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子宮のトラブル治療すべき? 妊娠を優先すべき?

コラム 不妊治療

子宮のトラブル治療すべき? 妊娠を優先すべき?

40代に多くみられる子宮のトラブルにはどんなものがあるのでしょうか。また、治療と妊娠、どちらを優先すべきなのか、いくたウィメンズクリニックの生田克夫先生にお話を伺いました。

2017.5.21

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40代に多い子宮筋腫発生した部位によっては治療を優先することも


妊娠に悪影響を及ぼす子宮のトラブルとしては、骨盤内の婦人科系の異常としての広い意味での子宮内膜症、卵巣嚢腫、子宮の奇形などが挙げられ、なかでも40代に多く見られるのが子宮筋腫です。


ただ、いずれの病気も、その治療を優先するか不妊治療を優先するかはケースバイケース。


まず、子宮筋腫は発生する部位によって、粘膜下筋腫、筋層内筋腫、漿膜下筋腫の3種類に分類されますが、確実に治療を優先するのは粘膜下筋腫です。粘膜下筋腫は子宮内膜の粘膜の下にできるもので、子宮の内側に向かって成長していきます。子宮の腔の中に顔を出しているものや、子宮の腔が変形しているようなものが多く、これは明らかに受精卵が着床するのはもちろん、着床しても成長するのを邪魔しますから、まず妊娠しないですし、妊娠したとしても流産の確率が非常に高くなります。筋腫が小さいうちから生理痛とか生理の異常などの症状も起きている可能性があり、とにかく問答無用で治療優先となります。


子宮の筋肉の中にできる筋層内筋腫は、筋腫が大きくて子宮の形が歪んでいる、腔が広がっているようなものは手術の対象になる可能性が高くなります。子宮の外側に向かって成長していく漿膜下筋腫については、いくら大きくてもほとんど影響がありません。


要するに、子宮腔が変形し、子宮内膜の血流に影響するようなものはダメですね、ということです。ただ、筋腫がいくつかある場合は手術をしても全部取り切れるわけではありません。子宮の傷が回復するまでは妊娠もできませんから、その後は一気に妊娠しやすくなる治療をしていかないと、取り切れなかった筋腫が発育を始め、手術前と同じ状態になってしまう可能性もあります。


子宮内膜症の治療を開始すると治療中半年近くは妊娠できません


子宮内膜症の場合は、軽い段階では、ヨーロッパの学会では不妊の治療を優先するべきという結果が出ています。子宮内膜症とは、子宮内膜あるいはそれに似た組織が、子宮内腔以外の場所に発生する疾患です。


子宮内膜症にはいろいろな病変があるのですが、最初は透明な袋ができて、赤黒いブルーベリー斑と言われるものができてきて、周囲の炎症を起こし、下腹部に引きつるような痛みが出るというように進行していきます。ただ、そのあたりまではまだ不妊治療を優先でかまいません。


しかし、子宮内膜症が進行し、癒着が起こって周囲の組織がベタベタとくっついてしまうと難しくなります。たとえば、子宮と卵管がひと塊になってしまうようなことになれば、薬物治療と剥離手術を優先したほうがいいかもしれません。


卵巣嚢腫も同じようなもので、子宮内膜症が卵巣の中に発生し、その病巣が進むと卵巣内に嚢胞を形成します。その嚢胞内に血液が溜まった状態がチョコレート嚢腫です。これも5㎝くらいの大きさであれば手術を考える基準となります。それを超す場合は悪性腫瘍の可能性もありますし、あまりに大きくなると卵巣の体積自体が大きくなり、卵管の動ける範囲には限界があるため卵子を拾いにくくなります。大きさ、もしくは腫瘍マーカーの値によっては手術を考えるべきでしょう。


ただ、子宮内膜症の薬物治療を開始すると、卵巣の働きを一時的にとめ、閉経状態にするため、半年間は妊娠できないということです。チョコレート嚢腫など卵巣を触る手術では、術後に卵巣の卵巣刺激に対する反応が悪くなり、発育してくる卵胞の数が減ってしまう恐れもあります。


子宮の奇形についても、どうだったら妊娠しないかという判断は難しいところです。ある種の奇形は流産を繰り返す原因になったりもするので、流産を繰り返しているのであれば手術したほうがいいと思います。しかし、現在はよほど変わった奇形でなければ手術はあまりしません。双角子宮なども、若干、妊娠しづらかったり、流産を繰り返すということもあるのですが、まったく妊娠しないかというとそうでもありません。


何歳までに子どもを産むかご夫婦の人生設計も重要な判断基準です


以上のように、どのトラブルもその人の年齢、卵巣の予備機能、病巣の状態などを見ながらドクターとよく相談するべきだと思います。大切なのは、患者さん自身がいつまでに妊娠したいか、どこまでの治療をしたいか、何歳まで頑張るのかを最初にある程度考えておくことです。


また、現在は条件を満たせば体外受精の1回目には30万円の助成金が出るようになりましたが、年齢によって助成金の回数も違います。


そのあたりもすべて理解したうえで、ご夫婦での人生設計をすることが、治療か妊娠かをはかるためにも重要だと思います。




生田先生より まとめ


特に40代は、病気の治療によって妊娠できない期間があることを念頭に置いておく必要があります。



 



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お話を伺った先生のご紹介





生田 克夫 先生(いくたウィメンズクリニック)


名古屋市立大学医学部卒業。名古屋市立大学産科婦人科学教室助教授、名古屋市立大学看護学部教授などの経歴を重ねたが、不妊に悩む名古屋の方たちの役に立ちたいという思いで、教育者の立場を辞して独立。地元・名古屋の中心部、栄に開院し、1986年から体外受精の現場を歩いてきた経験と穏やかな人柄で、数多くの患者さんを妊娠に導く。毎年夏はどこかへ旅行に行きたくなるという先生ですが「ミニチュアシュナウザーとゴールデンなど犬を5匹も飼っているので、さすがに連れては行けません。毎年、どこかに行きたいなぁと思っているだけです(笑)」とのこと。


≫ いくたウィメンズクリニック


出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.34 2017 Summer
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