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自己抗体が陽性のせいか胚盤胞になりにくい。どんな治療法が望ましい?

コラム 不妊治療

自己抗体が陽性のせいか胚盤胞になりにくい。どんな治療法が望ましい?

高齢に加え、不妊と関連のある自己抗体が陽性でなかなか結果が出ない場合、どんな治療法を選択すればいいのでしょうか。松本レディースクリニックの松本玲央奈先生に詳しいお話を伺いました。

2020.4.23

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※2020年2月25日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.45 2020 Spring」の記事です。


haruyoさん(41歳)からの相談
● 今後の治療について
2016年8月に自然妊娠で出産。2018年に妊娠はしましたが、出産には至りませんでした。2019年、多核受精が多く見られたため検査をしたら、抗セントロメア抗体640倍の陽性が出ました。採卵はこれまでアンタゴニスト法、ショート法、中刺激のアンタゴニスト法で3回。毎回の採卵数は14個ほど、受精数は5~11個ですが、なかなか胚盤胞になりません。抗セントロメア抗体に関して何かいい治療法は? この抗体がある場合、採卵数が多いほうが好ましいと先生から説明がありましたが、次回の採卵ではどのような治療法がよいのでしょうか?

Doctor advice
●抗セントロメア抗体が陽性だと、正常受精率や胚盤胞到達率が低下することも。
●今ある病気をうまくコントロールできていれば不妊治療も並行できます。
●たくさん卵子が採れても胚盤胞になる数が少ないようなら、次回は自然周期採卵を。

お話を伺った先生のご紹介

松本 玲央奈 先生


聖マリアンナ医科大学卒業。東京大学産婦人科学教室、長野県立こども病院総合周産期センターなどを経て、東京大学大学院医学研究科で着床外来に就きながら着床の基礎研究に従事。2018年より現職。男性外来や漢方外来も併設し、オーダーメイドの治療を実践。2015年不妊分野において権威あるヨーロッパ生殖医学会で着床に関する論文でAward受賞。


≫ 松本レディースリプロダクションオフィス

自己抗体陽性は不妊にも影響を与える


──抗セントロメア抗体とはどのような抗体なのですか?

抗セントロメア抗体は自己抗体の一つで、自己免疫疾患の膠原病で検出されることが多い抗体です。不妊にも関連しているといわれており、陽性の場合は正常受精率や卵子の成熟率、胚盤胞到達率などが低くなるケースもあるようです。この抗体を保有している人はだいたい4000人に1人くらいの割合。一般的な検査で調べることはほとんどないので、不妊治療で検査を受けて初めてわかる方もいらっしゃいます。

──妊娠を希望している場合、治療をしたほうがいいのでしょうか。

この方はこれまで2回妊娠をされています。もともとは問題がなくても、年齢が上がって抗セントロメア抗体などの自己抗体が陽性になるケースも多いようです。もしかしたら最近になって出てきたのかもしれませんね。
自己抗体が陽性で、膠原病などの症状がある場合、通常は不妊治療とは別に専門医を受診して治療することが重要です。現在はステロイド薬のプレドニンⓇを内服されているということ。現病の治療が妊娠にもプラスになると思いますので、専門の主治医の指示に従って基礎疾患をコントロールしていくことが大切なのではないでしょうか。
自己免疫疾患は増悪と寛解を繰り返すという面があるので、病状がある程度落ち着いているのであれば、主治医に相談のうえ、不妊治療にも臨んで問題ないかと思います。薬の量や服用期間については、各科の先生に相談して治療をしていけば心配はないでしょう。


高刺激を続けるのではなく、次はあえて自然周期採卵を


──担当医の先生がおっしゃるように、やはり採卵数は多いほうがいいのですか。

前述したように、抗セントロメア抗体が陽性だと多核受精など受精の異常が増えたり、受精卵が胚盤胞になりにくかったりということがあるので、確かに採卵数は多いほうがいいかと思います。卵子がたくさん確保できれば、それだけチャンスは増えますよね。
しかし、この方は高刺激にして卵子の数は多めに確保しても、その後なかなかうまくいっていません。また、採卵2回目のショート法の時はOHSS(卵巣過剰刺激症候群)を起こしたということ。
AMH値に関しては2017年の時点では3・97 ng / mlだったのに、その翌年には1・85 ng / mlまで下がっています。年齢や卵巣機能の低下も不妊に結びついているのかもしれません。

──これまでの排卵誘発法が合っていなかったのでしょうか。

誘発はやってみないとわからない部分があるので、間違っていたとは思いませんが、次も同じ方法を繰り返すのはどうでしょうか。何度も採卵して、数をたくさん確保しても毎回胚盤胞になるのは1個程度、胚を凍結できる確率も少ないとなると、高刺激にするメリットは少ないかと思います。経済的にも大変ですし、またOHSSになってしまったら時間的にもロスしてしまうでしょう。
3年前には自然妊娠しており、月経周期も順調のようですから、次回は180度方向転換して自然周期採卵にトライして、新鮮胚で移植をされてみては。採れる卵子の数は少なく、もしかしたら1回ではうまくいかないかもしれませんが、自然周期なら卵巣を休ませる必要がないので連続して治療ができます。お薬や受精卵の凍結、融解などの料金がかからないので、経済的にもメリットがありますよね。
AMH値は下がりつつありますが、まだ2 ng / ml近くあるので、毎月採卵していく猶予はあるかもしれません。自己抗体が陽性でも妊娠されている方は多くいらっしゃるので、治療するのであれば、前向きにチャレンジしていっていただきたいですね。


先生から
今ある病気は専門医によるコントロールを。
次回の採卵は自然周期で行うのも一つの方法

出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.45 2020 Spring
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