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遺伝的なつながりのない子どもを愛することはできるのでしょうか?

インタビュー 不妊治療

遺伝的なつながりのない子どもを愛することはできるのでしょうか?

2020.6.13

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卵子提供を伴う体外受精を検討している場合、「自分と遺伝的なつながりのない子どもを、愛情を持って育てられるだろうか」という心配を抱くこともあるかと思います。国際的に活躍する生殖補助専門医、ニチケ・マルクス先生に詳しいお話を伺いました。


卵子提供という選択肢を提示されて、ショックを受ける方もいらっしゃると思いますが…


今日、卵子提供を伴う体外受精は決して珍しいケースではありません。スペインでは国内で実施されている体外受精のうち3分の1が提供卵子によるもので、その結果1年に4万人の赤ちゃんが誕生していると報告されています。

ご自身の卵子で妊娠することが厳しい女性にとって、卵子提供を伴う体外受精は、妊娠・出産するための唯一の方法です。しかしながら、「いつか子どもを持ちたい」と漠然と夢をみている時には、まさか自分に卵子提供が必要になるなんて予想だにしないもの。ですから卵子提供が必要だと診断されたときのショックは非常に大きく、「遺伝的なつながりのない子どもを、愛情を持って育てることができるのだろうか」という懸念が湧いてしまうのも、とても自然なことです。

「私に似ているのか?」「性格は私たちに似るのか?」「幸せな親子関係を築けるのだろうか?」といった心配が顔を出してしまうのは当然ではないでしょうか。
長期に渡る不妊治療を経験して、先のステップまでイメージできているような方を除き、ほとんどの女性は「他人の卵子の提供を受けて妊娠をする」という治療法を受け入れる心の準備ができていません。人それぞれの受け止め方・決断があるなかで、やはりどうしても母親/父親になりたいと願うカップルは、必要なだけの時間をかけてこの治療法を理解し、納得した上で受け入れ、治療に進まれています。

母親と遺伝的なつながりがない子どもを持つ選択肢について検討する際には、専門知識を持つカウンセラーなどプロフェッショナルのサポートの元、十分に熟考し、パートナーがいる場合にはパートナーとしっかり話し合うことが非常に大切です。

もしも、「卵子提供によって生まれた事実を子どもに話すべき?」「家族には受け入れられるだろうか?」「周囲の人に話すか?」といった、すでにその子どもがこの世に存在しているかのような心配事や疑問などが浮かんできたら、それは患者がこの治療の可能性を「受け入れつつある」サイン。生活環境、文化、本人の考え方などによる違いはあるとはいえ、決断に至るまでのプロセスはカウンセリングの観点からも最も難しいポイントですが、プロのサポートを得られれば、スムーズに進めてゆくことができます。


 


遺伝的なつながりなしで、愛情に満ちた親子関係が築けるものでしょうか?


卵子提供により誕生した子どもは、法的にも出産した女性の子ども(嫡出子)となります。その子は、妊娠したいという患者の願いがあったからこそ、そこに存在しているのです。患者が治療の決断をし、妊娠期間中に大切にお腹の中で育て、出産をしたからこそ存在する命です。血縁関係があるから、親子関係が存在するのではありません。親子で共に時間を過ごし、子育てをしていく過程で絆が深まっていくものです。

妊娠期間中、母親である女性と赤ちゃんとの絆が深まっていきます。誕生後、赤ちゃんのそばで愛情を持ってお世話をすることで、赤ちゃんは安全で守られている気持ちを持つことができ、親子の絆や信頼関係が形成されていきます。
妊娠5ヶ月から6ヶ月くらいで、胎児は子宮の外の音や明るさを感じ始め、母親の感情なども察知することができるようになります。さらには聞こえてくる声を通して、周囲にいる人の存在も認識していきます。
また、誕生後数年をかけて、子どもの人格が形成されていきます。その子がもともと持っている気質がベースになりはしますが、誕生後の環境、教育や経験も人格形成に大きく影響します。生後8ヶ月くらいで、「個人」という存在であると認識し始めるころから人格形成がスタートし、色々な経験や発見を通して子どもの人格がより個性的に形作られていくのです。

もちろん、卵子提供を受けて遺伝的なつながりのない子どもを妊娠し出産するという選択を受け入れがたく感じる方もいらっしゃるでしょう。ただ、「なぜ遺伝的なつながりが大切だと思っているのか?」という部分を掘り下げて考えてみると、案外「世間ではそう考えられているから」「それが常識だから」といった理由である場合も多いです。

人生における大きな選択ですので、よく話し合い、ご自身とパートナーの納得のいく決断をすることが、最も重要なことです。ただ、遺伝的なつながりと、愛情溢れる親子関係との間に関連はなく、子どもの人格形成や性格に影響を与えるのは遺伝子よりも生活をしていく環境にあるということは、お伝えしておきたいと思います。


 


お話を伺った先生のご紹介

ニチケ・マルクス(Markus Nitzschke)先生


生殖補助医療専門医・産婦人科医。世界各国のクリニックでの経験を経て、現在は各所のクリニックと提携しながら国際的な活動を展開。特に卵子提供を伴う体外受精を行う。

≫ Instituto de Reproducción CEFER(Amrita Fertility Japan提携クリニック)

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