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ウソ! ホント? 妊娠にまつわるウワサの真相

コラム 不妊治療

ウソ! ホント? 妊娠にまつわるウワサの真相

2017夏 P20-21

2017.5.23

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ウソ! ホント? 妊娠にまつわるウワサの真相


俵 史子 先生(俵IVFクリニック)




「○○したら妊娠できた」「○○はNG!」といった妊娠にまつわる噂や俗説……。ウソなのか、ホントなのか、俵IVFクリニックの俵史子先生に医師の立場から解説していただきます。





Q:血液型不適合だと子どもができにくい?


昔の話ですが、祖父がA型、祖母がO型でなかなか子どもができず、婦人科の先生に「血液型不適合でできにくい」といわれたそうです。結果的には1人生まれ、それ以降2回妊娠しても流産だったとか。うちも夫がA型、私がO型でなかなか子どもができないので「もしかしたら?」と思っています。(みるくさん・29歳)


  






A:昔は血液型不適合の議論もあったようですが、現在では因果関係はないとされています


夫婦間における血液型の組み合わせと妊娠のしやすさについての研究は、とても古い歴史があります。

現在、一般的に使われている血液型の分類法「ABO式血液型」は1900年頃に発見され、1920年頃から夫婦の血液型の組み合わせと子どもの血液型の特徴付けが行われてきました。

これらの研究過程において、「特定の血液型の組み合わせで、妊娠しやすさが変わるのでは?」という議論もされてきたのですね。その頃の論文では、みるくさんが指摘されている「AとOの組み合わせは不妊になりやすい」という報告も確かにあったようです。当時は婦人科の医師から患者さんに、血液型による不適合の話をすることも少なくなかったのかもしれません。

ほかにもさまざまな報告や噂がありますが、統一の見解は得られていないようです。結果としては、そのようなことはなく、現在では血液型の組み合わせと不妊や妊娠率との因果関係はないと考えられているんですね。

当院でも、過去に不妊治療を受けた1200人の患者さんについて、不適合があるかどうか調べてみました。

日本人のABO式血液型の分布は、A型が40%、B型が20%、O型が30%、AB型が10%といわれています。当院の不妊患者の割合はこの分布ときれいに重なっており、特に「○型だから不妊になりやすい」というバラつきは見られませんでした。

また、ご夫婦の血液型についても同様の結果で、どれも一般頻度の組み合わせ。「○型×○型は赤ちゃんができにくい」という突出した例はありません。

結論として、血液型不適合というのは不妊や流産とは関連がなく、「それで妊娠できないんだ」と気にされることはないと思います。



 


 






Q:不規則な勤務って妊娠しにくい?


赤ちゃん待ち歴2年になる看護師です。年齢が高くて卵巣機能も悪く、なかなか妊娠しません。今ICUで働いているので極度の緊張状態が続き、精神的ストレスも日々感じています。そのうえ、月9回の夜勤もあって、規則正しい生活などとても無理。やはり、不規則な仕事は妊娠しにくいのでしょうか?(ナミさん・34歳)


 






A:夜勤勤務の人は月経周期異常の頻度が高く、メラトニンやプロラクチンの分泌も低下


夜勤勤務や夜間のシフトで働いている女性は、月経周期異常の頻度が高いことはよく知られています。1992年にとられたデータでは、ホステス40.3%、夜勤工場労働者36.8%、看護師24.9%と、夜勤勤務を要する女性が不規則な月経を訴える頻度は高く、メラトニンとプロラクチンの分泌が有意に低いことがわかりました。一方、昼間勤務している教師や事務員で月経の不調を訴えた人は15%以下の低値、という結果でした。

人間は夜寝ている間にメラトニンというホルモンが脳から放出され、朝夜のリズムを作っています。夜勤労働などでこのメラトニンの分泌パターンが崩れることで、月経周期のリズムもおかしくなってしまうんですね。さらに、メラトニンには抗酸化作用があり、卵子が酸化ストレスによりダメージを受けないように守ってくれる働きもあるといわれています。

これらのことを考えると、不規則な勤務=不妊とはいいきれませんが、間接的な原因になる可能性は大いにあるといえるでしょう。

とはいっても、すぐに仕事を変えることは難しいと思います。妊活中で月経不順があるという人は、婦人科や不妊外来で診察を受け、プロラクチンの管理やメラトニンをサプリメントで補充するなど、妊娠においてより良い状況を作っていくことが大切だと思います。



※参考資料/産業医学 Jpn Ind,1992;34:545-550「夜勤勤務時のホルモン動態と月経異常」





 






Q:受精&着床時期の温めについて


受精や着床の時期はやはり、温泉やカイロなどで体を温めたほうがいいのでしょうか? ちょうどその時期に温泉へ行く予定なのですが、温めすぎはよくないとか受精卵が死ぬとか聞いて、本当はどうなのかな……と。温めたほうが血行がよくなるし、妊娠のために少しでもやれることはしたいのです。(匿名・30歳)


 






A:カイロや熱いお風呂など極端な温めは逆効果。普段通り、快適な環境で過ごしましょう


体温や気温が高いと妊娠や赤ちゃんにとってよくないという報告は、世界的に多く見られるようです。海外の論文では、アラブなどの高気温地域や砂漠地帯では流産率が高かったり、赤ちゃんの心疾患が増加するという報告が。また、普段あまり湯船に浸かる習慣がない米国などでは、妊娠初期に熱いお風呂に入ると、流産の頻度が高まるというデータもありました。

このような話を聞くと体を温めることは、ネガティブで怖い印象がありますが、神経質になる必要はないでしょう。私の見解では冷やすよりも温めたほうがいいと思っており、患者さんにもそうお話ししていますが、極端な形でそれをするのはおすすめしません。

たとえば、子宮や卵巣の血流を良くしようと考えてお腹に長時間カイロを貼ったり、我慢して熱いお風呂に浸かったり……。夏は、「冷えすぎは良くない」とエアコンを使わずに暑い部屋で過ごすなど。これらは逆に体調を崩す原因になってしまいます。冷え性の方は、手先や足元など末端部分を温めて、徐々に体全体の血流を良くするほうが効果的だと思いますね。

温泉に行く予定があるそうですが、温泉の成分自体は「妊娠に悪い」というエビデンスはありません。適温のお湯で、のぼせない程度の入浴なら問題ないと思います。無理なことをせず、この時期も普段同様、自分が快適に思える環境で過ごすことが一番です。



 






俵先生よりまとめ


妊娠において何がいけない、これがいいというテーマは、昔から学会でもいろいろ議論されてきました。一般の方でもインターネットで調べればさまざまな説や噂が出てくると思いますが、エビデンスが確立しているものはごくわずかで、今では否定されているものも。不確かなことにいつまでも振り回されていると、本当の不妊原因が特定できなかったり、治療が遅れてしまう場合もあります。月経不順や不妊期間が長い方は、何よりもまず病院で診察や検査を受けて、些細な疑問や不安があれば医師に相談していただきたいですね。



 



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お話を伺った先生のご紹介





俵 史子 先生(俵IVFクリニック)


浜松医科大学医学部卒業。総合病院勤務医時代より不妊治療に携わり、2004年愛知県の竹内病院トヨタ不妊センター所長に就任。2007年、静岡に俵IVFクリニックを開業。2015年静岡駅前に移転し、リニューアルオープン。開院以来、不妊治療で妊娠した方がより安全な出産を迎えられるよう、産科施設との地域連携を大切にしてきた。4月からは周産期を専門にする医師も増え、より充実した医療を提供する体制を整えているそうです。


≫ 俵IVFクリニック



出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.34 2017 Summer
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