾向にあります。
当院に転院された方のなかには、他の施設で子宮卵管造影検査や精液検査を受けずに、何年間も治療を続けていた方もおられます。当院でこのような検査をはじめて受けて、両方の卵管が詰まっていたり、精子の状態が極端に悪かったり、無精子症とわかることがあります。原因が見つかってよかったと思う反面、ご夫婦のそれまでの治療にかけた時間的、経済的、身体的なご負担を考えると、とても複雑な気持ちになります。このような卵管因子、男性因子の方は、少ない回数の体外受精や顕微授精でうまくいくことがほとんどです。遠まわりの治療にならないためにも、ご夫婦ともに検査をきちんと受けられることが望ましいと思います。


基本の検査ではわからない原因について教えてください。



基本の検査をひと通り行っても原因が見つからず、タイミング法や人工授精を行っても結果が出ないことがあります。これを原因不明不妊といい、原因がわからない、あるいは原因がほかにあることを意味しています。このような原因不明不妊の因子を調べるための方法の一つが体外受精です。年齢によりますが、人工授精の妊娠率が7〜8%なのに対して、体外受精は約40〜50%と圧倒的に高く、「究極の治療法」といわれています。じつは体外受精は、「究極の検査法」でもあるのです。不妊症の女性の約90%は原因不明とされ、そのうち基本の検査ではわからないピックアップ障害は約半数あります。ほかにも受精障害や着床障害、良好な受精卵が育たない胚質不良などが、体外受精の過程で見つかる可能性があります。
たとえば、一般的に1回目の体外受精で約60〜70%の方が妊娠されます。それまで原因不明とされていた方が1回目の体外受精でうまくいけば、結果的にピックアップ障害だったと推測することができます。また、良好な受精卵を移植してもうまくいかない方に、血液の凝固系や免疫細胞の異常を調べる着床検査(当院では不育症検査を応用しています)や、受精卵の移植に適した時期(インプランテーションウィンドウ)を特定するERA検査をして、それぞれの検査結果に適した治療を実施し、妊娠に至れば、それは着床障害だったことになります。当院では、受精卵の成長をタイムラプスで24時間見守っていますので、受精卵の成長スピードや状態も確認できます。受精卵の状態がよくない場合は、次の排卵誘発法や培養法を変えるなどして、結果につなげることも可能になります。
このように体外受精は、原因不明不妊の因子を見つけるための検査法としても有効で、次に最適な治療法を考えていく一つの材料になります。これから不妊治療を検討される方はもちろんですが、ステップアップに悩まれている方にもぜひ参考にしていただきたいと思います。


出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.45 2020 Spring
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