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【Topics!】 反復着床不全に有効な検査法とは?

コラム 不妊治療

【Topics!】 反復着床不全に有効な検査法とは?

原因がわかりにくく、治療が困難とされる反復着床不全に対して、遺伝子解析技術を用いた新しい検査法が注目を集めています。それぞれの検査法でどんなことがわかるのでしょうか? なかむらレディースクリニックの中村嘉宏先生に教えていただきました。

2020.6.13

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※2020年5月25日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.46 2020 Summer」の記事です。


適切な治療を効率よく行うために有効な検査
ERA、EMMA、ALICEは同時に受けることができます。この検査をもとにPGTーAで正常だった胚を移植をすれば、理論上は妊娠する確率はかなり高くなると考えられます。ただ、費用がかかる検査ですので、先生とよく相談して検討されるといいと思います。

お話を伺った先生のご紹介

中村 嘉宏先生(なかむらレディースクリニック)


大阪市立大学医学部卒業。同大学院で山中伸弥教授(現CiRA所長)の指導で学位取得。大阪市立大学附属病院、住友病院、北摂総合病院産婦人科部長を経て、2013 年より藤野婦人科クリニック勤務。2015年4月なかむらレディースクリニック開院。

≫ なかむらレディースクリニック

受精卵側の原因がわかるPGTーA検査とは?


体外受精で、良好な胚(受精卵)を2回以上移植しても妊娠が成立しない状態を反復着床不全といいます。着床不全の原因には、おもに胚側の原因と子宮側の原因が考えられます。胚側の原因のほとんどは、胚の染色体数異常によるものです。「良好胚」とは見た目の形態を評価したもので、染色体数異常かどうかはわかりません。正常な胚の染色体数は46本ですが、染色体数が1本多い、1本少ないなどの異常があると、着床しなかったり流産につながることがわかっています。

着床前診断(PGT)の一つである「PGTーA(着床前胚染色体異数性検査)」は、移植前の胚の細胞の一部を採取し、次世代シーケンサーという機械で染色体数の異常を調べる検査です。染色体数に異常があれば、その胚を移植から除外して着床不全や流産のリスクを減らせます。また、正常な胚がない場合は、すぐに次の採卵に移行するなど、治療計画が立てやすくなります。正常な染色体数の胚を移植できれば、妊娠率の向上が期待できます。
その一方で、細胞を採取する過程で胚にダメージを与える可能性も否定できません。さらに、正常胚と診断されなかった胚の取り扱いなど、検討するべきさまざまな課題もあります。


ただ、胚のもとになる卵子は年齢とともに老化し、染色体数異常の割合が増えます。すると着床率は低下し、流産率は高くなります。胚の染色体数異常を本質的に改善する方法はありませんが、PGTーAを用いてより妊娠しやすい胚を移植することで貴重な時間を浪費することがある程度ふせげます。
PGTーAは、40歳以上で治療時間が限られた方や卵巣機能が低下した方には一つのよい方法だと思います。この検査は日本産科婦人科学会から認可された多施設共同研究承認施設で行われ、当院でも受けることができます。
 ただし、一定の条件が伴います。


 




「着床の窓」や子宮内膜の炎症、環境などの子宮側の原因を調べる検査も


子宮側の原因はおもに2つのことが考えられます。一つは「着床の窓」(受精卵を受け入れる最適な時期)のずれです。通常、「着床の窓」は黄体ホルモンの分泌が始まって5日目とされています。しかし、なかには5.5日目や6日目といった個人差があることがわかっています。当院でも着床不全の方の約37 %に「着床の窓」のずれが認められます。ERA(子宮内膜着床能検査)は、個人の「着床の窓」を調べる検査です。検査結果で特定された、その方の「着床の窓」に合わせて移植日を調整し、妊娠率を高めることができます。
もう一つの原因は子宮内膜の環境の問題です。ERAに問題がない方でも、慢性子宮内膜炎や子宮内膜の細菌叢が、着床に影響するという報告もあります。着床不全の方の約30%に認められる慢性子宮内膜炎の原因の一つが細菌感染です。ALICE(感染性慢性子宮内膜炎検査)があります。この検査では慢性子宮内膜炎を引き起こす原因菌の種類を調べます。検査で原因菌が特定されれば、有効な抗生剤を使って確実に治療できます。

また、より早期の慢性子宮内膜炎の検査としてCD138検査があります。この検査は、内膜の一部を採取し、CD138というマーカーをもった免疫細胞(形質細胞)が子宮内膜にいるかどうかを調べる検査です。正常の子宮内膜にはCD138が陽性の細胞は存在しません。この細胞が存在する場合、慢性子宮内膜炎が疑われます。
さらに子宮内はラクトバチルス(乳酸桿菌)という常在菌が多い状態のほうが胚移植に好ましいとされています。移植前の子宮内のラクトバチルスの割合を調べるEMMA(子宮内膜バイオーム検査)も有効です。ERA、ALICE、CD138、EMMAは、移植日の当日と同じ条件と手順で子宮内膜の組織を採取し、1つの検体で同時に検査できます。


 


その他に考えられる免疫性の問題


当院では内科の先生と連携し、妊娠を希望される方の内科合併症(糖尿病、甲状腺疾患、免疫疾患など)の管理や治療を行う母性内科を開設しています。母性内科外来では、自己免疫性疾患がよく見つかります。不妊症に悩まれている方のなかには、PGTーAやERAでも原因が見つからないことがあります。その場合、原因の一つとして考えられるのが自己免疫性の問題です。男性の精子と女性の卵子の半々から成り立つ受精卵は、母体にとって半分は異物です。着床不全の方のなかには、受精卵に対する免疫的な拒絶反応が強く、着床しにくい方がいると思われます。当院にも自己免疫性の原因が疑われる方は多くおられます。免疫学的な原因を調べる検査はいろいろありますが、代表的なのがTh1/Th2比を調べる検査です。たとえば、この検査で異常が認められた場合は、タクロリムスという免疫抑制剤による治療で、着床や妊娠の維持が可能なこともあります。ただ、免疫的な原因が着床にどこまでかかわっているかは具体的にわかっておらず、今後の研究が急がれる分野だと思います。


 


出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.46 2020 Summer
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