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これだけは知っておきたい「卵巣がん」のこと
乳がんや子宮がんに比べると認知度が低い「卵巣がん」についてかおりレディースクリニックの大谷 香先生に教えていただきます。
インタビュー 女性の病気
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「乳がん」の怖さ。不妊治療にも影響する?
10月13日は麻酔の日。「乳がん」に対する理解をこの機会に深めてみませんか?今まで検査をしたことがない人は、ぜひ勇気を出して検査を。
まとめ 女性の病気
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【大学生から見た婦人科3】乳がんの治療法と再発のリスクについて
大学生から見た婦人科、第三弾です。10月1日から「乳がん月間」がスタートするということで、今回は乳がんに関するコラムを女子大生2人が読みました!それぞれの感想をお届けします。
まとめ 女性の病気
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【10月は乳がん月間】乳がんは恐い? 知っておきたい検診方法と治療
毎年10月は「乳がん月間」です。乳がんは早期発見と治療が大切といわれます。検診や治療の内容についてご紹介します。
まとめ 女性の病気
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妊活中の乳がん治療はどうする?
高齢出産が多くなった今、妊活中に乳がんになる女性も増えています。がんが治るのか、今後妊娠できるのかという二重の悩みを抱え、治療について決断をしなければなりません。必要な知識と心構えを井上レディースクリニックの井上裕子先生にお聞きしました。
インタビュー 女性の病気
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子宮頸がん、誤解していませんか? 正しい知識が予防の第一歩
子宮頸(しきゅうけい)がんは、予防できる唯一のがんです。しかし、妊娠出産を考える20代から30代女性に最も多く発症しています。正しい知識を身につけて、自分の体を守りましょう。
インタビュー 女性の病気
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最新の子宮体がん検診事情って?
子宮体がん診断は、子宮内膜の細胞を採る内膜細胞診が一般的で、「痛みが強い」「怖い」というイメージがありますが、経膣エコーでの“痛くない”子宮体がん診断を導入している、みずほ女性クリニックの津田浩史先生に最新の検診事情を伺いました。
インタビュー 女性の病気
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女性のがんをよく知っておきましょう
日本人の2人に1人はがんにかかる時代といわれ、妊活中の女性にとっても他人事ではありません。そこで女性特有のがんについて、がんの診断に大切な役割を果たす「細胞診」の検査資格をお持ちの婦人科医・石川てる代先生にお話を伺いました。
インタビュー 女性の病気
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他人事とは思わないで!知っておきたい子宮頸がんのこと
他人事とは思わないで! 知っておきたい子宮頸がんのこと 2017/11/2 田中 純也 先生(かもい女性総合クリニック 院長) 女性特有のがんの中では乳がんに続いて多い子宮頸がん。「若いから大丈夫」「私には関係ない」と思っていませんか?実は若いうちからかかってしまうこともあるのです。子宮頸がんの予防法について、かもい女性総合クリニックの田中純也先生にお話を伺いました。 子宮頸がんの前兆は20代で始まっていることも! 子宮頸がんは、性交渉によってヒト・パピローマウィルス(HPV)というウィルスに感染することが原因で起こる病気です。子宮頸部にウィルスが入り込むと、少しずつ細胞のDNAを変えていき、正常な細胞が異形細胞へと変わっていきます。この段階はまだがんではありませんが、がんに進行する可能性のある細胞なので、注意深い監視が必要です。この異形細胞は、性交渉が始まった20代から表れていることも多くあります。がんになる年齢としては40~50歳代が多いですが、最近では20~30歳代で発生するケースも増えてきました。 子宮頸がん検診を受ければ、ほとんどの人が予防できる がんの前兆である異形細胞があるかどうかは、検診を受ければすぐにわかります。異形細胞があった場合、3ヶ月ごと、半年ごとなどに検査をして、細胞がさらに変化していないかを調べます。もしも進行してがんになりそうな場合は、手術で切除します。手術は日帰りか1泊の入院で、5~10分で終わる簡単なものです。 大事なのは前兆をとらえること、つまり検診を受けることです。しかし、子宮頸がん検診の受診率は、アメリカ・ヨーロッパでは90%、韓国は70%なのに比べて、日本は17%とかなり低いのが現状です。これは日本の性教育が諸外国と比べて遅れていることと、日本人特有の「自分だけはがんにならない」という思い込みからきていると考えられます。 気になるワクチン接種のこと 子宮頸がんはワクチンで予防ができる病気です。性交渉前の10代でワクチン接種するのがよいとされていますが、20代、30代の方にももちろん効果があります。ワクチン接種後の副作用が話題になったこともありましたが、因果関係は認められていません。このワクチンは世界各国で使われており、浸透していないのは日本を含めほんのわずかな国だけです。オーストラリアでは男性もワクチン接種をしています。 どうしてもワクチン接種には抵抗があるという方は、1年に1回、少なくても2年に1回は検診を受けることをお勧めします。各自治体で20歳以上の女性に対して補助金を出しているので、利用するといいでしょう。子宮頸がん検診を受けると、異形細胞のほかにも子宮頚管ポリープや子宮筋腫、子宮内膜症などの病気が見つかることもあります。ぜひ積極的に検診を受けるようにしてください。 お話を伺った方のご紹介 田中純也先生(かもい女性総合クリニック 院長) 山梨医科大学(現山梨大学)卒業。日本産科婦人科学会専門医。医学博士。女性が話しやすく、安心して体のことをなんでも相談できるクリニックづくりを心がけている。 ≫ かもい女性総合クリニック 他人事とは思わないで! 知っておきたい子宮頸がんのこと 2017/11/2 田中 純也 先生(かもい女性総合クリニック 院長) 女性特有のがんの中では乳がんに続いて多い子宮頸がん。「若いから大丈夫」「私には関係ない」と思っていませんか?実は若いうちからかかってしまうこともあるのです。子宮頸がんの予防法について、かもい女性総合クリニックの田中純也先生にお話を伺いました。 子宮頸がんの前兆は20代で始まっていることも! 子宮頸がんは、性交渉によってヒト・パピローマウィルス(HPV)というウィルスに感染することが原因で起こる病気です。子宮頸部にウィルスが入り込むと、少しずつ細胞のDNAを変えていき、正常な細胞が異形細胞へと変わっていきます。この段階はまだがんではありませんが、がんに進行する可能性のある細胞なので、注意深い監視が必要です。この異形細胞は、性交渉が始まった20代から表れていることも多くあります。がんになる年齢としては40~50歳代が多いですが、最近では20~30歳代で発生するケースも増えてきました。 子宮頸がん検診を受ければ、ほとんどの人が予防できる がんの前兆である異形細胞があるかどうかは、検診を受ければすぐにわかります。異形細胞があった場合、3ヶ月ごと、半年ごとなどに検査をして、細胞がさらに変化していないかを調べます。もしも進行してがんになりそうな場合は、手術で切除します。手術は日帰りか1泊の入院で、5~10分で終わる簡単なものです。 大事なのは前兆をとらえること、つまり検診を受けることです。しかし、子宮頸がん検診の受診率は、アメリカ・ヨーロッパでは90%、韓国は70%なのに比べて、日本は17%とかなり低いのが現状です。これは日本の性教育が諸外国と比べて遅れていることと、日本人特有の「自分だけはがんにならない」という思い込みからきていると考えられます。 気になるワクチン接種のこと 子宮頸がんはワクチンで予防ができる病気です。性交渉前の10代でワクチン接種するのがよいとされていますが、20代、30代の方にももちろん効果があります。ワクチン接種後の副作用が話題になったこともありましたが、因果関係は認められていません。このワクチンは世界各国で使われており、浸透していないのは日本を含めほんのわずかな国だけです。オーストラリアでは男性もワクチン接種をしています。 どうしてもワクチン接種には抵抗があるという方は、1年に1回、少なくても2年に1回は検診を受けることをお勧めします。各自治体で20歳以上の女性に対して補助金を出しているので、利用するといいでしょう。子宮頸がん検診を受けると、異形細胞のほかにも子宮頚管ポリープや子宮筋腫、子宮内膜症などの病気が見つかることもあります。ぜひ積極的に検診を受けるようにしてください。 お話を伺った方のご紹介 田中純也先生(かもい女性総合クリニック 院長) 山梨医科大学(現山梨大学)卒業。日本産科婦人科学会専門医。医学博士。女性が話しやすく、安心して体のことをなんでも相談できるクリニックづくりを心がけている。 ≫ かもい女性総合クリニック
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知っておきたい 卵巣チョコレート嚢胞とがん
知っておきたい卵巣チョコレート嚢胞とがん 2017/10/2 津田 浩史 先生(みずほ女性クリニック) 一見健康そうな20代、30代の女性でも知らないうちに進行しているといわれる「卵巣チョコレート嚢胞」。どんな病気なのか、放っておくとがんになるリスクもあるのか。その原因や適切な治療法などについて、みずほ女性クリニックの津田浩史先生に詳しいお話を伺いました。 卵巣チョコレート嚢胞ってどんな病気? 子宮の内側は子宮内膜という組織で覆われていますが、この子宮内膜に似た組織が何らかの原因で、卵巣・卵管や腹膜、腸など子宮の外にも発生することがあり、この病態を子宮内膜症と呼びます。 卵巣チョコレート嚢胞もこの病変の1つで、卵巣に発生して袋(嚢胞)ができ、その中に古い血液が溜まってしまう病気です。 卵巣チョコレート嚢胞を含め、なぜ子宮内膜症になるのかということについては、月経血の逆流や、卵巣組織の一部が何らかの原因で子宮内膜に化生(変化)してしまうという説が有力視されていますが、はっきりした原因は未だ解明されていません。 原因が不明ということは、なりやすい人の傾向を定めるのも難しいのですが、臨床的にみていくと、若い頃から月経痛の症状が強い人、また、家系的に子宮内膜症が多い人は将来的に子宮内膜症になる確率が高く、特に家族性の場合は通常の人に比べて7倍程度罹患する率が高いといわれています。 おもな症状は? 自分でわかる? 卵巣チョコレート嚢胞でもっともつらい症状は痛みです。月経痛はもちろん、性交痛や排便痛もあります。病変が広がってくると癒着なども起こるので、月経時以外にも骨盤が引っ張られるような痛みを感じることもあります。 痛みの程度については個人差があると思いますが、不思議なのは病気の進行度と痛みの強さは必ずしも一致しないということです。痛みはほとんどないのに、お腹の中を見たら癒着だらけだった、逆に、痛みは強いけれど、病変としては軽度であった……など。痛みが出る人がほとんどだと思いますが、ときどき自覚症状はまったくなく、がん検診や不妊治療を受ける前の検査で初めて見つかったというケースもあります。 卵巣チョコレート嚢胞の診断方法とは? 卵巣チョコレート嚢胞の診断法について、流れとしてはまず問診・内診ということになります。卵巣が腫れていないか、内診でダグラス窩(子宮の後方)に硬いしこりがないか、などをチェックします。 あとはエコー(超音波)検査ですね。卵巣チョコレート嚢胞のように血液が溜まった状態を診断する場合、エコーはかなり有効な手段になるかと思います。 まれに、エコーで診てもチョコレート嚢胞なのかどうか、見分けがつかないケースがあります。そのような場合はさらに詳しい検査として、MRIという断層撮影を行うことも。この検査を受ければ、どのようなタイプの卵巣腫瘍なのか、ある程度判明すると思います。 補助的な方法としてはほかに血液検査があり、この検査では血液中のCA-125という腫瘍マーカーを調べます。正常な場合でも月経時などには値が高くなることがあるので、これだけで確定的な診断は難しいと思いますが、子宮内膜症が進行すると高値になることが多いです。 卵巣チョコレート嚢胞が進行していくと、痛みがさらに激しくなったり、大きくなり、破裂して炎症や感染を起こしたり、癒着がひどくなると不妊の原因にもなってしまいます。 がん化する確率と注意するポイントは? リスクの1つにがん化もありますが、がんへの変性に注意が必要なのは、年齢(特に40代以降)と、嚢胞の大きさ(サイズには諸説あり5~10㎝以上)、CA125高値などの場合です。この条件が揃うとがんになる率は一気に上昇しますが、卵巣チョコレート嚢胞が卵巣がん化する率は40代以降で全体の4%程度、全世代をトータルでみても1%弱と、それほど高い確率ではありません。 チョコレート嚢胞から発生する卵巣がんは進行スピードはがんの中では早いほうではないのですが、抗がん剤が効きにくいタイプのものが多く、進行してしまうと治すのが難しくなることもあります。また若年者やサイズの小さい場合も、がん化することはあるので、チョコレート嚢胞と診断されたら、そのまま放っておかず、経過観察していくことが必要です。 個人によって違う理由 卵巣チョコレート嚢胞の治療法 卵巣チョコレート嚢胞の標準治療は、残念ながら現状では確立されていません。その方の年齢や病態、妊娠を希望しているかどうかなど、お一人おひとりに合わせて治療方針を立てていくことになるかと思います。 たとえば、特にがんのリスクが高まる40代以降で嚢胞の大きさが10cm以上ある場合(サイズには諸説あります)には、手術という選択が一番に考えられます。手術の方法も1つではなく、卵巣を全摘するのか、病変だけ切除したり、焼いたりして卵巣は温存するのか。また、腹腔鏡手術なのか開腹手術なのかなど、いくつかの選択肢があると思います。 一方で手術をした場合には卵巣機能が落ちてしまうので、年齢が若い方の場合は手術を避ける方向で考えます。卵巣チョコレート嚢胞は一度取っても再発することがあるので、何度も手術を繰り返していくと妊孕性が低下してしまいます。それは回避すべきなので、重症でない場合は低容量ピルをはじめとする薬物療法を選ぶことになるでしょう。 卵巣チョコレート嚢胞は根治が難しい病気とされていますが、低用量ピルなどで病変が縮小したり、まれにほとんどなくなってしまう人もいます。しかし薬を止めると病態は元に戻ってしまうことが多いので、薬を飲み続けながら、病気をうまくコントロールしていくことが大切になってきます。 この病気にはこれといった予防方法がないのが実情ですが、病態を悪化させないためには、毎回、月経痛が強い人や家系に子宮内膜症がある人は一度婦人科を受診し、なるべく早く異常を見つけることをおすすめします。 確定診断を受けて治療方針を決める際、施設によっては考え方が異なる場合もあるので、迷ったら他の施設でセカンドオピニオンを聞いてから決めてもいいでしょう。長期にわたる治療になるので、ご本人が納得して受けることが重要だと思います。 お話を伺った先生のご紹介 津田 浩史 先生(みずほ女性クリニック院長) 大阪市立大学医学部、同大学大学院医学研究課外科系専攻産婦人科学卒業。大阪市立総合医療センター産婦人科、慶應義塾大学医学部産婦人科勤務、米国国立がん研究所、米国ハーバード大学ブリガム・アンド・ウィメンズホスピタル留学等を経て、2013年、東京・国分寺駅前にみずほ女性クリニックを開設。同院のモットーは「頑張っている女性を応援するクリニック」と「専門医による地域医療」。思春期から老年期まで女性の一生をトータルでサポートします。 ≫ みずほ女性クリニック 知っておきたい卵巣チョコレート嚢胞とがん 2017/10/2 津田 浩史 先生(みずほ女性クリニック) 一見健康そうな20代、30代の女性でも知らないうちに進行しているといわれる「卵巣チョコレート嚢胞」。どんな病気なのか、放っておくとがんになるリスクもあるのか。その原因や適切な治療法などについて、みずほ女性クリニックの津田浩史先生に詳しいお話を伺いました。 卵巣チョコレート嚢胞ってどんな病気? 子宮の内側は子宮内膜という組織で覆われていますが、この子宮内膜に似た組織が何らかの原因で、卵巣・卵管や腹膜、腸など子宮の外にも発生することがあり、この病態を子宮内膜症と呼びます。 卵巣チョコレート嚢胞もこの病変の1つで、卵巣に発生して袋(嚢胞)ができ、その中に古い血液が溜まってしまう病気です。 卵巣チョコレート嚢胞を含め、なぜ子宮内膜症になるのかということについては、月経血の逆流や、卵巣組織の一部が何らかの原因で子宮内膜に化生(変化)してしまうという説が有力視されていますが、はっきりした原因は未だ解明されていません。 原因が不明ということは、なりやすい人の傾向を定めるのも難しいのですが、臨床的にみていくと、若い頃から月経痛の症状が強い人、また、家系的に子宮内膜症が多い人は将来的に子宮内膜症になる確率が高く、特に家族性の場合は通常の人に比べて7倍程度罹患する率が高いといわれています。 おもな症状は? 自分でわかる? 卵巣チョコレート嚢胞でもっともつらい症状は痛みです。月経痛はもちろん、性交痛や排便痛もあります。病変が広がってくると癒着なども起こるので、月経時以外にも骨盤が引っ張られるような痛みを感じることもあります。 痛みの程度については個人差があると思いますが、不思議なのは病気の進行度と痛みの強さは必ずしも一致しないということです。痛みはほとんどないのに、お腹の中を見たら癒着だらけだった、逆に、痛みは強いけれど、病変としては軽度であった……など。痛みが出る人がほとんどだと思いますが、ときどき自覚症状はまったくなく、がん検診や不妊治療を受ける前の検査で初めて見つかったというケースもあります。 卵巣チョコレート嚢胞の診断方法とは? 卵巣チョコレート嚢胞の診断法について、流れとしてはまず問診・内診ということになります。卵巣が腫れていないか、内診でダグラス窩(子宮の後方)に硬いしこりがないか、などをチェックします。 あとはエコー(超音波)検査ですね。卵巣チョコレート嚢胞のように血液が溜まった状態を診断する場合、エコーはかなり有効な手段になるかと思います。 まれに、エコーで診てもチョコレート嚢胞なのかどうか、見分けがつかないケースがあります。そのような場合はさらに詳しい検査として、MRIという断層撮影を行うことも。この検査を受ければ、どのようなタイプの卵巣腫瘍なのか、ある程度判明すると思います。 補助的な方法としてはほかに血液検査があり、この検査では血液中のCA-125という腫瘍マーカーを調べます。正常な場合でも月経時などには値が高くなることがあるので、これだけで確定的な診断は難しいと思いますが、子宮内膜症が進行すると高値になることが多いです。 卵巣チョコレート嚢胞が進行していくと、痛みがさらに激しくなったり、大きくなり、破裂して炎症や感染を起こしたり、癒着がひどくなると不妊の原因にもなってしまいます。 がん化する確率と注意するポイントは? リスクの1つにがん化もありますが、がんへの変性に注意が必要なのは、年齢(特に40代以降)と、嚢胞の大きさ(サイズには諸説あり5~10㎝以上)、CA125高値などの場合です。この条件が揃うとがんになる率は一気に上昇しますが、卵巣チョコレート嚢胞が卵巣がん化する率は40代以降で全体の4%程度、全世代をトータルでみても1%弱と、それほど高い確率ではありません。 チョコレート嚢胞から発生する卵巣がんは進行スピードはがんの中では早いほうではないのですが、抗がん剤が効きにくいタイプのものが多く、進行してしまうと治すのが難しくなることもあります。また若年者やサイズの小さい場合も、がん化することはあるので、チョコレート嚢胞と診断されたら、そのまま放っておかず、経過観察していくことが必要です。 個人によって違う理由 卵巣チョコレート嚢胞の治療法 卵巣チョコレート嚢胞の標準治療は、残念ながら現状では確立されていません。その方の年齢や病態、妊娠を希望しているかどうかなど、お一人おひとりに合わせて治療方針を立てていくことになるかと思います。 たとえば、特にがんのリスクが高まる40代以降で嚢胞の大きさが10cm以上ある場合(サイズには諸説あります)には、手術という選択が一番に考えられます。手術の方法も1つではなく、卵巣を全摘するのか、病変だけ切除したり、焼いたりして卵巣は温存するのか。また、腹腔鏡手術なのか開腹手術なのかなど、いくつかの選択肢があると思います。 一方で手術をした場合には卵巣機能が落ちてしまうので、年齢が若い方の場合は手術を避ける方向で考えます。卵巣チョコレート嚢胞は一度取っても再発することがあるので、何度も手術を繰り返していくと妊孕性が低下してしまいます。それは回避すべきなので、重症でない場合は低容量ピルをはじめとする薬物療法を選ぶことになるでしょう。 卵巣チョコレート嚢胞は根治が難しい病気とされていますが、低用量ピルなどで病変が縮小したり、まれにほとんどなくなってしまう人もいます。しかし薬を止めると病態は元に戻ってしまうことが多いので、薬を飲み続けながら、病気をうまくコントロールしていくことが大切になってきます。 この病気にはこれといった予防方法がないのが実情ですが、病態を悪化させないためには、毎回、月経痛が強い人や家系に子宮内膜症がある人は一度婦人科を受診し、なるべく早く異常を見つけることをおすすめします。 確定診断を受けて治療方針を決める際、施設によっては考え方が異なる場合もあるので、迷ったら他の施設でセカンドオピニオンを聞いてから決めてもいいでしょう。長期にわたる治療になるので、ご本人が納得して受けることが重要だと思います。 お話を伺った先生のご紹介 津田 浩史 先生(みずほ女性クリニック院長) 大阪市立大学医学部、同大学大学院医学研究課外科系専攻産婦人科学卒業。大阪市立総合医療センター産婦人科、慶應義塾大学医学部産婦人科勤務、米国国立がん研究所、米国ハーバード大学ブリガム・アンド・ウィメンズホスピタル留学等を経て、2013年、東京・国分寺駅前にみずほ女性クリニックを開設。同院のモットーは「頑張っている女性を応援するクリニック」と「専門医による地域医療」。思春期から老年期まで女性の一生をトータルでサポートします。 ≫ みずほ女性クリニック
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子宮頸がんってどんな病気?検診を受けるタイミングは?
子宮頸がんってどんな病気?検診を受けるタイミングは? 2017/8/29 石川 てる代 先生(石川てる代ウィメンズクリニック) 子宮頸(けい)がんにかかる20~30代の若い人が増えています。妊娠・出産を控えるこの世代にとって、注意が必要な病気のひとつです。がんになる一歩手前で見つけて、治療する機会ができる検診は重要です。とはいえ、検診のベストな受け方についてわからないという人も多いはず。そこで、細胞診専門医の石川てる代先生に、子宮頸がんの病気と検査方法について詳しくお聞きしました。 若い女性に増えている子宮頸がん 子宮頸(けい)がんは、子宮の入口にあたる子宮頸部にできるがんのことです。赤ちゃんが育つ子宮腔にできるがんを子宮体(たい)がんといい、この2つをあわせて「子宮がん」と呼ばれています。 子宮頸がんの原因は、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルス感染がほとんどで、セックスで感染するありふれたウイルスです。 HPVに感染しても大部分の人は治りますが、一部の人で感染が持続し、細胞が異常になる「異形成」を起こします。そのうち、またごく一部の人が「ごく早期のがん(上皮内がん)」に進みます。感染からがんになるまでの期間は5~10年といわれています。 近年、子宮頸がんにかかる20~30代の若い女性が20年前に比べて急激に増えています(➡表1)。性交開始の若年化や、ピルの普及によってコンドームで避妊しなくなったことが考えられます。ピルの服用ではウイルスの感染を予防できないのです。 若い女性が子宮頸がんになると、妊娠を望んだ時にそれが叶わなくなるケースも出てきます。そんな悲しい事態を防ぐために検診は有効です。がんの一歩手前で治療すれば、子宮を残す治療により将来の妊娠分娩が可能になります。厚労省は20歳からの検診をすすめていて、自治体の無料検診を受けられるのは20歳からですが、10代でもセックス経験があれば検診をするのが望ましいと思います。 【表1】 参考データ:国立がん研究センター データ:国立がん研究センター 検査は痛くないですか?受けるタイミングは? 検査は内診台に座って行います。医師が指で子宮の大きさをみる触診を行った後、膣を広げる器具を挿入して、子宮頸部の細胞をヘラやブラシのようなものでこすり取ります。痛みも出血もほとんどなく1~2分で終了。過去に痛い思いを経験した人は、器具が大きすぎたのかもしれません。 検診が初めての人や痛い思いをした人、セックスの経験がない人は「小さい器械にして欲しい」と、医師にはっきり伝えるとよいでしょう。 検査を受ける時は、月経血が多い時は避けましょう。月経血が多いと細胞を取りにくくなるため、正確な判定ができない場合があります。月経中も検査可能かを、検査を受けるクリニックに事前に確認されるとよいでしょう。 検査結果の後はどうなるの? 検査で取った細胞は顕微鏡で調べます。結果は「異常がない・再検査が必要・精密検査が必要」の3パターンです。異常がなければ少なくとも2年後にまた受けましょう。再検査の場合は早めに検査をしてください。 そして精密検査になった場合ですが、がんを疑う部分を、コルポスコピーという拡大鏡で観察し、その部分を小さく切り取る「狙い組織診」をして、異形成や上皮内がんがないかを診断します。 異形成は「軽度、中等度、高度」の3段階に分けられ、軽度か中等度であれば自然に治ることがあるので、治療しないで3ヵ月ごとに経過観察します。 一方、高度の異形成と診断された場合、上皮内がんに進行しやすいため治療を行います。がんの部分を切除する「子宮頸部円錐切除術」です。上皮内がんもこの術式で切除するのが一般的で、最大のメリットは子宮を残せること。赤ちゃんを望んだ時に妊娠・出産の可能性が残ります。 ある自治体では、精密検査をした人の約1割に異形成や上皮内がんがわかり、早期の治療へとつながりました。しかし一方で、「精密検査が必要です」との通知を受け取っても無視する人たちもいました。こうした傾向は20代に多くて、とても残念なことです。 子宮頸がんは怖い病気ではありません。早期に発見し、適切な治療を行えば再発することもなく、子宮も命も守ることができます。ごく早期のがんは症状がほとんど出ないため、検診を受けることが何よりも大切です。 参考データ:国立がん研究センター 子宮頸がんの進行は0期、Ⅰ期、Ⅱ期、Ⅲ期、Ⅳ期の5段階に分けられ、さらに各期のなかで細かく分けられる。異形成は0期前の状態。 石川先生よりまとめ HPVの感染からがんになるタイミングは誰にもわからないので、検査を定期的に受けることが重要です。多くの自治体では、無料か少額の自己負担金で子宮がん検診を受けられます。 また、セックス時に出血したり、月経以外で出血が続いた場合には、躊躇せずにクリニックを受診しましょう。健康保険適応で検査を受けられます。 お話を伺った先生のご紹介 石川 てる代 先生(石川てる代ウィメンズクリニック院長) 1978年、千葉大学医学部卒業。千葉市立病院、千葉大学病院、九段坂病院での勤務を経て、1993年より国分寺市に石川てる代ウィメンズクリニックを開院。医学博士。日本産婦人科学会産婦人科専門医。日本臨床細胞学会細胞診専門医。クリニックには10~90代まで幅広い年齢層の女性が受診。その年代の病気や不調に日々向き合う。プライベートは読書でリフレッシュする。小説が大好きで芥川賞、直木賞の受賞作品はほとんど読んでいる。 ≫ 石川てる代ウィメンズクリニック 子宮頸がんってどんな病気?検診を受けるタイミングは? 2017/8/29 石川 てる代 先生(石川てる代ウィメンズクリニック) 子宮頸(けい)がんにかかる20~30代の若い人が増えています。妊娠・出産を控えるこの世代にとって、注意が必要な病気のひとつです。がんになる一歩手前で見つけて、治療する機会ができる検診は重要です。とはいえ、検診のベストな受け方についてわからないという人も多いはず。そこで、細胞診専門医の石川てる代先生に、子宮頸がんの病気と検査方法について詳しくお聞きしました。 若い女性に増えている子宮頸がん 子宮頸(けい)がんは、子宮の入口にあたる子宮頸部にできるがんのことです。赤ちゃんが育つ子宮腔にできるがんを子宮体(たい)がんといい、この2つをあわせて「子宮がん」と呼ばれています。 子宮頸がんの原因は、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルス感染がほとんどで、セックスで感染するありふれたウイルスです。 HPVに感染しても大部分の人は治りますが、一部の人で感染が持続し、細胞が異常になる「異形成」を起こします。そのうち、またごく一部の人が「ごく早期のがん(上皮内がん)」に進みます。感染からがんになるまでの期間は5~10年といわれています。 近年、子宮頸がんにかかる20~30代の若い女性が20年前に比べて急激に増えています(➡表1)。性交開始の若年化や、ピルの普及によってコンドームで避妊しなくなったことが考えられます。ピルの服用ではウイルスの感染を予防できないのです。 若い女性が子宮頸がんになると、妊娠を望んだ時にそれが叶わなくなるケースも出てきます。そんな悲しい事態を防ぐために検診は有効です。がんの一歩手前で治療すれば、子宮を残す治療により将来の妊娠分娩が可能になります。厚労省は20歳からの検診をすすめていて、自治体の無料検診を受けられるのは20歳からですが、10代でもセックス経験があれば検診をするのが望ましいと思います。 【表1】 参考データ:国立がん研究センター データ:国立がん研究センター 検査は痛くないですか?受けるタイミングは? 検査は内診台に座って行います。医師が指で子宮の大きさをみる触診を行った後、膣を広げる器具を挿入して、子宮頸部の細胞をヘラやブラシのようなものでこすり取ります。痛みも出血もほとんどなく1~2分で終了。過去に痛い思いを経験した人は、器具が大きすぎたのかもしれません。 検診が初めての人や痛い思いをした人、セックスの経験がない人は「小さい器械にして欲しい」と、医師にはっきり伝えるとよいでしょう。 検査を受ける時は、月経血が多い時は避けましょう。月経血が多いと細胞を取りにくくなるため、正確な判定ができない場合があります。月経中も検査可能かを、検査を受けるクリニックに事前に確認されるとよいでしょう。 検査結果の後はどうなるの? 検査で取った細胞は顕微鏡で調べます。結果は「異常がない・再検査が必要・精密検査が必要」の3パターンです。異常がなければ少なくとも2年後にまた受けましょう。再検査の場合は早めに検査をしてください。 そして精密検査になった場合ですが、がんを疑う部分を、コルポスコピーという拡大鏡で観察し、その部分を小さく切り取る「狙い組織診」をして、異形成や上皮内がんがないかを診断します。 異形成は「軽度、中等度、高度」の3段階に分けられ、軽度か中等度であれば自然に治ることがあるので、治療しないで3ヵ月ごとに経過観察します。 一方、高度の異形成と診断された場合、上皮内がんに進行しやすいため治療を行います。がんの部分を切除する「子宮頸部円錐切除術」です。上皮内がんもこの術式で切除するのが一般的で、最大のメリットは子宮を残せること。赤ちゃんを望んだ時に妊娠・出産の可能性が残ります。 ある自治体では、精密検査をした人の約1割に異形成や上皮内がんがわかり、早期の治療へとつながりました。しかし一方で、「精密検査が必要です」との通知を受け取っても無視する人たちもいました。こうした傾向は20代に多くて、とても残念なことです。 子宮頸がんは怖い病気ではありません。早期に発見し、適切な治療を行えば再発することもなく、子宮も命も守ることができます。ごく早期のがんは症状がほとんど出ないため、検診を受けることが何よりも大切です。 参考データ:国立がん研究センター 子宮頸がんの進行は0期、Ⅰ期、Ⅱ期、Ⅲ期、Ⅳ期の5段階に分けられ、さらに各期のなかで細かく分けられる。異形成は0期前の状態。 石川先生よりまとめ HPVの感染からがんになるタイミングは誰にもわからないので、検査を定期的に受けることが重要です。多くの自治体では、無料か少額の自己負担金で子宮がん検診を受けられます。 また、セックス時に出血したり、月経以外で出血が続いた場合には、躊躇せずにクリニックを受診しましょう。健康保険適応で検査を受けられます。 お話を伺った先生のご紹介 石川 てる代 先生(石川てる代ウィメンズクリニック院長) 1978年、千葉大学医学部卒業。千葉市立病院、千葉大学病院、九段坂病院での勤務を経て、1993年より国分寺市に石川てる代ウィメンズクリニックを開院。医学博士。日本産婦人科学会産婦人科専門医。日本臨床細胞学会細胞診専門医。クリニックには10~90代まで幅広い年齢層の女性が受診。その年代の病気や不調に日々向き合う。プライベートは読書でリフレッシュする。小説が大好きで芥川賞、直木賞の受賞作品はほとんど読んでいる。 ≫ 石川てる代ウィメンズクリニック
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いつ受ける? どう受ける? 子宮頸がん検診
いつ受ける? どう受ける? 子宮頸がん検診 2017/8/16 柴田 哲生 先生(こまざわレディースクリニック) 罹患者が年々増加している「子宮頸がん」 子宮頸がんとは、子宮の入り口の頸部にできるがんのことです。その原因の95%以上は高リスク型のヒトパピローマウイルス(HPV)感染とされています。ヒトパピローマウイルスは100~150種類あり、そのうちの15種類ががん細胞を発生させると言われているものです。性交渉などにより感染し、人間の間を渡り歩いています。通常2~3年で消えていきますが、中には長期にわたって子宮頚部に居座るものもあり、それががんを発生させます。 子宮頸がんは、性成熟期女性では乳がんに次いで発症率の高いがんです。そして、20~30代の若い女性の罹患者が近年急増しています。また、死亡者数は1993年ごろまで減少傾向にあったのが、ここ数年は年間約3,500人と推定され、横ばい状態にあります。 子宮頸がん検診は「20歳を過ぎたら年1回」を習慣に 子宮頸がんがこれだけ増えているにもかかわらず、子宮頸がん検診はほかの先進国と比べて著しく遅れているのが日本の現状です。検診自体は、子宮頸部の粘膜をヘラで軽くこすって組織を調べるだけですので、痛みを伴うことはありません。検診を受ける時には着脱しやすい服装で病院に行くのがおすすめです。会社の健康診断、または各自治体でも補助が出るので、ぜひ問い合わせてみてください。 初期の子宮頸がんの場合、自覚症状が全くないことがあります。逆に自覚症状がある場合は、すでに進行していることもあります。早期に発見できれば子宮の温存が可能で100%治るがんなので、早期発見がとても大切です。年に1回、例えば誕生月に受けるなどの習慣を持つと良いですね。特に20~30代の場合、そのあとに妊娠、出産という人生の大きなイベントを考えている場合もあるでしょう。検診はご自身の妊孕性(にんようせい・妊娠のしやすさ)を失わないためでもあるのです。 「婦人科に行きづらい」と思う方もいるかもしれませんが、婦人科には20代の方も多くいらっしゃいます。できれば何でも相談できるかかりつけ医がいると良いですし、長く通っているかかりつけ医があるならば、たまには他の医師に違う視点で診てもらうのも、個人的には良いと思っています。 子宮頸がんワクチンの接種も有効 最近、副作用が取り上げられている子宮頸がんワクチンですが、婦人科医一般の見解として、ワクチンは大変有効であると考えます。実際、ヒトパピローマウイルス(HPV)16、18型に加え、性感染症のひとつである尖圭コンジローマを発生させる6、11型の予防もできる4価ワクチンを導入したオーストラリアでは、子宮頸がんの一歩手前である前がん病変や尖圭コンジローマの発生が減少していることがわかっています。ワクチン接種により子宮頸がんの発生は70%予防できるとされています。子宮頸がんの予防は、子宮頸がん検診とワクチン接種が最も効果的だと言えるでしょう。まずは予防が大切です。ワクチンで予防ができる癌は子宮頚がんだけです。心配事がある場合は、信頼できるクリニックにぜひ相談してみてください。 お話を伺った先生のご紹介 柴田 哲生(こまざわレディースクリニック) 昭和大学医学部、医学部大学院卒業。牧田総合病院産婦人科医長、大和徳洲会病院産婦人科部長、昭和大学産科婦人科専任講師、せんぽ東京高輪病院婦人科部長を経て、平成21年、こまざわレディースクリニックを開設。日本産科婦人科学会専門医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医。プライベートでは、愛猫にメロメロ。また、ビリヤードなど趣味も多彩。 ≫ こまざわレディースクリニック いつ受ける? どう受ける? 子宮頸がん検診 2017/8/16 柴田 哲生 先生(こまざわレディースクリニック) 罹患者が年々増加している「子宮頸がん」 子宮頸がんとは、子宮の入り口の頸部にできるがんのことです。その原因の95%以上は高リスク型のヒトパピローマウイルス(HPV)感染とされています。ヒトパピローマウイルスは100~150種類あり、そのうちの15種類ががん細胞を発生させると言われているものです。性交渉などにより感染し、人間の間を渡り歩いています。通常2~3年で消えていきますが、中には長期にわたって子宮頚部に居座るものもあり、それががんを発生させます。 子宮頸がんは、性成熟期女性では乳がんに次いで発症率の高いがんです。そして、20~30代の若い女性の罹患者が近年急増しています。また、死亡者数は1993年ごろまで減少傾向にあったのが、ここ数年は年間約3,500人と推定され、横ばい状態にあります。 子宮頸がん検診は「20歳を過ぎたら年1回」を習慣に 子宮頸がんがこれだけ増えているにもかかわらず、子宮頸がん検診はほかの先進国と比べて著しく遅れているのが日本の現状です。検診自体は、子宮頸部の粘膜をヘラで軽くこすって組織を調べるだけですので、痛みを伴うことはありません。検診を受ける時には着脱しやすい服装で病院に行くのがおすすめです。会社の健康診断、または各自治体でも補助が出るので、ぜひ問い合わせてみてください。 初期の子宮頸がんの場合、自覚症状が全くないことがあります。逆に自覚症状がある場合は、すでに進行していることもあります。早期に発見できれば子宮の温存が可能で100%治るがんなので、早期発見がとても大切です。年に1回、例えば誕生月に受けるなどの習慣を持つと良いですね。特に20~30代の場合、そのあとに妊娠、出産という人生の大きなイベントを考えている場合もあるでしょう。検診はご自身の妊孕性(にんようせい・妊娠のしやすさ)を失わないためでもあるのです。 「婦人科に行きづらい」と思う方もいるかもしれませんが、婦人科には20代の方も多くいらっしゃいます。できれば何でも相談できるかかりつけ医がいると良いですし、長く通っているかかりつけ医があるならば、たまには他の医師に違う視点で診てもらうのも、個人的には良いと思っています。 子宮頸がんワクチンの接種も有効 最近、副作用が取り上げられている子宮頸がんワクチンですが、婦人科医一般の見解として、ワクチンは大変有効であると考えます。実際、ヒトパピローマウイルス(HPV)16、18型に加え、性感染症のひとつである尖圭コンジローマを発生させる6、11型の予防もできる4価ワクチンを導入したオーストラリアでは、子宮頸がんの一歩手前である前がん病変や尖圭コンジローマの発生が減少していることがわかっています。ワクチン接種により子宮頸がんの発生は70%予防できるとされています。子宮頸がんの予防は、子宮頸がん検診とワクチン接種が最も効果的だと言えるでしょう。まずは予防が大切です。ワクチンで予防ができる癌は子宮頚がんだけです。心配事がある場合は、信頼できるクリニックにぜひ相談してみてください。 お話を伺った先生のご紹介 柴田 哲生(こまざわレディースクリニック) 昭和大学医学部、医学部大学院卒業。牧田総合病院産婦人科医長、大和徳洲会病院産婦人科部長、昭和大学産科婦人科専任講師、せんぽ東京高輪病院婦人科部長を経て、平成21年、こまざわレディースクリニックを開設。日本産科婦人科学会専門医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医。プライベートでは、愛猫にメロメロ。また、ビリヤードなど趣味も多彩。 ≫ こまざわレディースクリニック
インタビュー 女性の病気
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乳がん検診の重要性を理解していますか?
乳がん検診の重要性を理解していますか? 2017/7/27 井上 裕子 先生(井上レディースクリニック) 「乳がん検診は中年になってから」と思っている若い女性も多いでしょう。でも、乳がんは年齢に関係なくかかる病気です。妊娠を希望していたり、不妊治療を検討しているならば、ぜひ乳がん検診を受けましょう。産婦人科医であり、乳がん認定医でもいらっしゃる井上レディースクリニックの井上裕子院長先生に、検診の重要性についてお聞きしました。 乳がん検診はなぜ必要なの? 乳がんは早期で発見すれば、90%以上治ります。しかし、早期の乳がんは自覚症状がなく、触っても分かりません。画像診断でしか発見できないのです。しかも、1㎝のしこりは約1年で2㎝の大きさになる場合もあります。だからこそ、定期的に乳がん検診を受ける必要があるというわけです。 早期発見、早期治療ができれば、命も守られますし、化学療法やホルモン治療も受けなくて済む可能性が高くなります。妊娠・出産を望むならそれらの治療は避けたいもの。ですから、20代から30代、40代の方も受けておいたほうが良いのです。 もし、不妊治療中に乳がんが発見されたら、受精卵や卵の保存を行うか抗がん剤かの選択に悩むことになります。また、妊娠中に乳がんが発見されると、自分の生命か胎児の生命かの選択を迫られたりと、つらい局面と向きあうことにもなってしまう可能性もあります。 とはいえ、乳がんを含めた婦人科系のがんは、他の臓器に比べて、早期に発見して手術を含めた適切な治療を行えば、良くなる可能性が高いのです。恐がらず、積極的に検診を受けたいものです。 ●乳がんとは 乳腺を構成する細胞が無秩序に異常に増殖した状態を言う。 乳がんの治療は、進行度や悪性度、がん細胞の性質など様々な検査を行った上、ガイドラインをもとに一人ひとりに適した治療を決めていく。 乳がん検診の詳しい内容は? 「乳がん検診」には、対策型がん検診と任意型がん検診があることを知っておきましょう。 ●対策型がん検診 死亡率を下げることを目的に公共政策として行う検診。自治体や企業検診になる。無料あるいは少額の自己負担ですむ。国の政策として、40~60歳の女性を対象として、5年ごとに無料クーポン券を配布。40歳から2年ごとに検診を実施する自治体もある。検査はマンモグラフィ(乳房X線撮影検査)と触診。 ●任意型がん検診 対策型がん検診以外のもので、個人の意志で行う個別検診。検診機関や医療機関で行う人間ドックなどになる。全額自己負担。マンモグラフィ、エコー(超音波検査)、コストはかかるが、МRI検査やCT検査の画像検査、PET検査などがある。 マンモグラフィだけで安心? 20歳から2年に1度、25歳からは1年に1度、また自治体の検診対象外である30代の女性も、「任意型がん検診」で乳房のエコー検査を毎年必ず受けることをおすすめします。 乳がんの早期発見には、一般的にマンモグラフィ検診が有効と言われています。しかし、マンモグラフィの場合、乳房の脂肪もがんも黒く写るので、がんとの判別がしづらいのが現状です。これは個人的な見解ですが、正確な結果を知りたいと思うのであれば、自己負担になってしまいますが、40歳以下であればエコー検査だけにするか、もしくはマンモグラフィとエコー検査を合わせて受けることをおすすめします。 井上先生より まとめ 日本は無料で乳がん検診を受けられるのに、検診率は40%前後と先進国で最低レベル。40歳以上の女性がこの程度なので、20~30代の女性の意識はもっと低いです。ちなみにエコー検査は1回4000~7000円。自分の体を守るだけでなく、自分の望むライフスタイルを叶えるために、オシャレのネイル1回分を検査に使うなど、いま何をすべきかをしっかりと考え、実行できる女性になりましょう。 お話を伺った先生のご紹介 井上裕子(井上レディースクリニック) 1977年、共立女子大学文芸学部卒業後、医師を志し1984年、帝京大学医学部を卒業。1919年に祖父が開業した医院3代目院長に就く。分娩、婦人科検診、不妊治療を柱にしながら「女性総合診療科」を目指し、女性の生涯寄り添った医療を施したいという姿勢を貫く。個人産婦人科で乳がんや子宮がんなど婦人科系の検診を受けられるのは全国でも希少。ほかの臓器のがんに比べて婦人科系がんは早期発見・早期治療で良くなる確率が高いので、検診を積極的にすすめる。 ≫ 井上レディースクリニック 乳がん検診の重要性を理解していますか? 2017/7/27 井上 裕子 先生(井上レディースクリニック) 「乳がん検診は中年になってから」と思っている若い女性も多いでしょう。でも、乳がんは年齢に関係なくかかる病気です。妊娠を希望していたり、不妊治療を検討しているならば、ぜひ乳がん検診を受けましょう。産婦人科医であり、乳がん認定医でもいらっしゃる井上レディースクリニックの井上裕子院長先生に、検診の重要性についてお聞きしました。 乳がん検診はなぜ必要なの? 乳がんは早期で発見すれば、90%以上治ります。しかし、早期の乳がんは自覚症状がなく、触っても分かりません。画像診断でしか発見できないのです。しかも、1㎝のしこりは約1年で2㎝の大きさになる場合もあります。だからこそ、定期的に乳がん検診を受ける必要があるというわけです。 早期発見、早期治療ができれば、命も守られますし、化学療法やホルモン治療も受けなくて済む可能性が高くなります。妊娠・出産を望むならそれらの治療は避けたいもの。ですから、20代から30代、40代の方も受けておいたほうが良いのです。 もし、不妊治療中に乳がんが発見されたら、受精卵や卵の保存を行うか抗がん剤かの選択に悩むことになります。また、妊娠中に乳がんが発見されると、自分の生命か胎児の生命かの選択を迫られたりと、つらい局面と向きあうことにもなってしまう可能性もあります。 とはいえ、乳がんを含めた婦人科系のがんは、他の臓器に比べて、早期に発見して手術を含めた適切な治療を行えば、良くなる可能性が高いのです。恐がらず、積極的に検診を受けたいものです。 ●乳がんとは 乳腺を構成する細胞が無秩序に異常に増殖した状態を言う。 乳がんの治療は、進行度や悪性度、がん細胞の性質など様々な検査を行った上、ガイドラインをもとに一人ひとりに適した治療を決めていく。 乳がん検診の詳しい内容は? 「乳がん検診」には、対策型がん検診と任意型がん検診があることを知っておきましょう。 ●対策型がん検診 死亡率を下げることを目的に公共政策として行う検診。自治体や企業検診になる。無料あるいは少額の自己負担ですむ。国の政策として、40~60歳の女性を対象として、5年ごとに無料クーポン券を配布。40歳から2年ごとに検診を実施する自治体もある。検査はマンモグラフィ(乳房X線撮影検査)と触診。 ●任意型がん検診 対策型がん検診以外のもので、個人の意志で行う個別検診。検診機関や医療機関で行う人間ドックなどになる。全額自己負担。マンモグラフィ、エコー(超音波検査)、コストはかかるが、МRI検査やCT検査の画像検査、PET検査などがある。 マンモグラフィだけで安心? 20歳から2年に1度、25歳からは1年に1度、また自治体の検診対象外である30代の女性も、「任意型がん検診」で乳房のエコー検査を毎年必ず受けることをおすすめします。 乳がんの早期発見には、一般的にマンモグラフィ検診が有効と言われています。しかし、マンモグラフィの場合、乳房の脂肪もがんも黒く写るので、がんとの判別がしづらいのが現状です。これは個人的な見解ですが、正確な結果を知りたいと思うのであれば、自己負担になってしまいますが、40歳以下であればエコー検査だけにするか、もしくはマンモグラフィとエコー検査を合わせて受けることをおすすめします。 井上先生より まとめ 日本は無料で乳がん検診を受けられるのに、検診率は40%前後と先進国で最低レベル。40歳以上の女性がこの程度なので、20~30代の女性の意識はもっと低いです。ちなみにエコー検査は1回4000~7000円。自分の体を守るだけでなく、自分の望むライフスタイルを叶えるために、オシャレのネイル1回分を検査に使うなど、いま何をすべきかをしっかりと考え、実行できる女性になりましょう。 お話を伺った先生のご紹介 井上裕子(井上レディースクリニック) 1977年、共立女子大学文芸学部卒業後、医師を志し1984年、帝京大学医学部を卒業。1919年に祖父が開業した医院3代目院長に就く。分娩、婦人科検診、不妊治療を柱にしながら「女性総合診療科」を目指し、女性の生涯寄り添った医療を施したいという姿勢を貫く。個人産婦人科で乳がんや子宮がんなど婦人科系の検診を受けられるのは全国でも希少。ほかの臓器のがんに比べて婦人科系がんは早期発見・早期治療で良くなる確率が高いので、検診を積極的にすすめる。 ≫ 井上レディースクリニック
インタビュー 女性の病気
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出産を安心して迎えるため知っておきたい 婦人科系の病気と対策(乳がん編)
出産を安心して迎えるため知っておきたい婦人科系の病気と対策(乳がん編) 2017/7/19 的野 博 先生(的野ウィメンズクリニック) 知っておきたい乳がんの兆候 最近特に注目されている「乳がん」。20~30代の若年の方もかかる可能性があり、妊娠中の人が罹患している場合もあります。妊娠によって乳がんになりやすい、というわけではなく、妊娠中から産褥期(授乳期)は乳腺が発達していて、乳房が張って痛みを伴い、乳房腫瘤(しこり)を見つけにくくなります。そして、気づいた時にはがんがかなり進行してしまっている場合が多いのです。 すべての乳房腫瘤(しこり)が乳がんというわけではありません(良性の可能性もあります)が、以下のことに気づいた場合は早めに医師に相談してください。 ①乳房、周辺、腋の下に腫瘤(しこり)が触れ、皮膚が厚くなったように感じる。 ②乳房の皮膚が前に比べて陥没(へこみ)し、妙なしわがよる。 ③乳首が以前よりへこんでいる(陥没乳頭)。 ④乳房全体の皮膚が腫れたり、赤くなっていたりする。また大きさや形が以前と異なる。 妊娠中に「乳がん」の疑いがあったら… もし、妊娠中に乳がんが疑われる場合には、なるべくX線撮影は避けた方が良いため、超音波検査が行われます。当院では、一般的に妊娠が進行するほどがんが発見しづらくなるため、妊娠15~16週未満での超音波検査をおすすめしています。 そこで腫瘍を発見した場合、何か怪しいと思われる場合は、乳腺外科を紹介します(良性の場合は23週から3~4週間ごとに経過を追う超音波検査を行います)。そして産褥期も検診を続けていきます。 妊娠前に「乳がん検診」を 妊娠中に乳がんの発見が遅れて予後が悪くなるという傾向がありますが、できるだけ早く発見し、治療すれば予後がよくなるケースもあります。しかし、まず妊娠を考えている人、そして特にご家族に乳がんに罹った方がいる場合は、必ず「乳がん検診」を受けましょう。そして、乳房の変化に気付けるようにしてください。 お話を伺った先生のご紹介 的野博(的野ウィメンズクリニック 理事長) 産婦人科専門医 母体保護法指定医 麻酔科標榜医 マンモグラフィー読影認定医 日本医師会認定産業医 北里大学医学部卒業後、同大学病院 麻酔科入局。国立立川大学麻酔科、横浜赤十字病院産婦人科、順天堂大学産婦人科、国際親善病院産婦人科医長、小川クリニックを経て、2011年 的野ウィメンズクリニックを開院。開院後、乳がん検査の必要性を感じ、クリニックで検査が受けられるよう自ら勉強し、マンモグラフィー読影認定医となるほど熱心な先生。 ≫ 的野ウィメンズクリニック 出産を安心して迎えるため知っておきたい婦人科系の病気と対策(乳がん編) 2017/7/19 的野 博 先生(的野ウィメンズクリニック) 知っておきたい乳がんの兆候 最近特に注目されている「乳がん」。20~30代の若年の方もかかる可能性があり、妊娠中の人が罹患している場合もあります。妊娠によって乳がんになりやすい、というわけではなく、妊娠中から産褥期(授乳期)は乳腺が発達していて、乳房が張って痛みを伴い、乳房腫瘤(しこり)を見つけにくくなります。そして、気づいた時にはがんがかなり進行してしまっている場合が多いのです。 すべての乳房腫瘤(しこり)が乳がんというわけではありません(良性の可能性もあります)が、以下のことに気づいた場合は早めに医師に相談してください。 ①乳房、周辺、腋の下に腫瘤(しこり)が触れ、皮膚が厚くなったように感じる。 ②乳房の皮膚が前に比べて陥没(へこみ)し、妙なしわがよる。 ③乳首が以前よりへこんでいる(陥没乳頭)。 ④乳房全体の皮膚が腫れたり、赤くなっていたりする。また大きさや形が以前と異なる。 妊娠中に「乳がん」の疑いがあったら… もし、妊娠中に乳がんが疑われる場合には、なるべくX線撮影は避けた方が良いため、超音波検査が行われます。当院では、一般的に妊娠が進行するほどがんが発見しづらくなるため、妊娠15~16週未満での超音波検査をおすすめしています。 そこで腫瘍を発見した場合、何か怪しいと思われる場合は、乳腺外科を紹介します(良性の場合は23週から3~4週間ごとに経過を追う超音波検査を行います)。そして産褥期も検診を続けていきます。 妊娠前に「乳がん検診」を 妊娠中に乳がんの発見が遅れて予後が悪くなるという傾向がありますが、できるだけ早く発見し、治療すれば予後がよくなるケースもあります。しかし、まず妊娠を考えている人、そして特にご家族に乳がんに罹った方がいる場合は、必ず「乳がん検診」を受けましょう。そして、乳房の変化に気付けるようにしてください。 お話を伺った先生のご紹介 的野博(的野ウィメンズクリニック 理事長) 産婦人科専門医 母体保護法指定医 麻酔科標榜医 マンモグラフィー読影認定医 日本医師会認定産業医 北里大学医学部卒業後、同大学病院 麻酔科入局。国立立川大学麻酔科、横浜赤十字病院産婦人科、順天堂大学産婦人科、国際親善病院産婦人科医長、小川クリニックを経て、2011年 的野ウィメンズクリニックを開院。開院後、乳がん検査の必要性を感じ、クリニックで検査が受けられるよう自ら勉強し、マンモグラフィー読影認定医となるほど熱心な先生。 ≫ 的野ウィメンズクリニック
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